井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

マルトレのすすめ(再掲)

2010-01-25 18:34:32 | ヴァイオリン

 これも2008年9月5日の記事で「ビバ~」でも紹介されましたが,関連するので再掲します。

 フランス語で martelé,マルテレとも言う。イタリア語で martelato マルテラート,ハンマー(槌)marteau(マルトー)で打ったような響きを出すボウイングの名称である。

 大学で教えている学生には,まず様々な技術の獲得をしてもらっている。今年の1年生には「マルトレ」「指弓」「スピッカート」の3技術にしぼって,それを毎日やってもらうことを課題にした。

 「スピッカート」ができないと,世間から専門教育を受けたとは見なされないだろう。「マルトレ」と「指弓」を使わない曲は皆無に近いから,これはそれ以上に必須だろう。

 しかし上述のように,課題に出さないといけないくらい,できてないのが一般的な現状である。

 それほど特殊な技術かといえば,さにあらず(と思いたい)。
 ちっとも新しくない「新しいバイオリン教本」の2巻の7頁に「マルトレ」の記載がある。

「マルトレはデタシェと反対に音を鋭く切る運弓法である。
おのおのの指(おもに人さし指)で弦に圧力を加え,運弓がはじまったらすぐにその圧力を抜くようにする。」

 ずばりこれで全てを語っている。2巻の最初であるから,ヴァイオリンを始めて2年目くらいには遅くとも到達しているレヴェルが対象であろう。(ちなみに「指弓」は3巻に出てくる。)

 もっともこの教本からスタートする人は,それほど多くないと思われる。鈴木や篠崎から始めて,途中からこちらに乗り換える人の方が多いだろうし,私もその一人だった。
 でも,少なくとも半世紀前から提唱されていて,この普及率というのは,何かが間違っているように思われてしかたがない。

 私が教えていた大学生のうち,大学からヴァイオリンを始めて,2年目になった3人を選んで,マルトレの特訓をしたことがある。3人とも,上半弓のマルトレができるのに1ヵ月半,全弓のマルトレができるのに3ヵ月半,計5ヵ月を要した。
 もちろん個人差はある。剣道2段を持っていた女の子は1週間でできた!

 一般には,そう簡単にはできないと言える。しかし5ヵ月でできる,とも言える。そう考えれば,今年は無理でも来年にはできているだろう。
 バッハのガヴォットでもアップ弓がマルトレになっていないと,ガヴォットには聞こえない。みなさんの研鑽を期待したい。