その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

素晴らしい企画!:ポーラ美術館開館20周年記念展「ピカソ 青の時代を超えて」& ギャラリートーク駅伝

2023-01-09 11:11:46 | 美術展(2012.8~)

お正月中は特に遠出もしなかったので、3連休の中日に箱根に足を運びました。主目的は大好きなポーラ美術館訪問です。毎年、この時期に箱根駅伝に引っかけて、学芸員の方がリレー方式で展示作品について解説してくれるギャラリートーク駅伝目当てです。


《海辺の母子像》1902年 ポーラ美術館

今年はギャラリートーク駅伝もさることながら、もうすぐ(1/15まで)閉幕となるポーラ美術館開館20周年記念展「ピカソ 青の時代を超えて」が圧巻でした。「青の時代」を超えてキュビズム、円熟期・晩年に至る作品を展示し、その制作過程に焦点を当てた展示が、驚きと感心の連続でとても刺激的な鑑賞でした。

絵画の分析技術、画像技術を駆使して、ピカソの絵が何重にも違った絵が描かれていたことが解明されたり、(これは既存の映画とのことでしたが)「ラ・ガループの海水浴場」が積み重ねに積み重ねを重ねて今の最終形に至ったかの映像は、絵画の価値とか完成といったものがどういう意味なのかを考えさせられます。


《ラ・ガループの海水浴場》1955年 国立近代美術館

また、QRコードでスマフォでアクセスして聴く作品トークが超秀逸。お笑いコンビチョコレートプラネットと学芸員の東海林さんのトークが、芸人さんのとっても素直で楽しい絵の鑑賞・感想に学芸員の専門的な解説が掛け合わせられるという、通常なオーディオ解説を遥かに超えた面白さで、絵を見ながら、オーディオ聴いて笑ってしまうこと数回。時間がどんどん過ぎていきます。

もともとのお目当てのギャラリートークも健在です、今年11回目を迎えるというこの企画(コロナで一時中断あり)、私は確か3回目ですが、普段、通り過ぎてしまう絵を、時代背景や画家の交友、絵の着眼点などの話を聞きながら鑑賞するのは、「へえ~」の連続です。特に、現代美術作品などはただ眺めていても唸るだけですので、作品解説を伺い「なるほど~」と少しわかった気になるのでした。


ギャラリートーク駅伝の一コマ 学芸員の人は襷かけてますが写ってないですね。絵は田中敦子《'89A》

午前早いうちに入館してお昼過ぎまでじっくり、ゆっくり。いたるところに椅子も配置され休めるので、本当に居心地良い環境です。ガラスまどから見える真っ青の箱根の空と葉の散った木々や山の風景も素晴らしい。

小田原に降りて、15時前の遅めの昼食は日本酒と海鮮丼を頂き大満足。落ち着くようで落ち着かないお正月明けの連休の1日を楽しませてもらいました。



2023年1月8日 

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こんな美術館があったとは! 大倉集古館 企画展<信仰の美>

2023-01-05 07:33:46 | 美術展(2012.8~)

ホテル・オークラ東京に博物館があるというのは聞いたことがありましたが、こんなに「ブラボー!」なところとは今回初めて知りました。

何かで知った企画展「信仰の美」に興味を魅かれて訪問。立派な建物、入口の阿形・吽形の仁王像の迫力に入場券購入前からワクワク。(写真撮影禁止なので写真はありません)

チケット購入して最初に遭遇した石造如来立像がいきなり圧巻。北魏時代のものとされる石像自体は素朴なものですが、当時の当地の人々の祈りの対象としてのオーラ、時空の重みを感じるものでした。

企画展もトーハク国宝展のような大掛かりな展示ではありませんが、仏教伝来から現代に至るまでの日本の仏教、信仰の歴史を仏像や仏絵などの品々で追いかけます。国宝の〈普賢菩薩騎象像〉を初め、個人的に好きな来迎図などの浄土教の絵図も充実していて、味わい深いです。じっくり、ゆっくり鑑賞したい人に最適です。

大倉財閥を創始した大倉喜八郎が個人の収蔵品をもとに始まった日本初の私立美術館という大倉集古館。近代の財界人の懐の深さを垣間見た1時間でした。

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眼福の至り: 「国宝 東京国立博物館の全て」

2022-12-04 09:43:59 | 美術展(2012.8~)

先月、国宝展に脚を運びました。前半が東博所有の国宝展示、後半が創立150周年を記念した東博の歴史を辿り未来を見据える展示です。国の宝と言うだけあって、見どころ満載の品々がこれでもかというほど展示され、眼福の至りです。

前半は絵画、書跡、刀剣等が中心。私は特に絵画に魅かれました。「一遍聖絵」(法眼円伊筆)、「花下遊楽図屏風」(狩野長信筆)、「納涼図屏風」(久隅守景筆)など、当時の風俗が伺われ、かつ人々が今そこに居るような空気を醸し出している絵が好みです。

書跡や刀剣については、真価が分かるほどの眼を全く持っていないので我ながら残念です。ただ、太刀 銘三条(名物 三日月宗近)は素人目に見ても、その品格、風格、美しさは別次元で、薄い刀身を見ていると霊気というか冷気がすっと体を通り過ぎる感覚は、怖いぐらいでした。

後半の展示では、未来の国宝である「風神雷神図屛風」(尾形光琳)が圧巻でした。風神雷神図屛風と言えば俵屋宗達という日本史一問一答が染みついているため、恥ずかしながら、光琳が模写をした絵があるのは初めて知りました。模写とは思えない、見えない、精巧かつ迫力満点の図屏風で暫し立ちすくみ。

[撮影okな金剛力士像]

日時完全予約制のため、混雑も許容範囲内でしっかりと鑑賞。2時間近く滞在し、お腹一杯。展示も入れ替わるので、できれば2回、3回と訪れたいのですが、スケジュール上難しそうです。博物館敷地や上野公園の紅葉も見事でした。

2022.11.11

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千代田区立日比谷図書文化館特別展「学年誌100年と玉井力三 描かれた昭和の子ども」

2022-11-13 08:33:02 | 美術展(2012.8~)

週に2,3日の出社ではあるものの、職場が新橋になって皇居ランや日比谷公園がアクセス良く楽しめるようになって嬉しい。その日比谷公園内にある図書文化館で開催中の特別展「学年誌100年と玉井力三」を訪れた。ツイッターでフォローしている方のポストを読んで、とっても魅かれたためである。

昭和の学年誌の表紙画を手掛けた玉井力三の原画やその雑誌らが展示されている。

1970年代に小学生時代を送った私には、会場に足を踏みいれた途端に時計の針がぐーっと逆廻しになる間隔に襲われる。

明るく希望に満ちた男の子、女の子、宇宙飛行士、オリンピック、トランシーバー・・・、世相と世代を表すアイコン。一つの時代や世代のイメージを作り上げていたその影響力の強さを今更のように感じる。(もちろん良いことづくめではないが、)右肩上がりでの成長の時代のオーラが凄い。今、見るとジェンダー問題としてどうよ、というような描き方もあって微笑ましくもある。

観ていて、いわゆる街角の似顔絵画家さんたちにも、意識・無意識に相当の影響を与えてるんではないかとも思った。先日、地域のお祭りで、親戚の子の似顔絵を描いてもらったが、画風はまさにこの表紙画ののりだった。

個人的な思い出もフラッシュバックする。何故か私の両親は、どんなに私がせがんでも、年に1,2冊しか買ってくれず、定期的に購入することを許してくれなかったので、その分、友達の家に行っては貪るように読んだ記憶が蘇る。友人が持つ付録が羨ましくてしょうがなかった。


<小学1年生の私が読んだはずの号>

社会史・メディア史の一端としても、玉井力三という画家の作品の鑑賞としても、自分史の振り返りとしても楽しめる、小規模ではあるが夫々の満足が得られる特別展である。訪問者は、若い人もいたが、比較的私に近い世代にお見受けする人たちが多く、夫々の思い浸っているように見えたのも印象的。

11月15日(火)まで。日ないですが、行ける方はお勧めします。


<公園内の紅葉も最盛期です>

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〈大鳳凰図転生物語 小布施とHOKUSAI 神妙に達していた絵師〉@NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)

2022-07-15 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

《大鳳凰図転生物語》の企画展最終日に東京オペラシティにあるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)に駆け込み鑑賞。丁度、この3週間前の週末に善光寺御開帳の参拝と併せて小布施町に訪れ、北斎による岩松院天井画のオリジナルを観たばかりだったので、デジタル技術でどう「転生」するのか是が非でも観ておきたかった。

300億画素を使って天井画を高精細デジタル化するという、どのくらい凄いかわからないくらい野心的なプロジェクトである。そして、その調査プロセスの中で、一定の方向から光をあてると「鳳凰図」が光ることや、天井画は集団で制作することをや耐久性を考慮して原図からデザインを簡素化していること、などが発見されたことを知り驚きだった。


〈デジタル化された鳳凰図〉

圧巻は江戸時代の岩松院訪問を「体験」できる3Dライブシアター。バーチャル空間で、門前の桜並木をくぐり、人々が行き会う中、岩松院の本堂へ達する。そして鳳凰図を見上げる。場の空間の広がりが違うので感覚は多少異なるものの、天井画は3週間前に見たオリジナルそのものだ。そして、調査の中で発見された、桜祭りの時期に、本堂正面から沈む夕陽を受けて黄金色に輝く鳳凰図は、現地でも体験できないものだった。鳳凰の神々しさに立ちすくんだ。


〈この頭上に輝く鳳凰図〉

私のアンテナが低かったのだが、ICCでは既にいくつかの北斎や廣重の浮世絵のデジタル化などの展示を行っていたことを初めて知った。こうした文化財をデジタル技術で継承していくことは素晴らしいし、是非、今後も続く企画展は覗いてみることとしたい。

2022年7月3日訪問

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まだの人は是非とも! メトロポリタン美術館展 @国立新美術館

2022-05-14 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

質量ともに充実の美術展で見応えたっぷりだった。

「目玉」作品と「その他の出番少なし」作品との抱き合わせ美術展とは明確に一線を画している。

ルネサンス期から印象派までの作品が時代別に展示され、さながら西洋美術史実習という感じ。企画としてはスタンダードだが、質の高い各展示作品のため、鑑賞には時間がいくらあっても足りない。65作品中46作品が日本初出品と言うのも嬉しい。

個人的には、前半のルネサンス期の宗教画や17世紀のオランダの風俗画が好み。フラ・アンジェリコ〈キリストの磔刑〉、ピエロ・ディ・コジモの〈狩りの場面〉、フラ・フィリッポ・リッピ〈王座の聖母子と二人の天使〉などは絵から発せられる強力な磁力に引き付けられた。

オランダ絵画では、フェルメール〈信仰の寓意〉には、背景にキリストの磔刑の絵がかかっていた。先日の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」で、修復で塗りつぶされていた背景にキューピットが現れた《窓辺で手紙を読む女》作品を鑑賞したが、本作品は塗りつぶされることがなかったようだ。メツー〈音楽の集い〉、ヤンステーン〈テラスの陽気な集い〉などの風俗画で当時の人々の生活に思いをはせるのも楽しい。

最後にメトロポリタン美術館を訪れてから25年が経っている。また現地に足を運びたいのだが、いつになることやら・・・

これは絶対にお勧めです。

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平安時代のフィギュア、これは必見:「空也上人と六波羅蜜寺展」@東京国立博物館

2022-04-30 07:32:44 | 美術展(2012.8~)



日本史の教科書には必ず載っている空也上人立像が六波羅蜜寺からやって来た。実物を拝したことがないので、これは行かねばということで東京国立博物館へ。

展示物が限られているためか、特別展で使うことの多い平成館ではなく本館1階の特別室を使った展示となっている。

初めてのご対面の空也上人。当たり前だが教科書通り。ただ教科書ではわからない、そのリアルさに息をのむ。1mほどの背丈に縮小されているものの、前かがみに念仏を唱える上人様は、今にも足を前に一歩踏み出すんではないかと感じるほどである。全身から念仏を広めよんとする本人の使命感が吹き出している。なんというオーラ。そして「南無阿弥陀仏」の一音一音が口から出る阿弥陀仏になっているが、まさに呟くような念仏の音が聞こえてくる。純粋で神聖なお姿を前に数分間立ち尽くしてしまった。

空也上人立像以外にも六波羅蜜寺のお宝が展示されているが、私には会場に入ったところに立つ地蔵菩薩立像(重要文化財)にも大いに魅かれた。目を閉じたまま何かを思うように直立するお姿は、なんとも穏やかで人の心を落ち着かせてくれる。見ているだけで心の安寧が訪れる。左手に、髪の毛の束を持っていらっしゃるのだが、これはどういう意味合いなのだろう。

これら以外にも薬師如来坐像、四天王立像、伝平清盛増なども見ごたえあり、重要文化財のオンパレードだ。全部で16点ほどの展示物だが、逆にこのぐらいの方が焦らず、ゆっくり、じっくりと鑑賞できる。本館11室にも六波羅蜜寺の弘法大師像(重要文化財)などの彫刻が展示されているのでお見逃しなく。

5月8日までなので、まだの方はゴールデンウイーク中に是非。

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ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 @東京都美術館

2022-04-02 07:34:28 | 美術展(2012.8~)

「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」を見に上野の東京都美術館を訪れた。上野の美術館は随分久方ぶりである。

 何者かに塗りつぶされていたキューピットの画中画が修復によって現れ、オリジナルの姿に戻ったフェルメールの《窓辺で手紙を読む女》が目玉である。所蔵館外では初展示とのことだ。2011年3月にドレスデンを訪問した時に鑑賞しているはずだがあまり記憶に残ってない。柔らかく、温かみある絵は気が休まり、描かれた女性についても色んな想像が膨らむ。ただ私自身は、画集などで修復前の絵になじみがあるせいか、修復前の方がスッキリしていいような気もした。修復過程の展示もあり、その細やかな職人芸に感嘆する。

企画展全体としては、フェルメールの1点豪華主義の印象だ。オランダ絵画は風俗画、風景画、静物画等の展示があるが小粒。レンブラントやステーンもあるが数も少ない。オランダ風俗画好みの私としては、少々、期待はずれというのが正直なところだった。

2022年3月3日訪問

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これは必見! ポンペイ展 @東京国立博物館

2022-02-10 07:30:45 | 美術展(2012.8~)

2011年の1月に訪れて、衝撃的な感動を得たポンペイ。その展覧会ということで、迷うことなくトーハクへ足を運んだ。
現地を訪れる迫力には及ばないが、その魅力を余すことなく伝える必見の展覧会である。



ギリシャ・ローマ文化の影響を受けた当時のポンペイの高い文化水準や発展した人々の社会生活が生き生きと伝わってくる。
モザイク絵画、彫像、生活用具などなど、当時の人々の息遣いが聞こえてきそうな展示は、想像力が掻き立てられ、脳のいろんなところが刺激を受ける。



私は展示品のひとつひとつを丹念に鑑賞するというよりも、むしろ11年前の旅と2000年近くの人々や社会に思いをはせながら、当時のポンペイ風に装飾してある会場自体の雰囲気を楽しんだ。それだけでも1時間は優にかかる。

広大な博物館は人影もまばらなように見えたが、この展示会場だけは賑わっていた。必見の展覧会と断言できる。お勧めします。

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【近美コレクション】コレクション・ストーリーズ ヨーロッパの版画 @札幌、北海道立近代美術館

2021-12-23 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 少し隙間時間があったので、タクシー使って北海道立近代美術館を訪れました。北海道立近代美術館のコレクションからの西洋版画展がお目当てです。

 デューラー、レンブラント、ホガース、ゴヤなどの西洋画家の巨人たちの版画が展示されています。細部まで丁寧に描写された版画は、いったいどうやってここまで版画でできるのかとっても不思議。大雪のせいで訪問者もほとんどおらず、作品を独り占め、大接近可の鑑賞となりました。

《ホガースの侵略(イギリス):いろんな寓意が隠れてるらしいが、読み取れず》

 たまたまだと思うのですが、テーマにはキリスト教や戦争を描いたものが多く展示されています。デューラーが受難をテーマに連作しているのを見る一方で、ホガースやゴヤらは、英仏や仏蘭西・スペインの戦争を描き、拷問、処刑など勝者が敗者に対していかに極悪非道な行為等を行ってきたかが描かれており、人間の罪深さに思いが及びます。

 1時間にも満たない滞在でしたが、出張先の隙間時間活用としてはこれ以上は無いぐらいの満足度でした。

《美術館の外は大雪》

2021年12月18日訪問

PS:タクシーの運転手さんから、「お客さん、今日東京に帰るんだったら、2,3時間前には空港に行く感じで予定たてたほうが良いよ。飛行機よりも電車のほうが雪で止まるからね。」とのアドバイスを踏まえ、ビジネス・ランチは短めに済ませ、空港に向かいました。運ちゃんの言う通り、エアポート快速は、間引き運転かつゆっくり運転で、通常の倍以上の時間がかかり、飛行機出発ぎりぎりであせりました。冬の北海道、要注意です。

 


《雪少なく、太陽も照らす新千歳空港:内陸の千歳と日本海側の札幌は全然天候が違うことを初めて知りました》


《夕闇の富士山が美しい》

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まもなく会期終了のためお見逃しなく: 「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展(後期展示)@府中市美術館

2021-11-25 07:30:25 | 美術展(2012.8~)


 会期前半に一度訪れた美術展ですが、見応えたっぷりだったのと、後期は展示がかなり入れ替わるので、再度訪問。中世以後の日本と欧州における動物の絵を観賞することで、人間と動物との向き合い方、考え方が浮かび上がる展覧会です。

 日本画は相当数の作品が入れ替わっていて、2度目であっても、とっても新鮮に観ることが出来ました。和洋の作品が並ぶと、自然、和の作品により共感する自分に気付くのも面白い感覚です。おおらかで、緩くて、暖かい絵が多い日本の動物の絵を見ていると、「共生」の発想は日本のがずっと先輩なのがわかります。
 
 前期のチケットで入場料が半額になるのも嬉しいです。今週末までの会期ですので、時間のある方はお見逃しなく。

 絵を見たあとは、府中の森公園を散策。青空に輝くように映える紅葉が見事でした。

2021.11.23 訪問







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開館20周年記念企画に相応しく見応え満点! 「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」 @府中市美術館

2021-09-26 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 ユニークで興味深い企画展が多く、ちょくちょく足を運んでいる府中市美術館を訪れました。今回のテーマは、「日本は動物の絵の宝庫」として、「かわいい、面白い、美しい……理屈抜きに楽しめる作品が山ほど」ある動物の絵を「西洋の絵とも比べることで、この土壌を育んだ背景や歴史を探ります」(美術展HPより)という内容です。府中市美術館の開館20周年記念の位置づけですが、それにふさわしい見応え満点の展示でした。

 仏教の教えの影響で、動物も人間も同じ命を営む仲間として捉えた日本とキリスト教の教えで神があらゆる動物の頂点に人間を創ったと考えた西洋の発想の違いが、絵画に如実に表れているが良く分かります。涅槃図で描かれた釈迦の臨終を悲しむ動物たちや鳥獣戯画などの日本の絵画に描かれた動物たちには、時代を超えて、親近感がわくし、共感します。動物たちは常に私たち人間は、様々な違いがあるのは自明なのですが、同じ線上の立ち位置の違いにしか過ぎません。

 涅槃図の一つ一つの動物を見ていると時間が経つのを忘れるほどですし、幼児の時の絵本にあったような気もする桂ゆきの動物たち、丸山応挙の文句なしの可愛い犬、徳川家光のミミズクなどなど、動物好きとは決して言えない私でも、ほんわか和む気持ちになりました。

 西洋の動物の絵が全てとは言いませんが、象徴としての意味あいであったり、従うものであったり、愛玩ではあっても人間とは明確な一線が引かれているように見えます。なので、むしろ描かれた動物を見るというよりは、絵そのものを楽しむ感じでした。モローの一角獣やマリヌス・ファン・レイメルスワーレ派、デューラー、ティチィアーノらの絵・版画に描かれた聖ヒエロニムスの絵(ライオンがお供にいる)、フランソワ・ミレーのバターつくりの女(猫がじゃれついている)などが個人的にはお気に入りでしたが、ゴーギャン、ピカソ、シャガール、フジタなど動物も描かれた絵が展示されています。

 そして、この美術館でいつも感心するのが作品解説。作品の見方や背景が分かりやすく、しかも興味を引くように記載されており、実に秀逸。ついつい読み込んでしまいます。実はそれ故に、絵を鑑賞するよりも解説に気が行き過ぎたり、見学時間が想定上に長引くと言ったことになるので、気を付けましょう(笑)。お勧めは、図版を購入して、解説は家でゆっくり読むことでしょうか(決して、美術館関係者ではありません)。

 コロナ禍で美術展にも足が遠のいている今年の前半でしたが、それを挽回するに十分な量と質と満足度があった展示でした。後期に作品も相当数入れ替わるようですので、是非、今一度足を運びたいと思います。自信もってお勧めします。
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巣ごもり脱出し、箱根・ポーラ美術館へ:「フジタ-色彩への旅」展など、おもろい企画が山盛り

2021-07-26 07:30:19 | 美術展(2012.8~)

〈美術館入口〉

「感染防止のため家に居ろ」と知事様は仰るものの、正直、もういろんなダブルスタンダードにはあきあきしているし、基礎疾患枠でワクチン接種も終了したので、4連休を使って久しぶりに箱根のポーラ美術館を訪れた。この美術館、箱根の緑豊かな環境、陽光を一杯に取り込んだ明るく開放感ある館内、興味深い企画展と、3点揃った魅力あふれる美術館で、お気に入りである。今は、「フジタ-色彩への旅」と題して、「フジタの旅と色彩の変達に焦点をあて、フジタの画業の展開と生涯の旅路」を紹介する企画展を開催している。



フジタの個展は以前もやっていたので、同館所有の作品を中心に見たものも多かったが、切り口が違うとまた異なった角度で作品を楽しむことができる。今回、初見の作品では、特に面白かったのは2点。一つは、フジタが世界を巡る旅の中でとった写真。1930-1940年代に撮影されたものがモニターで画像に紹介されている。子供や建物など、フジタが旅先で興味を持った対象物が興味深い。

2つめは、戦後、フジタの渡米を助けたフランク・シャーマンへあてた手紙。フジタの米国での生活がイラスト付きでつぶさに報告されている。「君江(奥さん)はレスリングを観るのを怖がっている」、「マディソン・スクエア・ガーデンにロデオ・ショーを観に行ってとっても興味深かった・・・」などなど、イラストがまたユーモアに満ちていて、ニューヨークでの生活をフジタが楽しんでいるのがビビッドに伝わってくる。人としてのフジタに触れられる。

このフジタ展以外にも、ポーラ美術館のモネ・コレクションから建築家中山英之による展示空間の中で紹介する「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」など面白企画がある。私のお勧めは「ラファエル・コランと黒田清輝―120年目の邂逅」。黒田清輝がパリで師事したコランの《眠り》(長年所在が不明だったが、数年前、パリ市内で発見されたとのこと)とその影響を受けたとされる黒田の《野辺》が並んで展示してある。類似点と相違点を見比べるのが楽しい。


〈左がコランの《眠り》、右が黒田の《野辺》。写真では繊細なタッチが全く映ってないのが残念〉

4連休中ということもあってか、今まで経験のないほどの来訪者だったが、それでも広い館内でゆっくり、涼しみながら美術鑑賞できる。ちょっとしたリゾート気分も味わえ、お勧めだ。


〈明るい館内〉
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臨時休館のまま無念の閉幕: コンスタブル展 @三菱一号館美術館

2021-06-03 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


まさか緊急事態宣言がここまで延長されるとは想定できなかった人が多かったのではないでしょうか。私自身は4月に宣言直前に1度訪れたものの、再訪問した上で感想をブログに掲載しようと思っていたのですが、当初予定どおり5月末で会期終了となってしまいました。

コンスタブルは、英国では同世代のターナーと並ぶ人気画家ですが、私はロンドン駐在時に初めて知りました。素朴で温かみのある画風に強く魅かれ、コンスタブルが育ち、多くの風景を描いたフラットフォードの地も訪れました。今回はテート美術館の所蔵品から約40点と、同時代の画家の作品20点ほどを加えた美術展でした。コンスタブルの世界を満喫できるものだっただけに、本当に残念です。以下、4月に訪れた際の感想となります。

コンスタブルが描く絵は、フラットフォード、ハムステッド、ブライトン、ソールスベリーなどなど、私が体験したイギリス風景そのものであり、心象風景でもあります。4年程の生活経験の私でさえこうなのだから、イギリス人にとってはコンスタブルの風景画そのものがイギリスの原風景なのだと想像します。人気があるのもわかります。


《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816-17年、油彩/カンヴァス、101.6×127.0cm、テート美術館蔵

風景画の中には、その地の人々が描かれることが多いです。人の表情までは判別できないのだけど、その動作や姿勢が、時間が止まった風景であるにも関わらず、人の息ぶきや時の流れが刻印されてます。一枚の風景画から物語が感じられます。

どの風景画にも雲があるのも特徴的です。イギリスを訪れた多くの人が感じると思いますが、イギリスの雲はとっても多様な顔を持っています。1日何回も表情、機嫌が変わります。描かれた雲を見て、当地の空気、風に思いを馳せるのも楽しいです。


《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年、油彩/カンヴァス、50.8×76.2cm、テート美術館蔵

三菱一号館美術館のコンパクトで落ち着いた佇まいもコンスタル展にぴったりでした。会場は週末ということで、お客さんも混み過ぎず、空き過ぎずで入っていて(若い人が多いのが印象的だった)、静かな心休まる時空を満喫できました。

ファンとしては、また是非、個展の企画をお願いしたいところです。
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「THIS IS JAPAN」永遠の日本美術の名宝展 @東京富士美術館

2020-11-28 15:08:42 | 美術展(2012.8~)

東京西部八王子市の創価大学キャンパスに隣接した東京富士美術館で開催中の「THIS IS JAPAN」展を訪れた。何度か訪れている美術館だが、郊外の立地であるので小旅行気分で、空間的にも時間的にゆったりゆっくり鑑賞できるので、お気に入りである。今回の企画展は」「THIS IS JAPAN」展とのタイトルで、同美術館所蔵の日本美術の名品を展示している。

「キモカワ」、「サムライ」、「デザイン」、「黄金の国」、「四季」、「富士山」という切り口で様々な日本美術が鑑賞出来る。時代的にも、桃山時代、江戸時代から明治、昭和に至るまで幅広い。それぞれの作品に、西洋ものとは異なった日本特有の感性を感じて興味深い。

写真も原則OKなので、いくつか気に入った作品を撮影。


 伊藤若冲〈象図〉


 曾我蕭白〈亀寿老図(亀仙人)〉


海北友雪〈源平合戦図屏風〉 


源平合戦図屏風の義経の鵯越の逆落とし部分(上部)

 

以前も紹介した気がするが、この美術館、常設展にもルネッサンス期からの西洋絵画史が一望できる作品を有していて、常設展目的で訪れても十分なぐらい。こんな名品群を所蔵している東京富士美術館というか、バックの創価学会の財力に恐れ入るばかりである。

明日の11月29日までです。

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