その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

青年団若手自主企画 伊藤企画 『アリはフリスクを食べない』 作・演出:伊藤 毅 @アトリエ春風舎

2014-10-04 09:01:01 | ミュージカル、演劇



 8月の「ヒューマン・エラー」に続いて、青年団若手自主企画のお芝居を会社帰りに見に行きました。今回の劇場は、アトリエ春風堂というところで、東京メトロ有楽町線の「小竹向原」という駅から徒歩3分のところにあります。19:00開演に合わせて18:30には下車したのですが、10月に入りもう既に廻りは暗いし、案内表示もないので、閑静な住宅街の中から探し出すのは、結構苦労しました。辿りつけないんではと思ったぐらい。フーフー汗をかきながら、3分のはずが15分かけてなんとか到着。

 普通のマンションと言うか、アパートというか、雑居ビルのような建物の地下1階にあるアトリエ春風堂は、アゴラ駒場劇場よりも更に狭く、座席数は30程しかありませんが、手が届くような距離に舞台があり、客席もそれなりの余裕があって感じのよいシアターです。文字通りアングラ劇場。入場したら、既に今回の主役級のお兄さん役をやる石松さんが、舞台上でTVゲームに耽り、開演前からこれからの騒動の始まりを予感させます。

 お話は、軽度の知能面での障害を持つ兄とその弟、そして兄弟を取り巻く友人・恋人達の騒動です。ユーモアも交じるものの想定外のシリアスなヒューマンドラマでした。今回は全くストーリーが未知であったこともあって、次の展開が読めず、ドキドキしながら、舞台に釘付けの90分となりました。

 障害者役の石松さんと女友達/恋人役(?)の舘さんのペアが好感度大でした。お二方とも独特の雰囲気を持つ役者さんです(尤も舘さんは演出家の方が本業のようですが)。石松さんは「ヒューマンエラー」でも情緒障害の少年(少女)を演じていましたが、外見の2枚目で外交的なイメージとは異なる内省的で傷つきやすい役柄が上手いですね。舘さんは、どこまでが役柄で地なのかが、良く分からない程のテンポやリズムがあり、私にはとっても好みでした。物語後半ちょっと重いストーリー展開になっていたのを、最後のクロージングで、この二人が、ホンワカ明るい将来を期待させる内容になっており、この物語のその後がとっても気になります。

 弟役の海老名理さんは、堅実で誠実な演技で、兄と結婚相手との板挟みになって、苦渋の決断を迫られる弟を演じてました。自分だったらどうするかって、自分もかなり感情移入。そのほかの俳優さんも個性豊かで、其々のキャラが立って楽しませてくれます。

 今回は普段は俳優さんである伊藤毅氏の初演出作品とのことです。プロットや脚本も自然でありながら、観客の想像力を想起させるつくりになっていて面白かったし、舞台作りも凝って作りこんでありました。気になった所と言えば、タイトルの意味(暗喩)が良くわからない、登場人物のひとりであるマンションの隣人の必要性などがありましたが、良く出来た処女作だったと思います。また、次作を期待したいです。



《開演前の様子》


2014年10月3日 観劇

青年団若手自主企画 伊藤企画
アリはフリスクを食べない
作・演出:伊藤 毅

出演
長野 海 石松太一 伊藤 毅(以上、青年団) 
舘そらみ(ガレキの太鼓) 海老根理(ガレキの太鼓)
横島 裕(電動夏子安置システム) 江原大介(elePHANTMoon) 朝比奈竜生(無隣館) 中本 恵

スタッフ
照明:伊藤泰行
音響:泉田雄太
制作:伊藤企画
舞台:澁澤 萌
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)

日時
2014年9月26日[金] - 2014年10月5日[日]

アトリエ春風舎

コメント (2)
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