その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ノセダ、N響/ショスタコーヴィチ交響曲第8番

2023-06-18 07:39:31 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

湿度低く爽やかだが夏の太陽を感じる暑い夏日。

Aプロに続くノセダさん指揮のCプロは、ショスタコーヴィチの交響曲第8番の1本勝負のプラグラム。私には全く初めて聴く楽曲。

作曲の時代背景から第2次世界大戦を色濃く反映した作品のようだが、質量ともに重く暗い。

ノセダさんとN響の演奏は感情的になりすぎず、機能的なところを磨き上げることで、この楽曲の重みを自ら語らせるという印象だった。それでいて、私にはプログラムノートの影響からか、戦争シーンが常に瞼に浮かんだ。戦争と言っても、戦闘ではなく、(随分前に観た映画なので記憶頼りだが、)カール・ポランニーの「戦場のピアニスト」で描かれたモノトーンな廃墟の世界だ。

ノセダの強いWillを感じる指揮の下、N響のアンサンブルやイングリッシュ・ホルン、ファゴット、ヴァイオリン、チェロ等の個人技も素晴らしく、聴きごたえ抜群。NHKホールの大きさを感じさせない迫力の演奏だった。

物悲しく消え入るように終わるフィナーレでは、聴衆も固唾をのんでステージを見守り、ステージと聴衆席が息を合わせて演奏を終えた。終わりが見えない今のロシア・ウクライナ戦争の最中、指揮者、プレイヤー、聴衆、夫々にどんな思いの中、音楽の終わりを感じたか、聞いてみたかった。そして、今の戦争を背景にどんな音楽が生まれうるのだろうかという思いも生まれる。

大きな拍手の中、チェロの首席藤森さんが花束・プレゼントの贈呈を受けていた。御定年のようである。藤森さんの熱い気持ちの入った演奏には何度となく感動させられたので、驚きと感謝と残念な気持ちを交じえて、私も強く拍手を送った。

第1987回 定期公演 Cプログラム
2023年6月17日(土) 開演 2:00pm(休憩なし) [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

PROGRAM
曲目:ショスタコーヴィチ/交響曲 第8番 ハ短調 作品65
ARTISTS
指揮:ジャナンドレア・ノセダ

No. 1987 Subscription (Program C)
Saturday, June 17, 2023 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall

Program
Shostakovich / Symphony No. 8 C Minor Op. 65
Conductor: Gianandrea Noseda


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