今年前半に石山恒貴氏の『定年前と定年後の働き方~サードエイジを生きる思考』 (光文社新書、2023)を読んで、「ジョブクラフティング」という考え方・手法が紹介されていたので、読んでみた。
ジョブクラフティングとは「みずからの仕事体験をよりよいものにするために、主体的に仕事そのものや仕事に関係する人たちとのかかわり方に変化を加えていくプロセス」(p.14)のことである。ジョブクラフティングには、業務クラフティング(業務の内容や方法を変更する)、関係性クラフティング(人との関係性の質や量を変化させる)、認知的クラフティング(仕事に関わるものの見方を変える)の3つの手法がある。公私ともどもに環境変化が起こり得るミドル・シニア社員には、特にジョブクラフティングのマインドややり方が、仕事へのやりがいや生活の充実につなげる有効な方法となる。本書はその具体的なやり方を、さまざまなフレームワークらとともに指南する。
読者の立場にたったとっても良心的で優しい記述で、内容理解も非常に分かりやすいので、仕事への向き合い方に悩むシニア社員にお勧めしたい。私自身、新しい知識や気づきがあったし、多数のシニア社員やその予備軍が在籍する私の職場においても、紹介したい考えでありアプローチだ。
私にとっての学びを列挙すると、
・上記のジョブクラフティングの3つの形式には、縦軸に「仕事の変化の性質」を置き「物理的変化/認知的変化」、横軸に「変化させる対象(変化する境界)」を「タスク(業務)境界/関係的」の4象限に分けて考えると分かりやすい。物理的変化が期待できるタスク的境界は「業務クラフティング」、物理的変化だが関係的境界では「関係性クラフティング」、認知的変化によりタスク境界や関係的境界に変化を与えるものは「認知的クラフティング」となる
・ジョブクラフティングを進める上でマインドがとっても大事になる。例えば、「MUST」、「CAN」、「WILL」のフレームワークがあって、CANとWILLが揃って初めてWillの実践(Jジョブクラフティング)に結びつく。
・業務を、投入時間の「多い/少ない」、自分のエネルギー「得られる/放出する」の2軸4象限に分けて棚卸(エネルギー・マッピング)する。そのうえで、「投入時間大×エネルギー放出」と「投入時間小×エネルギー獲得」の2つの象限をクラフティングの優先度の高い業務とする
・仕事に「自分の一匙を入れる」ことの大切さ
・ひとりよがりなジョブクラフティングのやりすぎは周囲との軋轢につながる恐れもあるので注意する
まあ、当たり前の話だが、この手の指南書は読んだだけでは何も得るものは無い。机に座って、自らを省みる作業が必須だ。まずは、その時間を作って、考えてみることにしよう。