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いささか時機に遅れた感がありますが、NHKの経済ドラマ「メイドインジャパン」の最終回の感想を。
「テレビ60年記念ドラマ」と銘打ったこのドラマは、戦後日本の成長をけん引してきた家電メーカータクミの再生に賭ける企業戦士たちの物語です。パナソニック、シャープ、ソニーなど日本を代表する家電メーカーが軒並み経営不振に陥っている日本には、ドンピシャのタイミングでの旬なドラマでした。圧倒的な規模の経済で成長する中国メーカーとの競争、知的財産の流出、日本のものづくりの価値、考えさせられるテーマが満載です。
しかし、第3回となる最終回は少々がっかり。1,2回とリアリティ溢れる状況設定、人物描写だったのですが、クライマックスへのストーリー展開があまりにも現実離れかつナイーブすぎました。例えば、タクミからの技術盗用を疑われる中国のメーカー・ライシェの記者会見シーン。ライシェの技術トップに転身した迫田の対応は、自己の説明でありこそすれ、会社としての会見になっておらず、プロフェッショナルな企業人の対応としてはありえないです。
また、日本に帰国する迫田が中国の工場で中国人従業員と別れを告げるものの、迫田を裏切りもの扱いする中国人従業員に向かって、主人公矢作が迫田をかばうシーン。「彼は技術は裏切っていない。技術を裏切らないということは、国に関係なく必要なものです」という訴えですが、日本に追いつき追い越せの中国の人たちにこのメッセージが伝わると思っているのでしょうか?日本人の私でさえ、白けてしまうのに。
ついでに、ドラマの最後を結ぶ科白「・・・私たち日本人そのものがメイドインジャパンなのだから」は全く意味不明でした。
所詮はドラマだから「あり得ない!」といきり立つのは大人げないので、この程度にしておきますが、私が感じた一番の違和感は、ドラマのメインテーマである「技術」「ものつくり」です。
デジタル化が進んだ今の世界では、「技術」や「ものづくり」の捉え方、定義そのものが変って来ています。しかしながら、このドラマで登場人物がこだわる技術は、アナログの技術そのものです。「デジタル化の中での、メイドインジャパンの技術とは?ものつくりとは?」が問われないこのドラマは、最新のトピックを扱いつつ、「3丁目の夕日」のような昔は良かった的なノスタルジックで中途半端なドラマに終わっていたのが、残念です。
実力俳優陣の熱演でドラマとしては、迫力満点で良くできています。私としては、唐沢寿明のスーツ、シャツの着こなしが気になってしょうがありませんでした。あんな風にスーツを着てみたい・・・
テレビ60年記念ドラマ 「メイドインジャパン」
【放送】2013年1月26日(土)スタート [連続3回]
総合 土曜 午後9時00分〜10時13分
【作】 井上由美子
【音楽】島邦明
【出演】唐沢寿明 高橋克実 吉岡秀隆 國村 隼
平田 満 マイコ 斎藤 歩 中村靖日 金井勇太
大塚寧々 酒井美紀 キムラ緑子 刈谷友衣子
及川光博 岸部一徳 ほか