その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

雪で行けなかった人は大残念  N響 Aプロ/ 指揮:尾高忠明/ シベリウス・プログラム 

2014-02-11 07:44:55 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 前日は20年ぶりの大雪に見舞われた首都圏。溶けた雪が残り足元が滑る中、N響2月Aプロへ行きました。この日は、シベリウスを得意とする尾高さんによるシベリウス・プログラム。私の大好きな「四つの伝説」がメインで、以前から楽しみにしたものです。雪の影響か、聴衆は7割ほどの入りでしたが、前日の寒さを吹き飛ばす熱い演奏会でした。

 弦楽器の美しいアンサンブルが印象的だったアンダンテ・フェスティヴォに続いては、ヴァイオリン協奏曲。独奏のワン・ジジョンさんを聴くのは初めてです。サッカーのオランダチームのような、鮮やかなオレンジ一色のドレスで現れたワン・ジジョンさんの音色は、情熱的ではあるけど、しつこくない。取りにようによっては没個性的で教科書のような演奏にも聞こえますが、私には自然で誠実な音として胸に響きました。不思議に一つ一つの音が無色透明のまま、体に浸み入る感覚で、私のその日の周波数にぴったりとチューニングされた感じ。相性ってあるんでしょうね。とても幸せな気分に浸ることができました。

 休憩後の、シベリウスの「四つの伝説」。個人的にも色んな思い出が詰まった曲です。有名な「トゥオネラの白鳥」は池田さんのイングリッシュ・ホルンの音色がいつもながら美しい。確か、5,6年前にこの曲だけで定演で取り上げられ、池田さんのソロを聴いた覚えがありますが、その時よりも更に色艶がある音色に聞こえました。

 そして、私にはそれ以上に、呼応するチェロの音色の奥深さに痺れました。私の座席の角度からは誰だか良く分からなかったのですが、向山さん?物悲しいが、優しく、包み込むような音に、すっかり物語の世界に自分を引き込まれてしまいます。

 指揮の尾高さんはさすがシベリウスを知り尽くした感じ。この曲の神秘さ、スケール感を縦横無尽にN響から引き出します。実は、恥ずかしながら、日本を代表する指揮者である尾高さんも私にとっては初めてだったのですが、学者さんっぽい知的さと熱い情熱を併せ持った指揮ぶりは引き込まれますね。この曲、もっと土っぽいというか、更に重心が低い演奏を聴き慣れていたのですが、尾高さんの曲つくりはより見渡しが良く、明快なものに聞こえました。

 この日は私の両隣とも空席でとってもリラックスしながらの鑑賞だった上に、充実した演奏を聴けて大満足。5時でもまだ明るさが多少残り、陽が伸びつつあるのを感じながら幸せ気分いっぱいでNHKホールを後にしました。



≪開演前のNHKホール前。労働組合系の政治団体がデモ中≫


≪終演後のNHKホール≫



NHK交響楽団
第1775回 定期公演 Aプログラム
2014年2月9日(日) 開場 2:00pm

NHKホール

シベリウス/アンダンテ・フェスティヴォ
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
(アンコール: ラフマニノフ(ジンゴールド編)/ヴォカリーズ)
シベリウス/交響詩「四つの伝説」作品22 「レンミンケイネンと乙女たち」「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレンミンケイネン」「レンミンケイネンの帰郷」

指揮:尾高忠明
ヴァイオリン:ワン・ジジョン


No.1775 Subscription (Program A)
Sunday, February 9, 2014 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Sibelius / Andante festivo
Sibelius / Violin Concerto d minor op.47
Sibelius / Four Legends”, sym. poem op.22 ‘Lemminkäinen and the Maidens of Saari’ ‘The Swan of Tuonela’ ‘Lemminkäinen in Tuonela’ ‘The Return of Lemminkäinen’

Tadaaki Otaka, conductor
Zhi-Jong Wang, violin
コメント (3)
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