タイトルロールのアレクシア・ヴルガリドゥさんの熱演を初めとした歌手陣、オケの情熱的かつ安定したパフォーマンスで素晴らしい「蝶々夫人」でした。
アレクシア・ヴルガリドゥさんは、初日の公演を体調不良でキャンセルしていたので、出てくれるのかどうか気が懸りだったのですが、今日は無事出演。日本人から見ると西洋人の蝶々さんは何かと気になる(障る)ことが多いのですが、アレクシア・ヴルガリドゥさんはかなり良い線いってました。なで肩で和服も似合うし、所作もしっかり稽古してる感じ。そして何よりも、初日キャンセルしてしまったせいか、とっても気合が入っているのが4階席からも十分見て取れました。声も美しく、ピンカートンとの愛を信じつつも、裏切られるけなげな蝶々さんに幾度か思わず涙がこぼれてしまいました。この方、ギリシャの方のようですが、今日の舞台姿は、吉永小百合さんと沢口靖子さんを足して2で割ったようなチャーミングな美人さんで私的にもとっても好み。
※この日のヴルガリドゥさんの舞台写真が新国立のホームページで掲載(こちら→)
ピンカートン役のミハイル・アガフォノフさん、シャープレス役の甲斐栄次郎さんも美しい声がよどみなく劇場に響き渡り、ブラボーです。目立つ役柄ではありませんが、スズキ役の大林智子さんも堅実な歌唱で舞台が締ります。
私の席からは全く指揮姿は見えなかったのですが、女性指揮者のウィルソンさんと東響の音楽も迫力満点でした。個人的には「蝶々夫人」はもう少しねっとりした演奏が好みですが、スケールと切れの良さが引き立つ演奏で、これはこれで素晴らしい。カーテンコールで舞台に上がったウィルソンさんを観たら、細身で身長の高いこと。映える方です。
演出は栗山民也氏。昨年、「リア」の演出が素晴らしかったので大いに期待していました。舞台は以外とシンプル。左手に階段を置き、センターに菱形に形取った家屋の居間。決して、何が悪いというわけではないですが、私には特に印象に残るものではありませんでした。
「蝶々夫人」はストーリーとしては正直好みではありません。蝶々さん、可哀想すぎるし、これ見ると、やっぱり「国家も人間も強くなって、舐められずに自立せねば、こうした悲劇はなくならない!」などと妙に力んでしまうのです。ただ、それにしても、いつもながら音楽の美しさ(私は特に第2幕1部終わりのハミングコーラスが好み)、蝶々さんの純粋さには涙してしまいます。いつも、私にはとっても複雑なオペラです。
2014年2月2日
【指揮】ケリー=リン・ウィルソン|Keri-Lynn Wilson
【演出】栗山民也
【美術】島 次郎
【衣裳】前田文子
【照明】勝柴次朗
キャスト
【蝶々夫人】アレクシア・ヴルガリドゥ|Alexia Voulgaridou
【ピンカートン】ミハイル・アガフォノフ|Pinkerton:Mikhail Agafonov
【シャープレス】甲斐栄次郎|
【スズキ】大林智子
【ゴロー】内山信吾
【ボンゾ】志村文彦
【ヤマドリ】小林由樹
【ケート】小野和歌子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団