第28話 食わず嫌い(相撲観戦)

2005年03月14日 01時24分27秒 | Weblog

 春は曙。
今から11年前、平成6年大相撲三月場所のパンフレットの表紙。
曙が横綱、若乃花・貴乃花・貴乃浪・武蔵丸が大関の時代。

スポーツ観戦好きもーちゃんに誘われて、相撲を見に、難波の大阪府立体育館に向かう。
相撲案内所で、いす席入場券を提示すると重い手提げ袋(力士柄!)をもらって、いざ入場。
席につくと、手提げ袋の中身を確認。お菓子に、ビール飲み物、お弁当、お土産物まで!
すべて力士の絵柄つき!!
見渡すと客の入りは序の口。広い体育館に私たちと数人のみ、不安になり、もーちゃんに尋ねる。
「幕下の取組では、まだお客さん少ないねん。徐々に増えていくから」
そう…相撲はテレビでしか見たことがなかった私。
塩をまき、四股を踏み、にらみあい、相撲をとるまで果てしなく長く感じて…退屈なスポーツだった。

下の土俵を見下ろしながら、幕内までの先の長さに、ぺちゃくちゃむしゃむしゃしていた。
途中、館内を散策にでるも、さすがもーちゃん、力士の出はけにあわせていた。
初めて間近に見る力士の大きさに驚き、残るびんづけ油の香りにうっとり。いい匂い…。
席に着く、しばらく観戦、席をたつ、廊下で出待ち、席に戻るを繰り返しているうちに、
十両土俵入り、会場の客数が増えている。

廊下で「ねえ、もーちゃん、あの人、誰?」
「琴の若」
「素敵だね」

午後四時、広い体育館全席満員御礼、いよいよ幕内土俵入り、歓声が飛び交う。
若様貴様、さらに高まる。横綱土俵入り、会場は熱気に包まれる。
こ、これは幕下と明らかに違う!これが幕内!!
塩をまく個性、四股を踏む美しさ、にらみあいの中で高まる緊張感、相撲を取り始めた瞬間、
会場に響く肉と肉のぶつかりあう音! 息つくことさえできないほどにのめり込む。
あ~この激しさ、テレビで見るインタビューの力士の息づかいの荒い理由を見た。
取組ごとに息づまる緩急繰り返し、観戦に力が入る。どきどきしてきた。
どきどき、どきどき、今だ!
「琴の若~」

狙いを定め、私も一声、響かせた。郷に入れば郷で楽しまなければ損!とばかりに、気持ちいい。
私はスポーツ観戦の焦点が同伴者もーちゃんとややズレている気がするが、それでもいい。
食わず嫌いだった私だが、生で味わって、その素材の持ち味を感じることができたのだから。
知ると、好きになることがあったのだから。
平面、横からしか見なかったものを、視点を変えて、上から見たり近くで見たりすると、
また違った面白さに気づくことがあるのだから。
観戦もライブがいい。

応援声援、興奮の中にいたのでしばらく気づかずにいたが、帰宅するとどっと疲れていた。
あぁ、そうだお土産!
中を開けると、中は赤、外は黒塗りに力士が描かれたお椀だった。
帰宅後も力士、相撲三昧だったその日を大笑い。
その後、もーちゃんの好きな北の湖部屋の朝稽古まで見にいくこととなる。

追伸
相撲観戦土産のお椀で好んでうどんを食べていたのだが、
いつの頃からか描かれた力士達が一人二人と姿を消していき、
今では誰もいなくなった…。
無地のお椀に、この日の思い出が、のこった!のこった!
も一つ、のこった!のこった!私が初めて雄叫びを捧げた琴の若、現在、幕内現役最年長力士!とな。


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