第26話 思えば遠くへ来たもんだ

2005年03月12日 01時34分42秒 | Weblog

 書庫の高い位置にあるファイルをとろうとする私の背後で、
「あ、白髪!」
「えっ、どこに?」
「後ろ」
後ろか~…死角!

どんな時に結婚したい?
こんな時。
もしも私が結婚していたとしたら?…
「お、白髪!」
「えっ、どこどこ?」
「後ろ」
「うそ~ねえ、切って切って」 だんな様にはさみを手渡す。
「お前ももう白髪がでる歳か~(私、にこにこしながらしばし待つ)動くなよ。よし、切れた」
私は白髪を受け取り、にっこり「ありがと~」 笑。
あぁ待って!危ない妄想ではない。
このように無防備に背を向けることができるのがいいなと。

「あれ」を「あれ」して、と言うことがある。多くなってきた。注意しなければいけない。
世間では酒井順子著の『負け犬の遠吠え』が、ベストセラーになるものの、
読む勇気もなく、買って本棚に置いておくのも私の精神衛生上、よくない気がする。
でも、自分のことが書いてあるらしい。一度は読んでおくべきだろう…借りることにした。
ようやく、読めた。
すると、私に当てはまっている項目の少なさに、私のようなタイプの負け犬10ヶ条は?と不安になる。
私はキャリアウーマンといえるほど、できる女ではない。
専業主婦じゃなきゃ絶対嫌というのではない程度に共働き結婚願望の強い女だった。
ふぐを望んだわけでもない。立ち食いそばだって、全然平気、安上がりだし。
それなりに出会いと別れを繰り返してきて…いない。
残業していた。ほっと気をぬいた休日、寝込んでいた。
そんな本気で好きになれる人なんてそう簡単にあらわれるものでじゃないから…
いつかきっとを信じて何かが起こるのを部屋の中で待っていただけだ。
そんな自分を古風な女だと思い込んできた。
おしゃれでもない。化粧をしているのに、化粧したら?と言われるほど
メイク技術がない。眉も無法地帯だし…女を謳歌して生きてこなかった。どうしよう…
夢見がちで地味な負け犬の例がない!
負け犬は踊るらしい。ダンスを習ったことがある!よかった…当てはまる項目があって…。

時間は公平だ。
若さを失った分、やさしくなれた(ような気がする)
子どもができた時にどう報告するかも考えていた…ほど、
結婚願望が強かったあの頃に結婚していたら、私はどうしようもなくさみしくなったにちがいない。
残業が続く生活がどうなっていくかを知ったから、
「お帰りなさい。今日もお疲れ様でした」と一言添えることができそう。
演劇活動やこの随想録、不安な中でやっと見つけた私のもう一つの世界を見つけたから、
だんな様の好きな世界にやきもちをやくことも少なそう。
自分の好きを探してもがいてきた分、ネタが増えたから、共感できそう。
独りだったから、共有に感謝できそう。
弱さを知って謙虚になれたから、女としては今の方がいい気がするんだけどな~
…これはあくまで自己判定、日本人男性にうけるかどうかは…。

家に帰ってから、ご指摘の一本を探して、鏡とはさみの二刀流。
まわりのペースと異なる自分のペース。
仕方がない。
自分にうそはつけない。
しょうがない。そんな自分に一生つきあう覚悟を決めて、
時間がかかったけど、やっと切れた白髪は、ぴんと芯が強い。


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