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≪人質の朗読会≫ 小川洋子 です。最近、本を読むことがなく小さい字が見づらくな
ったせいもあるので、気軽に文庫本というわけにいかなくて字が比較的に大きいとなる
と一冊にかかる金額も倍になってしまいます。串本には大きな本屋さんがなくて
ぼんくらさんのようにじっくり手にして読みたい本を探せない。私もだいたいが本屋で
手にして帯や最初の何行かを読んで買うことが多いので、串本では「これ買おう」と
決める前に「まぁ今じゃなくてもいいか」と遠慮することばかり続いています。
でも本を読みたい気持ちはあるようで、新聞の新刊本紹介や書評を読み興味をもった
本はなんとかメモに残すようになりました。メモにしてもそれを持って本屋に行くこと
はないんだけど。今回の震災後 読売新聞にいつも載る長谷川櫂さんの『四季』という
写真付きの小さなコラムに目がいくようになり、それまではそこに載っている季節の
花だけを見ていたんだけど、横に書かれた俳句や短歌、古文に出てくるような和歌集か
らの抜粋に、長谷川さんの解説や意味が書かれて理解しやすかったのですが、震災後
長谷川さんの感情がたまに出るのがあって気になっていました。そうしたら読売新聞の
書籍紹介で≪震災歌集≫ 長谷川櫂著 というのが出た・・・とありました。
ぜひ読みたいと思い、これはネットで購入した方が串本より早いなと思って楽天ブッ
クスに注文。その一冊だけじゃなんだし・・書評に載っていてメモに書きだしたこの
≪人質の朗読会≫を選んだという、いわば私にしたらおまけの一冊でした。
本の帯にあるように はるか遠くの外国でたまたま日本人観光客が乗ったツアーバス
が反政府ゲリラに襲撃され、運転手を除く8人がバスごと拉致された・・というニュー
スが流れたところから話が始まります。こんな書き出しは好きです。ここで私の想像が
膨らみます。過去に日本人が反政府ゲリラや事件で海外で襲われたり、命を落としたり
した事件を思い出し、どうやって救出されるのか、そこには日本政府側の努力とか根回
しとか(現在の政府ならどうするやろ?とか思い描くんだけど)、するまえに事件は
不幸な結末となりみんな死んでしまいます、あっけなく。そこから日本人の記憶から
事件があったことも忘れ始めたころに、人質となった人達の不思議な朗読会の盗聴テー
プが公開されます・・・・(人質たちが突入作戦で犠牲になった現場は、銃弾を撃ち込
まれゲリラの反撃があり、犯人グループを全員射殺したけど犯人の仕掛けた爆弾で人質
が死亡。その現場に意味不明の文章が板きれに、テーブルの脚に、窓枠にと書かれたも
のが次々と発見された)こうなると ミステリアスな雰囲気が出てきます。
だけど違うのです。公開されたテープは 実は国際赤十字が差し入れた物資に秘かに
仕込まれた盗聴器で 拉致された8人がいた小屋の音声を録音したものをその盗聴作業
に関わった部隊の一人が、「これは作戦には関係のない部分」を遺族に「故人の最後を
しのぶせめてものよすがに」と個人の判断で渡されたもので、遺族を取材していたラジ
オ局の記者が、八家族から了解を得、テープの公開となった・・・
犯人に拘束されてはいたものの、救出を待つ長い人質生活でみんなでこの苦境を乗り
超えていこうと、なんでもいいから一つ思い出を書いて、朗読し合おう。思いつくまま
喋るのではなく、きちんと書き言葉にした方が正確に伝わる。書くための集中した時間
も持てる。出来栄えを競うのでなく、今自分たちに必要なのはじっと考えること、考え
るのはいつになったら解放されるのかという未来ではなく、自分の中にしまわれている
過去。未来がどうあろうと決して損なわれない過去。そうして人質の朗読会が始まった
観客は人質のほか、見張り役の犯人と作戦本部でヘッドフォンを耳に当てる男だけ。
ラジオ番組で≪人質の朗読会≫と題され八回にわたって放送された・・・
全部で九夜、九夜めはヘッドフォンの男の朗読だ。
読みながら「やっぱり小説だわ、登場人物が朗読する話がほとんどプロ級の書き言葉や
ん。人質全員、書き言葉を生業にしている小説家か!」と私は憤懣したのだよ。
そりゃ、小川洋子が書いた小説だから小説なんだけど、普通の人間がこんなに表現が
うまくできたら世の中作家だらけや。誰か一人 普通の今風の言葉で書いた人質はいな
いのか?虚の話がますます嘘っぽくみえる。それとも辺境の地に観光に行く人だから
凡人ではなく向学心もあり、何事にも落ち着いて構えられる人間たちだったのか?と
思ったのだ。アメリカ映画なんかは究極の状態になるときまって女性がヒステリックに
わめき、キャーキャー悲鳴をあげる。発散して解決できるわけでもないのにと思う、
だから日本人が震災であっても耐え忍ぶ姿に 海外メディアは感動する・・・このあた
りが原因かもしれぬ。そんな遺伝子がこの小さな国のここまでの活力というか、根源だ
たのかもしれません。
私は第七夜の 【死んだおばあさん】という話が印象に残っています。登場人物と
年齢がビミョーに近いのか、それとも少しホラーっぽい感じなのか、でも第一夜の
【杖】も好きだ。あ、これもビミョーに年齢が・・・。両方とも話し言葉に近いので
読みやすい。他はあまりにも登場人物が立派な言葉で書き表し、朗読したため字だけ
追うという本を読む楽しみが半減したような感じがしました(私の読後感やからね)
それにしてもだ、楽天ブックスに注文したのが5月の初め、届いたのが中頃、それも
第一に読みたい≪震災歌集≫が在庫なし・・・と届く直前にメールがきた。注文すると
きはどちらも3~5日で発送とあったような気がしたんやけど。どこでどう捜して送っ
てくるのかしらないけど、一刻も早く読みたいのにこれじゃね。以前アマゾンでも同じ
ように忘れた頃に届いたので、楽天ブックスにしたのに・・・・。
小川洋子は読売新聞で日曜版に掲載された≪ミーナの行進≫を読んだことがあります。
芦屋を舞台に二人の女の子(田舎育ちと芦屋育ち)の ちょっと不思議な生活でした。
時代が私の子供の頃と近いのですんなりと読んだ記憶があります。
最近、本を読んでいないので私は「脳が活性化してないのでは?」と思うことがあり
ます。活性化していないのでブログを書いていても、「なんかもっと表し方があるよな
気がする」と手が止まったり。なんだ、なんだ、そう構えてブログを書いたらなんの
面白味もないブログになるかもしれへん・・。私が小川洋子の小説で、気持ちにひっ
かかったトゲみたいな感じになるかもなぁ・・・。でも本を読むと知らない言葉や
表現の仕方が目に飛び込んでくる、あの感じが好きだと思えるのは 少し脳も動いてい
るせいかもしれん!