お姉ちゃんを育てていくことをイメージしたとき、私が考えた未来予想図。その一番には、今の形。すなわち共働き家庭が浮かんでいた。しかし、そのことを他人に話す度、無責任だと諭された。しかもなぜか障害児を育てている先輩ご家族ほどそうだった気がする。だから苦しんだ。
母親は家をまもり、人に預けて働くのは無責任。ましてや普通より手がかかる障害児を預けるなど言語道断という考え方。まだまだ耳にする。もしかしたら、自分達が自らのやり方で頑張ってきて後悔していないことの裏返しなのかもしれない。もちろんそれも一理あるし、今までのスタンダードなのかもしれない。でも本当にそうでなければならないのだろうか。
年に数家族のご両親から、BLOGをみて相談がある。そのほとんどはお母さんから。もしくはお母さんに頼まれたご家族から。
話してみると、悩みを抱えているのはほとんどの場合お母さん。本当に本当に悩んでいらっしゃる。気の毒なほど一人で抱え込み、苦しんでいるお母さんも多い。
障害をもって産まれた子を育てるには普通より気を使うし手もかかる。いろんなことに気をつけないといけない。お母さん一人で抱え込むと知恵がわかない。近くにアドバイスできる人がいない。とても苦しい。
人に預けるメリットはたくさんある。まずは、一対一の時間が短くなるから、その時間の密度を濃くして接することができるようになる。いろんな人がいろんな視点で娘のために。いろんなアプローチの仕方を試してくれる。アイディアをくれる。これは実はものすごく大きなこと。乳幼児期の成長発達に合わせた工夫ひとつが、娘のような場合には将来の当たり前を決めてしまうから。
お母さんの息抜きにもなる。
どうしても、家庭にいると1人で育児を抱えがちになるお母さんが働きに出ることにより、少し冷静になる時間が持てる。離れている時間のおかげで笑顔で子供に向かえる。
周りにたくさんの子供の応援団が出来てくる。一緒に悩み、相談しやすい環境が作りやすい。
かわりに大変であるのは、たぶん我が家が直面していること。
働いた上で全ての家事をこなしていては、お母さんの体力がもたない。お父さんや祖父母の強力なサポートがないと、仕事の後で子供に向き合えない。正直、体力的にも精神的にもきついと思う。
だったら誰かが負担を肩代わりすればいい。それは簡単にはいかないけれど。なんとかなるものだ。
あとは、働く環境。
急な対応や相談、頻回な受診などが必要な障害児のケアにおいて、家族の誰かが仕事を休んで対応できるような職場環境を構築できるか。そもそも勤めている組織としてそうした制度はあるのか。周りの職場の皆様の理解や協力が得られるのか。自分自身として精神のバランスを保てるのか。そういうこと。
それらさえなんとかできるなら。私が思うに、共働きはむしろ将来のために、娘たちのためにできる思い切った決断。そう思うのだ。
昔母が危篤になり、休みを取ろうとしたら会社に拒否された。「この会社にいたら家族の死に目に会えない」と目が覚めて退職。死に物狂いで勉強して公務員になった。家族のために残りの人生を使いたいと思った。公務員も働いてみたら、とんでもなく大変で忙しいけれど。周りの方々のおかげさま、どうにかやってこれている。今思えばあの決断がなかったら今のわたしはない。そう思うとなんだか運命さえ感じてしまう。
子供達が将来1人で生きていけるように、自分なりの自信を身につけられるように。その子自身の当たり前のレベルを上げてあげて、将来の選択肢を広くしてあげなければならない。
そうしたことを自分に言い聞かせながら。私たちにできることは、振り返らずに精一杯に娘たちに愛情を注いでいくこと。それにつきるのだろう。
どうか、私たちと同じように、共働きで障害をもった我が子を育てていく選択をしたご両親に届きますように。この記事を読んで、少しでも前を向いて歩くための力になるように。心から応援しています。
追伸
RATの記事リンク
先天性四肢障害(両足脛骨欠損症)の娘の父の子育て日記です。障害を持つ本人同士や両親の情報交換に。
コメント (2)
シベリアに抑留された日本兵の話として
教えていただいた言葉が、印象的だったので紹介させていただきます。
川村義肢製作所慶社長ブログより
“どんな境遇であろうとも
自主性を持って
仕事に取り組んだ時、
知恵も工夫も、そして
周りからの尊敬さえも得られ、
価値ある時間に
することができる”
この発想。ものすごく納得できます。
私自身、特に娘が生まれてから、制約が多数ある中で働いてきて思うこと。
好きな仕事を選べる人は幸せかもしれないが、どんな仕事についたとしても、自主性を持って取り組んでいくと意識が変わってくる。
そうなんだよなぁ。
義肢製作所や義肢装具メーカーさんの業務。
いろんな話は聞くけれど、大変なんだろうな。モチベーションを保つこと。既成概念を超えて信念を持って動くこと。言うほど簡単じゃないよなぁ。
一人一人の思いがうまく噛み合って、同じ方向を向けた時、力が生まれる。
いまだ、未熟で噛み合わせるための力量が足りず。
役に立てず申し訳ないなぁ。
先天性四肢障害(両足脛骨欠損症)の娘の父の子育て日記です。障害を持つ本人同士や両親の情報交換に。
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