徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

家庭でできる、子どもの風邪の治療法

2016年01月20日 06時59分19秒 | 小児科診療
 こんなニュースが目に止まりました。

■ 家庭でできる、子どもの風邪の治療法
ケアネット:2016/01/20、提供元:HealthDay News
 子どもが風邪をひいたとき、保護者は市販の咳止め薬や風邪薬を使わずに治療することを検討すべきだと専門家が警告している。米国小児科学会(AAP)によれば、処方なしに入手できる市販薬は、風邪薬や咳止め薬であっても、乳幼児に重篤な副作用を引き起こす可能性があるという。
 米国食品医薬品局(FDA)は2008年、4歳未満の小児に市販の咳止め薬や風邪薬を与えないよう勧告した。4~6歳の小児は医師の指導の下でのみこれらを服用し、6歳以上は用量指示に正確に従えば安全に服用できる。
 薬を使わずに、安全で便利かつ安価に実施できる治療法を紹介する。

1.鼻水が出る:ティッシュを使う。鼻水は吸引するか、鼻をかむ。抗ヒスタミン薬は風邪の症状軽減には役立たない。鼻水は身体のウイルス除去を助けるものだと理解しておくこと。

2.鼻づまりがある:生理食塩水の鼻スプレー、または点鼻薬で鼻をかみやすくなる場合がある。生理食塩水は、温かい水240mLに食塩2mL(ティースプーン0.4杯)を加えれば自宅でもつくることができる。

3.咳がある:生後3カ月未満の乳児は医師を受診すべきである。生後3カ月~1歳の乳児は、ティースプーン1~3杯の水やリンゴ果汁などを温めて1日4回与えるとよい。1歳未満ではハチミツを与えられないが、1歳以上なら必要に応じて小さじ1杯のハチミツを与える。コーンシロップでもよい。

4.咳が止まらない:温かいミストシャワーで、咳の発作を和らげることができる。

 小児の咳や風邪は治療が必要とは限らず、普段どおり遊んだり眠ったりするようであれば、市販薬も家庭療法も不要である。発熱は身体がウイルスと闘うのを助けるので、熱が102°F(約38.8℃)以上あるか小児が不快な場合のみ、治療すべきである。


 う~ん、悪くはないけど信じすぎると痛い目に遭うかも・・・いくつか注意点を記しておきます。

・アメリカでは乳幼児に対する「市販かぜ薬」を制限しているのであり、病院/医院で診察して処方される「処方薬」は制限していません。アメリカの市販風邪薬のシロップは日本のそれよりも濃度が高く、過量投与による事故が多発したために取られた措置です。
 「かぜ薬はすべて悪」という論調は、これを曲解したものですね。

鼻汁:抗ヒスタミン薬は鼻汁分泌を減らす薬剤であり、水のような鼻水が止めどなく流れる時は有効です。しかしそれほどではない場合、痰が切れにくくなるデメリットの方が目立つので、ずっと使う薬ではありません。

鼻づまり:生食スプレーはやり過ぎると粘膜を痛めますのでほどほどに。

・生後3ヶ月未満の赤ちゃんがをしている場合に小児科受診が必要としているのは、RSウイルスを想定したもの。急に悪化して無呼吸~顔色不良になることがあるからです。
 ハチミツは医薬品として登録されており、咳止め効果を期待して処方する小児科医もいますが、否定的な報告もあり、私はお勧めしていません。

咳が止まらない場合にミストシャワーでやわらぐのは乾いた咳/痰が切れそうで切れなくてつらい咳の場合です。痰の多い湿った咳の場合はかえってつらくなりますのでご注意を。

 ここまで書いてきて、漢方薬を使うとみんなよくなるのになあ、と感じます。
 漢方では水様鼻汁が止まらない時と数日経過して青っぱなと鼻づまりがつらい時期の薬を使い分けます。咳でも乾いた咳と湿った咳、ゼーゼーする咳の場合で薬が異なります。

 当院では一般の西洋薬のかぜ薬でよくならない患者さんに漢方薬をお勧めしています。
 「乳幼児に漢方を飲ませる」というハードルを乗り越え、効果を実感したお母さんはリピーターになりますね。
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