「マリア様がみてる」最新刊「大きな扉 小さな鍵」、発売から今日で1週間経ちましたので、ぼちぼちネタばれ感想など書いてみようかと思います。
さて、タイトルからして、かたくなな瞳子の「天の岩戸開き」を髣髴させるもので、更に「瞳子の秘密が明かされる?!」との刺激的な帯。これだけ揃ったら祐巳と瞳子の関係がどう動くのかと、期待せざるを得ません。でも、本を開いて一番驚いたのが、冒頭の人物紹介で細川可南子が復活していることでした。実のところ、今回の出番はたった1ページ。少なくとも、「未来の白地図」で瞳子を拉致したときの方がよほど活躍していたようにも思えるのですが、1年椿組で孤立した瞳子に対してさりげなく好意を示す場面は、充分存在感のあるシーンだとは思いました。とはいえさすがにこれだけのために人物紹介が復活しているはずもないでしょうから、これはきっと次巻以降の大活躍が約束されているためなのか。いろいろと妄想たくましくするに足る復活劇でしたが、まさか編集で昔の絵がそのまま紛れ込んだとか言うような笑い話だったりしないか、とそれはそれで不安だったりもします。
今回は「キーホルダー」と「ハートの鍵穴」の2つの中編。前の方は乃梨子、祥子、由乃、それぞれの視点からの祐巳像語り。後編は瞳子視点で物語が一気に加速する話。
それぞれ読み進めるうちに違和感というか、今までと何か違う不穏な気配を頻々と感じました。それは、作者あとがきにもある通り、全体を通じて祐巳視点の話が皆無だったということで理解されるわけですが、それを加味しても、違和感をすべて納得することができませんでした。でも、何度か読み返しているうちに、それが語り手達によって描かれた祐巳の印象によるものだと理解されました。乃梨子、祥子、由乃、瞳子、間接的ではありますが柏木優の祐巳観も、中に加えても良いでしょう。それぞれに語られる祐巳の姿は、これまで慣れ親しんだ祐巳視点による自画像とはかけ離れた、大人びたミステリアスな存在なのです。それは、祥子が下校途中を記憶にとどめないほど祐巳の事ばかり考え込んでいたり、由乃が「一人で大人にならないで」と祐巳に懇願したり、乃梨子が祐巳に頼りきりだったり、瞳子が反発しつつもその言葉に従ってしまっていたりするなど、本の随所に現れます。一方、由乃が相変わらずのわがままぶり、志摩子まで公務よりも私欲を優先させたいつにないかわいらしさをかもし出している上、祐巳視点からは相当大人びて見える乃梨子まで、まだまだ年相応のゆれ具合を示してくれますし、祐巳の描かれようからすればずいぶんと大きな差が見られ、作者がそれぞれのキャラにあわせて書き分けている過程がなかなかに興味深く読めました。
ところでもう一つ、注目したのは、瞳子視点の時、瞳子の心の声では、既に乃梨子の事を呼び捨てにしている事。可南子はさん付けなので、明らかに扱いが違います。いつの間にそういう心境に至ったんでしょうね。
さて、もう既に一部のサイトで言及されているみたいに、今回は残念ながら二人の契りはなかったわけですが、それで幻滅したかというと全くそんなことはなく、十分にそれぞれの語りを堪能いたしました。
そしてラスト、それまでほとんどばればれながら本文中では抑えられていた、瞳子出生の秘密。それが本人の口から暴露され、そのために自分が祐巳に哀れまれているに違いないという思い込みが大きな誤解にすぎなかったことが判明するくだり。そして追い詰められてしまった瞳子に差し伸べられた、乃梨子という唯一の希望。一歩間違えればあざとさばかり目立ちかねない王道的展開も、ちゃんとカタルシスを味わえる感動のラストに仕上がっております、といっても、「マリみて」好きな私のめがねが曇っている可能性も無きにしも非ずですが。
ともかく次巻で展開されるに違いないバレンタインデーの宝探しへの伏線もちゃんと張って、次の本までわくわく感を維持しつつ待つことができそうです。・・・それにしても、紅薔薇は白薔薇に助けられる運命にあるんでしょうかね。
さて、タイトルからして、かたくなな瞳子の「天の岩戸開き」を髣髴させるもので、更に「瞳子の秘密が明かされる?!」との刺激的な帯。これだけ揃ったら祐巳と瞳子の関係がどう動くのかと、期待せざるを得ません。でも、本を開いて一番驚いたのが、冒頭の人物紹介で細川可南子が復活していることでした。実のところ、今回の出番はたった1ページ。少なくとも、「未来の白地図」で瞳子を拉致したときの方がよほど活躍していたようにも思えるのですが、1年椿組で孤立した瞳子に対してさりげなく好意を示す場面は、充分存在感のあるシーンだとは思いました。とはいえさすがにこれだけのために人物紹介が復活しているはずもないでしょうから、これはきっと次巻以降の大活躍が約束されているためなのか。いろいろと妄想たくましくするに足る復活劇でしたが、まさか編集で昔の絵がそのまま紛れ込んだとか言うような笑い話だったりしないか、とそれはそれで不安だったりもします。
今回は「キーホルダー」と「ハートの鍵穴」の2つの中編。前の方は乃梨子、祥子、由乃、それぞれの視点からの祐巳像語り。後編は瞳子視点で物語が一気に加速する話。
それぞれ読み進めるうちに違和感というか、今までと何か違う不穏な気配を頻々と感じました。それは、作者あとがきにもある通り、全体を通じて祐巳視点の話が皆無だったということで理解されるわけですが、それを加味しても、違和感をすべて納得することができませんでした。でも、何度か読み返しているうちに、それが語り手達によって描かれた祐巳の印象によるものだと理解されました。乃梨子、祥子、由乃、瞳子、間接的ではありますが柏木優の祐巳観も、中に加えても良いでしょう。それぞれに語られる祐巳の姿は、これまで慣れ親しんだ祐巳視点による自画像とはかけ離れた、大人びたミステリアスな存在なのです。それは、祥子が下校途中を記憶にとどめないほど祐巳の事ばかり考え込んでいたり、由乃が「一人で大人にならないで」と祐巳に懇願したり、乃梨子が祐巳に頼りきりだったり、瞳子が反発しつつもその言葉に従ってしまっていたりするなど、本の随所に現れます。一方、由乃が相変わらずのわがままぶり、志摩子まで公務よりも私欲を優先させたいつにないかわいらしさをかもし出している上、祐巳視点からは相当大人びて見える乃梨子まで、まだまだ年相応のゆれ具合を示してくれますし、祐巳の描かれようからすればずいぶんと大きな差が見られ、作者がそれぞれのキャラにあわせて書き分けている過程がなかなかに興味深く読めました。
ところでもう一つ、注目したのは、瞳子視点の時、瞳子の心の声では、既に乃梨子の事を呼び捨てにしている事。可南子はさん付けなので、明らかに扱いが違います。いつの間にそういう心境に至ったんでしょうね。
さて、もう既に一部のサイトで言及されているみたいに、今回は残念ながら二人の契りはなかったわけですが、それで幻滅したかというと全くそんなことはなく、十分にそれぞれの語りを堪能いたしました。
そしてラスト、それまでほとんどばればれながら本文中では抑えられていた、瞳子出生の秘密。それが本人の口から暴露され、そのために自分が祐巳に哀れまれているに違いないという思い込みが大きな誤解にすぎなかったことが判明するくだり。そして追い詰められてしまった瞳子に差し伸べられた、乃梨子という唯一の希望。一歩間違えればあざとさばかり目立ちかねない王道的展開も、ちゃんとカタルシスを味わえる感動のラストに仕上がっております、といっても、「マリみて」好きな私のめがねが曇っている可能性も無きにしも非ずですが。
ともかく次巻で展開されるに違いないバレンタインデーの宝探しへの伏線もちゃんと張って、次の本までわくわく感を維持しつつ待つことができそうです。・・・それにしても、紅薔薇は白薔薇に助けられる運命にあるんでしょうかね。