かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

どうやら梅雨も明けたみたいですが、暑い夏になりそうでそれはそれで少々憂鬱です。

2010-07-16 23:08:10 | Weblog
 先程、気象庁のサイトで最新の天気図を見たら、梅雨前線がほとんどなくなっていました。どうやら梅雨は明けたとみて間違いなさそうですね。今日は雄大な入道雲が出ていたかと思ったらゴロゴロ雷が鳴り出し、どっと夕立が30分ほど降って、涼しい夕方になってくれました。これから昼間はうだる暑さになるのでしょうが、雨模様の蒸し暑さよりはひょっとしたらましかも? と今のところは考えています。きっと、来週くらいには早く秋になってくれないか、と根を上げているかもしれませんが。

 暑い夏の到来! と思っていたら、福井県では今インフルエンザが猛威を振るっているのだそうです。大方は新型ウイルスなのだそうですが、少し前までインフルエンザは冬の病気、と思い込んでいた私としては、まだ意外の感がぬぐえません。それに、こんな暑い時期に高熱を出して寝こむなんて真っ平御免でもあります。まあ、冬にインフルエンザで熱が出ると、熱が上がるたびに身体はかえって寒くて震えが止まらなくなったりもしたものですが、夏に熱が出るとそのあたりはどう感じるんでしょうか。
 一方で手足口病が子供に流行していたり、夏はそうでなくても食中毒が起こりやすかったり、暑さでバテて抵抗力が落ちていたり、とろくなことが無いわけですが、今年はなんとか無事夏を乗り切りたいです。と思っているのに、今朝は早速なんだか身体が重くて、出来ればあと1時間寝ていたいという体たらくでした。なんとか短時間でも確実に熟睡できればいいんですが、どうもこのところ、雨がうるさかったり暑かったりと何かにつけて眠りが浅くなっているようで、少し寝不足気味になっています。といって、惰眠をむさぼりすぎたらまたかえって体調をくずすので、明日からの三連休で眠り過ぎたりしないか、と不安になりもするという、もうどうしたらいいんでしょうね。

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過去の貯金で食ってる感じがどうしても拭えませんが、食いつぶす前に何か新しいものは出来るんでしょうか?

2010-07-15 21:09:16 | Weblog
 実物大のエヴァンゲリオンを建造中、というニュースを聞いたとき、ガンダムと違い、あんな不安定そうなものどうやって立たせるんだろう? と不思議に思っていたのですが、実物大は実物大でも全身像ではなく、胸像だったのですね。山梨県にある富士急ハイランドという遊園地で公開されるそうですが、立像ならともかく、胸像ではちょっと食指も動かないかも。できれば膝立ちでも四つんばいでもいいから、全身再現を観てみたかった気がします。もっとも、エヴァンゲリオンの大きさは演出の都合で特に決まっておらず、描き方によって数十mから200m位の幅があるのだそうで、仮に小さい方を取るにしても18mのガンダムよりも大きく、到底作ることは無理なのでしょう。
 そう言えばガンダムもお台場から移動して、JR東静岡駅前の広場に立つのだそうですね。お台場で立っていたときはゆりかもめから観ましたけれど、機会があれば今度は足元で観てみても良いかもしれません。
 最近はアニメも随分市民権を得て観光スポットとして色々と取り上げられるようになってきていますが、果たしていつまで続くのか、と思うと、少々心もとなかったりします。今、かつてのガンダムやエヴァ、あるいはもっと昔のヤマトとか、今NHKの連続テレビ小説でやってる「鬼太郎」(の作者の奥さんの話)とか、これら時代を超えて愛される作品になれる素質のある作品が果たして作られているのか、10年後や20年後に、映画化されたり観光スポットとして取り上げられたりするような新しいお話が出来ているのでしょうか。いえ、別にアニメに限らず、その時代を象徴するような新しいモノができていればそれでいいじゃないか、とも思うわけですが、私自身が年取ったせいか、アニメや特撮のファン層もなんとなく上がってきているような気もいたしますし、10年、20年後に、かつて私を魅了したアニメや特撮に匹敵するような全く違うモノが生まれているのかどうか。何かそんな可能性の芽くらいでも見えてきたら未来も随分面白くなりそうな気がするのですが、そんなモノの萌芽は、果たして始まっていたりするんでしょうか?


 
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なんだか最近夢づいているのですが、あんまり心地良い夢ではないのが残念です。

2010-07-14 21:40:19 | 夢、易占
 昨夜は未明に大雨が降って、その音で目が覚めてしまい、なんだかよく眠れないままに夜が明けてしまいました。そのせいでかなり寝不足です。雨は昼間も遠慮会釈もなく振り続いて、梅雨末期の気候を久しぶりに堪能させてくれている気がいたします。でも、今夜くらいはなんとか安眠させてもらいたいですね。

 最近どうも夢づいているのですが、昨日はそんな一夜を明かしたせいか、なんだか妙にスプラッタな夢を観てしまいました。私的にはかなり珍しいタイプの夢ですので、記録しておきましょう。

 私は連続殺人鬼らしいです。
 今日も一人の女性を殺害し、その心臓を取り出そうと作業に没頭しています。
いつもなら、出刃包丁で胸を一刺しして抉り出せば、サザエのつぼ焼きの実を抜くように、スポン、と心臓が包丁の先に引っかかって出てくるのですが、今日は凶器が手術用のメスで、どうも切れ味が鋭すぎるためか、心臓が引っかかりそうでなかなかうまくいきません。業を煮やした私は、その女性(なぜか女性と思い込んでいるのに、乳房は存在しません)の胸を、巨大なナタのような道具で割り開きましたところ、勢い余って頭も砕いてしまいました。脳みそがこぼれ落ちるかと思ったのですが、砕けた頭から飛び出てくる様子もなかったので、私は心臓に専念することにしました。まず胸を開き、3番目か4番目の肋骨を1本ずつ左右にぐいと引き上げて手を差し込み、ようやく心臓を取り出しました。さぞ血が滴ってくるだろうと思っていたのですが、なぜかまるで血抜きが完璧に出来ているようで、ピンクの肉の塊と思っていた心臓は案外白く、まるでホルマリン漬けの標本のようでした。また、切るときにメスがスパッとやってしまったのか、右下が一部欠けて2つの肉塊になって出てきました。握りこぶしほどの大きさかと思ったら、案外大きく、手のひらサイズは優にある心臓でした。

 内臓の夢はその臓器に不安があるときに見る、という話もあるようです。そう言えばこの間からなんとなく心臓付近に違和感がナキニシモアラズなのですが、そんな体調への不安が見せた夢なのかもしれません。それにしても、個人的にスプラッターは苦手なのでもう少し「健全」な夢であって欲しいものですが、それにはまず安眠第一なのでしょうね。

 さて、おどろおどろしい夢から覚めて出勤のために家を出ましたところ、温室のサボテンが美しい花をまた咲かせていました。本当のところはそんな暇はとても無かったのですが、無い時間を無理やりやりくりして、写真を撮っておきました。本当ならじっくり小一時間は眺めていたいところですが、今は写真で我慢するよりありません。
 サボテンは、この間1輪咲いていたレブチア属のクラインジアーナというやつです。濃緑の球体から見事な朱色の花が3つも咲きました。手前の浅い緑の草餅のような奴は、同じレブチア属の宝山です。この夏と冬を乗り切ることが出来れば、来春にはきっと一段と艶やかな競演を見せてくれることでしょう。




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遅刻ギリギリまで惰眠をむさぼり見た夢2題。

2010-07-13 21:44:32 | 夢、易占
 今朝は心底参りました。なぜか目覚ましのセットを忘れ、目が醒めたのはいつもの出勤時間のほんの数分前。慌てて着替えて有り合わせのものを適当に口に放り込み、車で出発した時点でいつもより10分遅れています。時折ワイパーも怪しくなるほど雨が降りしきる中、そうそうスピードも上げられないというのに、途中でお腹の調子がおかしくなり、とても我慢できなくなって、途中私鉄の駅に寄り道し、駅員さんにお願いしてトイレを借り、なんとか再出発したときには通常の通勤時間から20分の遅れ。それでもとにかく走っていきますと、途中通過しなければならないJRの踏切で、遮断機が降りたままなかなか電車が来ません。ジリジリと待つこと数分で、2両編成の田舎の電車が、まるで這うようにゆっくりと走ってきます。どうやら大雨に遭遇して減速運転しているようです。ジリジリしながら電車が通過するのを待って、普段ならまず使わない裏道を走って時間を稼ぎ、なんとかギリギリ、遅刻しないで済みました。まあこれも、日頃途中の渋滞を見越して20分以上時間の余裕を見て通勤していたためで、運良く懸念の渋滞もなく、遅れた時間をその余裕分でカヴァー出来たのが幸いでした。
 そんなふうにいぎたなく惰眠を貪っていたためか、2つの夢を記憶することが出来ました。せっかくですので記録しておきましょう。

 私は小学生時分の友人とふざけ合っています。どこか広い教室のような場所で、追いかけっこしているようです。私は、ビール瓶のような形をした爆弾を持ち、彼に押し付けようとしています。彼は、それを避けて逆に私の方で爆発させようという腹のようです。雰囲気はじゃれ合っているのですが、どうも内容は殺し合いに近いものがあるようです。やがて、彼が私の背後に回りこんで脇腹をくすぐってきました。私は必死にそれを逃れて爆弾を押し付けようとするのですが、どうもうまく行きません。

 夜の街を友人とそぞろ歩いています。もう大分遅い時間ですが、人出は非常に多い繁華街の一角です。一方通行で8車線くらいある広い道路を渡るため、横断歩道で大勢の人と共に信号待ちしています。信号が青に変わりました。皆が一斉に道路を渡り始めます。街は非常に暗く、私は停電しているのだろう、と思い込んでいます。と、左から真っ白なスポーツカーが走ってきます。信号が変わる前に交差点を通過しようとしていたのか、相当スピードが出ていますが、もう少し、というところで信号が変わってしまいました。すると、「チッ」とドライバーの若者が舌打ちして、そのまま交差点に突っ込んできました。人波を縫うように車は走りますが、結局2、3人はねられて倒れこみました。私は横断歩道を渡り始めた直後で、事故の模様を呆然と見ていましたが、車は何事もなかったかのようにそのまま走り去ってしまいました。私はようやく我に帰り、ナンバープレートを確認しようとしましたが、時既に遅く、視認するには至りませんでした。友人と危ないな、などと話をしているうちに、はねられた人達が何事もなかったかのように連れのヒトに助け起こされ、立ち上がっていました。どうやらケガはないみたいでした。

 まあいくら夢が見られるからと言って、こういうスリリングな体験はリアルでしたくはなかったです。明日は気をつけよう。

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選挙はそれなりに楽しみましたが、「地方の格差」は本当にどうにかしていただきたいものです。

2010-07-12 20:52:29 | Weblog
 昨日は選挙にまず行ってから、と思っていたのですが、そろそろ行こうか、と腰を上げかけると結構強い雨が降り出してきたりして、なかなか動けませんでした。結局昼前に投票所に到着、そそくさと地方分と比例分の名前を書いて、至極あっさりと終わりました。出口で公営放送の調査員がいたのは驚きでしたが、まさかこんな田舎の投票所に、と思っていたら、全国の投票所に配置していたそうだ、という話を聞いて、なるほど、国民から集めた視聴料をこういう事につぎ込んでいるのだな、と妙に納得した次第。
 それはともかく、個人的な感想としては、まずまず順当な結果だったのではなかろうか、と思いました。我が地元で民主現職が逃げ切りに成功するとは信じがたかったですが、まあ選択肢が少なすぎる田舎のことですから、いたし方なかったのかもしれません。だから田舎の選挙って詰まらないのですよ。民主、自民、共産の各政党から1名づつ出ているだけという選択肢から、一体誰を選べと言うのでしょうか? 地方で選びたい選択肢がない場合は比例に2票投じても良い、とかしてくれないと、一票が大変もったいないのです。よく、一票の重みで地方と都会の格差が論じられますけど、そんなことより選択肢の格差の方が余程大きな問題だと私は思います。
 といいつつ、しょうが無いので一票は自民の若い人に入れて結局無駄になり、比例はみんなの党に入れて、ちょっとは意味があったと実感出来た気がしました。まあこの党にも色々問題はあるのでしょうが、地方分権と公務員削減を明快に説いているのはここだけですし、私としてはそれが一番興味のあるところだったのです。それでも数日前まではみんなの党に入れるかどうか、かなり悩んでいたのですが、ちょうどその頃、「みんなの党は結局民主党とおんなじだから騙されてはいけない」なんて書いてある妙な怪文書がうちの郵便受けに投げ込まれていたのがきっかけになりました。この種の怪文書がある、というのは話には聞いておりましたが、本物を見たのは初めてで、よく臆面も無くこのような恥ずかしい真似ができるものだ、と呆れ果て、ならば逆の目を張ることにしようと決心がついたのです。踏ん切りをつけてくれたという意味では、あの文書は実に見事に役立ちました。
 開票結果は最後までどうなるかやきもきしましたが、無事10人当選してよかったと思います。10人議員がいれば法案も提出できますし党首討論にも参加資格ができるそうですから、これからの活躍に期待したいです。
 
 それにしても、民主大敗の原因の一つに消費税問題が上げられているのはどうしてなんでしょうね? そもそも言いだしっぺは自民党でしょうに。そっちはあんまり影響なく党首のものすごい笑顔が報道されていたのに、どうもマスコミの言うことは不思議です。

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06リセットハンマー その1

2010-07-11 15:49:49 | 麗夢小説『夢の匣』
「教頭センセー! お願いです捕まえて下さーい!」
 進行方向に、見慣れた痩身白髪の『上官』の姿を見て思わず叫んでしまったけれど、次の瞬間には、そう言えばカエルの解剖は苦手って言ってたっけ、と思い出した。でもこの非常事態に、苦手だから、なんて言っていられない。何としても、一秒でも早く捕まえて麻酔をかけ直してあげないと、追いかけながらあんなシュールな状況を見続けている私の方が、先にどうかなってしまいそうだった。
 それにしても、カエルってあんなに飛びまわるの速かったっけ? 
 指導要領、という名の「虎の巻」には、途中で麻酔が切れて暴れることもある、という注意事項が書いてあった。それを予習してあったおかげか、あの瞬間、きゃあきゃあ悲鳴をあげる女生徒ほどには取り乱さずにはすんだ。でも、お腹を解剖ハサミで切り開かれて内蔵を引きずるというあの状況で、あんなに元気よく跳ね回り、挙句に、麻酔薬のエーテルがこもらないように開けてあった窓から飛び出して、そのまま逃げてしまうなんて予想もしていなかった。私もすぐに窓を越えて追いかければ早かったんだろうけれど、生徒たちの手前あんまりはしたない格好をするのもはばかられるし、日頃厳しく注意しているのに、上履きのまま外に出るのもためらわれて、結局理科室を出て玄関口まで回り道している間に大きく遅れ、こうして高等部の敷地まで追いかけることになってしまったのだ。
 でも、教頭先生が何とか止めてくれたら、この修羅場もようやく収まる。その後、100%「死神」のお説教に生命を刈り取られることになるのだろうけれど、このスプラッターな追いかけっこを終了できるなら、それも甘受していいかも。私がそこまで考えて覚悟だって決めたのに、やっぱり無理だったみたい。誰かと談笑していた教頭先生がこちらを振り向いた途端、顔色を真っ青に変えて途端に震えだしたから。
 「あ、あ、ああ綾小路先生!」って呼びかけてくる声なんて、完全に裏返って異様に高い。あれ? 教頭先生と談笑していたのはクラス委員長の荒神谷皐月さん? 随分ぎょっとした様子でこちらを睨みつけているけれど、体調崩して休んでいたのではなかったっけ?
「あの中に逃げたぞ!」
 すぐ後ろを走っていた榊君の叫びに、私もすぐ我に返った。今は荒神谷さんのことよりも、カエルの事が第一だ。カエル達は怯えて悲鳴をあげる教頭先生を挟みこむように通り過ぎ、ちょうど開け放たれていた、その後ろの建物の扉をくぐり抜けた。私は荒神谷さんを置いて、榊君と、その後ろに付き従う鬼童君、円光君を引き連れて、建物に突っ込んだ。ついでに顔色だけは死神そっくりになっている教頭先生も、引っ張り込むようにして一緒になだれ込んだ。明るい戸外からいきなり薄暗い建物の中に飛び込んだせいで一瞬だけ目がくらむ。そういえば、ここってどこだろう?
「部室棟ですよ」
「へ?」
「高等部の部室棟です。さあ綾小路先生! カエル達はあっちに飛んでいってますよ!」
 何故私が考えていることが判ったのか、驚く私は教頭先生に間抜けな返事にもならない返事をしつつも、その骨ばった指が差す廊下の奥へと視線を投げた。
 いた! 
 仲良く編隊を組んで一塊になったカエル達が、奥へ、奥へと進んでいる。目が慣れてくるに従って、廊下の両側にずらりと並ぶ古ぼけたドアやそのドアの脇にかかるクラブ名を記した表札が見える。なるほど、確かに部室棟という建物らしい。そんな数々の部室の前を走り抜けながら、私達もカエルの後を追った。
 と、突然カエルの編隊が数匹づつ2手に別れた。その一隊が急に進路を右に転じて、開いていたドアの奥へと吸い込まれるように消えて行く。残りはそのまま、奥の暗闇に向けまっすぐ進んでいる。
「綾小路先生はあの部屋のカエルを何とかなさい! 3人は私について来なさい!」
「は、はい!」
 いつの間に立ち直ったのだろうか? 教頭先生が俄然スピードを上げて先頭に立つと、張りのある元気な声で後ろの私達4人に声をかけた。それもやたらと明るい不気味な調子だ。いつもなら、「えーっ!」と不満一杯に顔をしかめて逃げ出しにかかる榊君達も、その声と雰囲気に圧倒されたか、文句一つ言わずに教頭先生の後を追う。私も、命じられるままにそのドアに向けて急カーブを切った。今度こそ御用だ!
 部屋に飛び込んだ私は、まず一番奥の窓が開いていて、初夏の爽やかな風が流れ込んで来る様子に怖気を振るった。まさかまた窓から飛び出したかも?! と疑ったわけだが、すぐにそれはないことに気がついた。がらん、とした虚ろな広さが目立つ何も無い部屋に、窓辺に寄せられた椅子が一脚。そして、その前に身を投げ出してうつ伏せで倒れている、女の子が、一人。豊かな緑の黒髪が床に広がり身体を覆い隠しているが、髪越しに見えるその制服は、間違いなく南麻布学園高等部の女子の制服に違いなかった。
 そしてカエル達は、その女の子の周りで動かなくなっていた。
 私は、カエルを避けてまず女の子の側にしゃがんだ。カエルは多分もう駄目だろう。あんな状態でこれだけの距離を飛び跳ねてきたのだ。その事自体信じられないほどの脅威な出来事だけど、それもここに来てついに力尽きたのだろう。それよりも、倒れている女生徒をそのままには出来ない。たとえ教える学年は違っても、同じ南麻布の生徒だ。
 私はそっとその子の肩に手を伸ばすと、仰向けに抱き起こしつつ言葉をかけた。
「貴女、大丈夫? ねえ……?」
 うつ伏せで隠れていた顔がこちらを向いた。なめらかな肌にはどこもケガとかはしてなさそうだけれど、と思ったところで、あれ? と私はその顔を凝視した。誰この娘? なんだかよく知っている気がするけれど……。
 その瞬間、私は頭を思い切り殴られたような衝撃に、思わず目をつむった。これは、これは、この娘は……!
 それは、女の子のすぐ近く、部屋の隅に立てかけてあったとおぼしき一本の棒が倒れてきて、私の頭にためらいなくぶつかってきた衝撃だった。
 シャラン、と輪環の打ち合う涼やかな音が聞こえたその時。
 私は、目が覚めた。
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選挙運動はいい加減改革しなけりゃいけないだろうと切に思います。

2010-07-10 22:35:59 | Weblog
 明日の選挙を控え、職場のクミアイから自宅へ電話がかかってきました。クミアイが応援する候補へ投票をお願い、なのだそうです。面倒なので口でははいはい、と機嫌よく返事しておきましたが、正直言って選挙カー並にウンザリで、絶対そいつにだけは入れない、とアマノジャクな私の決意を固めるには充分な数十秒でした。いつも疑問に思うのですが、あんな組織票固めの電話なんて何か効果あるんでしょうか? 私個人がこんな人間だから理解出来ないだけで、実は絶大な効き目のある選挙運動だったりするのかも? と一応は疑いもするのですが、どうもマイナス効果しか無いのではないか、としか私には思えません。そもそも、そんな政治ごっこにうつつをぬかす暇があったら、一円でも二円でも経営陣からひっさらってこいや! とハッパをかけてあげたくなるのですが、過去の栄光から抜け出せないでいる既に終わっている組織のような気もします。選挙もそろそろ思考停止の組織戦では無く、巧拙はともかく、とにかく自分自身で考えて行動する個人のための儀式になってもらいたいと思いつつ、明日は投票に行こうと思います。昼から大雨かも?、の予報も出ているので、出来れば午前中に行きたいですね。

 さて、梅雨明けまでまだ少しかかりそうですが、珍しく晴れた今日、うちのサボテンがまたキレイな花をつけてくれましたので、記録を残しておきましょう。

 一つは、この春に和歌山で買ってきたレブチア属のクラインジアーナ。レブチア特有の高貴さを漂わせる可憐な花です。蕾がまだ幾つか付いていますので、今後の天気次第ではまた何輪かの花模様を楽しめそうです。



もうひとつは、3,4年前に京都で買ってきた、碧瑠璃鸞鳳玉の花。3株買ってきたうちの、2株で花が咲きました。3株とも同い年のハズなのですが、生長の良い順で花の大きさも少し違います。ノトカクタスの青王丸にも似た、金属質の光沢のある肉薄の黄色い花弁が折り重なって、小さい割になかなか豪奢な感じです。



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アニメファンになったきっかけの作品

2010-07-09 23:20:48 | Weblog
HMVというサイトが、ユーザーを対象にアニメに関する意識調査を実施したそうな。回答者は2141名、といいますから、それなりの人数ですが、アニメファンになったきっかけは? という問いの回答1位は、男性「機動戦士ガンダム」女性「美少女戦士セーラームーン」、2位 男性「新世紀エヴァンゲリオン」女性「ジブリ作品」、3位 男性「ドラゴンボール」女性「機動戦士ガンダム」、4位 男性「宇宙戦艦ヤマト」女性「ドラゴンボール」、5位 男性「ドラえもん」女性「ONE PIECE」、という結果になったそうです。回答者の年齢層は20,30代で全体の6割を占めますが、10代から50代と幅広い層が回答を寄せているようで、上がっている作品名を見ると、なるほど、と思わないでもない感じがします。
 
 翻って私は、というと、多分「宇宙戦艦ヤマト」に違いないと思います。もっと幼い頃何を観ていたかというと、例えば「オバケのQ太郎」はモノクロ時代の記憶がうっすらと残っておりますし、幼稚園の時のお弁当箱の絵は「怪物くん」だった記憶も、これは案外鮮明に残っています。してみると、藤子アニメもかなり一所懸命観ていたのでしょう。あと、「魔法使いサリー」とか「ひみつのアッコちゃん」などの少女アニメも観てましたし、「ムーミン」とか「名作劇場シリーズ」も好きで、欠かさず観ていました。映画だと「長靴をはいた猫」などの東映長編アニメも結構観に行ってます。
 でも、子供の頃は明らかに「仮面ライダー」、「ウルトラマン」、「仮面の忍者赤影」、「快傑ライオン丸」といった特撮物の方に入れ込んでいましたので、映画も基本東宝チャンピオン祭! の「ゴジラ」映画や大映の「ガメラ」シリーズが優先でした。
 したがって、意識的にアニメを観るようになったきっかけは、やっぱり「ヤマト」をもって嚆矢とするのだと思います。他のものは、特撮物も含めて事情があって観られなかったとしてもそれほど気にならなかったものですが、「ヤマト」だけは、絶対欠かすことのないように意識してましたから、明らかに他の書作品からしたら別格扱いです。

 それにしても、男性側のランキングが「ガンダム」「エヴァ」「ヤマト」とは、各世代でそれまでのアニメの常識を覆したフラッグシップばかり並んでいるというのも一種壮観ですね。「アルプスの少女ハイジ」とか「母をたずねて三千里」とか「フランダースの犬」とかがはいっていないのは少々寂しいですが、ランク外で最低1票づつくらいは入っていてくれないかな? と思います。出来れば全データを公開して欲しいです。



 
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厚生労働省が、10万人の健常者の遺伝子を調べる計画を立てているのだそうな。

2010-07-08 22:04:01 | Weblog
 厚生労働省が、健康な人の遺伝情報と生活習慣を調査し、認知症、脳卒中や心筋梗塞などの生活習慣病、といった病気につながるとされる遺伝情報や環境要因の解析を実施することに決めたのだそうな。その対象人数なんと10万人。10年から20年間協力を得よう、という話ですから、なんとも稀有壮大な計画といえます。これまでは病気になったヒトを対象にした調査が普通でしたが、病気の要因を解明して行くためには、現状問題の無い健康なヒトの情報との比較が重要との事で、13年度の調査開始を目指しているのだそう。ただ、長期間にわたる調査にはもちろん多額の予算も必要になりますし、ただでさえ借金まみれの財政下で果たしてどれだけ実現可能なのか、まだ先行きは不透明な感じもいたします。
 まあできるならやるに越したことは無いでしょうし、もし協力を求められるならやってもよい、と私は考えています。健康なヒト、という条件に合致すれば、ですが、自分が健康といえるのか、というと若干疑問無きにしも非ずなので、この調査に貢献できるかどうかは正直微妙かな、と思わないでもないです。
 ただ、だんだん遺伝子解析と病気の問題がリンクするようになりつつある現代において、自分の遺伝子を調べておきたいという欲求は高まるばかりです。この調査では多分本人にも解析された遺伝子情報が伝えられることは無いのではないか、とは思いますが、それでも、一度は調べた、というのと全然手もつけられていない、というのでは、気分的には差が生じるんじゃないか、と想像します。まあ、そんな情報が巡り巡って私の不老長生に役立つ日が来るのははるか先の話で、ひょっとしたら何の役にも立たないかもしれませんが、一つの夢として、是非実現して欲しいと切に願います。

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何故ヤマトと文科省がタイアップして、何か意味があるんでしょうか?

2010-07-07 20:57:55 | Weblog
 宇宙戦艦ヤマトの実写版の予告編を見たのですが、想像していたよりも案外マシな感じがして、これはひょっとして観に行ってみてもよいかな? と思うようになってきています。発表当時は正直信じられないというか、今更何? ヤメテ欲しい、という気分でしたが、まあアニメとは全く別物の違うお話、と思えば許せない部分も多少は許せそうな気もしますし、今、あの古典的名作をどういう視点と解釈で実写で表現するのか、少し興味もあります。まあ予告編CMなんて出来のよさそうなシーンばかり集めてそれらしく見せているのでしょうから、あまり期待しても裏切られるだけなのは間違いなかろう、とは思うのですが、とりあえず見もしないうちから酷評するのもどうか、と言うくらいには気分が前向きになってきました。
 まあ私一人がお正月映画一本を観ようが観まいがまあどうでも良いことなのではありますが、この映画を文部科学省が利用しようとしている、と聞くと、なんだかヘンな感じがいたします。なんでも映画の宣伝を兼ねた宇宙啓発用ポスターを作り、全国の学校へ配布するのだそうで、文部科学大臣殿が記者会見で「宇宙政策への理解を深めてもらいたい」と話しつつ掲げたポスターには、紙面の9割方を占める主人公の写真とヤマトの映画公開日が明記されその横に、申し訳程度に「宇宙の未来 つくるのは君たち」というロゴが記載されています。このポスター、東宝が6万枚作り、教育委員会を通じて全国の小中高に配布するのだそうです。何故に文科省がこんな事を、と思いましたが、宇宙飛行士の山崎直子さんや星出彰彦さんらが小さいころに見て影響を受けたのだそうで、そういう教育的効果を狙っているようです。
 確かにあのアニメを初めてみたとき、私は小学生でしたが、それまでの子供子供したアニメと違って、骨太な物語と手に汗握るスペクタクル、魅力的な敵、そしてなんといっても圧倒的な存在感を示したヤマトの姿に夢中になり、テレビにしがみつくようにして観ていたことを思い出します。今でもオープニングテーマを聞くと胸が躍りますし、このアニメで科学に興味を抱いたと言えなくもないでしょう(もちろんそれだけではなく、当時は宇宙大作戦とか子供心を刺激するモノが色々ありましたね)。
 ただ、私のようにヤマトで育ったような年寄りはともかく、今の子供達がヤマトで宇宙を夢見ることができるのか、というと、正直微妙じゃないか、と思います。いろいろネタはあるだろうに、何故にヤマトなの? という疑問が、どうしてもつきまとうのです。この企画を考えたお役人、ひょっとして私と同世代でよほどヤマトに思い入れがあったのでしょうか?
 果たして今の子供達に受け入れられるモノなのか、興味だけはそそられるニュースでした。

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ひょっとしたら手に入る臨時収入では、どう使おうか、考える時が一番幸せです。

2010-07-06 21:57:08 | Weblog
 金額3万円程度とちょっとした臨時収入がありそうで、まあ大抵はちゃんと自分の手に届くまでは取らぬ狸の、となりがちな話なのではありますが、宝くじよりは可能性が高いのは確かなので、さて何に使おうか、などと早くも夢をふくらませております。まあ金額が金額なのでそうだいそれたことも出来ないわけですが、もし実際に手に入ったらどう使うか。久しぶりに夏コミへお客として参加してみるというのはどうかとか、一度飯田線に乗ってみたかったのでこの際信州まで蕎麦でも食いに行くか、とか言うような旅行から、ちょっと敷居の高かったコンサートでも行ってみようか、とか、手が届き兼ねた本でも買おうか、とか、色々と思いつくままに夢想する時間というのがいわば至福の時で、いざ決めて実行する段になると途端に面倒くさくなってくるというのが常なのですが、何にせよ今この時を楽しむ分には問題は何も無いわけで、もし仮に収入が無かったとしても、この楽しんだ時間は無駄にはならないと思うのです。
 そんな候補の中で、少しお金を足してiPadでも買ってみようか、と言うものもあって、少しばかり気になる重点候補だったりしています。残念ながら我が国ではまだまだe-BOOKなんてまともにはありませんし、私自身本を読むなら紙が一番!と思っているので、読書用に使う気はあんまり無かったりして、じゃあ何に使うの? というとよく分からなかったりもするのですが、それでもなんとなく心騒がせる物欲を惹起させる楽しそうなもの、な気がいたします。
 いずれにしても買う買わないはまだまだ先の話なわけですが、気になるニュースを一つ見つけました。
『電子書籍は紙の本より読書スピード遅い』という表題のもので、iPad、Kindle、PC、紙の本でヘミングウェイの短編小説を読んでもらってその時間を計測した結果、iPadは6.2%、Kindleは10.7%、紙よりも読書スピードが遅かったという話です。読みにくいからなのか、操作性なのか、あるいは単なる慣れの問題か、気になるところは多々ありますが、紙の手軽さや読みやすさはやはり抜きがたいものがあるのではないか、と私などは感じるので、この結果には大体首肯できるものがあります。もっとも、私にしてもいまや毎日みている活字の量は紙ベースよりもPCの画面の方が圧倒的に多いですし、いずれは電子デバイスの方が良い、とか、あるいは電子デバイスならではのギミックを搭載して読みやすさとか物語への没入感とかを大幅アップしたような物が出たりするかもしれませんから、今紙が一番だと思っていたからと言って、将来もそれが変化しないとも限りません。あくまで現時点での判断で、これで本を読む気にはなれないけれど、なんとなく手にしてみたい、というのが、この手の道具への気持ちです。

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今年の実りは厳しいかもしれませんが、はやぶさのお土産くらいは本物であって欲しいです。

2010-07-05 21:42:52 | Weblog
 今年の夏の天気は西高北冷、なんだとか。エルニーニョ現象が終わった直後によくある気象だそうで、西は暑いけれど東北方面は冷夏の可能性が高いとのこと。日常生活からしたら涼しい方が過ごしやすくて良いに決まってはいるのですが、暑くなるべき時に暑くならないと、作物の生育はおかしくなり、実りが悪くなるのは確かで、現に今でも、例えば山形のさくらんぼは平年より10日も色づきが遅れていて、そのせいか今店に並んでいるのは色づきも黄色っぽい、私好みの酸っぱいものばかり。多分これからシーズンを迎えるブドウやナシもこのままだと出来はイマイチでしょうし、秋の柿やリンゴ、ミカンもこのままだと危ない。もちろんお米は極めて深刻な影響を受けかねません。異常気象も大概飽きたというか平年って何?というような年が続いているわけですが、いい加減少しは異常を緩和するような技術なりができてくれてもバチは当たらないのに、と思わずにはいられなかったりします。

 さて、そんな七夕を前にして、一方ではやぶさのカプセルになんと微粒子が入っていたそうで、それが、行く時に拭いきれ無かった地球産なのか、小惑星イトカワから奇跡的に拾ってきた宇宙のモノなのか、大いに興味がそそられる話が
聞こえてきました。これから慎重に精査してどちらのものなのか判断するそうですが、もしイトカワ産ならはやぶさは見事任務を全うした事になるわけですから、興奮もまたひとしおです。答えは2択しかなく、今更祈ったからと言って地球産がイトカワ産に変じたりすることもありえないですし、イトカワ産なら祈る必要すらないわけですが、それでも、できることならイトカワのチリであって欲しいと祈らずにはおれません。

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05.転機その3

2010-07-04 16:55:26 | 麗夢小説『夢の匣』
「あ! 教頭先生に荒神谷さーん! お願い! そのカエル捕まえてぇっ!」
 担任、綾小路麗夢の叫びに、皐月は、初めてその前をぴょんぴょん跳ねる何匹もの緑色の姿に気がついた。
 だが、何かおかしい。
 飛びまわる小さなカエルが、ヒトの走るスピードと同じくらい早く、まっすぐこちらに向かってくる事自体が異例な事なのであるが、それ以上におかしなことが、このカエル達にはある。なんだかカエルが紐みたいな何かを引っ張って飛んでいるような……。あれは、何?
 次の瞬間、その「何か」が皐月にも唐突に理解された。と同時に、唐突にこみ上げてきた嘔吐感に、皐月はうめいた。そうだ、この死神が言っていたではないか。理科室で解剖実験だ、と。
「ははは、なかなかの趣向だろう? 臓物をさらけながら行進してくるのがカエル、というのが、わしとしてはかなり物足りないのだがな」
「何をしたの?」
 喉元をせりあがってくる酸っぱい衝動を我慢して、皐月はなんとか問いかけをこぼした。対するルシフェルは、心底愉快げに眉をそびやかせて答えた。
「ふふん、途中で麻酔が切れて動物が暴れだすなどは、解剖実験ではよくあることだ。それをわしの力で少々大げさに演出してやったまでよ」
 その説明で、皐月には大体の状況が理解できた。
 一旦は麻酔薬をかがされておとなしく解剖台に載ったカエルが、お腹を切り開いて内臓の様子が観察できるようになった途端に麻酔が切れて暴れだし、腸やなにかをさらけながら実験室中を飛び回る様を。
 その途端にパニックになり、悲鳴を上げて逃げ惑うクラスメイトの様子。
 そんな実験室の阿鼻叫喚ぶりが、嫌に鮮明に皐月の目に浮かんだ。
 紫は、多分他の女の子たちと一緒に悲鳴を上げて、ひょっとしたら失神位しているかもしれない。
 星夜なら冷静に動いただろうか。いや、案外咄嗟には何も出来ず、カエルたちが窓から飛び出る様を見送っていたかもしれない。
 でも、と皐月は思い直した。
 琴音がいる。
 琴音なら、いつもどおり静かにきっちりと仕事してくれているはず。
 でも、そうだとしたらどうして? どうして皆がこっちに向かってくるの?
「教頭センセー! お願いです捕まえて下さーい!」
 見ると、麗夢は大きなガラス瓶を抱えていた。多分再度麻酔をかけようと、慌てて容器を持ち出してきてしまったのだろう。そのすぐ後ろに、榊、鬼童、円光の3人がいる。それから大分遅れて、顔を真っ青にした琴音を抱えるように星夜と紫が走って来る……って、あれ? 琴音が? あの子、カエル苦手だったの? そんな設定、したっけ?
「早く止めないと、あ奴らも気づくかも知れんなぁ?」
 のんびりと話すルシフェルを、皐月は初めて睨みつけた。お腹が切り裂かれてから麻酔が覚めるなんて演出、悪趣味にもほどがある。
 でも、状況は確かにまずい。
 このままあの場所まで彼らになだれ込まれたら、これまでの苦労が水の泡になりかねない!
「さて、せっかくの趣向だ。わしも最後の演技位は、全うしてやろうか」
 焦りの色も濃い皐月を前に、ルシフェルはニンマリと口元をひねりあげたかと思うと、途端に顔を真っ青に変じさせてへっぴり腰に姿を変えた。
 傲岸不遜な夢魔の総帥から解剖が苦手な教頭先生への見事な変身。ともすると自分の構築した悪夢がまだ破綻なく続いているのではないか、と皐月に錯覚させかねないほどの、それは見事な変化であった。そんな表情のまま、ルシフェル、いや、教頭先生は声をひっくり返して指導対象である新米教師に呼びかけた。
「あ、あ、ああ綾小路先生! い、いいいいい一体これはどういう事ですかっ!」
 初めて発せられる上司の裏声に、麗夢も慌てて言い訳を返す。
「すみません! 麻酔が足りなかったみたいで、カエルがみんな逃げ出したんですぅ!」
「は、はは早く! 何とかなさい! ひぃっ!」
 10匹近い腸を引きずるカエルの群れが、教頭先生を挟みこむように通過して、高等部部室棟に飛び込んだ。
「あの中に逃げたぞ!」
 榊の叫びに、麗夢と男子小学生の一団も部室棟になだれ込んだ。勢いで教頭に化けたルシフェルも一緒に扉をくぐる。振り向きざまに、ルシフェルがニヤリと満面の笑みを見せつけていったのが、皐月の逆鱗を思い切りひっぱたいた。5人の姿が部室棟に消えるのを見送った皐月は、ようやく追いついてきた仲間の3人に語気鋭く言い放った。
「揃いも揃って何やってるのよ! バカぁっ!」
「す、済まない。まさか琴音が悲鳴上げて気絶するなんて思わなかったから」
「でも可愛かったよ? キャーッなんて黄色い声上げて」
「……ごめんなさい」
 斑鳩星夜が口ごもりながら謝り、眞脇紫が脳天気に笑顔を見せる。きっと睨みつけられた琴音は、無表情な中に微妙な気落ちした様子を漂わせて、一言小さく謝った。だが、今はそんな場合ではないことは、皐月自身が最もよく理解している。急がないと!
「とにかく追うの! 急いで!」
 言うやいなや、荒神谷皐月は高等部部室棟へと飛び込んだ。
「お、おう!」
「待って! 皐月!」
「…………」
 3人3様の答えを返し、星夜、紫、琴音がリーダーの後を追う。目指すはかつての姉達の根城。古代史研究部部室である。
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何ともしまらない一日です。

2010-07-03 23:02:40 | Weblog
 どうもこの1週間ばかり疲れが抜けず、ダルさが取れない不快な日々を過ごしておりますが、今ひとつ原因がはっきりしないのがまたやっかいです。冷えがその一つであろうことはほぼ間違いないと思われ、寝るときに冷えすぎないようにすることで若干の改善は見られたわけですが、疲労解消、というところまでは行きません。食欲はそこそこありますし、胃腸が不調を訴えているわけではありませんし、夜は途中で目がさめることも無く相応の時間熟睡して、寝不足ということもないと思うのですが、本当にそうなのか、だんだん自信がなくなってきました。特に寄るの睡眠については、この間自分のいびきのうるささで覚醒してしまったりしたせいもあって、今意識してないだけで、実は睡眠時無呼吸症候群などの厄介な状況に陥ってたりしてるんじゃないか、と疑いだすとキリがないのです。今日も遅くまで寝ていた挙句、夕方にはうたた寝して気がついたら21時を廻っていたという、ほとんどただひたすら惰眠を貪っていただけの1日になってしまったのですが、それでダルさが完全に解消できたかというとそれほどでもなく、立ちあがるのが億劫で、今はただひたすら横になりたいという欲求だけがあります。せめて気分転換位はしてみようかと思うのですが、外は一日雨で時折相当強く降ってくるので散歩にも出られず、本を読んでいても気力が続かず1時間と活字を追っていられないというのもこまったもので、ただぼうっと音楽を聞くうちに、今日が終わろうとしています。明日はもう少しやる気と元気が回復してくれるといいのですが、さて、そう希望通りになりますかどうか。

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なんとまあ、今まで『非拘束名簿式』なんて露も知らずに投票していましたよ。

2010-07-02 22:54:04 | Weblog
 今日、ちょっと所要で外を出歩いておりましたら、たまたま通りかかった某党の選挙カーから、不思議なことが聞こえてきました。何を言っていたかというと、『比例投票では〇〇党ではなく、△△と書いてください!』 とのたまっておいでだったのです。△△氏は今回比例名簿に載って選挙に出るとのことなのですが、どうして比例区の候補者の名前を書いてもらいたがるのか、腑に落ちませんでした。すると、すかさず応援に乗っていた某市議が説明してくれました。曰く、比例選挙では個人名で票数の多かったヒトが名簿の上位にランクされる。だから党名ではなく、△△と書く事で、地元の候補である△△を地元代表として国会に送り出しましょう! なんだそうです。
 これを「非拘束名簿式」といい、既に2001年から採用されている名簿順を決める方法なんだとか。
 
 正直に申し上げて、私は今日はじめてそんな方式があったことを知りました。そう言えば、橿原神宮の近くに大きな掲示板があって、候補者のポスターが何重枚も貼ってあって、あれ? うちは田舎で確か候補は3人だけだったはず、と想いよく観てみると、某党だけの立候補者の看板でした。時間がなかったのでちゃんと人名まで確認しませんでしたが、あれ、ひょっとしたら比例区の候補者一覧だったんじゃないか、と今更ながらに思いました。まあ機会があれば確かめに行ってもよいか、とも思うわけですが、少なくとももう10年近く前からそんな制度が始まっていたなんてことを知らなかった、という事実に、われながら愕然としたのでした。

 でも、要約にして気づいたからには、何か意味のある行動に繋げたいものです。とりあえず制度自体まだはっきり把握できていないので、もう少し調べてみてから、選挙の時どう書くか検討してみたいと思います。入れようと思っている政党の候補者一覧も目を通して置く必要がありそうですし、すこしばかり今回の選挙も楽しみが増えた気がいたしました。

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