ルイガノ旅日記

あちこち出かけた場所で目にとまったもの、
心惹かれたものを紹介しています。
よかったらおつきあい下さい。

秋色の京都・奈良~奈良国立博物館・興福寺・平等院

2021年11月22日 | お出かけ

コロナ感染が落ち着きを見せている今のうちにと、今月中旬、思い立って京都に行ってきました。
静かにホームに滑り込む新幹線のぞみ。福岡県の外に出るのは久しぶりなので、わくわくドキドキです (^-^)ゞ


わずか2時間半弱で京都駅に到着。その気になれば近いものですね。振り返ると、駅ビルのガラスに京都タワーが映り込んでいました。
到着後すぐにホテルのフロントに荷物を預け、そのままJR奈良線で奈良駅に向かいます。


JR奈良駅からバスで奈良国立博物館へ。鹿の向こうに見える新館で、10月30日から11月15日にかけて第73回正倉院展が行われていました。


天平の華麗な文化や暮らしぶりを伝える正倉院展は、古都奈良の秋の風物詩。一度は観たいと思っていましたが、かろうじて会期に間に合いました。


聖武天皇がその音色を愛した円い胴の楽器、螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)。奈良で公開されるのは25年ぶりだそうです。(館内は撮影禁止のため、第73回正倉院展パンフレットの写真をお借りしました。以下4点同じです)


裏側に描かれた素晴らしい模様。8世紀に作られたものとは思えない美しさを保っています。


花鳥背八角鏡(かちょうはいのはっかくきょう)。わかりにくいですが、鏡の背にはブドウの枝をくわえた2羽のインコが描かれています。鎌倉時代に盗難に遭って大破しましたが、明治27年(1894)に現在の形に修復されました。


蓮の花を模った台座、漆金薄絵盤(うるしきんばくのえのばん)。蓮の花弁には、鴛鴦(おしどり)や獅子などの装飾が描かれています。正倉院にはこれと同形同大の台座が別に一品伝わり、それぞれに「香印坐」の銘があることから、対で仏前に供える香炉台として用いられたと考えられています。


なら仏像館(旧本館)では、奈良県吉野町にある金峯山寺(きんぶせんじ)が所蔵する金剛力士像が特別公開されていました。筋骨隆々たる体躯、憤怒の形相に圧倒されます。(この金剛力士像だけ写真撮影OKです)


この日のランチは登大路沿い、店の前と奥にテラス席のあるムッシュ・ペペで。


ガレットのセットから、きのこ・小エビ・ほうれん草の生クリームソースをチョイス。奥のカップはコンソメです。


もう一品はキッシュのセット。ワタリガニ・エビ・帆立貝のキッシュを選びました。
飛び込みで入ったフレンチカフェでしたが、ガレット・キッシュともに美味しかったです。グランドピアノが置かれた店内の雰囲気も良く、多くのお客さんで賑わっていました。


食事の後は興福寺へ。写真左は神亀3年(726年)、聖武天皇が建立した東金堂(国宝)。右は、天平2年(730年)に光明皇后が建立した五重塔(国宝)。


興福寺の歴史を今に伝える仏像や絵画、典籍文書などを保管する国宝館。興福寺に立ち寄ったのは、ここに安置される阿修羅像を観るためでした。何年か前に九州国立博物館に来たことがあるのですが、混雑ぶりがすごかったので行かなかったのです。なので今回、〇十年ぶりの阿修羅像との再会を楽しみにしていました。
私は若いころ、10カ月近く奈良で過ごしたことがあり、奈良や京都のお寺をずいぶん巡って、御朱印帳を何冊も書いてもらったことがあります。その時、たまたま興福寺で拝観した阿修羅像に強く惹かれ、週末になるとまずは興福寺に足を運んで、阿修羅像をじっくり眺めたものです。その頃は参拝する人も少なく、誰に気兼ねすることもなくゆっくり観ることができました。


天平様式で復元された中金堂(藤原不比等創建)。


運よくこの日は、五重塔の特別公開期間(前期:10月9日~11月23日)。


さっそく、私たちも参拝の列に……。


参拝の記念に、「除災招福」のお札を戴きました。


奈良を後にして、再びJR奈良線で平等院のある宇治へ。既に日が傾いていたため、平等院本来の鮮やかな朱色が写せませんでした。
夜間のライトアップが見たかったのですが、受付で尋ねると、特別な場合しかライトアップはしていないとのこと。既にミュージアム(鳳翔館)の閉館時間が迫っていたため、大急ぎで回りました。


永承7年(1052年)、時の関白 藤原頼道によって創建された平等院。鳳凰堂はその翌年、極楽浄土の宮殿をイメージして建てられました。


阿字池周辺の紅葉。


鳳翔館には、座って紅葉を眺められる板の間があります。


鳳凰堂の屋根に飾られた鳳凰。これはレプリカで、本物は鳳翔館に展示されています(国宝)。


宇治の老舗茶房で軽く食べて帰るつもりだったのですが、5時を過ぎるとどの店も早々に店じまいしていました。
駅前にある伊藤久右衛門。(まだ明るい行きがけに撮った写真です)


こちらは中村藤吉本店。さすがに宇治、お茶の老舗が多いです。特に、平等院に向かう参道は、お茶の香りの中を歩いているようでした。

京都・奈良の旅、初日の散策を終えてホテルに戻りました。朝食やランチの店を調べたところ、どこも予約で満席。コロナも落ち着いて、京都にもようやく人出が戻ってきたということなのでしょうね。
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋色の京都・奈良

2021年11月17日 | お出かけ
サッカーワールドカップ アジア最終予選、日本代表がオマーンに一矢報いましたね。初戦でまさかの敗北を喫したオマーンに雪辱を果たし、オーストラリアを押さえて2位に浮上しました。
がんばれニッポン代表! がんばれ森保監督!
☘️


長くコロナ自粛を続けていましたが、感染状況が改善した機会に思い切って京都に行ってきました。詳細は、後日改めて記事にすることにして、いくつか写真をアップしたいと思います (^-^)ゞ


京都のホテルに荷物を預け、まずは第73回正倉院展が行われている奈良の国立博物館へ。今回の正倉院展は11月15日までなので、ぎりぎり間に合いましたが、最終日前の日曜日ということもあって、かなりの人出でした (^-^)ゞ


何度行っても、京都に来ると清水寺に行きたくなります(笑)


三十三間堂は初めて参拝しました。慈愛に満ちた仏像の数々に圧倒される思いでした。


のどかな鴨川の流れ。


府立植物園の大銀杏が見事に紅葉していました。


嵐山のトロッコ列車を初体験。京都の秋の自然を満喫しました。


嵐山に来たら、竹林の道は外せませんね。


京のおばんざいも、あれこれ試しました (^-^)ゞ


本当に久しぶりのにしんそば。前に食べたのがいつだったのか思い出せないくらいです。

2泊3日の旅でしたが、秋の京都をのんびりゆったり散策できました。
これから写真を整理して、立ち寄ったところを紹介できればと思います。
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バンクシー展~天才か反逆者か(後編)

2021年10月16日 | お出かけ
9月に文化庁が発表した「国語に関する世論調査」に興味深い記述がありました。
「破天荒」の本来の意味は「誰も成しえなかったことをすること」ですが、65.4%の人が「豪快で大胆な様子」と思い込んでいたそうです。実は私もその一人。しかも、「豪快で大胆」プラス「常識はずれ」や「無茶苦茶」といったやや悪いニュアンスを含むと思っていました。そうではなくて、とてもポジティブな表現だったのですね。
もう一つは「ら抜き言葉」。「ら」を省くのは個人的にはあまり好きではなく、かと言って無理やり「ら」を加えると不自然なこともあるので、文字にするときには冗長ではあっても「~することができた」と書いてきました。調査では、「見れた」や「来れます」を使う人が遂に5割を超えたそうです。一方、「出れる」は48.1%、「食べれない」は33.4%との結果。微妙ですね。「ら抜き言葉」は本来の使い方ではないのですが、文化庁によれば、「言葉の変化の途上にあり、一概に誤りとまでは言えない」のだそうです。そう遠くない将来、「ら抜き言葉」の方が本来の使い方を圧倒する日が来るかもしれませんね。
🍀

さて、長くなってしまいましたけれども、バンクシー展の続きです。これが最後ですので、もう少しお付き合いいただければ幸いです (^-^)ゞ
《Brexit》

2017年5月の作品。ドーバー海峡近くの民家の壁に描かれた大きなEU旗から、作業員が星のひとつを削り取っています。削られている星は、前年の国民投票でEU離脱が決定したイギリス。EU離脱を巡って英国内で喧々諤々の議論が行われていた時節で、フランス大統領選挙が行われるその日に公開されたものです。英国とヨーロッパを隔てるドーバー海峡という場所も象徴的ですね。
タイトルの”Brexit”は、”Britain(イギリス)”と”exit(離脱)”を合わせた造語で、イギリスのEU離脱を意味しています。

《幻の新Brexit》

”Brexit” はEU離脱をめぐる混乱を風刺した、バンクシーの傑作のひとつでしたが、2年後の2019年8月、白いペンキで塗りつぶされてしまいました。これに対しバンクシーは、「ブレグジット(イギリスのEU離脱)の日には、このように塗り替えるつもりだった」と、自身のインスタで公表したのがこの写真。EU旗が崩れ落ちても、イギリスを象徴する星だけは未だに削り落とせずに残っていますね。幻となったこの新作は、欧州統合を目指すEUの価値観を否定しつつ、延期を重ねて一向に離脱しない英国を批判するメッセージが込められているものと考えられます(英国が離脱したのは2020年1月31日)。
元々の作品が白ペンキで塗りつぶされたことについて、バンクシーは「別に構わない。大きな白い旗が僕の言いたいことを語ってくれるだろうから」と皮肉っています。

《Developped Parliament》

元々は、2009年に”Question Time”と題して描かれた油彩画。細部に手を加えたのち、EU離脱が迫る2019年、”Developped Parliament”(退化した議会)と改題されました。
英国下院で議論している政治家たちをチンパンジーに置き換えたこの作品は、EU離脱問題で揺れていた議会を風刺したもの。バンクシーは「今は笑え、でもいつかは誰も責任をとらなくなる」というコメントを添えています。

《The Royal Family》

バッキンガム宮殿のバルコニーから手を振るイギリス王室を道化風に描いた作品。建物のオーナーは壁画をそのまま残すつもりでしたが、市の職員が誤って大部分を黒いペンキで上塗りしてしまったそうです。

《Turf War》 

”Turf War”は、2003年7月に開かれたバンクシーの初個展。”Turf”は芝や敷地の意味で、"Gulf War(湾岸戦争)”をもじったものです。
2000年のメーデーにロンドンで起こった暴動で、チャーチル元首相の銅像にモヒカンのように緑の芝生(turf)を頭に載せるといういたずらが発生しました。バンクシーはそれをいたく気に入り、「ここ10年で最高のVandalism(芸術的破壊行為)だ」と語ったそうです。このいたずらをバンクシー流に作品化したものがこの ”Turf War” なのだとか……。

《ONE NATION UNDER CCTV》

壁に「CCTV(監視カメラ)の下で、国民よ一つになれ」というメッセージを書く少年。その様子を警察犬を連れた警察官が地上から撮影しています。世の中が進化するほど監視の目が強化され、プライバシーが失われるというバンクシーの危機感が伝わる作品です。右に見える監視カメラは本物という点が、このメッセージに緊迫性を与えていますね。

《What are you looking at?》

これも同じような意図のもとに制作されたシンプルな作品です。監視カメラが覗く先の壁に ”What are you looking at?” ロンドンに設置された多数の監視カメラを揶揄し、プライバシーの侵害や過剰な情報社会に対する批判が込められています。

《Mild Mild West》

バンクシーがまだ名を知られる前、ごく初期の作品 ”Mild Mild West” 。テティベアが機動隊に向かって火炎瓶を投げつけようとしています。
この頃ブリストル(バンクシーの出身地)では、無許可のレイブパーティ(ダンス音楽を一晩中流す大規模な音楽イベント)が流行し、警察の弾圧を受けていたことに対する反発を表わしたものと言われています。

《Napalm》

ミッキーマウスとドナルド・マクドナルドに手を引かれている少女に記憶のある方は多いと思います。ベトナム戦争のさなか、南ベトナム軍が投下したナパーム弾で大やけどを負い、泣きながら逃げる子供たちを撮った報道写真です。この写真は『戦争の恐怖』と題して世界中に配信され、撮影したAP通信のベトナム人カメラマン、フィン・コン・ウト氏はピューリッツァー賞を受賞しました。
ミッキーとマクドナルドはアメリカを象徴する存在で、バンクシーの反戦・平和主義や反資本主義を表わしています。
この空襲で重度の火傷を負ったファン・ティー・キムフックさん(中央の少女、当時9歳)は一命は取りとめたものの、この後17回にも及ぶ手術を受けました。国際的な反戦活動家として活躍する彼女は結婚して2児の母となり、現在はベトナム人のご主人とともにカナダで暮らしておられるそうです。

《FLAG》

2006年に公開されたクリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」で再び話題になった報道写真「硫黄島の星条旗」をモチーフに、バンクシーが制作した作品。元になったのは、太平洋戦争中の1945年2月23日、硫黄島・摺鉢山の頂上に星条旗を掲げる6人の兵士を撮影した写真です。撮影した戦場カメラマン ジョー・ローゼンタールは、二次大戦で最も悲惨な戦闘と言われる硫黄島の戦いを伝えたと評価され、その年のピューリッツァー賞を受賞しました。
星条旗を掲げる子供たち、動かなくなったボロボロの車、硫黄島の星条旗をモチーフに描いた”FLAG”....その意図は明らかではありませんが、戦争の悲惨さや虚しさ、反資本主義のメッセージを込めたもののようにも思えます。

《Applause》

同じく戦争の様相をモチーフにした作品。2003年に始まったイラク戦争では、米軍による空爆の映像などが24時間ノンストップで世界中に配信されました。まるでTVショーのように繰り広げられる戦争の報道。空母上の戦闘員が掲げている ”Applause” とは「拍手喝采、称賛」と言った意味で、TV収録などでディレクターが観客に拍手を促すときに、こうしたフリップが出されます。バンクシーはこれに、出撃する戦闘機に ”Applause(拍手)” とサインを送ることを重ねて、戦争報道のあり方を揶揄しているのでしょう。

《No Ball Games》

2人の子供が ”No Ball Games(球技禁止)” と書かれた標識で遊んでいます。禁止するばかりで、子供たちのための遊び場も作らないことに対する批判が込められいるのだと思います。

《Pulp fiction》

映画『パルプ・フィクション』で、主演のジョン・トラボルタとサミュエル・L・ジャクソンが拳銃を構えるシーンですが、バンクシーは拳銃をバナナに置き換えました。(ちなみにこの映画、私も観たことがあります)
ロンドンのオールド・ストリート駅近郊の壁に描かれたこの作品は市民に人気でしたが、ロンドン交通局によって消去されました。するとバンクシーは同じ場所に、拳銃を構えるトラボルタとジャクソンにバナナの着ぐるみを着せた、新しいパルプ・フィクションを描いたのです。交通局に対するバンクシーの見事な応酬が話題を呼び、”Pulp fiction” の人気をますます高めたのだそうです。

《Dismaland》

ディズマランドは、バンクシーが2015年に5週間限定でオープンしたテーマパーク。”disma" は「不愉快」「陰鬱」という意味の“dismal” からとったもので、”Amusement Park” ではなく ”Bemusement(困惑) Park” と呼びました。TESCOの企業スローガンをもじって ”Very Little Helps” とやったように、バンクシーはシャレや言葉遊びが好きなのかもしれませんね。


Dismalandは、夢の国ではなく憂鬱の国。パーク内のすべてのものが陰鬱で、違和感に満ちていたそうです。

《Police riot track》

"riot” とは「暴動」「騒動」「反乱」といった意味。警察車両が反乱を起こして、子供たちの遊び場になるという意味合いなのでしょうか。
この作品は、ディズマランドの開園を手伝ってくれたアーティストへのプレゼントとして制作されました。

《The walled off hotel》

バンクシーがプロデュースしたベツレヘムのホテル。ホテルの前はイスラエルとパレスチナを分断する壁が築かれているので、”walled off” 。別名「世界一眺めの悪いホテル」と呼ばれます。外観・内装ともにバンクシーらしい風刺に満ちており、まるでテーマパークのようなホテルだそうです。ストリートアートや絵画だけではなく、ホテルまで手掛けていたんですね。

《Love is in the air》

覆面の青年が投げ込もうとしているのは、火炎瓶や手りゅう弾ではなく花束。反戦や非暴力など、平和への祈りのメッセージが込められています。元々はベツレヘム郊外にある建物の壁に描かれたもので、バンクシーのグラフィティの中で最も知られている作品でしょう。私も一番好きなバンクシー作品のひとつです。”Flower Thrower” や ”Flower Bomber” などの別名で呼ばれることもあるようです。


前編でも載せましたが、3枚の組み合わせで構成された作品も展示されていました。

《God bless Birmingham》

ホームレスの男性が大きな荷物を枕にベンチに寝転ぶと、レンガの壁に描かれた2頭のトナカイに引かれて、夜空に舞い上がるサンタクロースのよう。グラフィティと動画を組み合わせた、新しいタイプの作品です。自身のインスタに映像を投稿しているそうですから、ひょっとすると見ることができるかもしれませんね。

《Venice in Oil》

この作品も動画で表現されています。いくつかのキャンバスをパズルのように組み合わせると、ヴェネツィア運河を漂う白い大きなクルーズ船が姿を現します。巨大なクルーズ船から排出される油による海洋汚染へのバンクシーのメッセージが込められています。

《Bathroom》 

バスルームで傍若無人にいたずらを繰り広げるネズミが描かれています。バンクシーはこの作品をインスタに揚げ、「家で仕事をすると、妻にひどく嫌がられる」とコメントを添えているそうです。便器の下の部分は敢えてカットししました (^-^)ゞ

《Girl with Heart Baloon》

「風船と少女」は、バンクシーが長年描き続けるモチーフで、赤いハートの風船は、愛や希望を表現したものと言われています。このシリーズは世界各地で描かれていますが、その土地ならではの問題に即してアレンジが加えられるそうです。
”Love is in the air” と並んで最も有名なバンクシー作品のひとつですね。


『バンクシー展 天才か反逆者か』には、初期のころから最近まで70点以上の作品が展示されており、見ごたえのある展覧会でした。皮肉や風刺が前面に出過ぎた作品には違和感を禁じ得ないものの、ステンシル画に込められたメッセージには共感を抱かせるものが多くありました。
「天才か反逆者か」は別として、ともすればいたずらの延長線でしかなかったグラフィティをアートに昇華させたことや、世界中の著名な美術館などに潜入し自身の作品を展示したことなど、「誰も成しえなかったことをやり遂げた」という本来の意味のみならず、「豪快で大胆」でもあり、まさに「破天荒」なアーティストであることは間違いないと思います。これから公開される作品にも大いに興味が湧いてきました。
(写真は、ミュージアムショップで購入した絵葉書 ”Love is in the air”)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バンクシー展~天才か反逆者か(前編)

2021年10月13日 | お出かけ
手に汗を握る接戦となった昨晩のサッカー・ワールドカップアジア最終予選。スピード感のある展開で、日本がオーストラリアに競り勝ちましたね。これで勝ち点6、グループB 4位とまだ厳しい状況に変わりはありませんが、この勢いを来月11日に行われるベトナム戦に繋げ、カタール本大会出場に向けて挽回してほしいと思います (^-^)ゞ
さて、緊急事態宣言やまん延防止重点措置が全国的に解除となった今月初め、福岡・天神で開催中の「バンクシー展 天才か反逆者か」を観に行ってきました。


バンクシー(Banksy)は、ロンドンを中心に活動する神出鬼没の覆面アーティスト。誰も彼の名前や顔、年齢などを知らない、謎に包まれた存在です。建物の外壁や塀、橋などをキャンバスに、主として「ステンシル」という型紙を用いたグラフィティアートを残してきました。秘密裏に世界各都市を訪れてはステンシルアートを描き上げ、誰も知らない間に立ち去ることから、「芸術テロリスト」とも呼ばれるバンクシー。反戦、反消費主義、難民問題など平和主義的メッセージを込めた彼の作品は人々の共感を呼ぶ一方で、皮肉や風刺を込めた作風や、公共の場や個人の所有物に作品を描くというパフォーマンスには賛否両論があるようです。(写真は、”Love is in the air”)


「バンクシー展 天才か反逆者か」の会場、天神大名UNITED LAB。地下鉄空港線の天神駅、あるいは赤坂駅から歩いて10分弱です。
日本では、2020年から2022年にかけて開催されているこの展覧会は、横浜、大阪、名古屋を経て現在はこの福岡会場。次は広島(11月6日~12月5日)、東京(12月12日~2022年3月8日)を巡回する予定です。


消毒、検温、代表者名と連絡先の記入を終えて会場へ。チケットは予約制で、基本的には日時指定となっているため、あらかじめ密は避けられるようなシステムになっています。


入口を入ってすぐの部屋では、バンクシー作品を大きなスクリーンで紹介していました。
《PARKING》
2010年、ロサンゼルスの地下駐車場の壁に描かれたブランコに乗る少女。PARKINGから"ING"を消して"PARK”……子供たちの遊び場であった公園が駐車場へと姿を変え彼らの遊び場が失われているというメッセージが込められています。
《狙われた鳩》
イスラエル軍の監視塔に面した、パレスチナ・ベツレヘムの壁に描かれた2007年の作品。オリーブの枝を咥えた平和の象徴 ハト。防弾チョッキを着た胸には、よく見ると照準が描かれており、イスラエル軍の銃口に狙われていることを示唆しています。

《インスタレーション・アーティストスタジオ》

バンクシーが制作活動の拠点にしているスタジオを再現した空間。雑然としスタジオの片隅に佇んでいるのが、覆面アーティスト バンクシーですね。

《Shop 'til You Drop》

ショッピングカートを握りしめて落下する女性。ロンドンの高級ショッピング街のビルに描かれたこの絵は、消費社会・格差社会への風刺を表現していると受け止められています。

《BOMB LOVE》
《Laugh now, but one day we’ll be in charge》


左:大きな爆弾を抱いて、うれしそうに微笑む女の子。無垢な少女と爆弾を対比させ、戦争の愚かさや非情さをクローズアップしたもの。
右:バンクシーがまだ無名の時代、社会的地位の低い若者の気持ちを表現した作品。プラカードには、”Laugh now, but one day we’ll be in charge(今は笑えばいい、いつか俺たちの出番が来る)”と書かれています。バンクシーの作品には、チンパンジーを擬人化したキャラクターが度々登場します。

《Christ with shopping bags》

慈悲や思いやり、寛容、感謝の祝日であったはずのクリスマスが、プレゼントなどで大量に消費する日に代わってしまったことへの皮肉を込めた作品。

《GRIM REAPER》

ロンドン塔の大時計の上に座る死神の顔は「スマイリー」。既に使い尽くされてしまったアイコンを風刺したものでしょうか。

《Donut Police Escort》

上のグリン・リーパーと同じく、グラフィティではなくアトリエで制作された作品。
資本主義の象徴として描かれたドーナツが、警察(権威)によって守られていることを揶揄しています。

《out of time》

2003年に発売されたイギリスの人気ロックバンドBLURのシングル盤ジャケット。
バンクシーが商業ベースの作品を手掛けるのは非常に珍しいのだそうですが、BLURとは反戦思想を共有していたと言われています。

《Think Tank》

同じくBLURの7枚目のアルバム『Think Tank』のアルバムジャケットとして描かれた作品。
ガスマスクを着けて抱き合う恋人同士が描かれています。

《Festival》

屋台に並んでいるのは、若い母親やパンクス、ヒッピー、フリーガン、左翼学生など、世間から「反資本主義者」と見なされている人々。そんな彼らが並んでまで買おうとしているTシャツには “Destroy Capitalism(資本主義をぶっつぶせ)”の文字が書かれています。資本主義に反発する人々が、資本主義にどっぷりと取り込まれている様子を皮肉った作品と想像できます。

《His Master’s Voice》

ロンドン中心部ショーディッチのナイトクラブの中庭に描かれた作品(写真右端)。日本ビクターやレコード会社HMVのトレードマークとして知られる、蓄音機に耳を傾ける犬 ニッパー(元になったのは、フランシス・バローが描いた”His Master’s Voice”)。そのニッパーがバズーカ砲を蓄音機に向かって構えています。
この絵の「主人」と「飼い犬」の関係を、バンクシーは「権威」と「民衆」などに置き換えて反権威的メッセージを伝えようとしたものなのでしょう。

《Very Little Helps》

子どもたちが忠誠を尽くすように掲揚しているのは、国旗ではなくイギリスの大手スーパーマーケットチェーンTESCOのショッピングバッグ。資本主義の下では、TESCOのような大企業が市場を独占し、肥大化した企業は「国家」のように強力な存在となって、人々を盲目的・従属的にしてしまうことを風刺したもので、いかにもバンクシーらしい作品だと思います。
タイトルの ”Very Little Helps(ほとんど何の役にも立たない)”は、TESCOの企業スローガン ”Every Little Helps(どんな小さなことでも役に立つ)”をもじってつけられました。(この作品は、他の多くのストリートアーティストから上書きを繰り返され、原形をとどめていないそうです)

《Pants》

こちらはその派生バージョンで、難民支援のためのチャリティキャンペーンのために制作されたもの。
圧政や内戦を逃れてアフリカや中近東から渡ってくる難民は、その日の生活にも困窮しており、とりわけ下着不足は衛生上大きな問題となっていました。主催者はそのことを広く知ってもらうため、有名人にサインしてもらった下着をオークションで販売し、収益を難民救済に当てるキャンペーンを企画。バンクシーは、パンツの代わりにユニオンジャックを描いた作品を提供することによって、収益に寄与するのみならず、英国政府が難民に手を差し伸べるべき(紛争地域に強制送還しないよう難民認定を行う)というメッセージを込めたと言われています。

《Soup cans》

イギリスやフランス、アメリカなど世界の著名な美術館(ルーヴルを含みます)に潜入したバンクシー。それらの美術館に、自らの作品を無断で展示したことは一度や二度ではありません。しかも、作品を持ち込み、壁に展示し、その場を立ち去るまでの様子をYou Tubeで流すというパフォーマンスまでやってのけ、世界を驚かせました。
2005年3月25日、MoMA(ニューヨーク近代美術館 )でアンディ・ウォーホルの名作《Campbell's Soup Cans》の隣に、自らのパロディ作品《TESCO’s Soup Cans》を無断で展示。この絵は、なんと、美術館のスタッフや警備員、入場者を含め、誰にも気づかれることなく、6日間にわたって展示(放置)され続けました。(このとき無断展示したのは、スープ缶1個の絵)

《バンクシーのネズミ》

バンクシーは、ネズミをモチーフにしたグラフィティを多く残しています。


回し車(ハムスターリング)に見立てた時計。


『ネズミはどのような状況でも生き抜くことのできる動物で、都会環境に最も適合した唯一の野生動物だ。私たちはみな、ある意味でネズミなのだ。私たちは、システムが作り出す環境のなかで生き抜こうともがき、そのシステムを出し抜こうと、ずるく、巧妙に生きている』(上記パネルより)

《I love London rat》

上の写真と同じネズミの絵ですが、プラカードには ”I ❤️ LONDON ROBBO” と書かれています。
キング・ロボも、ロンドンを中心に活動するストリートアーティストですが、バンクシーとは犬猿の仲。お互いのグラフィティを修正し、上書きしあってきました。これもその一つで、バンクシーが描いたネズミのプラカードに、ロボが書き加えたのだそうです。

《IF GRAFFITI CHANGED ANYTHING…》

ロシア生まれの米国人で、無政府主義や女性の権利を主張した活動家、エマ・ゴールドンの "If voting changed anything they'd make it illegal(もし選挙で世の中が変えられるのなら、彼らは選挙を禁止しているはずだ)”というスローガンをもじって、バンクシー自身のメッセージに置き換えた作品。ここにもネズミが描かれていますね。

《Banksy’s rat in Tokyo ???≫

バンクシーのネズミと言えば、東京でもそれらしきステンシル画が見つかっています。2019年初め、臨海線「ゆりかもめ」の日の出駅近くの防潮堤に描かれた、傘を手にしたネズミの絵。本当にバンクシーが描いたものかどうかは明らかになっていませんが、小池東京都知事が、ご自身のインスタグラムにアップされたことが話題になりましたね。(写真はそのインスタからお借りしました)

バンクシー展の紹介はもう少し続きます。長くなりましたので初回はここまでとし、残りは次回アップしたいと思います (^-^)ゞ
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホタルの里~宗像市山田

2021年06月14日 | お出かけ
夏の風物詩、ホタルのシーズンですね。先月下旬に続いて、今年2度目のホタル狩りに出かけてきました。


今回行ったのは、岡垣町高倉神社付近の汐入川よりも少し西、宗像市に入ったあたりにある「山田ホタルの里公園」です。


公園内にあるホタルの館。1階がホタルの資料館なのですが、現在は新型コロナのため閉館しています。


ホタルの里は、釣川の湿地帯に整備された公園。観察道が湿地帯をぐるりと囲んでいます。


池を彩るカキツバタ。


湿地帯には木道(橋)が架けられていますが、老朽化のためか現在は封鎖されています。


日没後20分くらいからあちこちでホタルが瞬きはじめました。


シャッタースピードを10秒、橋の欄干にカメラを固定してなんとか写りました。ピントはボケボケですが……(^^;)


明るく見えますが、実際にはほぼ真っ暗です。


周囲を飛び交う緑色のやわらかな光。乱舞と言ってもいいくらいたくさんのホタルが現れてくれました。


北九州市周辺でもホタルの名所と言われる場所がいくつかあるようです。来年はまた違う場所でもホタル狩りを楽しめればと思います。
また、山口県下関市豊田町の木屋川には、6月になるとものすごい数のホタルが飛び交うそうです。今年はコロナ禍のため中止となりましたが、例年6月上旬から下旬にかけて、そんな幽玄の世界を観賞するホタル舟が運行されますので、これもいつか体験してみたいものです。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする