人間の心理というのは複雑ですね。
(以下、ネタバレ)
たとえば、歌人の師匠・浅沼幸人(小林勝也)が高塔織絵(三田佳子)の恋人を毒殺した理由。
<弟子・織江の歌人としての才能を開花させたかったから>
その裏には、<織江を自分のものにしたい>という思いもあったのだろうが、あまりにも観念的な殺害動機。
動物なら、食べるため、生きるためと実に単純明快だが、人間の場合はあまりにも複雑怪奇。
織絵の心理も複雑。
<恋人を殺されて嬉しかった><犯人が浅沼であってほしいと思っていた>
<犯人が浅沼であることを確かめる>ために、<自分が浅沼に愛されていることを確かめる>ために、42年前の小瓶の毒殺を再現して、浅沼を試した。
そして、すれ違いの勘違いなのだが、<犯人が浅沼でなく、自分は愛されていなかったこと>を知って、絶望して自殺する。
こんな複雑な人間心理を1時間で、描いてしまう「相棒」の手腕って、やはりすごいですね。
丹念に織り込まれた見事な織物のよう。←そう言えば、彼女の名前は<織絵>だ。
しかも<人生の皮肉>も描かれている。
織絵が浅沼を試した42年前の毒殺の再現。
浅沼は、42年前の罰を受ける意味で、毒薬入りのコーヒーを煽る。
織江は、自分が彼に愛されていることを確かめるために、コーヒーに毒を入れたのに。
何というすれ違い!
おまけに先述のとおり、織絵は勘違いし、絶望して自殺してしまう。
何という人生の皮肉!
ほんの少し人生の歯車がうまく噛み合っていれば、織絵の自殺はなかったかもしれないのに。
それにしても運命の神は非情だ。
織絵の自殺の真相を右京(水谷豊)から聞かされて、悲痛な叫びをあげて畳に倒れ込む浅沼。
運命の神は、こうした皮肉な結末を突きつけることで、浅沼に42年前の殺人の罪を償わせたのだ。
右京も倒れ込んだ浅沼に言葉をかけない。黙って空を見つめる。
地面に転がって死んでいる蝉が何を意味しているのだろう?
今回も誰も救われないつらい物語でした。
「相棒」は刑事ドラマの新しい領域に向かっている。
※追記
毒杯を煽らせて、犯人を特定するという方法は、ウイリアム・アイリッシュの短編「晩餐後の物語」(創元推理文庫)にある。
今回のエピソードは、そこから着想を得たのか?
※追記
織絵が毒杯を煽って死んだことで、「ロミオとジュリエット」を思い出した。
「ロミオとジュリエット」もまた、すれ違い、勘違いで毒杯を煽って死んでしまう物語だった。
※追記
織絵の最期の句は次のようなもの。
「罪あらば 罪ふかくあれ 紺青の空に背きて 汝(なれ)を愛さん」
実にせつない。
これも人間心理の複雑さ。
(以下、ネタバレ)
たとえば、歌人の師匠・浅沼幸人(小林勝也)が高塔織絵(三田佳子)の恋人を毒殺した理由。
<弟子・織江の歌人としての才能を開花させたかったから>
その裏には、<織江を自分のものにしたい>という思いもあったのだろうが、あまりにも観念的な殺害動機。
動物なら、食べるため、生きるためと実に単純明快だが、人間の場合はあまりにも複雑怪奇。
織絵の心理も複雑。
<恋人を殺されて嬉しかった><犯人が浅沼であってほしいと思っていた>
<犯人が浅沼であることを確かめる>ために、<自分が浅沼に愛されていることを確かめる>ために、42年前の小瓶の毒殺を再現して、浅沼を試した。
そして、すれ違いの勘違いなのだが、<犯人が浅沼でなく、自分は愛されていなかったこと>を知って、絶望して自殺する。
こんな複雑な人間心理を1時間で、描いてしまう「相棒」の手腕って、やはりすごいですね。
丹念に織り込まれた見事な織物のよう。←そう言えば、彼女の名前は<織絵>だ。
しかも<人生の皮肉>も描かれている。
織絵が浅沼を試した42年前の毒殺の再現。
浅沼は、42年前の罰を受ける意味で、毒薬入りのコーヒーを煽る。
織江は、自分が彼に愛されていることを確かめるために、コーヒーに毒を入れたのに。
何というすれ違い!
おまけに先述のとおり、織絵は勘違いし、絶望して自殺してしまう。
何という人生の皮肉!
ほんの少し人生の歯車がうまく噛み合っていれば、織絵の自殺はなかったかもしれないのに。
それにしても運命の神は非情だ。
織絵の自殺の真相を右京(水谷豊)から聞かされて、悲痛な叫びをあげて畳に倒れ込む浅沼。
運命の神は、こうした皮肉な結末を突きつけることで、浅沼に42年前の殺人の罪を償わせたのだ。
右京も倒れ込んだ浅沼に言葉をかけない。黙って空を見つめる。
地面に転がって死んでいる蝉が何を意味しているのだろう?
今回も誰も救われないつらい物語でした。
「相棒」は刑事ドラマの新しい領域に向かっている。
※追記
毒杯を煽らせて、犯人を特定するという方法は、ウイリアム・アイリッシュの短編「晩餐後の物語」(創元推理文庫)にある。
今回のエピソードは、そこから着想を得たのか?
※追記
織絵が毒杯を煽って死んだことで、「ロミオとジュリエット」を思い出した。
「ロミオとジュリエット」もまた、すれ違い、勘違いで毒杯を煽って死んでしまう物語だった。
※追記
織絵の最期の句は次のようなもの。
「罪あらば 罪ふかくあれ 紺青の空に背きて 汝(なれ)を愛さん」
実にせつない。
これも人間心理の複雑さ。