平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒10 「消えた女」~「彼女はいいジャーナリストになりますよ」

2011年11月17日 | 推理・サスペンスドラマ
 職場にもマンションにも存在しない女・山原京子(森口彩乃)。
 彼女のいたホテルでは殺人事件が起こり、殺された男は紛争地を渡り歩いている男。
 ホテルの駐車場からは外務省ナンバーの車が乗りつけ、捜査をする右京(水谷豊)たちには上から圧力。

 一見すると、<国際事件><国家的謀略>を思わせる巨大な事件。
 しかし、蓋を開けてみると……。

 以下、ネタバレ。


★事件はふたつの事件が絡み合っていた。
 ひとつは<麻薬売買>に関わるトラブル→殺人。
 もうひとつは人材派遣業を隠れ蓑にした<売春>。政治家や霞ヶ関官僚を相手にした高級娼館。

 ひとつひとつは単純な事件だが、それらが絡み合うと事件は複雑になる。
 ひもや電気コードが絡まって、わけがわからなくなるのと同じで、事件は難しくなり<国家的謀略>に見えて来る。
 その絡まったひもを解きほぐしていくのが、右京の役割だ。
 これは連立方程式を解くのと同じで、一方の答えが出て来ると、もうひとつの答えが出て来る。

★面白いのは、人材派遣業(この作品では<ブレイブスタッフ>という会社)の設定だ。
 政治家や霞ヶ関官僚を相手にした高級娼婦の派遣。
 その派遣部署は<営業促進部>という名で公にされていない。
 マンションの5つの部屋を社宅として借りていて、犯行隠しのために別の派遣スタッフを住まわせる。管理人も派遣スタッフで入れ替え、警察が聞き込みに来た時に備える。
 実際にありそうで、上手い設定だ。
 現実にある職業の背後にこんな<裏の仕事>が隠されていたなんて、実にワクワクする。

★余韻は右京のラストの言葉。
 通信社の記者をしている守村やよい(本仮屋ユイカ)について、右京は「彼女は『助けてくれ』という山原京子の心の声を聞いていた。彼女はいいジャーナリストになりますよ」と語る。
 確かに、人間を相手に取材するジャーナリストにとって<感じる力>って大切ですよね。
 今の多くのマスコミは、感じることはせず、対象を批判・弾劾して、それを商売にしている。

 あと、味があるのは右京たちと伊丹たち(川原和久)の関係。
 「ヤバい捜査は特命係に」(笑)、「立っているものは特命係でも使え」(笑)。
 伊丹たちは「正義感の強いおふたりだから」と言って特命係を利用し、右京も利用されることを良しとしている。
 この屈折した共闘関係。
 なんだかんだ言って、両者は理解し合っているんですね。


※追記
 今回の「消えた女」は、W・アイリッシュの「幻の女」、あるいは短編「階下で待ってて」を意識しているのか?
 また、会社の中に特殊な秘密の部署があるという設定は、黒田研二「ウエディング・ドレス」(講談社刊)にある。


コメント (2)
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