平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

PRICELESS~炊き出しやホームレスを安易に扱われたことに怒りすら感じる

2012年10月23日 | その他ドラマ
 甘っちょろいドラマである。
 以下、批判なので読みたくない方はスルーして下さい。

 物語は、いきなり不条理な状況に落とされた金田一二三男(木村拓哉)が七転八倒する物語。
 今までの木村さんのイメージを逆手にとって、<カッコ悪い木村拓哉>を描くというのが企画意図だろう。
 だから木村さんを<野宿者><空き缶拾い>に。
 しかし、少しもこの金田一にまったく感情移入できない。
 金田一自身は、この状況から抜け出すために大きな努力はしていないんですよね。
 行きつけのバーのマスターはいい人で働かせてくれるし、たまたま出会ったアパートの一厘(夏木マリ)は500円で朝食付きの宿を与えてくれる。
 木村さんがホームレスをやるというから期待していたけど、<野宿者><空き缶拾い>はドラマのためのただの素材でしかない。
 上っ面の表面だけをなぞっただけ。
 ここから現代の<貧困問題>に切り込むのかと思ったら、まったくそんな気配はない。
 まあ、月9ですからね、そんな問題は扱わないか。
 だから湯浅誠さんの貧困問題の本などを読んでテーマにしている僕としては、炊き出しやホームレスを安易に扱われたことに怒りすら感じる。

 この作品の言いたいことは
★500円稼ぐのって大変! だとか
★お金よりも大切なものがある! だとか
★貧乏になって見えて来る本当の人間関係 とかだろうが、テーマとしては実に甘っちょろい。

 クライマックスの<ビールか景品のブルドーザーか>という選択だって、カイジくんなら迷わずビールを選んでいますよ。
 ブルドーザーを選んだ金田一よりビールを選ぶカイジくんの方が、現代ではずっとリアリティがある。
 ちなみにカイジくんとは『賭博黙示録カイジ』の主人公のことです。藤原竜也さんで映画にもなった。
 較べること自体が意味のないことなのかもしれませんが、『カイジ』と較べてみれば、この作品がいかに甘っちょろいかがよくわかる。
 『カイジ』の世界がハード過ぎるのなら、せめて『嫌われ松子の一生』を書いた山田宗樹さんの『ジバク』くらいの内容にしてほしかった。
 『ジバク』は一歩間違えばどんどん転落していってしまう非情な現代を描いているが、『PRICELESS』は完全に<お子様ランチ>の世界。
 未来の見えない閉塞した現実に生きている人が見れば、鼻で笑ってしまう内容だろう。


コメント (2)
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