平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

花燃ゆ 第1回「人むすぶ妹」~この世の中のためにおのれがすべき事を知るために学ぶのです

2015年01月05日 | 大河ドラマ・時代劇
 人はなぜ学ぶのか?

 吉田寅次郎(伊勢谷友介)は言う。
「おのれを磨くため」

 小田村伊之助(大沢たかお)は言う。
「この世でおのれがすべきことを知るため」
「おのれを磨き、この国の役に立つため」

 公(おおやけ)の精神ですね。
 決して出世のためとか、お金のためとかではない。

 これで寅次郎と伊之助は「骨のあるやつ」とお互いを認め合い、友になった。

 そんなふたりを繋ぐきっかけになったのが、『海防憶測』だ。
 いわゆる禁書。
 戦前で言えば、共産主義の本がこれにあたるのだろうが、権力は自分たちの体制を揺るがす批判的な書物を嫌う。
 本来なら、さまざまな考え方や情報を与えて、人々に判断させるべきなのに、自分に都合のいい情報しか与えようとない。
 そして、時として全体が間違った方向に行ってしまうことがある。
 寅次郎が言うとおり、
「邪な本を読んだとしても、おのれの頭で考えれば何が良く何が悪いか人は分かるはずです。
 おのれの頭で考える事ができる者はかぶれも染まりもしません」
 なんですけどね。

 人はなぜ学ぶのか?
 このテーマの他に、もうひとつ今回、語られたのが、人の<強さ>だ。

 寅次郎は批判を受けることを承知で、『海防憶測』を持っていた人物を擁護し、禁書を読むことの必要性を語った。
 伊之助は『海防憶測』を所持していたのは自分だと名乗り出た。
 ふたりとも自分の信念に忠実な<強い人物>だ。

 そして、文(山田萌々香)も強い。
 叔父に叩かれても、『海防憶測』を持っていた人物について語らなかった。
 また、ラスト、寅次郎と伊之助の強さを見た文は、人見知りを捨てて同年代の子供たちと交わろうとした。

 『海防憶測』で繋がった文、寅次郎、伊之助の三人。

 劇中、文は論語を詠唱し、寅次郎は『人倫』『天命』『至誠』といった言葉を使いましたが、この時代の人たちは漢語文化が体の中にしっかり刻まれていて、背筋がしゃんとしている。
 ひらがなの、やまと言葉だと、どうしても、ふにゃふにゃしてしまうんですけどね。
 漢語って硬質でカッコいいと思います。
 ところで、現在、われわれは、どのような言葉を持っているんだろう?
 ヘイトスピーチの言葉とかは醜いですよね。

 というわけで、この作品、なかなか硬派です。
 決してソフト路線ではない。
 脚本の大島里美さん、宮村優子さんは、こうした背筋のしゃんとした男たちに憧れ、描こうとしているんだと思います。

 この作品が大河ドラマとして決定した経緯については、安倍首相との関係など、さまざまなことが言われ、僕のブログの記事にも多数アクセスいただいておりますが、作品は作品として考えていきたいと考えております。


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2 コメント

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「八重の桜」の合わせ鏡 (コウジ)
2015-01-06 07:24:00
TEPOさん

いつもありがとうございます。

こうして共通点を見てみると、まさに『八重の桜』ですね。
違うのは、おっしゃるとおり、会津か長州かという違いで、<八重とは逆の立場の女性が幕末や明治を見たら、どうなるか>という、合わせ鏡のような印象も受けます。

制作陣は敢えて、そこを狙ったのか?
あるいは、時の政権に媚びるために、単純に長州を持ってきたのか?

今後の作品内容が、その答えを出してくれるような気がします。
しっかりした内容の作品なら、視聴者は見るでしょうし、政治的な意図でつくられた薄っぺらい作品なら見放すでしょうし。
今回の制作陣は大変ですね。

>小田村伊之助の大沢たかおさんはどうしても仁先生に見えてしまいます。

僕も同じです(笑)
大沢さんの醸し出す雰囲気っていいですよね。
娘さんたちの比喩もお見事です!
返信する
既視感 (TEPO)
2015-01-05 21:48:13
>この作品が大河ドラマとして決定した経緯については、安倍首相との関係などさまざまなことが言われ
>作品は作品として考えていきたいと考えております。

私もそのつもりでしばらくは様子を見ています。
たしかに
>権力は自分たちの体制を揺るがす批判的な書物を嫌う
中、保守的な人々と闘うヒーローを描いています。また
漢語文化が骨肉となった彼らは「やまと言葉」にこだわる国学的な文化とも異なっているかもしれませんね。

何と言っても俳優陣が豪華なので演技にも安心感があり、物語もうまく展開するのではないかと思います。
子役さんも、本当に井上真央さんによく似た子を選んでいると思いました。

しかし、私にはどうしても「八重の桜」の雰囲気が重なってしましました。予想はしていましたが。

・まず「敬愛する兄」との深い絆。
・その兄はいずれも藩の軍事教官。
・その兄の親友がやがて夫となる(ただし川崎尚之助は八重の最初の夫だが小田村伊之助は文の二人目の夫)。
・会津藩とは立場は正反対ながら、やがて長州藩にも多くの人が死ぬ運命が待ち構えており、そこで最初の夫との別れがある(ただし尚之助とは離別、玄瑞とは死別)。
・危ういところを優しく理解のある殿様に救われる(ただし容保が救ったのはヒロイン八重、敬親が救ったのは兄寅次郎)。
・伝統的な価値観に基づき厳しい八重の父権八と文・寅次郎の叔父文の進。

あと小田村伊之助の大沢たかおさんはどうしても仁先生に見えてしまいます。
我が家の娘たちも、「河原での落とし物はペニシリンかな?それとも現代から持ち込んだ(グラム陰性菌に対する)薬かな?」などと揶揄しておりました。
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