株価1万5000円割れ アベノミクス売りが始まった
2014年8月10日 日刊ゲンダイ
日経平均株価が1万5000円を割り込んだ。8日の前日比454円もの下げ幅
は今年4番目の大きさだ。その原因は「ウクライナやイラク情勢など地 政学的
リスクの高まり」との解説がまかり通っているが、デタラメだ。これは「アベノ
ミクス売り」が本格的に始まったことを意味する。
この日、財務省が発表した国際収支統計で、今年上半期の経常収支が、比較でき
る85年以降、上半期として初の赤字となることが分かった。13年下 半期も
赤字だったから、これで2期連続。主な原因は輸入コストの増加だ。異次元緩和
による円安政策でも輸出は一向に増えず、コスト増だけが膨らん だ。日本の富
が海外に流出し続けているのだ。
「経常赤字が市場に与えたインパクトは大きい。市場関係者は、想定外の下落が
起きてワケがわからず、『地政学的なリスク』などというもっともらし い理由
をつけたのでしょうが、まず、8時50分に経常収支の赤字が発表され、衝撃が
広がった。午前9時半時点でおよそ200円下げていました。オ バマ大統領が
イラクへの限定空爆を発表したのはその後で、日本時間の午前10時半です。こ
れも、あえてNY市場が閉じた時間に声明を出したわけ で、その時間に開いて
いる東京市場を直撃するのは分かっていたはずです」(RFSマネジメント・
チーフエコノミストの田代秀敏氏)
■理研・笹井氏の自殺も拍車
売りが売りを呼ぶ展開には、理化学研究所の笹井副センター長の自殺も投資家心
理に影響を与えているという。
「この事件で、今年1月に安倍首相が理研を視察した際の写真が海外で大々的に
報じられました。理研の野依理事長、iPS細胞の山中京大教授という 2人の
ノーベル賞受賞学者の前で、笹井副センター長が安倍首相に再生医療について説
明している写真です。アベノミクスの成長戦略で唯一、中身のあ る話が再生医
療だったのに、笹井氏の自殺で再生医療はお先真っ暗、アベノミクスは大失敗と
いう印象を海外投資家に与えた。それも日本売りにつなが りました」(田代秀
敏氏)
アベノミクスが続く限り、貿易赤字の定着は確実で、このままでは通年でも初の
赤字に転落する可能性が高い。そうなると、いよいよヤバイ。株価は今 以上に
下がるし、国内でカネが回らなくなって、日本国債も暴落の危機。その先にある
のは財政破綻だ。