四国霊験記には、霊夢でここの温泉に浴すれば癩病がなおるとつげられた遍路の一向がそのとおりに快癒したので21回の遍路をしたとあります。
「この霊閣に吾が作りし薬王仏この地に湧でる温泉あり。この湯に七度入湯して薬師の陀羅尼を一心に念じて懺悔を行するその時ハ忽ち業病平癒致し本の姿となし得さすぞ。この時剃髪善衣を着し道心修行を致すべし、と御霊夢受けて皆目をさまし互いに顔を打ち眺め夢想の御告げを尊んで有り難涙を流しつつ真言陀羅尼を唱えける。
これより同行勇立ち皆喜んで詞(ことば)を揃え、有難や勿体なや吾等が願望納受有りて助け玉うが尊やと、遍照尊を合掌し早善通寺を発足す。是より札を逆に打ち第六番の御札所安楽寺へと参りける。先ず本堂へと参詣し、大師堂にて三拝九拝懺悔の文を唱えける。是より霊地の温泉に60人の同行が薬師の陀羅尼を一心に念じて湯にぞ入りければ奇妙なるかな、早血色が変りたり。七日の間入湯すれば五体腐れしその体が忽ち元の姿の如く互いに形を見合して見れば見る程元の通り。夢か現か勿体なやと惘(あきれ)て詞も出ざりける。是真言の不思議なり。
是より同行談合して安楽寺の上人に皆髪剃(かみそり)を頂いて道心坊と相成りし上四国の御霊所を廿一度巡るに付我国元へ便を立て、60人が霊験頂き皆業病を平癒し大師の利生尊き事を一十始終を書きあらわし、その上伝言委しく致し早六番を出立す。
国元にはこのよし聞きて村中一同喜びいさみ、夢か誠か勿体なやと遍照尊の不思議をかんじ剃髪する者数多なり。亦は施しするもあり。大いに悦びをするも有り。上を下へと大さわぎ。慳貪邪見のその村が菩提の岸と変じるハ是も大師の御方便。煩悩即菩提心とはこの事也。悪のうらは善と成る、是天理の成す所、その近村も噂を聞きて四国の信者追々出来て千人講を組もあり。亦杉山村の人々ハ我も吾れと四国地へ参詣する者数知れず。然かる所に杉山村の60人七ヶ年のその間に四国の御霊場を二十一遍願望成就、皆同行打ち揃いまづ国元へと下向致す。」
「この霊閣に吾が作りし薬王仏この地に湧でる温泉あり。この湯に七度入湯して薬師の陀羅尼を一心に念じて懺悔を行するその時ハ忽ち業病平癒致し本の姿となし得さすぞ。この時剃髪善衣を着し道心修行を致すべし、と御霊夢受けて皆目をさまし互いに顔を打ち眺め夢想の御告げを尊んで有り難涙を流しつつ真言陀羅尼を唱えける。
これより同行勇立ち皆喜んで詞(ことば)を揃え、有難や勿体なや吾等が願望納受有りて助け玉うが尊やと、遍照尊を合掌し早善通寺を発足す。是より札を逆に打ち第六番の御札所安楽寺へと参りける。先ず本堂へと参詣し、大師堂にて三拝九拝懺悔の文を唱えける。是より霊地の温泉に60人の同行が薬師の陀羅尼を一心に念じて湯にぞ入りければ奇妙なるかな、早血色が変りたり。七日の間入湯すれば五体腐れしその体が忽ち元の姿の如く互いに形を見合して見れば見る程元の通り。夢か現か勿体なやと惘(あきれ)て詞も出ざりける。是真言の不思議なり。
是より同行談合して安楽寺の上人に皆髪剃(かみそり)を頂いて道心坊と相成りし上四国の御霊所を廿一度巡るに付我国元へ便を立て、60人が霊験頂き皆業病を平癒し大師の利生尊き事を一十始終を書きあらわし、その上伝言委しく致し早六番を出立す。
国元にはこのよし聞きて村中一同喜びいさみ、夢か誠か勿体なやと遍照尊の不思議をかんじ剃髪する者数多なり。亦は施しするもあり。大いに悦びをするも有り。上を下へと大さわぎ。慳貪邪見のその村が菩提の岸と変じるハ是も大師の御方便。煩悩即菩提心とはこの事也。悪のうらは善と成る、是天理の成す所、その近村も噂を聞きて四国の信者追々出来て千人講を組もあり。亦杉山村の人々ハ我も吾れと四国地へ参詣する者数知れず。然かる所に杉山村の60人七ヶ年のその間に四国の御霊場を二十一遍願望成就、皆同行打ち揃いまづ国元へと下向致す。」