福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

紀平正美「日本精神」に関東大震災時の考えがありました

2019-02-18 | 法話

紀平正美、「日本精神」(1930)に関東大地震について述べて、「『なにくそ』の日本精神が出た。大地震により日本人に本来の使命を思い起こさせた。・・」とのべています。
「・・
時は大正十二年九月一日、関東の地は大いに震うた。而して震害に次いで火災、東京市の如きはその大半は焼けてしまったのである。・・・火は今を盛りと燃えている。余震も猶ほ時々に来るといふ最中、人々は何処を當てといふことなく・・身を以て逃れつつある、中には病めるものを運ぶあり、傷負へるものもある。或は僅かばかりの荷を持つものあり、或は夫婦して子供を背にし手にし、竹棒などに荷物をつるして行くものもある。誠にこの世の末かとも思はれて其の惨憺たる有様は言語道断の次第であった。 
然るにそれら避難する人の誰を見ても気落失神憂色といふようなものはなくして、皆一種の名状すべからざる緊張味を漂わせている。即ち「何くそ」といふ気持ちが眉宇の間に存在するのを見受けたのである。余はこの状態をみて実にこの気迫を有するこそ日本人でり、日本精神とはこれである、と強く感ぜしめられたことであった。・・この「なにくそ」を代表するものをば我が古典の内に求むれば素戔嗚尊がすなわちその御方である。命は誰も知る如くに天照大神と月読尊と共に三貴公子として伊邪那岐の大神の最後に生まれた御方である。(命は天照大神と月読尊が左と右の眼より生まれたに対して鼻から生まれられたので)命は明らかに人間性を有しており、日本人の代表者であるとみるべきである。この命の「何くそ」といふ精神は中々徹底したものであった。しかるにその力が種々の葛藤の間に純化されてのちは、国土の開拓といふ純粋の行となっておることは実に興味あることである。而してこの命の「何くそ」は今度の地震の際にも強く現わされた所のものである。

・・日本こそは理想の国家であるとして「告日本」の名文を残して行った仏國人パウル・リシャール氏(注)が該書においてこんなことをいっている。「大地貴下の脚下に震撼するとき、深刻に貴下の使命に還れよ」と。・・古典のうちには地震といふ記録は僅かに須佐之男命の挙動のうちにのみその跡が残されて居るのみで別に書き顕してはない。このことと関連してなほ考えおくべきことは一体自己意識的行動が出でてくれば目的結果不一致の法則に支配せられて悲劇を生じ、運命といふ概念は当然発達すべきであるが、わが古典では・・左程に深刻ではないのである。このことは如何に考えおくべきかといふに、実際に活動した自己意識そのものが全体的であり個人的のものでなかった・これの原因がまた米穀に必要であるところの共同作業であろうと思うが、その最大の理由は古典編纂前後の時期における芸術化の精神が悲劇の性質を和らげたによるであろう。」
注・・ポール・リシャールは、フランスの詩人、弁護士、キリスト教の牧師。大正5年(1916)訪日。『告日本國』は大正6年に著作。この著書は日本の世界史的使命と日本人への期待を歌いました。

「曙の児等よ、海原の児等よ
花と焔との国、力と美との国の児等よ
聴け、涯しなき海の諸々の波が
日出づる諸子の島々を讃ふる栄誉の歌を
諸子の国に七つの栄誉あり
故にまた七つの大業あり
さらば聴け、其の七つの栄誉と七つの使命とを
独り自由を失はざりし亜細亜の唯一の民よ
貴国こそ亜細亜に自由を与ふべきものなれ
曾て他国に隷属せざりし世界の唯一の民よ
一切の世界の隷属の民のために起つは貴国の任なり
曾て滅びざりし唯一の民よ
一切の人類幸福の敵を亡ぼすは貴国の使命なり
新しき科学と旧き知慧と、欧羅巴(ヨーロッパ)の思想と
亜細亜の思想とを自己の衷(うち)に統一せる唯一の民よ
此等二つの世界、来るべき世の此等両部を統合するは貴国の任なり
流血の跡なき宗教を有てる唯一の民よ
一切の神々を統一して更に神聖なる真理を発揮するは貴国なる可し
建国以来、一系の天皇、永遠に亘る一人の天皇を奉戴せる
唯一の民よ
貴国は地上の万国に向かって、人は皆な一天の子にして、天を永遠
の君主とする一個の帝国を建設すべきことを教へんが為に生れたり
万国に優りて統一ある民よ
貴国は来るべき一切の統一に貢献せん為に生れ
また貴国は戦士なれば、人類の平和を促さんが為に生れたり
曙の児等よ、海原の児等よ
斯く如きは、花と焔との国なる貴国の
七つの栄誉と七つの大業となり」(大川周明訳))

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 元三大師 | トップ | 密教経典と護国思想 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

法話」カテゴリの最新記事