バラエティ、コメディー、どちらでも良いのですが、クスクス笑うところもあり、人情や涙もあり、楽しめる映画となっています。
芸達者な脇役たち
”引っ越し大名”の話の主は、江戸時代前期、越前大野藩主松平直基の長男と生まれた松平大和守直矩のことで、実際に存在した大名です。
父直基は出羽山形藩主だったが、播磨姫路に国替を命じられるが、封地に赴く途中で死去し、この映画の主人公直矩は5歳で家督を継ぐが、幼少の直矩は不適当と判断され、越後村上藩に国替えとなる。
成人した後再び姫路藩主として復帰します。
毎日、書庫で読書に耽る片桐春之助 引っ越し奉行を命じられ抵抗する春之助
映画は、ここから始まります。
主人公は、このあだな大名ではなく、姫路藩の書庫番として働いていた片桐春之助(星野 源)で、本の虫である春之助は、書庫に引きこもり、人とのコミュニケーションが苦手という困った侍でした。
ある時、幕府から、藩主の松平直矩(及川光博)に姫路から大分への国替えを言い渡されます。
国替えとは、平安時代の国司任地を替えることから、江戸時代は幕府が大名統制策として、大名の領地を他に移し替えることで、所替とか転封と同義です。
さて、この国替えは、当時の参勤交代以上に費用がかかり、その上、15万石から7万石への減封でお家の一大事です。
この減封は、親族のお家騒動に巻き込まれ一族を代表して調整を行うが、不手際を指摘されての処置なのですが、映画では柳沢吉保(向井 理)との軋轢(あつれき)が原因としていますが・・・
この超難関プロジェクトを成し遂げる白羽の矢が当たったのが、片桐春之助でした。
以前の引っ越し奉行は、亡くなり、書物に精通している春之助は色々な知識があるだろうという単純な判断からきめられたようです。
突然の大役に怖気ずく春之助は、幼なじみで武芸達者な鷹村源右衛門(高橋一生)や前の引っ越し奉行の娘於蘭(高畠充希)に助けをかりることで、引っ越しの準備を進めてゆきます。
ここでの難題は、資金調達です。 半分は勘定頭(濱田 岳)の知恵を借りるが、後の半分は、リストラをすることや、人足を減らし下士にその変わりをさせるなど、大ナタを振るいます。
また、リストラの侍には、今後加増なれば呼び戻すということを条件にして納得を得る努力をしてゆきます。
果たして春之助らはこの一世一代のプロジェクトを知恵と工夫で無事に成し遂げられるのでしょうか?
この状態は、現在に通じるところもあり、宮仕えの難しさ、会社経営の難しさと両面から問題提起されているようです。
引っ越し行列の最中に起こった事件とは・・ 歌を歌いながらの行列も行き先に待ち受ける難儀が・・
ちなみに、この後の国替えは、豊後日田藩主、出羽山形藩主、陸奥白河藩主とかわり、陸奥白河で、前の石高15万石になり、姫路でリストラした藩士たちは、はたしてどうなったのでしょうか・・・
このリストラ藩士に、話題のピエール瀧がでています。
他に、勤勉で将来有望な藩士、祐筆の山里一朗太(小沢征悦)、春之助を奉行に命じた国家老 本村三右エ門(松重 豊)、謎の多い次席家老 藤原修三(西村まさ彦)・・・・・・
多彩な芸達者な脇役で、一見平凡なドタバタ劇も考えさせられ、最後は納得させられるという映画の楽しさを味わえるものでした。
表題のお城の写真は 今年3月 再建された 摂津国 尼崎城