映画「八犬伝」は、原作者の滝沢馬琴(役所広司)は構想中の物語を語りはじめ、その内容を描く浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)の奇妙な友情の駆け引きと、馬琴の語る「八犬伝」の内容を描く内容となっています。
また、馬琴の家族のやり取りや失明しても口述筆記で描き続け、28年間106冊という超大作を書き上げた馬琴の偉業の映画化なのです。
馬琴の構想中の物語「八犬伝」は、八つの珠を持つ八犬士が集結し、里見家の呪いと戦うために過酷な旅に出る物語だった。
この八犬伝の内容もさることながら、僕的には、それよりも、この物語に引き込まれた北斎は続きを聞くために馬琴の元を通いようになり、二人の奇妙な関係で巧妙な駆け引きの方が興味がありました。
そして、馬琴の家族の動きも見逃せません。
小説ばかり書いて家庭を顧みない馬琴を罵倒する妻のお百(寺島しのぶ)と医師を目指しながら病弱の長男宗伯(磯村勇斗)、そして晩年、完成間近に視力が失われ始め、絶望的ななか、義理の娘から意外な申し出が出ます。
それは、目が悪いと気づき、密かに八犬伝を読み始めた宗伯の妻のお路(黒木華)から口述筆記を申し出ます。
しかし、漢字が分からず、馬琴が手でなぞって字を教え、物語を完成させます。
執念をもって里見家の復興を果たす八犬伝の物語以上に、馬琴の執念をもこの映画は伝えているのではないでしょうか・・・