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日々の恐怖 1月7日 カルーアミルク

2014-01-07 19:39:06 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月7日 カルーアミルク



 大雨の日にふと思い出す、“学生時代に六本木の某ディスコでのバイト仲間から聞いた話”なんぞを…。


 そのバイト仲間(ここではF君としておきます)は、とある事情で別のディスコ(G店としておきます)のバイトをやめて私のバイト先のディスコで働くようになったのです。
その「とある事情」というのが、(F君の言う事が本当だとすれば)怖いんです。

 G店では、開店前に必ずテーブル席の一つに飲み物を置くのが決まりになっていました。
置くべきテーブルは決まっていなかったのですが、飲み物はなぜが「カルーアミルク」との指定があったそうです。
F君は入店時に先輩からは「客入りが良くなるおまじないだから、絶対に忘れないように」と教えられていました。

 それは、ある大雨の日の事。
その日はF君は早番だったのですが、電車の遅延などもあって開店数分前にギリギリで店に飛び込みました。
仲間に冷やかされながら急いで着替えて店に出ると、もう開店時間になっており、早々と数組が入店してきました。
 実はこの日は一応、F君が「例の飲み物」を用意する当番だったのですが、そんな事情で用意することはできませんでした。
普段ならこういう時でも気が付いた他のスタッフが用意するのですが、この日は誰もそこまで気がまわらなかったのか、誰も用意しませんでした。

 開店後間もないのに店には多くの客が入っていました。
開店後10分くらいした時でしょうか、F君は一人の女性客がテーブル席で手を挙げて彼を呼んでいるのに気がつきました。
 この大雨の日にその女の子は白いワンピースに白いピンヒールで、見るからにディスコが似合わない色白で清楚な美人だったそうです。
彼女が「カルーアミルクください」と言った時に初めてF君は、「例の飲み物」を用意し忘れたことに気付きました。
でも客入りは悪くないし、今日はもういいや、どうせ単なるおまじないなんだし…と思ったそうです。

 で、F君はオーダーされた「カルーアミルク」をテーブルまで届けました。
何てことないワンシーンです。
「カルーアミルク」を頼む女の子なんて一晩に何人もいますし、別にF君はこの事を気にかけたり、「例の飲み物」の決まりに結び付けて考えたりしませんでした。
その子があまりに可愛い美人さんだったので、ちょっと気になったF君は、その後も何度かその子のテーブルに目をやったのですが、飲み物を届けてからしばらくするといつの間にか姿が見えなくなっていました。
 まぁ、混雑している店内ですから、見失っても不思議は無いし、気付かないうちに帰っていたとしても不思議は無いんですが、何かいつか席に戻ってくるような気がして、飲みかけのカルーアミルクのグラスを片付けないでいたそうです。

普通はテーブルが空席になった時点で飲み物のグラスとかは撤去しちゃうんですけどね。

 それから何日かして、また大雨の日にF君は早番で「例の飲み物」を用意する当番の日でした。
何だかんだと準備に手間取っている内に開店時間になってしまい、またもや「例の飲み物」の用意をF君は忘れてしまったそうです。
開店後すぐに気付いたのですが、前回忘れた時も客は大入りだったので、あまり気にもしなかったそうです。

 開店から10分くらいたった時、今日も客入りは良さそうだな、と店内を見回したF君は、またもやテーブル席の一角から手を挙げて彼を呼ぶ女性客に気づきました。
暗い店内を歩いて近づいてみると、今日は真っ赤なワンピースに真っ赤な靴といでたちこそ違いますが、何日か前のあの子だと分かりました。

「 カルーアミルクください。」

やはり前回と同じ飲み物の注文でした。

 ちょっとでも自分を印象付けようとしたF君は、「いつも有難うございます」と言いながらカルーアミルクを彼女の前に置きました。
そして「これは、店からのサービスです」と言ってフルーツ盛り合わせをテーブルに置きました。
彼女は嬉しそうに「有難う」と言ってから、

「 カルーアミルク、今度は忘れないでね、テーブルはどこでもいいから。」

とまぶしいばかりの素敵な笑顔で言ったそうです。

 F君は何の事か分からないままカウンターまで戻りましたが、「あっ!」と気が付き慌てて振り返ってみると、彼女がいたはずのテーブルにはもう誰もいなかったそうです。
怖くなったF君は、このテーブルのカルーアミルクとフルーツは下げないように仲間に伝えました。

 遅番で店に出てきた先輩にこの事を話すと、「店がハネた後で呑みに行こう」と言われ、チャールストン&サンである話を聞かされたそうです。

 かつてこのG店に「ディスコは初めて」という女の子が常連の彼氏に連れられて入って来た。
あまりの楽しさにすっかりディスコというかそのG店が気に行ったその女の子は、「毎日でも来たい」と彼氏に言った。
 ところがその子は飲みなれないお酒をたくさん飲んだせいか、その夜、自宅に帰る途中、ガードレールもない住宅街の狭い道でふらついたところを猛スピードで走って来た車に…。
その夜、彼女はG店で同じカクテルばかりお代わりしていたとか。
それが、カルーアミルク。

 次の日からその女の子が毎日のように来店している事、カルーアミルクを頼んではふと姿を消す事を、彼氏と来ないで一人で来ていることを不思議に思ったG店の店長が、常連の彼氏に話すと、彼は震えながら彼女が既に死んでいる事を告げたそうです。(彼氏は2度と来店しなくなったそうです)

 以来、開店前にカルーアミルクをテーブルのどこかに置いておくと、その子は姿を現さない事に気付いた店長は、これを「客入りが良くなるおまじない」と称してスタッフに徹底したそうです。
バイト歴の長いその先輩は経緯を知っていたんだとか…。












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