日々の恐怖 5月26日 痛いよう
小6の夏休みに、同い年の従姉妹の家に遊びに行ったときの話です。
その従姉妹の家からチャリで20分くらいのところに遊園地があって、叔父さんに連れてけってせがんだら、もう小6だし安心だろってことで、お金くれて子供二人だけでその遊園地に行かせてくれた。
ジェットコースターとか、宇宙船みたいのがぐるぐる回るのとか一通り遊んだあと、従姉妹が、
「 お化け屋敷入りたい。」
って言った。
小さい頃から怖いのが苦手で、正直乗り気じゃなかったんだけど、怖がってるとか彼女に思われるのが嫌で、意を決して中に入った。
それで、こういう遊園地のお化け屋敷って、バイトの人がお化けの格好して客を驚かす。
そこもそうだったんだけど、井戸からお岩さんが出てくるのとか、白いシーツみたいの被ったヤツとかしかいない。
“ なんだ、たいしたことねーなー。”
とか思って内心ほっとしてたところで、
「 痛いよう 痛いよう・・・。」
って呻き声が聞こえてきた。
痛いようって声は聞こえるんだけど、さっきまで結構でてきたお化けが全然出てこなくなって、彼女と、
「 なんか変だね?」
って言ってたら、急に一人出てきた。
そいつ今までのと雰囲気が違って、ひょろっとしていて頭はボサボサ、手には血のついた包丁持ってて、なんかブツブツ言ってるんだけどよく聞き取れない。
それで、なに言ってるのかよく耳をすませてみると、
「 殺す・・・、殺す・・・・。」
って言ってる。
俺は嫌な予感がして、従姉妹の手を握ってそいつからなるべく距離を取るようにして、出口にむかって走った。
出口まで結構距離はあったんだけど、そこからお化けは一人もでなかった。
外に出てみると、お化け屋敷に入る時は閑散としていたのに全然様子が違う。
建物を取り巻くようにして大勢の人がこっちを見ていて、警察がいて、野次馬に建物から離れるよう指示だしてた。
何があったのか警察の人に尋ねたら、近所の病院から脱走した患者がここのお化け屋敷の建物に逃げ込んで、中にいた遊園地の職員が刺されていた。
逃げた患者っていうのは中で会ったヤツで、
「 痛いよう。」
って声は刺された職員のだった。
結局犯人は捕まったんだけど、刺された人はそのまま出血多量で死んでしまったらしい。
あのとき聴いた痛いようって呻き声は、今でも耳から離れない。
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