日々の恐怖 5月12日 東京暮らし(6)
俺は頭パニックになりかけてた矢先、右足の甲を何かに踏まれた。
例えるなら、犬か猫が踏んだ様なグニュとした柔らかいけど重みを感じる様な感じ。
「 ホヒャッ!!」
変な雄叫びを上げて跳び上がった。
すぐにテーブルの下に目線が行く。
赤ん坊だった。
今度は、はっきりと見た。
裸の赤ん坊がハイハイしている。
色白の肌、生えそろってない髪の毛、顔は下を向いていたので見れない。
完全にパニックだった。
赤ん坊から目が離せなかった。
恐怖で体も動かせなかった。
と、その時、
“ ガタッ、ガタタ・・。”
と音がした。
瞬間的にガラス障子に目線を向けた。
俺の部屋にいた何かが、障子を開けようとしていた。
2~3㎝空いた隙間から白い指をのぞかせていた。
全身に鳥肌がたって、本能が、
“ 逃げろ!! ”
と叫んでいた。
「 うぅぅぅぅ、わゎぁぁぁぁ、あぁぁっぁっぁあ!!!!!」
ありったけの声を絞り出し、玄関扉をはね飛ばし、階段を駆け下りた。
後ろを振り返る余裕もない。
全力疾走だった。
前の道路を信号無視で横断し、不動産屋に逃げ込んだ。
不動産屋の従業員の姿を見るなり、まくし立てた。
「 なんなんだよ、あの部屋はぁーー!!
幽霊出るじゃねーかーー!!
てめぇ、どーゆーことか説明しろ、この野郎ぉ!』
胸倉をつかんで壁に押し付けた。
今思えば従業員も驚いただろう。
顔面蒼白だったであろう俺から、胸倉を掴まれて泣きそうな顔になっていた。
この騒ぎで奥の事務所にいた不動産屋の社長が出てきた。
「 どうしたんですか?」
という声に社長に向き直って、今体験した出来事をまくし立てた。
すべてを話し、少し落ち着いた俺は、あのアパートで何があったのか社長から聞いた。
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