日々の恐怖 5月6日 東京暮らし(2)
ある休みの日のこと、買い物からアパートに帰ったら、隣りの部屋の玄関扉が開いていた。
興味本位で廊下から中を覗いてみたら、玄関には黒い革靴が一足あった。
それ以外はガランとしていた。
ふと中から、不動産屋の担当者が顔を見せた。
「 こんにちは・・・。」
まぁ一応、お世話になってるのと覗いていた後ろめたさもあって挨拶をした。
「 あぁ、こんにちは。」
靴を履きながら担当者も挨拶を返してきた。
「 お隣さん、引越しされたんですね?」
玄関先とはいえガランとしていたからそう思った。
俺は6時にはアパートを出て、帰宅は夜の10時過ぎという生活をしていたので、
“ 俺が仕事に行ってる間に引越ししてても、わかんねぇわな・・。”
と思っていたが、担当者は、
「 えぇ、来週の土日に引越しされます。」
なんて言っている。
どうも話しが噛み合わない。
よくよく話しを聞いてみたら、いままで空家だったが入居者が決まったので、来週、引越しに来るとのことだった。
“ じゃあ、赤ん坊の声は・・?
コンクリートの壁を伝わって、下か上の住人か・・?”
なんて思ったが、担当者が、
「 じゃあ、これで・・・。」
と言いながらその場を離れ様としたので、呼び止めて、
「 このアパートに、赤ん坊のいる住人さんいますか?」
って尋ねた。
担当者は少し考えた後、
「 さぁ・・・、私は、わかりませんね~。
他の担当者なら知ってるかもしれませんが・・・。」
と、釈然としないまま、お互い挨拶を交わしその場を離れた。
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