日々の恐怖 5月9日 東京暮らし(4)
気分洋々と恵比寿駅に向った。
時間はAM11時頃。
“ 今日の最終の新幹線に乗ればいいんだから、それまで最後の東京観光してもいいなぁ・・・。”
なんて思ってた。
緑の窓口に行き、切符を手配した。
そして、代金を払う時に気が付いた。
“ やべぇ、アパートに、金忘れた!?”
それからアパートまで全力疾走。
もうすぐ12時になる。
上司は、たまに昼休みにアパートに帰る時がある。
“ マズイ!
それだけはマズイ!!
あれだけ啖呵きったんだ。
顔を合わせるのはマズイ!!”
3階の部屋の前まできて愕然とする。
“ 鍵を玄関ポストに放り込んだんだった!
やべぇ、手が入らねぇぇ!”
どうしても手首より先に入らない。
必死で考えた。
“ 不動産屋だ!
不動産屋に行けば、鍵があるはず!”
ダッシュで階段を駆け下り、斜め前の不動産屋に飛び込む。
「 3階の○○ですけど、鍵を忘れてしまって・・・、あの・・・鍵、貸してもらえませんか?」
だけど不動産屋は、担当者が鍵を持って食事に出ていて1時まで帰って来ないと言う。
“ 昼飯早えーし!!”
と突っ込んでみても1時までは待ってられない。
上司が帰って来るかもしれない。
さすがに焦った。
ふと、ココからアパートを見る。
クリーニングの看板。
“ そうだ!
ハンガーだ!
針金のハンガーを真っ直ぐに伸ばして引っ掛けよう!!”
考え自体は幼稚だったが、その時はそれが最善だと思った。
すぐにクリーニング屋へ。
事情を話しハンガーをもらった。
時計を見ると11:45頃。
“ 時間が無い!”
すぐさま3階に駆け上がる。
ハンガーを真っ直ぐにして先のフックを玄関扉のポストに差し込む。
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