日々の恐怖 5月2日 二十歳の頃(2)
更に時は流れ、成人式を迎える年の冬、祖母が癌で亡くなった。
煙草などは全く吸わない人だったが、肺癌だった。
俺は喪服を持っていなかったため、成人式の為に作ったスーツで葬儀に参列した。
夏になり、祖母の法要のために両親だけ帰省。
3日後両親が帰ってくるなり深刻な顔をして話をしている。
“ なんだ?遺産相続で揉めてんのか?”
と聞き耳を立てているとどうやら違う。
どうやら法要で親戚が田舎の庭先で集合写真を撮影したそうなのだが、そこに写ってはいけないものが写ってしまったらしいのだ。
集合した皆の後ろにある石灯篭。
そこに、明らかに顔と分かる、だが人ではない般若のような形相の'何か'が写ってしまったらしい。
その灯篭は子供の頃祖母の家に遊びに行った時に見たことがある。
苔むしてかなりの年月の経過を伺わせる灯篭だった。
法要に来ていた住職にその写真を見せるなり、住職は祖父にこう言ったそうだ。
「 あの石灯籠、どこから持ってきた?
相当怒ってるぞ。
アレは供養塔だ。」
聞けば数十年前に祖父が田んぼの拡張をした際、灯篭が邪魔だったので庭に勝手に持ってきてしまったらしい。
何の供養塔かは分からないが合戦地が近いので落ち武者でも祀っていたのか。
その話を聞いて小学生だった自分が体験した男の語りかけの意味がわかり、改めて背筋が寒くなった。
二十歳の時に死ぬのは自分ではなく祖母だったのだ。
あの男の声はそれを予知していたのだ。
聞き取れなかった部分をもし、もっとちゃんと聞きとれていたら、祖母はもう少し長生きできたのかもしれない。
祖母にも申し訳ないが、わざわざ注告しにきてくれたのに、応えられなかったのが申し訳なかったと今でも思っている。
〟そもそも誰だったのかねぇ?供養塔の人?ご先祖様?“
今となっては自分にとって、唯一の心霊体験でした。
ちなみに写真と灯篭はお寺で供養してもらったそうです。
勝手に供養塔を移動した母方の実家はやはり祟られていたのか、長男が腸捻転で幼いときに亡くなり、次男がうつ病で自殺、三男は子供が生まれると同時に奥さんが逃げる、四男は離婚2回、3回目の結婚相手が祖父をいびり倒すといった男系に不幸が重なる家柄となっています。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ