日々の恐怖 5月5日 東京暮らし(1)
今から11年前、仕事で東京に1年近く暮らしてた時の話しです。
恵比寿駅から徒歩5分ほどの場所で、うろ覚えだが5~6階建てのアパートだった。
1階にはクリーニング屋、通りを挟んで斜め前に不動産屋があり、その不動産屋がアパートの管理者だった。
築10年以上は経ってるだろうか、1フロア4戸で周りは雑居ビルで囲まれた狭苦しく、暗いというのが第一印象だった。
不動産屋の担当者に通されたのは3階の一室、1LDKでユニットバス付。
玄関から6畳程のダイニングキッチンを突っ切って、すりガラスの障子で仕切られた6畳程のリビングが俺の部屋となった。
家賃が月20万。
地方の田舎者の俺には信じられない額だ。
“ まぁ、会社が払うんだから関係ないんだが・・・。”
と思いながらも、そこで会社の上司との共同生活を送ることになった。
私事だが、この上司ってやつが超がつくほど嫌な奴で部下を何人も辞めさせた事で有名だった。
慣れない都会生活+上司のイビリがストレスに感じてきた4ヶ月ぐらい経ったある夜の頃だ。
いつもの様に丸めた布団を壁際に押しやって、背中をあずけマンガを読みふけっていた。
ふと耳をすますと、表の車の往来の音に混じって微かだが赤ん坊の泣き声が聴こえる。
布団を押しやった壁がコンクリートの壁にクロスを貼ってたんだが、どうやらこの壁から聴こえる。
耳を壁に当てるとよりはっきりと聴こえた。
“ あぁ、隣りの住人か、赤ん坊の夜泣きだな・・・。”
ぐらいにしか思わなかった。
猫のサカリの声かとも思ったが、正直どうでもよかった。
隣りの住人がどんな人かも知らないし、そもそも住んでいるかどうかも興味は無かった。
その日を境に度々、赤ん坊の泣き声を聴くこととなる。
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