日々の恐怖 5月20日 搬入用エレベーター
昔、会社で夜12時過ぎまで残業してて、腹が減ったから近くのコンビニに夜食を買いに行こうとした。
コンビニに行くには、物品搬入用の大きめのエレベーターで下へ降りて、裏口から出た方が近いから、それに乗って5階から1階へ出た。
それで、コンビニから帰って同じエレベーターに近づくと、1階のランプがついてたから、ラッキーと思って早足に近づいて5階のボタン押したらドアが開いた。
人がいた。
エレベータのど真ん中に立ってた。
こっち見てて目が合った。
あまりにも無表情だったから一瞬ビクッとなってしまった。
40代くらいの男で、名前は知らないけど、顔は見たことある気がしたから、
「 どうも・・・。」
と軽く会釈してエレベーターに乗り込んだ。
搬入用エレベーターがゆっくり5階へ上がって行くうちに、妙な違和感を覚えて、それが何かに気づいた。
“ 1階で止まってるエレベーターが開いた時に、中に人がいるはずはない。
この男は、12時過ぎの搬入用エレベーターの中で1人で立っていたか、もしくは誰かが来るのを待っていたんじゃないか?”
背中に嫌な汗をかき始めたころに5階に着いたんで、そそくさとエレベーターを出た。
振り向かなかったけど、足音が聞こえるかどうかに全神経を集中した。
だけど、足音は聞こえなかった。
会社にはもう誰もいなかった。
気持ち悪いので仕事を早めに切り上げて、1時半ごろに帰ろうとしたけど、ふと興味が沸いて、帰る前にもう1度、裏口の搬入用エレベーターを見に行った。
1階のランプがついてたから、乗るのはやめて普通の玄関側エレベーターに乗った。
まぁ、5階のランプがついてても、やっぱり乗れなかっただろうね。
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