大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月16日 わら人形

2013-12-16 18:59:21 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 12月16日 わら人形




 呪いのわら人形をご存知ですか?
それに関する話です。
 私は仕事がら転勤が多く、各地を転々としていました。
それは、時にはアパート、時には貸家と全国に及びます。
 私が山口の萩というところに転勤になったときの話です。
安く家を貸してもらえるというので、しばらくの間、家を借りることになりました。
ただ問題だったのが、かなりの山奥で、大きい家なのですが、かなり古いものだということでした。
 住み始めてから1ヶ月が経とうとするある日です。
私の娘が庭で妙な箱を見つけてきました。
 家の中も庭も、家に住み始めてから最初の連休のときにくまなく見て回ったはずでしたが、庭に箱などありませんでした。
そう思ったのは、何よりその箱が特徴がある箱で、見て判りそうな目立つものだったからです。
 私には霊感はほとんどないのですが、その箱が異常に不吉な感じがしていました。
この時、私の選択が正しければ、恐怖を体験しなかったと思います。
 実は、あろうことか私はこの不吉な箱を燃やしてしまったのです。
ただ一般人的な考えからは、必要無いものは燃やすか捨てるか、そういう選択しかなかったのです、その当時は。

 数日して悲惨なことが起こりました。
私の友人の一人が車で事故を起こしました。
車は炎上、友人が病院に運ばれたときは全身火傷で、すでに息がなかったということでした。

 その数日後です。
またも私の友人が、家で焚き火をしている際に火が服に移り、右腕と右顔半分を火傷する大怪我を負いました。
 病院に入院した友人に会い、事情を聞きました。
友人の話では、“事故が起きる数日前、体が焼かれる夢を見た”とのことでした。
私は迷信など信じない性格でしたが、このとき“ひょっとしたら・・・”と思いました。

 それから家に帰り、すぐ庭を調べました。
ごみを焼却するごみ穴を調べました。
 あの箱は焼け残っていました。
箱を調べようと手を伸ばしたとき、ものすごい寒気が体を襲ったのを覚えています。
 箱の中からは人形が出てきました。
全部で3体。
そのうち一体は丸焦げ、一体は半分が焼けた状態でした。
一体はまったく焼けていません。
 人形はごく普通の日本人形で、着物を着た女の人形です。
焦げかけた人形を手に取ったとき、焦げた人形の和服がぼろぼろと落ちました。
その人形の裏をみたとき、恐怖のあまり腰を抜かしてしまいました。
そこには友人の名前が書いてあるのです。
 クロ焦げの人形のほうは名前が見えませんでしたが、大体判りました。
焼けなかった人形に、私の名前が書いてあったからです。
 何もかもが不思議でした。
誰が何故こんな事をしたのか分かりません。
 友人ともう一人の友人は知り合いではありませんし、二人の間には、これといって共通点はありません。
さらに、誰かに三人が共通に恨まれる覚えもありません。
私には、その他にも友人はいるのですが、何故この二人だったのかも分かりません。
 それに、どうしてこの家にそんなものがあるのか。
家に私を恨んでいた誰かが住んでいたのか。
しかし、私の知っている人間には山口に住む人はいないのです。
何もかもが不思議でした。
 私は、今も箱を燃やしてしまったことを後悔しています。
本当に、そのときは不吉な感じで、一心に箱を消し去りたいと思ったのです。
亡くなった友人や怪我をした友人には心から謝罪しています。
しかし、現実には友人に事の顛末を言える訳もありません。
そのことは、心の重荷として残っています。
 私はそれからすぐにその家を出ました。
あの人形は寺に預けました。
その時の寺の人の言葉が今でも心に残っています。

「 供養しようと思った。
でも、供養できるものではない。
この人形についた怨念は、人間のものではない。」
















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日々の恐怖 12月15日 人形

2013-12-15 18:20:38 | B,日々の恐怖



      日々の恐怖 12月15日 人形



 これは私が子どもの時に体験した奇妙な話です。
私の父はとにかく貧乏性で、近くのゴミ捨て場で壊れた家庭用品やガラクタなどを見つけては「もったいない」と家に持ち帰ってきた。

 家族はそんな父に呆れていたが「恥ずかしいからやめて」と言ってもやめるような性格ではないのは知っていたから、諦めて父の好きにさせていた。
父が拾ってくるのは様々なものだったが、中には「なんで拾ってきたの?」と言いたくなるような奇妙なものも少なくなかった。
その中のひとつが、人形だ。

 ある日家に帰ると、私と妹の部屋に見知らぬ人形が置かれていた。
どうせまた父が拾って帰ってきたのだろう。私は「こんな汚い人形を拾ってくるなんて…」とうんざりしながらその人形を見下ろした。

 子どもの腕にぴったりと収まるような、よくある日本製のミルク飲み人形。
長い睫にクリクリの茶色い瞳。
ミルクを飲む為にうっすら開かれた唇は、今にも何かを喋りだしそう。
新品の状態だったならさぞかし愛らしい人形だったことだろう。

 けれど前の持ち主がよほど手荒く扱ったのかつるりとした白い頬には黒のマジックでいたずら描きされ、寝かせるとぱちりと閉じるはずであろう瞼は片方、しかも半分しか閉じることができず、片目が潰れたような酷い顔になっていた。

 とても可愛いとはいえないそれをなぜ父が持ち帰ってきたのかわからない。
私も妹ももともと昔から人形遊びが好きだったから、部屋には他にもリカちゃん人形やケースに入ったフランス人形、ぬいぐるみなど沢山の人形達がずらりと飾られていた。
その中に並べられた明らかに異質な人形。

 他の人形たちは子どもの頃から遊んでいた物ばかりだったので愛着もあったし、そこに置いていて不自然さを感じることなど一度もなかった。
しかし、あのミルク飲み人形だけは違ってた。

 彼女はベッドで眠る私を物言わぬ瞳で毎日毎晩じっと見つめているようで、それはあまり気分がよいものではなかった。
が、父が拾ってきたそれをまた捨てる気にもなれず、渋々部屋に置いていた。

 それからしばらくたって、私はある奇妙な体験をした。
ベッドの上でいつものように俯せでうとうと眠っていると、ふと耳元で誰かの話し声が聞こえてくる。
子どもだろうか?私の耳元、それもものすごく近くでいきなり子どもが笑った。
クスクス、悪戯を含んだような楽しそうな笑い声。
最初はひとり。
それから小波が広がるようにざわざわと、他の笑い声も響いてきた。
2、3人くらいだろうか。

 全部幼さを含んだ無邪気な笑い声。
それからヒソヒソと何かを話しているのが聞こえてきた。
最初は近所の子が遊んでるのかと思ったけれど、こんな夜中に子どもが外で遊んでいるわけがない。
しかも声がするのは私のすぐ耳元。
 最初は何を話しているのかわからなかったけれど、そのうち段々はっきりと聞こえてくる。

「 ねてる?ねてる?」

目を閉じていても、上から私の顔を覗きこんでいる何者かの気配をしっかりと感じた。
しかもひとりじゃない、複数の視線。
突然現れた彼らは、私が寝ているかどうかを確認しているようだった。

するとその中のひとりが

「 ねてるかどうか、しらべてみようよ。」

みたいなことを言ったと思う。
 その瞬間、私の身体は魚のようにビクビクと震え全身がぶわっと総毛立ちました。
多分、鳥肌が立っていたと思う。
今まで感じたことのないような恐怖で体が強張る。

 これは目を開けてはいけない、見たらきっとよくないことが起きる、だから彼らを絶対に見てはいけない、と本能で感じ、私は心の中で「消えろ、消えろ、消えろ、消えろ」と必死に祈った。
相変わらず枕元では私の顔を覗きこみながら、子どもたちがヒソヒソと何かを話し合っている。

 それから意識がなくなって、ハッとして目を開けたら朝になっていた。
目覚めの悪い夢だった。そう思い、朝が来たことに心底ほっとした。

 けれど、その夢はそれだけでは終らなかった。
その日から私は同じような夢を何度も見るようになったのだ。
ベッドで寝ている私。
するとどこからか子どもの笑い声や話し声が聞こえてくる。

 最初は話し声だけだったのに、そのうち枕元を誰かがパタパタと騒々しく走り回る。
2、3人だけだったはずなのに、段々と増え大勢の人間が私の周りで話し、楽しそうに駆けっこしたりしている

 スピーカーからザワザワと絶えず人の話し声が垂れ流されているような状態に、私はひどく怯えた。
どれもこれも幼い子どものもの。
無邪気に笑う声、はしゃぐ声。
そして、中にはあきらかに私に悪意を持った話し声もした。

彼らは私の耳元で、私の顔を覗きこみながら楽しそうに

「 ねてる?ねてる?」

と話しかけてくる。
返事をしたらダメ、目を開けたら絶対にダメ。
体は金縛りにあったように硬直し、指一本だって動かすことが出来ない。

“ 消えろ、消えろ、消えろ、消えろ。”

私はぶるぶると震え、恐怖と戦いながら夢から覚めるのをただひたすら祈り続けた。
また誰かが私のすぐそばを走っている。
パタパタと複数の小さな足音が聞こえる。
 そんなはずはない。
だって私が寝ているのは二段ベッドの上。
彼らは足音を立てながら空中を駆け回っていることになるのだ。

 そんな恐ろしい夢が続き、私も随分とひどい鬱状態になっていた。
それがあれの仕業だと気づいたのは、昼間、うとうとと昼寝をしている時のことだった。
寝ているような起きている様な半覚醒の状態で私はまたしてもあの夢を見た。

「 ねてる?ねてる?そろそろかな?そろそろかな?」

と話す子どもの気配を感じ、私はなぜか

“これはあの人形なんだ。”

と目をつぶりながら思った。

なぜそう思ったのか説明もつかないし根拠もない、だけど絶対にそうだと思った。
私の顔を覗きこんで執拗に私が寝たかどうかを確かめに来るそいつは”あのミルク飲み人形”ではなく、”ミルク飲み人形の中に潜んでいる何か”なのだと、そう思ったのだ。

 こんな話、誰にも話せるはずがない。
頭がおかしいと思われてしまうのが嫌だったので黙っていたけれど、二段ベッドの下で寝ている妹も何か不穏な気配を感じているかもしれない。
そう思って尋ねてみても、妹は不思議そうな顔をして「話し語なんかしなかったよ」といつもと変わらない様子で答えた。

 ミルク飲み人形が怖くて怖くてたまらず、早く何とかしなくちゃと焦るけれど具体的にどうすればいいのかなんて子どもの私にわかるわけがない。
自分が狂ったのではないかと怯え、本当に頭がおかしくなりそうだった。

 どうして私だけが聞こえるのか、どうして私の元にだけ彼らはやってくるのか。
昔、ぼんやりとだけれど女性の幽霊を見たことがある。
もしかしたら霊感というやつがほんの少しだけ私にあったのかもしれない。
だから闇の中に潜む何ものかの気配を感じ取ってしまったのだろうか。

 数日たった日の夜、また彼らがやってきて私の耳元でざわざわと話し始める。
目を閉じていたので実際見たわけではないけれど、気配で20人くらいはいたと思う。
とにかく部屋中人の話し声で溢れ、耳を塞ぎたくなるくらいの騒々しさだった。
その中の5人くらいがかならず私の枕元で「ねてる?ねてる?」と話しかけてくる。
私の顔を見ているのは、やはりあの人形だと思った。そいつは子どもの声でこう言った。

「 おきてるよ、おきてるはずだよ。」

すると周りの声も反応して

「 おきてるよ、おきてるね。」

と一斉に話し出す。無邪気さの中にはっきりとした悪意と感じた。

「 そろそろいいよね、もう入ってもいいよね?」
「 入ってもいいかもね。入ってみる?入ってみようか?」
「 入ろうよ、入ろうよ。」

その時、私は「こいつらに体を乗っ取られるかもしれない!」という恐怖で悲鳴を上げそうになった。
 でも相変わらず身体は金縛りにあったように動かせず、ただビクビクと震えるだけ。
ほんとにこのままではダメだと思ったので、初めて知っている限りのお経を頭の中で必死に唱えた。
子どもだったので本格的なお経を知っているわけでもなかったけれど、それでも知っている限りの言葉をかき集めて必死に唱えた。

 気がついたら朝だった。
今でもあれは夢だったんじゃないかとぼんやり思う。
いや、夢だったと思い込みたいのかもしれない。

 それからすぐに私たちが住んでいる借家が取り壊しになることになり、私たち一家は新しい新築の家に引っ越した。
あの人形はどうしたかというと、引越しの最中消えてしまった。
 引越し作業に乗じて母が処分したかもしれないし、もしかしたら押入れの中に今もひっそりとしまわれているのかもしれない。
不思議なことに新しい家に引っ越してからはそうした怪現象が起こることはなくなった。
古い家だったのでそういった何かも関係していたのかも。
今思えばおかしな話だけれど、どうしても説明がつかない妙な体験だった。














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日々の恐怖 12月14日 ミッキーマウスマーチ

2013-12-15 01:19:05 | B,日々の恐怖






       日々の恐怖 12月14日 ミッキーマウスマーチ






 僕の知り合いが夜中に3人でとある河口にシーバス釣りに行きました。
海から一つ目の橋の下にある釣り場に着いて、Aさんが釣りの準備をしながら辺りを見回すと突然、

“ ザッバーン!”

と橋から人のような影が川に落ちてまもなく静かになりました。

Aさん「 今、人が橋から落ちたよ。」
Bさん「 まさかー、ゴミでも捨てたんだろ。」
Cさん「 マナー悪いなー。」

 Aさんも何かの間違いかなと思いルアーをキャストしてひとしきり釣りしていると、パトカーのサイレンや赤色灯が橋の上に止まり人が動き出し、やがて警官が橋の下のAさんたちのところに来て、

「 先ほど自殺者が川に落ちたのですが、気が付きましたか?」

と聞いたと言う。
3人は、

「 やはり・・・、ほんとだった。」

釣る気も無くなり帰途についたのですが、Aさんは何か心が重いと言うか、肩が重い感じがしたといいます。


 翌週ほとぼりも醒め、同じ釣り場にAさんたちはまた来ていました。
夜10時頃、調子よくシーバスがヒットしている時にAさんの娘さんから携帯に、

「 お父さん、家に変な人が来てインターホンをいたずらするから怖い!」

Aさんが、

「 インターホンにモニター付いてるから見てみろ。」

と言うと、

「 誰も映っていない。」

と娘さんの怖がる声。
Aさんが、

「 いたずらだろ~。」

と再度言ったが、

「 何度も何度もミッキーマウスマーチのチャイムが鳴るけど誰も映らないし、玄関に行っても誰もいない、怖い!」

と言うので釣りも潮時だし、Aさんは夜中に急いで家に戻った。
 家に帰ったときは、ミッキーマウスマーチのチャイムは止まっていたようだが、Aさんが家で後片付けをしているとミッキーマウスマーチのチャイムがまた鳴った。
Aさんは急いで外に出て玄関付近を確かめるが、誰もいない。
娘さんや奥さんはもうミッキーマウスマーチを怖がって耳をふさいでいる。


 翌日電気屋さんを呼んでインターホンを交換してもらってチャイム音にミッキーマウスマーチが設定に入っていないものを取り付けてもらい安心した。
 その夜、11時頃突然、ミッキーマウスマーチのチャイムが鳴った。
設定に無いのにである。
しかも、鳴り続ける。
 さすがに怪奇を信じないAさんも青ざめ、菩提寺で知り合いのお坊さんに相談すると、

「 それはAさんが見たと言う自殺者の霊に頼られてしまったんだ。
霊が何かを訴えているのだと思うから、私に頼らないで離れてくださいと念じて、ご先祖様の墓の東西南北4方に酒と塩を撒き、ご先祖の守護霊様に守ってくださいとお願いすると良い。
最後に守ってくれるのはご先祖様だけです。」

Aさんはすぐに言われたとおりに実践したら、その夜からインターホンは鳴らなくなった。
数日してあの時の自殺者の遺体が海から発見されたと言うニュースがあった。


 その後、事態を忘れかけていたある日、夜釣りに行った時、ほの暗い海上の何も無いところに、人が立っているのを見てAさんは腰が抜けそうに成ったが、

「 来ないで下さい、私から離れてください。」

と言うと、フッといなくなり、ため息をついていたら、真後ろに立っている人がいて、お辞儀をしたように見えたと思ったらスーーと消えて行った。
その後は気配すら感じなくなったと言うことです。
そんな事があってからAさんは釣りに行く度に好釣、爆釣で霊の恩返しなのだろうと良い方に考える事にしているようです。















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日々の恐怖 12月13日 部長増殖説

2013-12-13 18:53:25 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 12月13日 部長増殖説




 今いる会社での話です。
コンサル部の部長は時々ワープするらしい。
打ち合わせ中に他の場所で目撃されたり、出張中なのにかかってきた電話に出ていたりと 瞬間移動できる、又は分裂して増えてる、そんな噂があった。
 別の課で、経理の部署にいる私には、さほど接点が無かった為、自分でワープを目撃したことは無く残念に思っていた。
それでも社内で部長を見かけるたびに、気になって観察したりしていた。
努力が実ったのか、唯一自分で見た時の話です。


 経理用の伝票束を倉庫から3Fの経理まで運ぼうとした。
倉庫は1Fで本来なら階段推奨なんだけど、ダンボールが結構重かったのと台車を使う事になったので普段は使用しないエレベーターに乗ることにした。
 ビルは2箇所エレベーターがあって、正面にある来客用と奥で主に社員が使う古い物。
使ったのは古いほうで、狭くて大人3人くらいで息苦しくなるくらい。
 ビルは6F建、経理は4F、コンサルは6Fにある。
古いほうのエレベーターは3階までしか動かない。(理由は不明、昔からそうだったらしい。
ボタンも3Fまでしかない。)
 エレベーターに乗って、ボタンを押そうとしたときに、例の部長が一緒に乗ってきた。
台車と一緒に乗ると狭すぎるので、一度譲ろうとしたんだけど、部長はにっこり笑ってそのまま閉ボタンを押してしまった。
おかげで部長は片足を台車の上に乗せるしかなくて、非常に申し訳なかった。
 エレベーターは古くて、止まる時にガタンと衝撃がある。
3Fに到着して、部長を乗せたまま台車をガタンと揺らしてしまった。
バランスを崩して、積んだダンボール箱が扉が開くと同時に床に転がった。
あわてて先に出て、散らばった伝票束をかき集めてるうちに部長はそのままエレベーターを閉めてしまった。
 これ以上、そのエレベーターは上に行けないのに、なんで降りなかったのか不思議だった。
もう一つ不思議なのは、台車の上にダンボールを3箱積んでいて、その前に部長の足があって、ダンボール支えていたはず。
部長が足をどけないとダンボールは崩れないはずだった。
私が降りようと「すみません」と声を掛けたときにすっとどけたのを見たんだけど。

 戻ると経理の課長は会議に出てていなかった。
その会議は3ヶ月毎に行われる、全部署課長以上+営業+重役で行われるもので、もちろんコンサルの部長も出席しているはず。
 昼休みに営業の同期に聞くと、やっぱり部長は出席していた。
一度休憩を挟んだらしいけど、私が倉庫に行っていた時間とは違う。
それに重役クラスは来客用のエレベーターを使うのが常。
(部長だけど外部からの引き抜きで来て貰ったため、扱いは重役レベル。)
その話を同僚にして、部長増殖説のほうが有力になった。


 会社は古くて、本社な為、人数はかなりいます。
人が多いとそれなりに変な話も多いです。
使っているビルもかなり古いせいか、結構色んな話があります。
在籍6年目、まあまあ給料もいいし、もう少し頑張る予定です。














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日々の恐怖 12月12日 猫神様

2013-12-12 20:09:34 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 12月12日 猫神様




 27です。
文才無いし、分かり難いかもと、はじめに断っとく。
今でも不思議な実体験。
スペック:38歳 ♂ 既婚 霊能力なし。

 大学に合格して、学校側から紹介してもらった下宿に入ることも決まり、

「 来月から、俺もついに大学生だ!」

なんてウキウキしてた19歳の時。
 大学に行く数週間前に母ちゃんから、

「 お寺でも参っとく?」

って言われた。

“ まあいいか・・・。”

って思って、母ちゃんと二人で近くのお寺にお参りした。
 そこの住職さんは母ちゃんの知り合い。
もち、母ちゃんも霊能力0。
んで、お参りして住職さんとお話して帰ろうと思ったら住職さんに、

「 ちょっと待って。」

って止められたんだ。
そしたら住職さん、奥の方から封筒を持ってきて、

「 多分、何もないと思うけど、これ持って行きなさい。
そして、新しい自分の部屋の誰にも見つからないとこに隠しときなさい。
お守りだから。」

って。
 んで、言われたとおり、大学入って、新しい部屋に隠した。
下宿の部屋は6畳くらいで壁は薄い。
玄関、トイレ、風呂は共同。
 ま、男だらけの学校だし、それなり。
ただ、下宿のおばちゃん、宗教開いてて教祖様やってたのは知らなかった。
俺が入ってからすぐ隣りにお堂が建った。
窓から光入らねえ~。


 事件が起こったのは大学2年の時。
夜に寝てたら耳元で、

“ シャン、シャン、シャンッ!”

って音が聞こえてきた。
 例えて言うなら山伏が持ってる杖を地面に叩きつけてる感じ。
あれ、確かシャンシャンいうやん?
その音がだんだん大きくなってくんの。

「 何これ、やべえじゃん!」

って思って起きようとしたら水の塊みたいなのが腹に落ちてきた感覚がきて。
はい、金縛りってやつ。

 んで、金縛りにあってる間、腹の上に黒い塊がいるのが分かった。
耳元じゃ相変わらずシャンシャンいってるし、変なお教みたいのも聞こえてきた。
 部屋の壁は薄いから、なんとかして隣の部屋のやつに助けてもらおうと試みたが、やっぱし体動かず、声も出ず。
解けるまでひたすら待った。
 解けた瞬間、飛び起きて隣の部屋に駆け込もうとした。
隣の人、不在でした。
カギかかってた。
でも怖かったから、すぐ二階に行った。
 二階はタバコ吸うとこがあって夜中でも人がいたりする。
とりあえず、その日はそれで落ち着いた。

 それから数日後の夜、何気なく二階のタバコ吸うとこに行った。
みんな集まってる。
「ちーっす!」みたいな感じで和の中に入っていった。
 そしたらみんな顔がマジ。
一人は顔が青ざめて震えてる。
俺が、

「 ん?どした?」

って聞いたらAが

「 昨日、生まれて初めて金縛りにあったよ・・・。
洒落にならん・・・。
耳元でシャンシャンシャンシャンって・・・。」

そいつ俺の隣の部屋のやつ。
金縛りの連鎖ってあるのか?
 話を聞くと俺の状態と全く一緒。
ちょっと引いた。
 それから数日後、学校から帰ってきたら玄関のとこでB先輩が正座してた。
ちなみにその先輩は、Aの隣の部屋の住人。
手には消化器、まばたきしてない。
ガタガタ震えてる。

「 ・・・どうしたんすか、B先輩?」
「 コロサレル・・・。」
「 何いってるんすか?
誰に殺されるってゆーんすか?」
「 わからん・・・。
けど声が聞こえる。
ダンプで突っ込もうか、火をつけてやろうかって・・・。」
「 ・・・?、何かあったんすか?」
「 聞こえるんだ。
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン。」

 その日からB先輩おかしくなった。
特に俺の部屋に用も無いのに頻繁にやってくる。
 んで、部屋の中をキョロキョロ見てる。
ついに俺も腹立ってきて言った。

「 なんなんすか先輩。
毎日毎日、なんか用があるならともかく!」
「 オマエ、この部屋に何か隠してないか?」

そういえば、日に日に視線が隠してある御札の方に行ってた気がする。

 俺、尋常じゃないヤバさを感じて信頼できるK先輩のとこにプチ家出した。
K先輩が、

「 とりあえず、ボコるか?」

と提案してきたが、さすがに俺は1回生。
それは拒否した。
 そしてK先輩の家で生まれて初めてドラクエⅠクリアした。
そして、時々友達に連絡入れた。

“ その後、B先輩はどう・・・?”

って。
そしたら、

「 とりあえず、まだ帰って来るな。
B先輩、毎日しきりにお前を探してるぞ。」

“ 俺が一体何をしたんや!”

それからまた数日K先輩のとこに居候。
 ドラクエもⅢまでクリア出来そうになってた頃、友人から電話が入る。

「 帰ってきていいよ・・・、終わったから・・・。」

声がなんか疲れてる。
とりあえず自分の部屋に帰ることにした。

 下宿に帰るとみんな無表情だった。
結論から言うと下宿のおばちゃんが御祓いしたらしい。
それが凄まじかったと・・・。
 下宿の隣にお堂が建ってるんだけど、そこのガラス窓全滅。
男数人でB先輩を押さえ込んでの死闘だった。
その時のB先輩の声が異常だったと。

「 ウニャアア、ウニャアアアアア!!!」

とりあえずそれで全ては終了した。
 B先輩も謝ってきた。
“猫神様”に取り憑かれてたらしい。

“ なによ、猫神様って?どんなの?”

ちなみにお払い料2万取られたらしいです。
それと、今突然部屋の電気がパシッてなりました。

“ 何これ・・・?”

以上、実体験でした。












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日々の恐怖 12月11日 漬物石

2013-12-11 18:18:41 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 12月11日 漬物石




 これは俺の祖父祖母の家の話です。
去年の7月のことだ。
俺の祖父と祖母は老人ホームですでに他界していて、実家を管理する人がいなかったから、荒れ放題になってしまっていた。
 本来ならば、相続の関係で俺の母親の姉(長女)がその実家を引き継ぐはずだったんだが、 なぜか姉夫婦は相続を頑なに拒んで放棄したので、お鉢が俺たちの元へ回ってきた。
その時は、田舎の山奥という場所の悪さと、都会暮らしに慣れ親しんでいる姉夫婦のことだから興味も無いのだろうな、くらいに思っていた。
ところが俺の母親も、「厄介なもんが回ってきた」と肩を落としていた。

 ともかく、うちで実家の母屋と土地を相続することになったから、両親と俺の3人で実家の大掃除に出かけた。
実家を訪れるのは俺ですら10年ぶりで、本当に山奥のド田舎だった。(熊が麓まで降りてくるって有名な山の近く)
 長い間手入れしていなかったから、門から母屋の玄関までもう草がボーボーで腰近くまで生えていた。
草刈り機を持ってきた親父もさすがに参った様子で、とりあえずみんなで母屋の中に入った。
すると蜘蛛の巣と虫の死骸とかでえらい騒ぎで、カメムシがそこらじゅうにへばりついていた。
臭いし、汚いし、何で俺がこんなところを片づけなきゃいけないのか…とすでに憂鬱になっていた。

 掃除しようにも、とても一日やそこらで片づく状態じゃなかった。
とりあえず俺は、貴重なものが無いか部屋の中を色々探し始めた。
ガスも水道も電気も止まっているから、懐中電灯片手に作業。
でも貴重品があるはずもなく、ほとんど衣類とかゴミばかりだった。
俺は小学生くらいの時にはよく実家で遊んだが、両親が家を新築してすぐに祖父祖母の元を離れたから、思い出もほとんど無く、写真とか本とかも片っ端からゴミ袋に詰め込んだ。
 母屋は築110年以上経っていると聞かされていたから、昔は相当立派なものだったと思う。
さらに祖父には弟たちが何人かいたが、祖父を含めてみんな陸軍の将校だった。(みんな戦死したらしい)
 壁とかには木の銃みたいなのもかかっていて、まるで戦時中のような古めかしさを感じた。
だから俺は、もう部屋の掃除よりもこの家を探検してみたい気持になって、裏庭とか、農具の小屋とか、色々見て回り始めた。

 あっちこっち探索していたら、母屋に屋根裏部屋があることに気づいた。
もちろん覗いてみたくなって、近くにあった枝切り挟みの柄で、木枠のある天井の板を突き上げて外したんだ。
母親が「そんなところ、鼠が這ってるからやめなさいよ」と言ったんだが、下駄箱の上に立って屋根裏によじ登った。

 天井裏は確かに埃と鼠の糞だらけで、腐ったあちこちの板の隙間から外の光りが漏れていた。
広さはかなりあったが、めぼしいものは何も無く、かなり昔の農具や風車が転がっていた。
 苦労して登ってみたわりには面白いものが見当たらず、俺は少し落胆して降りようと思ったが、 ライトでよく見回していると、屋根裏部屋の壁の隅に、ポスターみたいなのが貼ってあることに気づいた。
俺は目が悪いのでもっと近くで見ようと、鼠の糞だらけの汚い床を歩いて、その壁のところまで寄ってみた。


 んで近くでよく見てみると、そのポスターに見えたものは、一枚の張り紙だった。
紙は黄ばんでいて、筆で何か書かれていたが、達筆で俺にはよく読めなかった。
ただ、『大正二年』って書かれているのが読めたから、多分、祖父あたりが書いたものだろうと思った。
 ところが不可解だったのは、その紙が何重にもなっていて、米つぶを糊にしたものでしっかり張り付いていたことだった。
見た感じで10枚くらい重ねて、一枚一枚が両面くっついているから、なんか変だなとは思った。
 その紙自体も壁板に糊で張りついていて、とにかくこれが何なのか気になった俺は、この紙を母親に見せてやろうと、隅のほうからゆっくり剥がしてみた。
上手く剥げずに、裏の紙が板に残ってしまったんだけど、そこに俺はぞっとするものを見た。

『 ○○家 ノ?? 開ケルベカラズ ??禁ズ』

記憶にある限り、紙の裏の板に、筆の縦書きでそう書いてあった。(?は見たこともない漢字で読めなかった)
 意味も分からず漠然と恐怖を覚えた俺は、剥いだ紙を母親に見せるのも忘れて、慌てて屋根裏から降りた。

 ちょうど居間で掃除していた母親にこのことを話すと、突然母親は「そんなところにあったかッ!」と絶叫して玄関に走り出すと、気が狂ったように屋根裏入り口の板を元に戻し始めた。
一体何がどうしたのか状況を飲み込めない俺は、呆然とその様子を居間で眺めていた。

 母親は板を元に戻すと、その真下にあった下駄箱を横に倒して、俺のところに駆け寄ってこう言った、

「 開けたか!?!見たのか!?正直に言いなさい!!」

 ハッキリ言って、今でもあの時の母親の異常な剣幕は脳裏に焼きついている。
完全に人格違ってた。
俺はもうただ、

「 いや、なんも見てない見てない…。」

と、わけも分からず宥めるように答えた。
あまりにもでかい声出して怒鳴るもんだから、外で草刈ってた父親も飛んできて、

「 どうした?」

と様子を見に来た。
母親は俺が何も知らないことを確認すると、安堵したあと「バカタレッ!!!」とまた怒鳴りつけた。
事態が収まったあと、俺の弟には話さないことを約束として、母親が事情を話してくれた。


 母親がまだ子供の頃、この家には『入ってはいけない部屋』というものが存在したらしく、母親は日頃から、両親にしつこくその話をされたのだという。
なんでも、その部屋がこの家の何処かにあって、『その部屋に入ると祟りに遭う』と言われていたらしい。
 おかげで母親は、その部屋のことが幼い頃からすっかりトラウマになってしまって、朝学校へ行くと、夕方になっても外で遊んで家に戻らなかったという。

 その『入ってはいけない部屋』は曾爺さんの代からあったらしく、曾爺さんの兄貴だが誰かがとにかく厳しい人で、自分の子供を折檻するためによく、1メートル四方くらいの箱の中に蓋して閉じ込めて、漬物石を乗せていたらしい。
ところがそんなある日、何かの原因でその子供が箱の中で死亡し、夏に葬式が行なわれたという。
 この事件以降、家の中では、お重箱や弁当箱、箱という箱の蓋が、すべていつの間にか外されたり、鍵をかけてある蔵の漬物桶に何度石を置いても、いつの間にか漬物石がすべて軒下に運ばれるという、不可解な現象が起きたらしい。
この怪奇現象の話は、俺も生前の祖父から何度か聞かされた記憶がある。

 当時はお祓いなどもさんざんしたようで、その箱を供養のために四九日間、家に安置することになったという。
ところが、戦争で家の男衆が召集されてゆくと、箱を気味悪がった家族らが、家の中の人目につかない場所に隠してしまった。
こうして、家の構造上あるはずのない小部屋が作られ、そこに収められたという話だ。

 結局、部屋の場所だけは祖父祖母も死ぬまで喋らず、娘たちにも話さなかった。
だが俺は、屋根裏のあの紙が貼られてる壁板の周囲だけ、外からの陽射しが無かったのを見た。
つまり、あの張り紙の奥こそが『入ってはいけない部屋』であり、(母親はそこまで言わなかったが、言いたくもなかったと思う)、何枚も重ねて貼られていたあの紙は、恐らく何重にもする必要があった御札の一種ではないかと思う。
そして、よほど強力な怨念があったのかもしれない。


 その後、掃除を切り上げて3人で家に帰ると、留守番していた中2の弟が、俺らを見るなり言った。

「 その石、どうしたの?」
「 ん・・・・・・?」

そのときは、弟が何を言っているのか、分からなかった。
 夕食後、弟に聞いてみたら、俺と母親と父親、三人揃って大きな漬物石抱えて帰ってきたらしい。
 しかし、帰って来た三人には、そんな記憶は残っていない。
弟が見たのは、三人とも苦もなく大きな石を抱えていたので不思議に思ったらしいのだが、家に上がった途端石が消えてしまった。
その話を聞いて、思わず肌が泡立った。

 それ以来、この話は家族の間で一切しなくなった。
触れてはならないものだと感じた。
もちろん、実家にはもう近づかないし、あの屋根裏部屋に何があるのかも考えたくない。
いまでもあの小さな部屋には、怨念が漂っていると思う。















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日々の恐怖 12月10日 山車

2013-12-10 19:02:50 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 12月10日 山車





 毎年、父が夏になると語っていた話です。

「 村の夏祭りがあるだろ。
うちの地区があれに山車を出せないのは我が家の所為なんだ。
ちょうど夏祭りの日に、同居のおばがなくなってな。
以来、夏に山車じゃなく、秋に神楽になったんだ。」

へ~、と思って聞いてました。
毎年、梅雨からその夏祭りの日までに必ず一度はしてた話です。
 今年はそのおばさん50回忌だとか。
法事するのかどうかと話していたときに、

「 夏祭りに山車が出せないのは・・・・・。」

と話を振ったら

「 お前、何言ってるんだ?
うちの地区はずっと神楽担当で山車なんか1回も出したことないぞ。」

って言われた。
 父の兄弟姉妹に聞いてみた。

「 そんな事実はない。」

って言われた。
私に毎年この話をしたのは誰だったのか?












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日々の恐怖 12月9日 死神さん

2013-12-09 20:00:37 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 12月9日 死神さん




 子供の頃、友人が友達に聞いた言う話を聞いた。
その友達は実話だと言い張っていたらしいが、結局友人からのまた聞きなわけで、どうなのやら分からない。

 ある姉妹が、とある実験をしてみようということになった。
その実験というのが、夜中の二時に、寝ている人を真ん中にして、人が二人左右に立ち、パンパンと軽く二回手を打ってから目を閉じて、

「 死神さん死神さん、とても怖いものを見せてください。」

と小さくつぶやく。
 3分間そのまま目を閉じてからそっと目を開けて真ん中の人の顔を見ると、その顔が“その人が死ぬときにしている表情”になっているというもの。

 あまりにも安直な内容、安直な呪文だ。
そしてどこかで聞いたことのある話にそっくりというチープさに、最初知ったときはお姉さんの方は全く興味がわかなかったらしい。
しかし、妹さんの方が“やろうやろう、誰かで実験しよう”と 大乗り気で、週末に自分たちの父親で試してみることになったんだそうだ。
 別に父親に恨みがあるとかそういう背景は全くなく、ただ単に“家の中でできるし、その日母親は用事で実家に泊まってたから”という理由だけで選んだらしい。

 そして二人で、そーっと父親の部屋に入って、気づかれていないことを確認して準備開始。
準備といっても二人で横に立つだけなんだけど。
 二時になったのを見計らって教わった通りにやってみた。

“ ぱんぱん!”

「 死神さん死神さん、とても怖いものを見せてください。」

すっかり信じている妹さんは3分経つのが怖いような待ち遠しいような。
付き合ってるだけのお姉さんは、冷静に三分間を知らせるバイブが震えるのを待っている。

 三分経過したのを確認してからお姉さんの“いくよ、せーの”で二人で目を開けてみると、父親の顔はなんにも変ってない。

「 あれぇ、おかしいなあ。」
「 まあ、噂なんてこんなもんよ、気がすんだら寝ましょう。」

ってことでお開きになった。
 まあ、小学生と中学生にとって2時なんてかなりの夜更かしだし、その後、二人それぞれの部屋でぐっすり寝てしまった。


 朝かなり遅く、昼近くなってから目が覚めてみると一階が騒がしい。
朝に帰ってくると言っていた母親が、狼狽しながら何やら電話をかけているようだ。

「 大変、大変なんです、主人が、主人が・・・。」

いつも早起きの父親が、まだ寝室から出てこないことを不審に思った母親が起こしに行ってみると布団の中で冷たくなっていたんだそうだ。
心筋梗塞だか脳梗塞だか、死因は何かの発作であったと。

 母親と救急隊員みたいな人が玄関先で、

「 主人は・・・、どのくらいの時間に発作を起こしたんでしょうか?」
「 まだ詳しくはわかりませんが・・・。
あの状態ですと、おそらく深夜12時ごろと思われるかと・・・。」

なんて話している。
 泣き崩れる母親を見ながら、お姉さんの方が無表情なまま、

「 そりゃ、変わるはずないわよね。」

と言ったのが、妹さんにはとても怖かったらしい。
 ただの偶然だったのか、本当に死神さんが来たのか。
この話が広まってからは誰も同じことをやろうとする人がいないため、わからずじまいなんだってさ。










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日々の恐怖 12月8日 夏休みの思い出

2013-12-08 20:14:01 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 12月8日 夏休みの思い出




 印象に残る夏休みの思い出って色々あると思うけど、オレの夏休みの思い出といえばこれだな。

 オレが小学二年生の夏休み一日目。
小さい頃からずっと遊び場にしていた近所の神社の境内で、その日も仲のいい友達数人で遊んでたんだ。
かくれんぼだったか、鬼ごっこだったか…。
とにかくオニから逃げる遊びだったと思う。
 そんな遊びをキャッキャ言いながら汗だくで遊んでた。 
オレもオニから逃げてて隠れ場所を探してていたけど、なかなかこれと思う場所がなくってさ。
神社の敷地内からは外に出ちゃいけない決まりだったし、それほど大きくもない神社だったから隠れ場所は自然と限られるし…。

 で、もっと見つかりにくそうな場所はないかと神社の本殿の周囲をウロウロしてると、本殿の扉がわずかに開いているを見つけたんだよ。
いつもは本殿の扉は開かないよう南京錠で施錠されてたけど、その日は何故だか南京錠がされていなかった。

 オレは最高の隠れ場所を見つけたと思って、すぐに本殿の中に隠れたんだ。
外はまだ明るかったけど本殿の中は暗くて蒸し暑くて、それになりよりすごくイヤな臭いが充満してたのを覚えている。
正直あまり長居はしたくなかったけど、こんなところに入れるのは滅多にないことだし興奮もしてたし我慢した。
 本殿の中から扉を少し開けて外の様子を伺っていると、オニの友達が本殿の前でキョロキョロと自分を探す様子が見えた。
その姿がすごくおかしくてクスクス笑いながら覗いてと、その友達と目が合っちゃったんだよね。
 すぐに友達は、

「 なんで、そんなとこにいるんだよ~。」

と笑いながらこっち向かって走ってきた。
 オレの方は思いのほか早く見つかってしまって残念ではあったけど、友達の反応が面白くて逃げることもせず友達が扉を開けるのを待ってた。

 そして、友達が扉の前まで来て勢いよく扉をバン!と開けたんだ。

友達「 ○○くん、見ぃ~つけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

笑いながらオレの名前を呼んだ。
 友達の表情が一瞬で変わった。
笑顔は一瞬で消えて目を大きく見開き、口は開けっ放しで。

( ゜д゜)? ←ホントにこんな顔してた。

オレを見つけて急に笑顔が消えて固まった友達を見て、オレもワケがわからず戸惑っているとあることに気がついた。
 友達はオレを見てない、正確にいうと顔はオレの方を向いているけどオレを見ているわけじゃなく、オレの後ろ。
しかも、オレの背丈よりずっと上の方を見てる。

“ うしろ・・・・・・?”

なんだろうと思い、振り返ると天井の梁から垂れたロープに首を吊っている女の人がそこにいた。
 一瞬で頭が真っ白に・・・・・。
たぶん、オレも友達と同じく、「 ( ゜д゜)? 、 ( ゜д゜)? 」って顔をしてたと思う。
 どのくらいそうしてたかわからないけど、しばらく放心状態で女の人を見上げていると、急に後ろでバタバタ!と音がした。 
 我に返って振り向くと、無言のままスゴイ勢い走りながら遠ざかっていく友達の背中が見えた。
その姿を見た直後、全身にすごい鳥肌が立って気がつくと自分も無言のまま外へ駆け出してた。
 境内を真っ直ぐ突っ切って鳥居を潜って石段を五段とばしくらいで降りてった気がする。
友達が近所の家に駆け込むのを見て、自分もその家に駆け込んで、家の人に神社で人が死んでることをパニックになりながらもなんとか伝えた。

 後はもう、パトカーは来るわ、神主はステテコ姿で走ってくるわで大騒ぎ。
オレが知ってるのはここまでで、その後のことはよくわからない。
新聞なんかで出てたかもしれないけど、子供のオレには分らなかったし、周りの大人もそのことには触れようとしなかった。
 首を吊っていた女の人がどこの誰だったかはわからないまま、今思い出しても怖いけど不幸中の幸いだったのが女の人が後ろを向いていてくれたこと。
もし、顔なんか下から覗き込んで見た日には、きっと頭に焼き付いて忘れられなかったと思う。














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日々の恐怖 12月7日 骨

2013-12-07 21:22:37 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 12月7日 骨





 十年以上前の話です。
当時、私の祖父は腕の良い建具職人でした。
私はそんな祖父の仕事ぶりを眺めるのが好きで、よく仕事場に出入りしていました。

 その日、私はいつものように祖父の家を訪れ、落ちている木ぎれを拾って遊んでいました。
目の前で、祖父が作業台の前に座って黙々と仕事をしています。
ごつい手が器用に動いて、木を削ったり部品同士を組み合わせたり、その技の冴えに、私はしばし遊びの手を止めて見とれていました。

 しばらくして、妙なものに気づきました。
祖父の背後の壁に、使い込まれて黒光りする木の板が何枚か立てかけてあったのですが、その板と板の隙間からおかっぱ髪の少女の顔が覗いています。
 板と壁の隙間から顔の右半分を出して覗いているような格好で、体は見えません。
白い顔の半分だけが、暗い部屋の隅にぽつんと浮かんでいるように見えました。

 私は、黙々と手を動かしている祖父の横を通り過ぎ、壁際へと歩み寄りました。
私が近づいても白い顔は微動だにせず、祖父の背中をジッと見つめていました。
やはり体と顔の左半分は見えませんが、壁と板の間には人が入れる程の隙間はありません。
私は少女の顔に声をかけようとしました。

「 話しかけたらあかんぞ。」

突然祖父が声を上げました。
聞いたこともないような低い声。
振り返ると、祖父は相変わらず作業台に向かったままでこちらに背を向けています。

「 おじいちゃん、この子だれ?」
「 そいつはな、俺がそこの木で作った箱の中におった女や。
ええから放っとけ。」

その言葉の意味は分からなかったのですが、私はとりあえず壁際から離れました。

 その後も祖父は背後を振り返ることなく、仕事を続けていました。
私は再び木ぎれで遊び始めましたが、何となく気になって祖父の背後を見やると、いつのまにか顔は姿を消しており、後には艶めいた黒い板が並んでいるばかり。

 祖父の家にはその後も良く遊びに行きましたが、その顔を見ることはありませんでした。
それから十年程たった一昨年の初春、祖父は病に倒れて入院し、間もなく亡くなりました。

 葬儀の当日、棺の中に入れるために祖父の思い出の品を集めました。
その中に小さな木の箱がありました。
10cm角くらいの黒っぽい艶のある箱。
それを見た途端、あの日壁に立てかけられていた木の板が脳裏に浮かびました。

“ あの板で作られた箱ではないか?”

持ってみると意外にも重い。
蓋がないので振ってみましたが、何の音もしません。
死の直前まで面倒を見ていた叔母が言うには、晩年の祖父はこの箱をとても大切にしており、病院でも枕元に置いていたそうです。
それではと、箱は祖父の頭の側に置くことにしました。

 やがて葬儀が始まりましたが、その際に妙なことがありました。
お坊さんがしきりに棺の方を覗き込むのです。
不審に思った父が聞くと、

「 この人、本当に死んでますよね?」

などと良く分からないことを言います。
父は少しあきれた様子でした。
 お経を読んでいる最中にも、お坊さんはしきりに棺を気にするような仕草を見せ、何度か読経が止まりかけました。

 葬儀が終わり、祖父の遺体は火葬場で焼かれました。
焼き上がった骨を拾うために親族が呼ばれ、焼却炉から大きな台が運ばれてきました。
近づくとまるでストーブのように熱い台の上には、白い骨が灰に埋もれていました。
それを鉄の箸で拾うと、係員が骨の部位を教えてくれます。

「 頭蓋骨はあとで蓋に使うので置いといて下さい。」
「 いわゆる、のど仏はどれです?」
「 これです。」

拾った骨は次々に壺に入れられました。
しかし、壺はなかなか一杯になりません。

「 もっと拾って下さい。」
「 はぁ…でも、あまり残ってないんですね。」
「 ここの炉は新しいので、殆ど焼けてしまうんです。」
「 お年寄りの方は大抵少ないですよ。」
「 この方のは多い方です。」
「 丈夫な人でしたから…。」
「 これは?」
「 それは骨盤ですね。」
「 その横が太股の骨ですね。」
「 これは?」
「 のど仏ですね。」

部屋にいた皆が怪訝な顔を見合わせました。
のど仏の骨はさっき壺に入れたはずです。
係員が集めた頭骸骨を調べ始めました。

「 これは・・・、骨が多いですね・・・・。」

それからが大変でした。
警察が来て、私達は帰ることが出来ずに火葬場に釘付けです。
 火葬場の職員と警察が調べたところ、骨は大方が灰になっていたものの、とにかく頭部の骨が二人分ある事が判明しました。ただ、それが誰の骨なのかが不明です。

私達は何度も取り調べを受けましたが、なぜこんな事になったのか見当もつきません。
棺の蓋は出棺の直前に参列者の目の前で釘を打ったのですが、その時まで、もちろん棺の中に人の首など入っていませんでした。
 入っていたものと言えば祖父の遺体と遺品の数々、それにあの黒い箱だけです。
大きさからいって、箱の中に人の頭が入っていたとは思えません。
では、中に骨だけが入っていたのか?
 しかし、肉の付いていない剥き出しの骨は、すぐに燃えてしまい後には残らないそうです。
結局、何の結論も出ないまま、夜更け過ぎには解散となりました。

 祖父の遺骨は一時警察に預けられましたが、四十九日までには返してもらったようで、今は墓の下に埋まっています。
身元不明の骨については、後日のど仏の部分を警察から譲ってもらいました。
それを小さな箱に入れて祖父の墓の隣に埋め、墓石の代わりに大きな石を置きました。
今のところ特に変わった事はありません。
ことの真相は、今も分からずじまいです。














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日々の恐怖 12月6日 夢

2013-12-06 21:35:41 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 12月6日 夢




 二年くらい前の事です。
当時、三年くらい同棲していた彼女がいたんだが、そいつと新しくマンションを借りて引っ越した。
俺は霊感とか無いし、霊や宇宙人すら信じてなかった。

 ある日、寝室のベットで寝ていると誰かが布団の中に入ってきた。
あぁ彼女が来たんだなぁ、ぐらいでしか思わなかった。
ちなみに、当時の俺は水商売を経営していて帰りが朝が当たり前。
彼女は昼間仕事をしていた。

 それで違和感を感じた。
俺が寝てる時間は彼女は仕事に行っているはずだと。
そして目を開けると、ベットには誰も居なかった。

 もちろん彼女は仕事に行っていた。
夢でも見たのかと思い気にはしていなかった。
 またある日、寝ていると今度は犬がベットに入ってくる感じがした。
犬は飼っているので、あぁ飼い犬が入って来たなと思っていた。
また違和感を感じた。

 飼い犬は犬部屋用に一部屋潰して使っていた。
犬部屋はレバーで開けるタイプのドアだから犬が自ら開ける事は出来ない。
彼女が入れたのか?いや、今日は彼女が仕事に行くのを見送っている。
やはり目を開けると犬は居なかった。

 酒も飲んでるし変な夢でも見たんだと言い聞かせていた。
それから頻繁に女と犬は現れる様になった。
寝ていて目をつぶってるはずなんだが、女の感じがわかる。
顔はボヤけて分からないんだが、髪が長く白い服を着ている。

 布団に入らない時もあり、ただ俺のそばで立っている時もあった。
犬はいつもジャンプしてベットに入ってくるか、俺の上に飛び乗るって感じだった。

 これは彼女が本当に横で寝ている時もあった。
何かをされる訳じゃない、でも恐怖は感じていた。
必死に目を開けよう、起きようとしても出来ない時もあった。
動く手で彼女に起こしてくれ…と頼んだこともあった。
 だけど声も出ない、腕も彼女に少し触れる程度しか動かなかった。
必死に目を開けると何も変わらない寝室。
だけど、もう一度眠ると同じ事が起きる。
女か犬が来る。
同時に来る時もある。
 彼女には怖がらせない様に、

「 女や犬が入ってくる夢をみるんだ。」

くらいしか教えて無かった

 こんな現象が三日に一回、一日に四回も見る日があった。
霊など全く信じてない俺でも少し怖くなっていた。
 ある日、俺が仕事に行っていた時に彼女が友達を呼んだらしい。
その子は自称霊感が強いらしく、うちのマンションの駐車場に着くなり、

「 うわっ!ここ酷いね、大丈夫?」

なんて言ってたと聞いた。

 霊など信じない俺はアホくさwって笑っていた。
そんな事がたびたび起きる事が三ヶ月くらい続いたあと、俺が仕事に行こうとシャワーを浴び、髪の毛を乾かしていたらインターホンが鳴った。

 こんな時間に誰だ?(夜11時頃)と出てみると警察だった。
話によると下の階の住人が連絡が取れなくなり親が不動産屋に連絡を入れたところ、心配になり部屋に入ってみると亡くなってたそうだ。

 女性の一人暮らしで最後に見たのはいつか?とか彼氏らしき男は見なかったか?とか聞かれた。
女が三ヶ月くらい前に犬を散歩させてたのを見たみたいな話を警察にしていた。
あとから聞いた話によると病死で他殺とかでは無いと聞いた。
新聞にも載らなかったし。

 そんな事が起きてから、女や犬の霊は見なくなった。

“ よくある話で女が気付いて欲しかったみたいな事かな?”

なんて、怖がりながらも自己解決していた。
そして色々あり、五年に及ぶ同棲生活も破局し、俺は一人暮らしになった。


 女は新しい男と別のマンションで同棲を始めていた。
久々に女から電話がかかって来て、

「 あんたが見るって言ってた女や犬が入ってくる夢って、女は髪が長くて…服が…こんな感じじゃない?」

みたいな事を言われた。
まるっきし俺が見た女と一緒だった。

 どうやら、新しい男がそんな夢を見るらしい。
俺は見なくなったのは、よく考えると彼女と別れてからだった。
もしかして、あの女や犬の霊は下の住人じゃ無く、元々彼女に付いていたのかも?
それとも、まだ下の住人が彼女に付いて行ったかもしれない。
今は彼女は結婚してしまい連絡も取らないが、旦那はまだ夢を見ているのだろうか?














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日々の恐怖 12月5日 隠し事

2013-12-05 21:15:49 | B,日々の恐怖





      日々の恐怖 12月5日 隠し事





 私は親族に、主に妻の家族へ隠し事をしている。
なぜ私だけが知り、なぜあの時お義父さんが私だけに話したのか、それは10年以上経過した今でも、わからない。

 それは妻の母親、つまり私のお義母さんが亡くなってから2ヶ月後、その日は甥の誕生日があり、親族で誕生日パーティーを開いたときの事だった。
 私は義兄に頼まれて、そのパーティーの様子を8ミリテープのビデオカメラで撮影していた。
すでに認知症気味だったお義父さんもその席にいた。
お義父さんは、妻との結婚や娘の誕生の時など、元気な頃には本当に数え切れないほどお世話になった方だった。
 正直、飲んだくれで借金まみれだった私の実父なんかとは、比べ物にならない立派な人であり、心より尊敬できる「父親」であった。
そんなお義父さんは、ボ~っとしたまま焦点があわない瞳を泳がせるだけになってしまった。
今までのご恩を思うと、そんな姿が本当に痛々しかったのを覚えている。


 後日、チェックの為にビデオを見ていると、お義父さんの座っている椅子の後ろに、ぼんやりと小さな白い影が映っているのを発見した。
その後、義兄の家へ赴きビデオを再生しながらそれを見せると、

「 これ、お袋じゃないかな・・・。」

と、言う。
確かに生前のお義母さんの背格好によく似ている気がした。

「 親父を思って出てきたんじゃないかな、ほら親父はもうボケ始まってるし、あの世に行っても心配してるんだろうな。」

 あまりオカルトな事とはほとんど無縁な私だったが、その時はなぜか素直にナルホドと思ったのを覚えている。
他の親戚に会うたびに、そのビデオを見せた、不思議と怖がる者は一人もおらず、みんな納得したかのようにお義父さん夫婦の愛情を喜んでいた。

 そして再び妻の家へ出向いた際に、ビデオテープをお義父さんにも見てもらおうと持っていった。

「 ほら、お父さん、ここにお母さんがいるよ。 
まだお父さんの心配してるんだね・・・。」

妻がTVに映し出された小さな人影を指差して父親の耳元で話をしていた。
そこで私は、お義父さんのボンヤリとした目に涙が浮かんでいたのに気づいた。
妻もそれに気づき共に涙を浮かべた。


 その日から1ヶ月もせず、お義父さんが倒れた、脳内出血だった。
救急車で病院に運ばれたのだという。
それ以降、親戚の間では、

「 お義母さんが、お義父さんを連れて行こうとしているんじゃないか。」

と、噂をするようになった。
 あのビデオを見せた日の感動が何かバカにされているようで、私たち夫婦は悔しかったが、時期や状況だけに、そうさせてしまうのは仕方のないことだった。


 お義父さんのお見舞いに行った時、もうほとんど寝たきり状態になり、言葉も不自由になった姿を見た私は、涙を堪えるのに必死だった。
あんなにも優しく、強かったお義父さん・・・、今の姿からその面影も感じることができなかった。
 妻が席を離れた時、ふとお義父さんがTVを指差していることに気づいた。
TVが見たいのだろうかと思った私は、TVの電源をつけようと立ち上がった。
しかし、ふと気づく。
お義父さんの目は私を見ていた。

“ 何か言いたいことがあるのだろうか?”

そこで私は、あのビデオテープに関することじゃないのかと思った。
それはある意味直感的なものだったのかもしれない。
お義父さんの呂律の回らないしわがれた声が、それを確信に変えてくれた。

 しばらくして、お義父さんが亡くなった。
お義母さんが亡くなって1年も経過していなかった。
案の定、親戚の間では、

「 お義母さんが連れて行ったんだ。」

という話になっていた。


 そう、妻の親戚の間ではそういう話にしておいたほうがいいのだ。
これ以上、あのお義父さん夫婦の間を汚してはならないのだ。
だから、あの病室でお義父さんが何故か私だけに言った、あの言葉は私の心の中だけにしまっておこうと誓って、もう10年以上が経過した。

「 あれは、ばあさんじゃない。」

もうほとんど、あのビデオは話題に上がらない。














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日々の恐怖 12月4日 鍵

2013-12-04 22:29:11 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 12月4日 鍵




 昔の家の鍵が不幸のもとだった。
両親が共働きで鍵っ子だったんだけど、11歳まで住んだそのマンションの一室から引っ越す際、4歳下の妹が黙って持ってきちゃったやつ。
 “無くした~”って言って、引越し間際にちょっと騒いでたけど、多分手放したくないが故の嘘だったんだろう。
物心ついたころから住んでた部屋だったし。
 新しい家についてから、その鍵を持ってるのに気がついたんだけど、私も懐かしさから“私も黙ってもってくればよかったなぁ”と思った。
妹に頼んで、時々見せてもらったり触らせてもらったりしてた。
 でも、触ると必ず手を怪我するんだ。
紙でスパッと切る程度の怪我から、ぐらぐら煮えた油がかかる大やけどまで。
おかげで、今も左手の甲が一部変色している。
所持者の妹は妹で、変な病気に罹ったり、クラス内の超問題児&その親に目をつけられたりして散々な目に合っていた。
 で、ある日妹と物凄い大喧嘩をしたことがあった。
上記のような状態が続いていて、家族中がピリピリしてた頃だったから、つかみ合ってお互い泣き叫ぶくらいの激しい喧嘩だった。
 結局、母が間に入って喧嘩両成敗だったけど、妹は根に持っていた。
その頃の妹の口癖は“なんで私ばっかり、なんでお姉ちゃんだけ・・・”。
幼いながらに自分の不運を感じ取ってたんだろう。
今から思うと、すごく可哀想なことだと思う。
 喧嘩から数日経った頃、ランドセル背負って学校から帰る途中、何にもないところで躓いて派手に転び、角を曲がってきたバイクに轢かれそうになった。
ぎりぎりで避けられたけど、運転手には罵声を浴びせられた。
死ぬかと思った。
 それから、まるで妹の不運が乗り移ったように私も変なことになった。
いきなり親しい友人から虐められるようになるわ、それがクラス中に伝染するわ、明らかに被害者こっちなのに、クラス担任は私を目の仇にするわ。
すごく理不尽な理由でテストを0点にされたこともあった。
転んで腕をざっくり切り(なんでそんなに深く切れたのか今でもよくわからん) 、5針縫う怪我したりとか。
 で、不登校寸前までいったある日、リビングに置かれていた私のランドセルを、父がおもむろにいじり始めた。
この父が不思議な人で、真面目で固いバリバリ理系人間なんだけども、妙な勘を発揮する人だった。
 多分、父としては最初は“最近のランドセルどうなってんだ?”くらいの興味だったんだろうけど、 蓋をあけて中にあるチャックを開け、いきなり逆さに振り始めた。
“なにやってんのお父さん?”と生ぬるい目で見守っていたのだが、その時、チャリーンと妹が持っていた昔の鍵がそこから落ちてきた。

「 これ前のマンションの鍵か、なんで持ってるんだ?」

 父がそういった瞬間、血の気がザーッと引いていくのがわかった。
妹が入れたんだ。
鍵に関わるとロクな目に合わないな、とは薄々感じていたけども、その負の力を改めて思い知らされたというか。
 この辛い状況を生み出したのがこの鍵で、妹が入れたのだとしたら・・・。
悪意と恨みを叩きつけられた気がして、ショックすぎて妹を責める気にもなれず、その後その鍵はリビングに放置。
気がついたら無くなっていた。
父か母が捨てたのかもしれないし、戸棚の裏とかに落ちちゃってるだけなのかも。
 ちなみに私の不運は中学入学と同時に自然に解消された。
でも、妹の不運はまだ続いている。
とくに人間関係は悲惨だ。
ひねくれた子だから今まで単に本人の性格が原因なんだろうと思ってたけど、鍵のことを思い出した。


 ついでに、前のマンションですが、私が小学生当時ですでに築20年以上経過しておりまして、 周辺が再開発の手が入り始めた頃だったんで、子供は“お化けマンション”と呼んでました。
 目立つ怪異はなかったんですが、今から思うと“?”なこともいくつか。
7階なのに、どこからともなく猫が入り込んできてて、押入れに隠れていたらしく父の布団がおしっこまみれにされたとか。
また、どこからともなく巨大なザリガニ(多分お隣さんが飼ってたやつ)が、父の寝ている枕の下に侵入し、生臭さで起きた父が激怒したりとか。
 私と母は、よく変な夢を見て飛び起きました。
同じ内容だったことも幾度かありました。
一番怖かったのは、7階に住んでいるのにベランダの柵を越えて、包丁をくわえた人が侵入してくる、という夢です。
母も私も大騒ぎし、父にわ~わ~喚きたてました。
父はかなりうざそうでした。
 その後、一旦沈静化したんですが、妹が変な女のストーカーに会い、(宗教の勧誘みたいだったんですけど、なんで小学一年生を?) 、それがきっかけで引っ越しました。
 バブルが崩壊して、不安定な世相だったんで変な人が沸いたのかな~、と今は冷静に見つめていますが、当時の“お化けマンション”は宗教がはびこり、リストラゆえに出て行く人が後を絶たないカオスな物件でした。















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日々の恐怖 12月3日 帽子

2013-12-03 18:20:32 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 12月3日 帽子




 知人の父親は若い頃から山好きだった。
父親の写真の殆どは山で撮ったもので、全身で喜んでいるのが一目でわかるような笑顔で溢れているそうだ。
 写真の父親は、いつも同じ帽子を被っている。
それは彼が高校生の夏、初登山の際に知り合った同じ年の少年が、たまたま同じ物を被っていたので記念に交換した思い出の品だった。
暫くは手紙のやり取りもあったが、互いに忙しくなり途絶えてしまったという。
 知人が高校に入ってすぐ父親が亡くなった。
遺影に使われたのは山で撮った素晴らしい笑顔の写真で、やはり、帽子を被っていた。
帽子は棺に納められた。
形見として残したかったが、これからは思う存分、登山を楽しんで欲しいという思いを優先したのだそうだ。
 火葬場に到着すると、既に別の集団が待機し、自分たちと変わらぬ年齢の母子の泣く姿が見えた。
何げなく遺影に目を向けた知人は固まった。
遺影には父親と同じ帽子を被って微笑む男性が写っていたそうだ。
 ありふれた帽子なので、別人でも何らおかしくはないが、20年以上の歳月を経て再会した二人が、一緒に登山してるような気がしてならないと知人は笑った。
俺もこんな偶然があってもいいんじゃないかと思えた。















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日々の恐怖 12月2日 バイト

2013-12-02 17:42:03 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 12月2日 バイト




 今から10年近く前の話だ。
当時バカ学生街道まっしぐらだった俺は、ろくに講義も受けずにバイトとスロットばっかりしていた。
おかげで2年生を2回やり、4年生になっても月曜から土曜までみっしり講義を受けなければならず、就職活動もできない状態に陥った。
 俺は24時間営業の飲食店の深夜スタッフとして働いていた。
22時から朝の9時まで働き、朝のパチ屋の開店に並び、モーニングを回収してから帰って寝る。
起きてからパチ屋に行き、軽く打ちながらストックの貯まり具合を確認してからバイトというローテーションだ。

 その働いていた飲食店での話である。
そこの店は、かつて火災により死者が出たことがある。
駅前のマンションの一階部分が店舗なのだが、火災以降はテナントとして入った店がすぐに撤退してしまう。
 そして当時のオーナーがマンションごと手放し、それを飲食店を経営する会社が丸ごと買い取った。
で、一階部分で始めた店が、俺の働く店だった。
 大学生活が始まってから1週間ほどで俺はそこで働き始めた。
そして、働き始めてから一ヶ月後、俺は深夜スタッフのチーフになった。
当時働いていた深夜スタッフの先輩達が、皆一斉に辞めたのだった。
 俺について仕事を教えてくれた先輩に事情を聞いた。

「 だってさぁ、あの店ヤバイよ。
出るんだもん。
お前も見たっしょ?
働けねーって。」

どうやら、昔火事で亡くなったという人が事務所に出るらしい。
しかし俺はそんなもん見てないし、そういった類のものも見たことがなかったので信じがたかった。
 先輩達は毎日のように出るソレにうんざりしていた。
着替えていれば出るし、休憩に入れば出るし、食材を取りに行けば出る。
俺が入った時点でまだ店はオープン2ヶ月ほどだったのだが、その2ヶ月で先輩達は皆店に行くのが嫌になった。
 さすがにばっくれるのは申し訳ないし、新たにバイトを募集して、入ったヤツに全部教えて皆で逃げよう。
相談の結果、そう決まった。
とんでもない人達だ。
そして俺が入ったのだった。

「 何が出るんですか…?」

恐る恐る俺は聞いた。

「 お前マジで見てねーの?
逆におかしいよそれ。
真っ黒に焦げたオッサンが出るんだよ。」

 先輩達は皆焦げたオッサンを見ているらしい。
そのオッサンがいることを当然の事実として捉えている。
見えない俺のことを変人扱いしている。
 それを聞いて俺も逃げることにした。
まだ見てないけど、そんなもん見たくない。
しかし、辞めたいと申し出た俺に対してオーナーは必死で引き止めた。
 オーナーもそのオッサンを見たらしく、見えない俺のことをとても貴重な存在に思ったらしい。
時給を3倍にするから働いてくれと言ってきた。
 当時の俺の時給は1000円。
マックのバイトが680円の時代で、飲食店の時給1000円は貧乏な田舎モノの俺にとって魅力的だった。
それが3倍になる。
時給3000円だ。
休憩を差し引いて一日9時間働くと一日で27000円。
毎日やれば月30日として810000円。
 俺はバイトを続けることにした。
昼間の人達は誰もそのオッサンを見ていないらしい。
深夜の営業に関して全権を渡された俺は、バイトを雇うことにした。
一人では何もできない。
 時給を1200に上げて募集をかけたところ、すぐに応募があった。
しかし、雇った人は皆すぐに辞めていく。
理由は皆、怖いからとのことだった。
 事務所で面談をしていた人が俺の顔の少し横を見て固まったこともあった。
どうやら見えたらしい。
 一向に俺は何も見ない。
なぜ俺には見えないのかはわからない。
逆に見てみたいとも思ったが、やはり見えたら怖いと感じるのだろうか。
俺が鈍感なのだろうか。
それとも所謂守護霊というものに守られているのだろうか。
わからない。
 根気良く募集を続け、4人が残った。
ワケあり主婦のTさん。
フリーターのMさん。
人生の一発逆転を狙うNさん。
ボクシングのライセンスを持つSさんの4人だ。
 どうやら俺の店は地元では、出る、見えないヤツはおかしいってくらいに出る、と有名になっていたらしい。
出るのであれば是非とも見たい。
見える上にお金ももらえるなんて素敵だ。
そういう魂胆の元に応募してきた人々だった。
 全員が見える人らしく、そういったものに慣れていたように思う。
彼らはイカれていた。
 事務所の隅に向かって、

「 よっ!」

と手を挙げて挨拶をするNさん。
ロッカーの前で空間に質問をしているTさん。

「 煙かけたら消えちゃったよ~。」

とはヘビースモーカーのNさんの言だ。
Mさんだけは少し恐怖を感じるらしく、

「 でも、もう人間相手じゃ恐怖って感じないんすよね。
久々っすよこの感じ。」

と言っていた。

 結局俺はその仕事を6年間続けた。
その間に何人かバイト希望者が来たが、結局はすぐに辞めていった。
俺を含めたその5人で6年間。
 その6年間で、俺は一度だけオッサンを見た。
パソコンに向かって売り上げを打ち込んでいたとき、ディスプレイの片隅に人の顔が見えた。

“ ん?”

と思って振り返ると、一瞬だけそのオッサンが見えたのだ。
黒い服を着て、メガネをかけて、坊主頭の小太りなオッサン。
そしてふっと消えた。
それが俺の人生における、最初の心霊体験だ。
 50代くらいだろうか。
焦げてはいない。
トイレと間違えて、たまに事務所にお客さんが入ってくるような造りの店だったのだが、またお客さんが紛れ込んだのかな?というくらいに普通の人間のような存在感だった。
 Tさんに、

「 そのオッサンてメガネかけてる?」

と聞くと

「 あ~、そう言えばかけてるかも~。
焦げ焦げでよくわかんないんだけど、多分かけてるね。」

と言っていた。
 こんな俺だから霊体験はほとんどないのだが、このバイトのメンバーとつるんでいるとやたらと不思議なことが多かったな。














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