大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 9月14日 大学病院

2015-09-14 19:34:09 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月14日 大学病院



 数年前、私と姉の2人で、身内の見舞いで某大学病院に行ったときのことです。
4階からエレベーターに乗ったら、中に小さな女の子が乗ってて、

「 なんかいを、ごりようですか?」

と私にたずねるので、

“ エレベーターガールごっこでも、やってるのかな?”

と思い、

「 1階をお願いします。」

と言うと、

「 はい、したへまいります。」

と可愛く答えて、なんとも微笑ましい感じでした。
 1階へ下りる途中、3階でエレベーターが止まって、パジャマ姿の痩せている男の人が乗ってきました。
すると女の子はまた、

「 なんかいを、ごりようですか?」

と男の人に尋ねると、男の人はボソッと照れくさそうに、

「 地下2階をお願いします。」

とつぶやいて、エレベーターの奥の壁に寄りかかりました。
 エレベーターが1階に着くと、女の子は、

「 いっかい、がいらいでございます。
ごりよう、ありがとうございました。」

と可愛くガイドして、私と姉はエレベーターを降りました。
 帰り道、姉が、

「 エレベーターの女の子、かわいかったね。」

と言うので、私は、

「 そうだね、3階で乗ってきた人とか、ちゃんと女の子の遊びに付きあってあげてたけど、なんか照れくさそうにしてたのが、ほほえましかったよ。」

と笑って言ったら、姉に、

「 へ?途中で誰か乗ってきた?」

と真顔で返されました。
 それで、不審に思って、姉に言いました。

「 3階で、パジャマの男の人だよ。」
「 いや、3階には止まったけど、誰も乗って来なかった。」
「 女の子が、何階を、ご利用ですか?って聞いてたよ。」
「 いや、誰もいなかったから、扉を閉めただけ。」
「 男の人、地下2階をお願いします、って言ってたけど・・・。」
「 あそこ、地下2階、無いよ。」










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日々の恐怖 9月13日 神隠し

2015-09-13 18:53:15 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月13日 神隠し



 日本のみならず世界の各所で起きる神隠し。
超自然的なものから人為的なものまで様々なものがあるが、基本的にネガティブなものである。
 ところが、とある地方では世にも珍しいポジティブな神隠しが存在する。
それは、“病気を快癒させる神隠し”というなんとも健康的なもので、やり方は簡単である。
 ある場所に、誰にも言わず自分で赴き、そこで軽く仮眠を取る。
上手く行くと、丁度一日後ぐらいに目が覚める。
そして皮膚のどこかに引き毟ったような痕ができており、その時煩っていた病は完治している。
失敗すると、普通に数時間後に目が覚めるだけで、病もそのままなんだとか。
 それが、某スキーのバーでバイトしていたときにお客さんから聞いたお話です。
その神隠しが起こる場所等は伏せていたので真偽の程は怪しいものだが、そのお客さんが、

「 ほら!」

と言って見せてくれた二の腕や横っ腹には、確かに皮を引き毟ったような痣が数箇所できていた。







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しづめばこ 9月12日 P394

2015-09-12 22:32:37 | C,しづめばこ


しづめばこ 9月12日 P394  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 9月11日 梅雨

2015-09-11 18:17:50 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月11日 梅雨



 電車のホームって、どこも人身事故で死亡者が出ているのかね。
都内の駅じゃないけど、そんなに本数が多くなくて、待ち時間が微妙に長いかなくらいの、ややローカルな駅でのこと。
 梅雨の時期だった。
同僚3人と電車待ちしてたら、スーツ姿のおじさんが歩いてきた。
ちょっと太目で、左手にカバン、右手はハンカチでおでこの汗をふきながら、目の前を通りすぎてホームの前の方へ歩いて行く。
 特にこれといった意味もなく目で追いかけた。
つもりだったんだけど、いない。

「 今、目の前を通ってったおじさんどうした?」

同僚達に聞いても、誰も通らなかったと言う。
 隠れる場所もないし、隠れる理由だってない。
消えたとしか思えない。
死んだあとも、営業に回ってるのか。







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日々の恐怖 9月10日 ウホッ!な人

2015-09-10 19:25:43 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月10日 ウホッ!な人



 数年前の夏、上司である課長と2泊3日で出張したときの話です。
普通に仕事して、少し遅めの食事を済ませて一泊目のホテルへ戻る。
言っときますが、課長と部屋は別々です。
 特にこれと言った特色もない普通の部屋。
当たり前のビジネスホテル。
ヤな感じもないし、お札もどこにもない。
 テレビなんかで言ってるけど、本当の話なのかな。
そんなもの貼ってある部屋に当たったことはない。
 シャワー浴びたらちょっとだけ、と思って大好きなエビスビールを買って冷蔵庫に入れておいた。
仕事も順調だし、鼻唄混じりにシャワーを浴びて、冷蔵庫から取り出したビールをベッドサイドに置いたらゴロンと横になってみる。
一人だし、バスローブのままだ。

“ さてさて、テレビでも見ながらビールなぞ・・・・。”

と起き上がろうと思ったら、体が固まった。

“ 何これ?
あ・・・、もしかして金縛り?”

シャワーの音がする。

“ 止めたはずなのに・・・?”

と思っていると音が止んだ。
 ほどなく扉の開く音とともに誰かが出てくる気配がする。

“ んなわけない。
オレしかいないんだぞ。
つうか、この人誰よ?”

角刈りくらいの短いくり色の髪に口髭、薄く生えた胸毛もくり色の、かなり恰幅の良い男の人が、腰にバスタオルを巻いただけで立っている。

“ ウホッ!な人じゃねぇよな?”

彼はビールに手を伸ばすと、右手を腰に当てて飲み始めた。

“ 左利きかよ。!”

 理解の範疇を越えているからなのか、この辺りまでは怖いという感情はなかったのだと思う。
口元を溢れて喉から胸へと流れるビールの筋を見ながら、

“ 飲まれちまって、チクショー!”

とか考えてた。
 やがて、飲み終えると誰もがやる例の、

“ ブハぁ~・・・。”

までやって、空き缶を置いた時の乾いた音が響いた。

“ え、こっち向いた・・・。”

満面の笑みを浮かべながら、オレに向かって左の親指を立てた。
 人ではない人と、こんな風に対峙した経験は今までなかったから、猛烈に怖くなってきた。

“ 左手が延びて来る?何?何?何?何?”

彼はオレの頬に2、3度触れ、ニコッと笑ってスーッと消えてしまった。
 体も動くようになったけど、今度は震えが止まらない。
何とかカギだけ持って部屋を出た。
 向かいが課長の部屋だったんで、中に入れてもらって事情を話した。
うまく伝わってないようだったけど、

「 もうあの部屋にはいられない。
とりあえず朝までここにいる。
隣で寝かせて欲しい。
一人じゃ絶対眠れない。」

とゴリ押し。
大の大人が情けない話だが、その夜は課長の腕にしがみついて震えながら寝た。

 翌朝、渋るフロントの人に粘りに粘って、いわくも聞き出した。
やはり宿泊客が亡くなっていたらしい。
 風貌はオレが見たままのようだ。
シャワーを浴びたあとで倒れたと思われると言った。

「 ビールは・・?」

って聞いてみたら、どうやらベッドサイドに置いてあったらしい。
 そのフロントの人が直接対応したわけではないらしく、それ以上は分からなかったけど、たぶん、ビールは開いてなかったんだろうと思う。
飲みたかったんだろうな。










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日々の恐怖 9月9日 公衆電話

2015-09-09 18:08:39 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 9月9日 公衆電話


 小学生の頃、小さい団地の集会所でやってたそろばん塾に通ってた。
家から少し離れた場所だったんで、当時は携帯も無く、塾が終わったら電話ボックスまで行って迎えを呼んでた。
 その日も、いつもみたいに団地内に住んでる友達と別れた後、母ちゃんを呼ぼうと10円握り締めて一人で電話ボックスへ行った。
 だけど、行ってみるとおかしな事があった。
電話ボックスの電話が鳴ってたんだ。
 驚いたけど、テレビで見た外国映画に公衆電話が鳴るシーンがあったのを思い出して、そういう事もあるかと鳴り止むのを待った。
 でも、しばらく待っても鳴り止まない。
これでは迎えを呼べないので、仕方なくオレは電話をとる事にしてボックスの中へ入った。
 おそるおそる受話器をとる。

「 …はい?」

そのとたん、

「 ○○ちゃん!?○○ちゃんなの!?」

知らないオバサンのデカイ声がした。

「 え?」

びっくりして訳が分からず聞き返したが、ただ、○○ちゃんを繰り返すオバサン。

「 ちがいますけど・・・。」

何とかそれだけ言うと、電話は切れた。
 何だったんだと受話器をおいたら、またすぐに電話が鳴る。
受話器を取ると、やっぱりオバサンの声が、○○ちゃんを連呼。
 そのせっぱ詰まった様な感じが怖くなって切るとソッコーで10円入れて家に電話した。
今度は受話器を置いても、かかってこなかった。
 それでも、ちょうど日が沈みかけ暗くなりだす頃で寒くなってくるし、その日は何故か人通りがなくて母ちゃんが車でやってくるまで凄い心細かった。
そんな事は二度となく、今は電話ボックスも撤去されたが、思い出すと何か少し怖くなる。









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日々の恐怖 9月8日 靴

2015-09-08 18:06:28 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 9月8日 靴


 小学校の頃、近所にお化け屋敷って言われてる家があった。
まぁ実際は屋敷って程でもない、少し大きめかな?ってくらいの日本家屋なんだが、小学生の感覚だしな。
 その日は両親共に帰宅が遅くなるのがわかってたから、一人で冒険に行ったんだ。
いくつか噂もあったが、明らかに同級生が作ったような話もあったんで、実際は何もないだろうとタカをくくってた。
 俺は日が沈んでから、懐中電灯と棒を持って、その家に侵入したんだ。
靴は履いたまま家に上がるのに、習慣上躊躇いがあったんで脱いで上がった。
 それで、中はフスマは外れてて、障子も破れて、家財道具も見当たらない。
本当に放置されてただけの家で、ガッカリしつつも安心して帰ろうとしたんだ。
 そのとき、俺、気付いたんだ。

“ あれっ、靴・・・・?”

靴がな、バカな小学生男子だから脱ぎ散らかしてたはずなんだが、綺麗に揃えられてたんだ。
その靴を履いて家に飛んで帰った。
 8時半頃、TVを見てたら母親が帰ってきて、

「 あ、今日はちゃんと靴揃えてるね~。」

って・・・。
もちろん、そんなことはしていない。
 それ以来、1度も靴を散らかさずに揃えてたんだ。
最初は怖さからだったけど、1年もせずに習慣になった。


 最近まで特に変わったことは何も起こらなかったんだが、先週、男友達が遊びに来た。
帰るときに、

「 あれ、お前、俺の靴にさわった?」

って聞いたんだ。
 もちろんそんな事はしていないから、

「 お前のくさい靴なんかさわらね~よ。」

って答えた。
 昨日、帰ったときに靴を散らかしたままにしておいたが、朝になっても散らかったままだった。









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日々の恐怖 9月7日 別れ道

2015-09-07 18:07:45 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 9月7日 別れ道


 交通事故で入院中のKさんの話です。
先日事故で意識不明、心肺停止状態で病院に運ばれたとき、気がつくと処置室で自分が心臓マッサージされているところを上から見ていたんです。

“ これが幽体離脱ってヤツだな。”

と分かって、自分の体に戻ろうとしたのですが、どこから入ればいいのか分からず、あれこれ試していたら、臍から繋がっていた糸みたいなものを間違って切ってしまったのです。
 すると急に首のあたりを誰かに捕まれて、真っ暗な場所に連れて行かれました。
何も見えない場所でしたが、微かに人の声のような音がする方向へ歩いて行き、急に明るい場所に出たと思ったら、そこは洞窟の入口でした。
 その洞窟に入って間もなく左右の別れ道になっていました。
どちらに行こうか迷っていると、白い着物を着た人たちが右の方へ入って行くので、僕もそちらへ進んだのです。
 何時間か歩いてヘトヘトになった頃、前を歩いている人が急に振り返って、

「 ここから先は君の来る所じゃないよ、さっきの別れ道を左に行きなさい。」

と言うのです。

「 ずっと後を歩いているのに、なんで入口で教えてくれないんだよ!」

と憎まれ口を叩き、彼を無視してそのまま歩き続けたのです。
 そこから先、何人も、

「 引き返せ。」

と言っていましたが、無視して歩き続けました。
 10人程の忠告を無視した頃、また急に明るい場所に出たかと思ったところで目が醒めました。
気がつくと病院のベッドの上で、お袋が手を握り涙を流していました。

「 あの時周りの忠告通り戻って、左の道を進んだら、どうなっていたのかなぁ。」

とKさんは語っていました。









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しづめばこ 9月6日 P393

2015-09-06 19:56:29 | C,しづめばこ


しづめばこ 9月6日 P393  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 9月5日 おかん

2015-09-05 18:49:44 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月5日 おかん



 うちのおかんは妙な体験をしてきたことが、今になって分かった。
それは、今回の正月帰省した時に初めて聞いた話だ。
 俺が幼い頃からおかんは食べ物を口に運ぶとき、周りをキョロキョロ見渡す癖があった。
俺はそれを癖だと思っていたんだが、どうも違うらしい。
 今回の帰省時、あまりにもキョロキョロするため、

「 こぼすぞ!」

って注意したんだ。
 そしたら、

「 いや、念のためね・・・。」

なんて意味不明な答えが返ってきた。
別に毒が盛ってあるわけでもなかろうに。
 詳しく聞いてみると、おかんが大学生の時からその現象は始まっていた。
確か大学の講義が長引き、遅めの夕食を自宅で食べていたときだ。
作るのも面倒なんで冷奴を食べたらしい。
ふわふわとろとろの食感を期待して食べたら、口の中に違和感を覚えた。
何か鉄臭いんだと。
 当時から付き合っていた親父も一緒にいたらしいんだが、親父が食べても普通の豆腐だった。
最初は歯茎から血が出たと思い手鏡で確認したそうだ。
 すると視界の隅に一瞬人影が過った。
しかし、そちらを見ても誰もいなかった。
そのときは、気のせいだと思って放置した。
 また、友人に誘われて飲みに行った時、その居酒屋というかバーは、一階がバーで二階から上は普通のマンションみたいな作りになっていた。
 甘党のおかんは、ベタ甘カクテルを飲んでいたらしい。
しかし、そのカクテルが妙に酸っぱかった。
友人が飲んでも甘くて飲めないと言われ、おかしいなと感じていたらしい。
 薄ら寒さを感じ、店内をキョロキョロ見回していると、バーテンのおっさんが数ヶ月前、ここの三階で腐乱死体が見つかった、と笑いながら教えてくれた。
そして、他にも色々あるらしい。
 そんなこんなで今回帰省した時の話に戻る。
俺が帰ったことに気を良くし、酒をたらふく飲んだおかんは、急にプリンが食べたいと言い出した。

「 しょうがねえな、いい歳してそんな酔っ払うなよ。」

と言いながら立ち上がると、おかんは、

「 一緒に行く。」

とか言い出した。
 まあ、年に2回程しか帰らないので、親孝行のつもりで一緒にコンビニまで歩いた。
お目当てのプリンを無事発見し、俺が、

「 さあ帰ろう。」

と言った時、おかんはプリンを食い始めた。

“ 大人気ねえな、どんだけ食いたかったんだよ。”

と思いながら、俺は、

「 ほら、さっさと帰るぞ!」

と言い歩き出そうとした。
 その時、おかんは口にスプーンをくわえたまま、プリンの容器をまじまじと眺めていた。
また例の癖かと思って黙っていたら、おかんが、

「 これ、茶碗蒸しじゃないよね??」

と言った。
 俺は、

「 カラメルの入った茶碗蒸しは、聞いたことない。」

と笑いながら答えると、

「 そうだよね・・・。」

と悲しそうな顔をした。
 一口もらって食べたが普通のプリンだった。
おかんはキョロキョロと見回す。

「 あ、これか・・・。」

と、おかんが指差すので目を向けると、コンビニの駐車場の片隅に菊の花束があった。
 おかんは三つ買ったプリンのうちの一つを、

「 これもらっていい?」

と聞いてきた。

「 いいけど、何だよ?」

とイラっとして答えた俺に、

「 子供・・・・。」

と一言だけ言い、未開封のプリンを花束の横に並べた。
 お供えを終えたおかんは、またプリンを食べ始め、

「 ん~!!おいしい!!」

と言いながら歩き出した。
 その帰り道、おかんに、

「 さっきのは、何だったんだよ?」

と聞くと、

「 自分の近くで人が亡くなっていると、食べ物の味が変わるんよ。」

と答えが返って来た。
 酔っ払ってる時に聞いた話だから真偽のほどは定かではないが、俺はおかんの変な癖を幼い頃からずっと見てきていたため妙に納得した。









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日々の恐怖 9月3日 検査入院

2015-09-04 19:50:19 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 9月3日 検査入院


 数年前、風邪をこじらせて入院することになったときのことだ。
部屋は5~6人用だったけど結構空いていて、俺とおっさんの二人だった。
その部屋に入院予定の患者も無く、おっさんの他は誰もいなかった。
 おっさんは、俺と同じく今日から入院だと言った。
おっさんは検査入院だそうで、点滴打たれてぐったりの俺とは違い普通に元気だった。
 暇だったのか、おっさんは、

「 学生さん?」
「 家近いの?」
「 この部屋意外と眺めよくない?」

等と、やたら話しかけてきて、俺は、

「 はぁ。」
「 そっすね。」

と何とか返事を返していた。
 おかげで消灯時刻になって会話が止んでからも目が冴えてしまい、入院初日からウツラウツラしては起き、ウツラウツラしては起きの繰り返しになってしまった。


 翌日、おっさんは朝から検査に行き、俺は点滴打ちっぱなしで、することもなく、体はだるく、ひたすら外眺めたり昼寝したりしてた。
 午後になっておっさんが帰ってきて、身支度を始めた。

「 もう退院なんですか?」
「 ああ、もともと検査で一泊だけだったから。」

そう言いながらおっさんは眠そうにあくびしてた。

“ おっさんも寝られなかったのか?”

と思って見てたら、

「 それにしても昨日の夜はひどかったな。」

とおっさんが言った。
 一瞬、病人の俺に配慮せず話しかけ続けたことを反省してるのかと思ったが、そうじゃないらしい。
 適当に、

「 はぁ・・・。」

と相槌を打つと、おっさんは更に続けた。

「 夜通し女の悲鳴がうるさくて眠れなかったよ。
近くに精神科でもあるのかね?」

俺そんなの聞こえなかったんですけど。
 その時は体調が最悪だったのと、看護師の下手くそな点滴がめちゃ痛かったのとであまり気が回らなかったが、今思うとよくあの状況であれから一週間一人で入院できたなぁと思う。
 おっさんは嘘をついているようにも見えなかった。

“ 一人残される俺に、あんなこと言いやがって絶対に許さん!”

と思ったが、おっさんの退院時に迎えに来たおっさんの家族が、お菓子くれたから許すことにした。
そのとき、やっぱり病院てなんかあるのかも知れないなぁと思った。









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日々の恐怖 9月2日 水神様

2015-09-02 19:24:22 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月2日 水神様



 小学校の時の話です。
近所に少し変わったおじさんがいて、よく夏場になるとチューペット(2つにパキッと折る棒アイス)を咥えて町内を徘徊している事から、子供達の中ではチューペットと呼ばれていた。
 夏休みのある日、俺は一人で山の中にある溜め池に魚釣りに行った。
よく友人や兄などと行っていた場所だが一人でもよく行く場所だった。
途中、川幅15mくらいの場所をジャブジャブと横切る必要があるのだが、川の水深は足首程度で草履を履いていればなんて事はなかった。
 その日はいつもよりも良く釣れ、途中から雨が降り出したが構わずに続行した。
しばらく釣って満足し帰る事にしたんだが、雨のせいで先ほどの川の流れが勢いを増し、それでもそこを渡らないと帰れないので躊躇せずに入っていった。
 川の丁度真ん中あたりに来た時、水深は膝あたりまで来ていて、今、足を踏み出したら流される、という状況になり立ちすくんだ。
雨も一層強くなってきて、まだ夕方前なのに辺りは薄暗く、心細くなって俺は動けずに泣いた。
 どのくらい立ちすくんでいたか分からないが、川の上流から大人が一人こちらへ歩いて来るのが見えた。
あのチューペットだった。
 チューペットは体格が良く、強い流れの中でもバランスを崩す事無く、ズンズンこちらへ近づいてきた。
チューペットは何も言わず無表情で近づいてきたが俺は、

「 助かった。」

と安心し、チューペットが来てくれるのを待っていた。
 チューペットが近づいて手を差し伸べてくれた瞬間、不意に向きを変えてしまったせいなのか、流れが増したせいなのか、俺は水流に足を取られ流されてしまった。
 実際に流されている状況は今でもハッキリと覚えているんだが、滑り台の要領でまったく溺れる事無く800mくらい下った川下で、たまたま水門の調査をしていた役場の人に助けられた。
怖いというよりも、どちらかと言うと川下りという感じで、楽しかったとも思えた。
釣竿や道具は、なくしてしまっていた。
 役場の人に連れられ、びしょ濡れになって家に帰り母ちゃんに事情を話したらメチャクチャ怒られた。
チューペットの事も話し、母ちゃんは、

「 その人にお礼を言いにいかんとね。」

と言っていたが、チューペットの家は知らなかったので、

「 じゃ、今度その人と会ったらちゃんとお礼を言わんといかんね。」

と言われた。


 それから2日後、俺は母ちゃんに連れられ警察署に行った。
母ちゃんは警察署に行く時は何も教えてくれず、ずっと黙っていたから怖かったのを覚えている。
 警察署にはあの日助けてくれた役場の人もいて、警察からあの日の話をいろいろと聞かれた。
俺はてっきり、あの場所で魚釣りをした事が怒られると思っていたが、警官が、

「 ボクが川で会ったのは、この人?」

と写真のチューペットを見せられて、俺は、

「 そうです。」

と答えた。
 話はすぐに終わり、母ちゃんと帰った。
母ちゃんに、

「 何かあったん?」

と聞いても何も答えてくれず、

「 もう、あの山に行ったらいかんよ。」

とだけ言われた。
 でも、次の日になると、友達や上級生が騒いでいてすべて分かった。

“ チューペットが逮捕された。”

マスコミではしばらくそのニュースをやってたし、小さい町だったからその話が広まるのも当然だった。
 あの日、俺が会ったチューペットは、数日前から行方不明の女の子の死体をあの山に埋めた、その帰りだったのだ。
その話を大人になって母ちゃんとした時に、初めて聞かされた事があり、それに衝撃を受けた。
 あの日、チューペットは俺を助けようと手を差し伸べてくれた訳ではなく、故意に俺を突き飛ばしたらしい。
また、あの水かさの激流状況で俺が滑り台のように川を下ったのもあり得ないと母ちゃんは警察と消防に言われたらしいのだ。
 俺が流された距離の中に3つほどトンネル状の水門があり、そこは全て開放されていた為に落差3~4mの滝つぼ状態になっていてあの濁流の中、そこを難なく通過するのは奇跡に近いと言われた。
 実際にチューペットも俺は助からないと思っていたらしく、当初は2人殺したと言っていたらしい。
俺が役場の人に助けられた場所は、水深2m以上あったとのことだった。
それを、母ちゃんは泣きながら話してくれた。
 極限の状態で、俺の記憶がなくなっているだけと周りは言うけど、流されてる間お尻や足が常に付いている安心感と、流れているあの景色はハッキリと頭の中にある。
まぁ、滝つぼの記憶が無い時点で、もう記憶のほうがおかしいんだろうけど。
 婆ちゃんが生前、

「 水神様のおかげやね。」

と、毎日仏壇に手を合わせてくれていた。
確かにそうかも知れないと言う気もする。
 それは、もう20数年前の話で、同じ町の同世代はチューペットですぐに分かるくらい有名なおじさんだった。
 川下りの件は警察で何度も同じ話をさせられたほどだった。
でも、まったく苦しい思いをした記憶が無いし、水がトラウマになった訳でもない。
その時は俺には、水門があるから、などの事実は言ってくれなかった。
母ちゃんだけに話していたみたいだ。
 その町には高校卒業まで住んでいたから、何度もその川に釣りや泳ぎに行ったりもしたけど、確かに下流にはいくつか関があって、そこは大人でも足がつかないくらいの深さだ。
更に、あの濁流の中をどうやって流れたんだろう、といつも考える。
 もう俺はその町には住んでないけど実家はあるし、毎年夏には帰ってる。
そして、山のふもとに気が向いたら花を供えに行ってる。
もしかしたら、俺もあの時死んでたかもしれない、っていう気持ちがあるからだ。










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日々の恐怖 9月1日 音

2015-09-01 20:03:50 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 9月1日 音


 昔、ばーちゃんから聞いた話です。
俺のばーちゃんちは九州の○○県の南部で結構な山奥です。
 当時、話を聞いたばーちゃんは82歳だった。
これはばーちゃんが14歳の時の話だ。
 ばーちゃんは女1人男9人の10人兄弟で育った。
ばーちゃんの1つ上の兄は不思議な死に方をしたらしい。
 ばーちゃんが育ったところに、神様というか見てはいけない何者かがいたという。
そいつは夏には山から降りてきて川へ下り、冬には川から山へ登るという。
 しかし誰もその姿は見たことはないのでそれが何者かはわからないのだが、それが山から川へ、川から山へ行くときに必ず音を鳴らすらしい。
 笛のような音で、

「 ピー、ピー、ピー、ピー。」

と吹きながら下ったり登ったりするという。
 それは、

「 はっきり聞こえるのか?」

と聞いたら、ばーちゃんはこう言った。

「 はっきり聞こえる。
みんなそれが聞こえると家に入り、聞こえなくなるまで外には出ない。」

実際にばーちゃんも、それを何度も聞いたらしい。
 ある日の夕方、兄は、

「 あの音追っかけてくる。」

と言い残し、引き止める母親の言葉も聞かずに出て行った。
 そして戻ってくるなりガタガタ震え、

「 みた、みた、みた。」

と布団の中に潜り込み、それ以上何も話さなくなったという。
 翌日、兄は高熱を出しそのまま帰らぬ人となった。
そのモノの名前を何と言うか昔聞いたが、今はどうしても思い出せない。
何かヒントになるような、他の地方で似たような話を知っている人はいないかと思い、お話しました。









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