箱根彫刻の森美術館は、高原の広大な敷地に国内外の著名な作家による彫刻が展開される野外美術館。開放的で爽快な気分にさせてくれる場所だ。
その一角に、他に類を見ない階段がある。「幸せを呼ぶシンフォニー彫刻」と題された階段のある作品だ。
外観は、高さ18mの円筒形の建物。まあこのような建物は都市なら普通にありそう。でも、中に入ると全く想像外の別世界が視界に飛び込んでくる。
中央のらせん階段を取り囲むように、側面は360度ステンドグラスのきらびやかな色彩が舞っている。
そのステンドグラスには、赤、黄、青などによる鮮烈な人や花、星などが、自在に描き込まれている。
中央部の階段は、単なる彫り物ではなくちゃんと上り下りできる実用階段だ。それも、らせん状にステンドグラスの色彩をきらめかせて、まぶしいくらいだ。
段数は約100段と結構な高さだが、石段には足形模様が付けられていて、これに沿って歩けば無事に昇降できる。
階段上から外側を見れば、ステンドグラスの「明」と回転する段の「暗」とが対照的な構図を形成する。
「光の巨匠」と呼ばれるガブリエル・ロワールの作品だ。
訪れた時、「とても印象的な作品だなあ」と思ったのだが、後日意外な発見をすることになった。
ある日自分のパソコンに保存してある画像フォルダを見直していた時、思いがけず強烈なステンドグラスで覆われた教会を見つけた。その作家を改めて検索してみると、まさにこの作品もロワールの手にかかるものだった。
それがベルリンの中心部にあるカイザーウイルヘルム記念教会だ。
第二次世界大戦で損傷した旧教会の姿を残したまま、隣に建設された新教会は、壁面全体を濃いブルーのステンドグラスで覆いつくした独創的な建築。
今から8年前の2015年に訪れた時は、2万枚ものウルトラマリンブルーに囲まれて、まさに深い海底で祈りをささげているような異次元の感動に襲われたことを、今でも鮮烈に覚えている。
そんな教会と箱根のらせん階段とが一人の作家によって結ばれていたことを知って、とてもうれしい気持ちになった。
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