極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

グラビアなオーレッド

2017年05月22日 | ネオコンバーテック

           
        閔公二年:衛の懿公鶴を好む / 斉の桓公制覇の時代  
               
   

                            

       ※ 斉の桓公の制覇の前に立ちはだかったもの、北には強大な異民
         族・狄(てき)があり、南に新興の雄国・楚があった。西紀前
         六六一年、狄が邢国に攻め入るや、斉の管仲は「戎狄は豺狼で
         ある。満足させてはならぬ」と桓公にすすめて、軍を出し、邢
         を救援したが、狄はその翌年また衛に侵入して懿(い)公(B.C
         668~660)を殺したのである。衛は河南省にあった小国。
         【経】十有二月、狄、衛に入る。

       ※ 冬十二月、狄が衛に攻めよせて来た。時の衛君、懿公は大の鶴
         好きであった。衛の国には大夫の待遇をあたえられる鶴さえい
         た。いよいよ
戦が姶まろうとし、動員。命令が下ったとき、衛
         の人々は口々に言った。
「鶴に戦ってもらおう。鶴は禄をもら
         っているんだ。何もわれわれが戦うことはない」懿
公は大夫の
         石祁子(せききし)玦(けつ)を、同じく大夫の鼠荘子(ねい
         そうし)に矢をあたえ、
「これによって、国のため、万事よろ
         しく取りはからうように」と言って後を託した。
         それと同時に、夫人に刺繍した衣をあたえ、「この二人の言う
         とおりにせよ」と、言いのこして、出陣した。   
         

         渠孔(きょうこ)が懿公の乗った兵車の手綱を執り、子伯が車
         右となり、黄夷(こうい)が先鋒を、孔嬰斉(こうえいさい)
         が殿(しんがり)をつとめ、衛軍は狄の軍勢を焚榮沢(けいた
         く)にむかえ討った。だが、衛軍は総崩れとなり、懿公はあえ
         なくも戦死を遂げた。戦闘に際し懿公があくまで旗印を掲げつ
         づけたことが、この惨敗を椙く原囚となったのである。戦いに
         勝った秋人は、衛の史官華龍滑(かゆうかつ)と礼孔の二人を
         とらえ、これを案内役として衛軍に追い討ちをかけようとした。
         囚えられた二人は、狄人たちにむかってこう言った。
         「われわれ二人は、太史として祭祀をつかさどっている者、わ
         れわれが先に行って神に告げぬかぎり、都をとることはできぬ」
         狄人はすっかり信用して、二人を先に衛の都にはいらせた。二
         人は都につくと、留守役の石祁子と鼠荘子の二人に、「とても
         守りきることはできません」と言い、夜を待って、ともども都
         から逃げだした。狄人は衛都に入城し、さらに追撃をつづけ、
         黄河の近くでふたたび衛軍を打ち破った。

         ★このとき狄に追われた衛の遺民は男女合わせて七百三十人。
         かれらは自国の属邑であった共滕邑の住民と合流し、合計五千
         人が四国に寄寓した。斉の桓公は大軍をひきいて、四を秋の手
         から守った。             

 

May. 17, 2017

【ネオコン倶楽部:世界初 印刷法で有機ELを製品化】

5月17日、RGB印刷方式で2017年6月から量産を行う予定の 21.6型有機EL パネルを公開。同社社
長で2017年6
月にジャパンディスプレイ(JDI)の社長兼CEOに就任予定の東入來信博氏が会見に応
じ今後の有機ELパネルの開発方針などを明らかにした(EE Times Japan 2017.05.18)。

公開した有機ELパネルは、画面サイズ21.6型(478.1×268.9×548.5mm)、解像度は4K相当の3840RGB
×2160
画素(829万画素)。精細度は204ppi。パネル重量は500gでパネル厚1.3mm。輝度は350カンデラ
/m2(ピーク時)、コントラストは100万対1。
寿命については、1000時間(LT95、350カンデラ/m2)。

 株式会社ジェイオーレッド HP

さらに、価格については、サンプル価格で60万円~100万円の間。量産開始時期はあと1カ月で、量産
技術確立のマイルストーンに達するとし、6月から量産移行予定。またジャパンディスプレイ(JDI
石川工場(石川県川北町)内にある製造ラインで実施。同製造ラインは、4.5世代(730×920mm)基
板対応製造ラインで生産能力は月産2300枚(21.6型パネル換算で6900枚)で研究開発用ライン(月産
2000枚程度)の機能も兼ねる。



有機ELパネルの製造法には、JOLED  が手掛ける印刷法とともに、蒸着法が存在する。RGB の画素を
1色ずつ形成するRGB蒸着法での有機ELパネル製造は、Samsung Electronicsが主にスマートフォンに向
5~10型の小型パネルで先行。一方、RGB印刷法は、理論上、適用できるパネルサイズに制約が
なく、JOLEDでは前身1つのパナソニック時代を含め既に12型から55型までの有機ELパネルの試作を
終える。
そこで、JOLEDRGB蒸着法で先行するSamsung、白色EL蒸着法で先行するLGの両社が参入
しにくい12~32型前後の中型パネル領域からの事業参入、市場創造を目指す戦略を掲げる。

わたし(たち)が予想したよりはオーレッド市場形成は6年程度遅れている。しかし、ここまでくれ
ば、この事業プラットフォームの拡張が本格化するとともに、これを構成する技術展開で、ユニバー
スな事業プラットフォームが誕生して。

 

 
♞ 関連特許事例

✓ 特許6082974  有機膜の製造方法と有機ELパネルの製造方法

【概要】

有機ELパネルやTFT基板等のデバイスにおいて、有機膜の機能を十分に発揮させるためには、膜
厚が均一な有機膜を形成することが重要である。
ところが現在のウエットプロセスで有機膜を形成す
る場合、乾燥時に粘度が高まり易いインクを用いると、膜厚が均一な有機膜を形成することが難しい
場合がある。
本発明は、乾燥時に粘度が高まり易いインクをウエットプロセスで塗布し、有機膜を製
造する場合において、均一な膜厚を有する有機膜の製造を期待できる有機膜の製造方法と有機ELパ
ネルの製造方法を提供することを目的とする。


上記目的を達成するため、本発明の一態様における有機膜の製造方法は、基材の第1領域に対し、第
1有機材料と第1溶媒とを含み、増粘率が3.3以上のインクの第1インクを塗布する第1塗布ステ
ップと、前記第1インク中の前記第1溶媒を大気圧未満の第1気圧下で蒸発させ、前記第1インクを
乾燥させて第1有機膜を形成する第1乾燥ステップとを有する有機膜の製造方法とする。

但し前記増粘率は、インク中の有機材料濃度が塗布前のインクの初期有機材料濃度の2倍に達したと
きのインク粘度μと、塗布前の初期インク粘度μ0との比μ/μ0とする。


本発明の一態様に係る有機膜の製造方法によれば、乾燥時に粘度が高まり易いインクを用いてウエッ
トプロセスで有機膜を製造する場合において、均一な膜厚の有機膜の製造を期待できる有機膜の製造
方法を提供することができる(詳細は下図ダブクリ参照)。


 
【符号の説明】

  1    TFT基板(基材)   2    平坦化膜   3    陽極(第1電極)   4    ホール注入層   5    隔壁(バンク)
  6    有機発光層   6RX、6GX、6BX    有機発光材料と溶媒とを含むインク   7    電子輸送層
  8    陰極(第2電極)   9   封止層   10、10A    EL基板   10X    EL基板中間体   11   ベース基板
  12  ブラックマトリクス(BM)  13R、13G、13B   カラーフィルター(CF)層   14   ホール輸送層(HTL)
  14X    ホール輸送材料と溶媒とを含むインク   20    CF基板   30、30A    有機ELパネル
  100R、100G、100B    有機EL素子  101R、101G、101B    開口部

✓ 特許6111396  有機膜材料を真空状態下に維持するための真空装置における真空シ
                 ール材、潤滑剤、および、有機EL素子の製造方法

【概要】

有機発光層材料等の有機膜材料を真空状態下に維持する際には、例えば、潤滑剤や真空シール材に用
いら
れている酸化防止剤が、可能な限り不純物として有機膜材料に付着しないようにすることが望ま
しい。本発明
は、有機膜材料を真空状態下に維持する場合において、有機膜材料への不純物の付着を
可能な限り抑制す
ることを目的とする。

本発明の一態様である酸化防止剤は、有機膜材料を真空状態下に維持するための真空装置に用いられ
る酸
化防止剤であって、真空ポンプとこれに接続された真空チャンバーを備える前記真空装置の、前
記真空ポンプ
における前記真空チャンバーと連通する箇所に用いられ、下記一般式(1)ここでは、
図2(a)に該当。で表される芳香族第2級アミン誘導体を含む。 但し、R1~R10のうち少なくとも1
つは下記一般式(2)で表され、その他は主鎖の原子の数が3以下の置換基とする。(式(2)中
、ここでは、図2(b)に該当
は原子の数が3以下の鎖式構造を示し、主鎖の原子の数が3以下の置換基
を有していてもよい。R11は5員環以上8員環以下の環構造を有し、R11が複数の環構造を有する場合
には各環構造を結ぶ結合鎖における原子の数は3以下とし、各環構造は主鎖の原子の数が3以下の置
換基を有していてもよい。)

有機膜材料を真空状態に維持する場合において、真空ポンプにおける真空チャンバーと連通する箇所
に用いられる酸化防止剤として、本発明の一態様である酸化防止剤を用いることで、少なくとも当該
酸化防止剤が有機膜材料に付着することを抑制できる。したがって、有機膜材料を真空状態下に維持
する場合において、有機膜材料への不純物の付着を可能な限り抑制することが可能である(詳細は下
図ダブダブクリ参照)。

【符号の説明】

    1、26  真空チャンバー   2、27  真空ポンプ    3  接続部材    4、30  酸化防止剤    5  被乾燥物
    66、68  アルキル鎖    7  間隙    10  有機EL表示パネル    11、101  基板    12、102  陽極
    13  ITO層    14、103  正孔注入層    15  バンク    15a  開口部    16、105  有機発光層
    16a、105a  有機発光層材料    17、106  電子輸送層    18、107  陰極    19、108  封止層
    20  駆動制御部    21~24  駆動回路    25  制御回路    28、29  排気管    100  サブピクセル
    104  正孔輸送層    109  界面領域    200  有機EL発光装置    210  有機EL素子    220  ベース
    230  反射部材    1000  有機EL表示装置

✓ 特許5994080  真空装置、有機膜の形成方法、有機EL素子の製造方法、有機EL表示パネル、
    有機EL表示装置、有機EL発光装置およびゲッター材を構成する材料の選択方法

✓  特許5974245  有機EL素子とその製造方法
✓   特許5939564  有機EL素子の製造方法

  No.22

【RE100倶楽部:再エネ国際事情篇】 

 ● マクロン仏新政権、原発比率を50%まで下げ再エネを倍増か

6月の国民議会総選挙が今後のエネルギー政策の焦点

今月14日、マクロン氏が新大統領大統領に就任。今回の仏大統領選の結果、フランスではオランド
前政
権のエネルギー政策を踏襲し、原子力や化石燃料の比率を下げ、再生可能エネルギーの導入を推
進する公
算が高くなっている。❶まず原子力については、現在約75%を占める原子力の比率を25
年までに50%まで低減する方向。老朽化した原発における廃炉を進め、原子力にのみ依存すること
によるリスクや脆弱性を回避する狙いがあるが、政府系の電力事業者であるEDF社と原子力発電の技
術開発を事業の主軸とするアレバ社の競争力を維持し、中国やロシアに対しても技術開発で主導性を
維持したい新大統領の意向もあり、簡単に脱原発に舵を切ることはないとみられている。❷
再エネに
関しては、電源構成に占める比率を現在の約15%から30年までに32%と、主に太陽光と風力で
ほぼ倍増させる方針。2
月に非政府団体や報道関係者に対し、「大統領の任期初めに、2万6000MW(2
6GW)分の再エネプロジェクト開発を今後5年分の入札をカレンダー管理したい意向を示す。❸
化石
燃料は、温室効果ガス排出量の点からも抑制される可能性が高く、22年までに石炭火力を段階的に
廃止していく、というオランド政権時代の目標を堅持する。

  May 8, 2017

運輸・交通においても、欧州ではこれまで大きな比率を占めていたディーゼルエンジン車に対する補
助金が見直される可能性が高く、電源で再エネの大量導入を推進すると同時に、モビリティでは電動
化を強力に推し進める。こ
れらのエネルギー政策を支えるため、温室効果ガス関連の規制も強化され
エネルギー事業者に課せられる二酸化炭素価格を、20年までに56ユーロ/t、23年までに百ユー
ロ/tとする方向である。ただ、これらのエネルギー政策は、フランス国民議会による承認を取り付け
る必要がある(日経BPクリーンテック研究所 2017.05.18)。 
  

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』    
 
    

   30.そういうのにはたぶんかなりの個人差がある 

   あくる日の午後、私は署名捺印した離婚届の書類を投函した。とくに手紙は添えなかった。た
 だ切手付きの返信用封筒に入れた書類を、駅前の郵便ポストに放り込んだ。でもその封筒が家の
 中からなくなったというだけで、私の心の負担はずいぶん軽減したようだった。その書類がこれ
 からどのような法的経路を辿ることになるのか、そんなことは私にはわからない。どうでもいい。
 好きな道筋を辿らせればいい。



  そして日曜日の朝、十時少し前に秋川まりえがうちにやってきた。明るいブルーのトヨタ・プ
 リウスがほとんど音もなく坂を上ってきて、うちの玄関の前にそっと停まった。車体は日曜日の
 朝の太陽を受けて、晴れがましく鮮やかに輝いていた。まるで包装紙を解かれたばかりの新品の
 ように見える。ここのところ、いろんな車がうちの前にやってくる。免包の銀色のジャガー、ガ
 ールフレンドの赤いミニ、免色が寄越す運転手付きの黒いインフィニティ、雨田政彦の黒い旧型
 ボルボ、そして秋川まりえの叔母の運転するブルーのトヨタ・プリウス。そしてもちろん私の運
 転するトヨタ・カローラ・ワゴン(長くはこりをかぷっているせいで、どんな色だったかよく思
 い出せない)。人々はおそらく様々な理由や根拠や事情があって、自分か運転する車を運ぶのだ
 ろう
が、秋川まりえの叔母がどのようなわけでブルーのトヨタ・プリウスを選択したのか、もち
 ろん私には知りよ
うもない。いずれにせよその車は、自動車というよりは巨大な真空掃除機のよ
 うに見えた。


  プリウスの静かなエンジンが静かに停止し、あたりはほんの少しだけより静かになった。ドア

 が開いて、そこから秋川まりえと彼女の叔母さんらしき女性が降りてきた。若く見えるが、たぶ
 ん四十代の初めというところだろう。彼女は色の濃いサングラスをかけ、淡いブルーのシンプル
 なワンピースに、グレーのカーディガンを羽織っていた。黒い艶やかなハンドバッグを持ち、濃
 いグレーのローヒールの靴を履いていた。運転するのに向いた靴だ。ドアを閉めると、彼女はサ
 ングラスをとってバッグにしまった。髪は肩までの長さで、きれいにウェーブをかけられていた
 (しかしさっき美容室から出てきたばかり、という過剰な完璧さはない)。ワンピースの襟につ
 け
れた金のブローチのほかには、目だった装身具はつけていない。


  秋川まりえは黒のコットン・ウールのセーターを着て、茶色の膝までの丈のウールのスカート
 をはいていた。これまで学校の制服を着ている彼女しか見たことがなかったので、いつもとは雰
 囲気がずいぶん違っていた。二人が並んで立つと、いかにも品の良い家庭の母子のように見えた。
 でも二人が実際の母子ではないことを、私は免色から間いて知っている。
  私はいつものように窓のカーテンの隙間から、彼女たちの様子を観察していた。それからドア
 ベルが鳴
らされ、私は玄間にまわってドアを開けた。

  秋川まりえの叔母はずいぶん穏やかな話し方をする、顔立ちの良い女性だった。はっと人目を
 惹くような美人ではないが、きれいに整った上品な顔立ちだった。自然な笑みが明け方の白い月
 のように、口元に控えめに浮かんでいた。彼女は手土産に菓子折を持ってきた。私の方が秋川ま
 りえにモデルになってもらいたいとお願いしているわけだから、手土産を持ってくる必要なんて
 まったくないわけだが、初対面の相手の家を訪問するときには何か手土産を持参するものだとい
 う教育を、きっと小さい頃から受けてきた人なのだろう。だから私は素直に礼を言ってそれを受
 け取った。そして居間に二人を案内した。

                                     この項つづく

 

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コランダムなトムヤンクン麺

2017年05月02日 | ネオコンバーテック

       天の君子は人の小人、人の君子は天の小人 / 大宗師(だいそうし) 

                                                

 

      ※  天之君子 人之小人天:荘子は世俗の常識に従わない頭脳明晰な人間。世
        間からちやほやされる金持ちの人や位の高い人をその通り受け入れたりし
        ない。人が偉いと思っている人でも天の尺度で見たらつまらない人だった
        りする。また、その逆のこともありえる。故に人の評価に惑わされず、広
        いこころで自由な発想(基準)で判断、選択すべきであると説く。
 


【再エネ成長戦略ワンポイント:全体像 No.1

  
※出典:「再生可能エネルギーと新船長戦略」尾崎弘之ら 2015.05.15
    「プルサーマルと核のごみ」小出裕章 2006.10.04


  

 No. 8

【RE100&ZW倶楽部:ネオコンバーテック篇】

● 基材や形状を選ばない非真空ドライめっき技術がデジタル革命を推進

先月24日、株式会社FLOSFIAは、ブログでも取り上げてきた、基材の種類や形状に関係なくさまざまな金属
薄膜を成膜できる非真空ドライめっき技術「ミストドライ めっき法」を開発したことを公表。ミストドライ めっき法
は、真空装置が不要のため、低コスト低エネルギーでの活用が可能で、シアン化合物などの環境汚染
物質を使用せず、廃液処理が不要で、従来の湿式メッキ技術と違い環境負荷が少ない。この手法で作
できる薄膜は、金、銅、ニッケル、ロジウムなどの金属単体にとどまらない。金-ニッケルなどの
合金
の他、多元合金にも及ぶ。また、サファイア基板などの結晶性基板、ステンレス板やアルミ板な
どの金属板、電気の流れない基材など、成膜できる基材の種類も幅広い。ポリイミドフィルム上への
ロジウム成膜も実現できる。

このように、従来の湿式メッキでは不可能な10μm以下の表面形状へも金属成膜でき、半導体素子や電
子部品、MEMSなどの電極への応用が見込まれ、例えば、MEMS基板の微細ビアの導通や、溝を埋め
る電極形成の他、IoT向け極小センサーの電極への追従性に優れた薄膜の形成などに活用できる見込み
である。これは量産レベルにあり、最近届いた『再生可能エネルギーと新成長戦略』と密接に関連し、
特に、太陽光核融合エネルギー利用技術をベースとした「オールソーラシステム」へのデジタル革命
渦の基本特性の浸透貢献が大きいと考えられる。


下記に関連特許技術を参考掲載する。

☑ 特開2017-069424  結晶性半導体膜および半導体装置

高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大き
な酸化ガリウム(Ga2O3)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装
置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置とし
ての応用も期待されている。この酸化ガリウムは、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは
組み合わせて混晶することで、バンドギャップ制御でき、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材
料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInXAlYGaZO3(0X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2X+Y+
Z=1.5~2.5
)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰される。




また、α-Ga2O3薄膜がMBEによってサファイア上に成膜できることが知られているが、450℃
以下の温度で膜厚100ナノメータまで結晶成長するが、膜厚がそれ以上になると結晶の品質が悪く
なり、さらに、膜厚1μm以上の膜は得ることができず、移動度も測定できる状態ではなかった。こ
のため、膜厚が1μm以上であり、電気特性に優れたα-Ga2O3薄膜が待ち望まれていた。なので、
膜厚が1μm以上の厚膜で、電気特性に優れた結晶性半導体膜の作製を目標に研究開発される。

 
JP 2017-69424 A 2017.4.6

【要約】

主面の全部または一部にコランダム構造を有しており、さらにオフ角を有する結晶基板20上に、直
接または他の層を介して、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性半
導体膜を膜厚が1μm以上となるように積層して、電気特性に優れたオフ角を有する結晶性半導体膜
を得る。そして、得られた電気特性に優れた結晶性半導体膜を半導体装置に用いることで、上記目的
を達成する。
 

☑ 特開2017-052855 
  深紫外光発生用ターゲット、深紫外光源および深紫外発光素子

深紫外光源は、照明、殺菌、医療、浄水、計測等の様々な分野で使用されている。深紫外光は主に約
200350nmの波長の光を意味し、場合によってはそれ以下の100nm以上200nm以下の波長の光も含む。
深紫外光の発生手段としては、水銀ランプ、半導体発光素子(半導体LED)エキシマランプなどが知られてい
る。一方、半導体LEDには、窒化物系深紫外発光素子が知られている。例えば、横型構造の素子では、電流
がn型AlGaN層中を横方向に流れなければならないため、素子抵抗が高くなって発熱量が増大し、キャリアの
注入効率の悪影響が生じるため高出力動作に適さない。また、チップサイズを大型化することができない。 こ
の欠点を改善するための素子として、縦型構造の窒化物系深紫外発光素子が知られているが、窒化物
系深紫外発光素子は、小型であり、水銀ランプに代わるものとして期待されるものの、❶窒化物系深
紫外発光素子は発光効率が低く、❷大出力化に対応できない。❸発光効率が低く大出力化が難しい。
❹特に、多層構造が必要であり、ドーピングが必要でその準位が深いため担体濃度を上げることが出
来ない。❺また、特に波長が短くなると電極の接触抵抗を下げることが難しく、外部量子効率を上げ
難くく製造工程が複雑になる負の特徴がある。

これらの問題解決に、マイクロプラズマ励起深紫外発光素子MIPE)が検討されている。電流注入型
半導体発
光素子では発光できない波長領域でも大面積で強い発光が実現でき、特に、280nm以下の波
長領域で任意に波長を選べる光源はMIPEを除いては困難であり、注目されているが、発光強度が得に
くいため加速電極が必要であり、加速電極を備えていても発光強度がまだ十分とは言い難く、実用化
するには多くの課題を抱える。そこで、この申請者のグループは実用性に優れ、良好な深紫外発光の
研究を行い実現する。

  
JP 2017-54654 A 2017.3.16

【要約】

第1の電極102、第2の電極103および発光層104を少なくとも有しており、発光層が深紫外
光を発光する深
紫外発光素子において、発光層が、ガリウムを少なくとも含有する酸化物を含んでお
り、発光層は、第1の層と、第1の層とは異なる材料を主成分とする第2の層とが、少なくとも1層
ずつ交互に積層されている量子井戸構造を有すことで、実用性に優れ、良好な深紫外発光を可能とし、
特に発光強度において良好な深紫外発光を可能とする深紫外発光素子を提供する。

 

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』    

   20 存在と非存在が混じり合っていく瞬間

  我々は居間に座ってお互いの近況を伝え合った。私は、造園業者が重機を使って雑木林の中の
 石塚を掘り起こした話した。そのあとに直径ニメートル弱の円形の穴が現れたこと。深さは二メ
 ートル八十センチで、まわりを石の壁に囲まれている。格子の重い蓋がはめられていたが、その
 蓋をはずしてみると、中には古い鈴のかたちをした仏具ひとつだけが残されていた。彼は興味深
 そうにその話を聞いていた。しかし実際にその穴を見てみたいとは言わなかった。鈴を見てみた
 いとも言わ なかった。

 「で、それ以来もう鈴の音は夜中に聞こえないんだね?」と彼は尋ねた。

  もう問こえないと私は答えた。

 「そいつは何よりだ」と彼は少し安心したように言った。「おれはそういううす気味の悪い話は
 根っから苦手だからな。得体の知れないものにはできるだけ近寄らないようにしているんだ」

 「触らぬ神に崇りなしI
 「そのとおり」と雨田は言った。「とにかくその穴のことはおまえにまかせる。好きにすればい
 い。」

  
そして私は、白分かとても久しぶりに「絵を描きたい」という気持ちになっていることを彼に
 話した。二目前、免色に依頼された肖像画を仕上げてから、何かつっかえがとれたような気持ち
 になっていること。肖像画をモチーフにした、新しいオリジナルのスタイルを自分は掴みつつあ
 るかもしれない。それは肖像画として描き始められるが、結果的には肖像画とはまったく違った
 ものになってしまう。にもかかわらず、それは本質的にはポートレイトなのだ。

  雨田は免色の絵を見たがったが、それはもう相手に渡してしまったと私が言うと、残念がった。

 「だって絵の具もまだ乾いていないだろう?」
 「自分で乾かすんだそうだ」と私は言った。「なにしろ一刻も早く自分のものにしたいみたいだ
 った。ぼくが気持ちを変えて、やはり渡したくないと言い出すことを恐れていたのかもしれな
 いI
 「ふうん」と彼は感心したように言った。「で、何か新しいものはないのか?1‐
 「今朝から描きはじめたものはある」と私は言った。「でもまだ木炭の下絵の段階だし見てもた
 ぶん何もわからないよ」
 「いいよ、それでいいから見せてくれないか?」

  私は彼をスタジオに案内し、描きかけの『白いスバル・フォレスターの男』の下絵を見せた。
 黒い木炭の線だけでできた、ただの粗い骨格だ。雨田はイーゼルの前に腕組みをして立ち、長い
 あいだむずかしい顔をしてその絵を睨んでいた。

 「面白いな」と彼は少し後で、歯のあいだから絞り出すように言った。

  私は黙っていた。
  

 「これからどんなかたちになっていくのか、予測はできないが、確かにこれは誰かのポートレイ
 トに見える。というか、ポートレイトの根っこみたいに見える。土の中の深いところに埋もれて
 いる根っこだI、彼はそう言ってまたしばらく黙り込んだ。
 「とても深くて暗いところだ」と彼は続けた。「そしてこの男は――男だよな――何かを怒って
 いるのだろう? 何を非難しているのだろう?」
 「さあ、ぼくにはそこまではわからない」
 「おまえにはわからない」と雨田は平板な声言百った。「しかしここには深い怒りと悲しみがあ
 る。でも彼はそれを吐き出すことができない。怒りが身体の内側で渦まいている」

  雨田は大学時代、油絵学科に在籍していたが、正直なところ油絵画家としての腕はあまり褒め
 られたものではなかった。器用ではあるけれど、どこかしら深みに欠けているのだ。そして彼自
 身もある程度それは認めていた。しかし彼には、他人の絵の良し悪しを一瞬にして見分ける才能
 が具わっていた。だから私は昔から自分の描いている絵について何か迷うことがあれば、よく彼
 の意見を求めたものだ。彼のアドバイスはいつも的確で公正だったし、実際に役に立った。また
 ありかたいことには、彼は嫉妬心や対抗心というものをまったく持ち合わせていなかった。たぶ
 ん生まれつきの性格なのだろう。だから私は常に彼の意見をそのまま信用することができた。歯
 に衣を着せないところがあったが、裏はないから、たとえこっぴどくこきおろされても不思議に
 腹は立たなかった。




 「この絵が完成したら、誰かに渡す前に、少しだけでいいからおれに見せてくれないか?」と彼
 は絵から目を離さずに言った。 

 「いいよ」と私は言った。「今回は誰かに頼まれて描いているわけじゃない。自分のために好き
 に描いているだけだ。誰かに手渡すような予定もない」
 フ目分の絵を描きたくなったんだね?」
 「そうみたいだ」
 「これはポートレイトだが、肖像画じゃない」
  私は肯いた。「たぶんそういう言い方もできると思う」
 「そしておまえは……何か新しい行き先を見つけつつあるのかもしれない」
 「ぼくもそう思いたい」と私は言った。
 「このあいだユズに会ったよ」と雨田は帰り際に言った。「たまたま会って、それで三十分ほど
 話をした」

  私は肯いただけで何も言わなかった。何をどのように言えばいいのかわからなかったからだ。
 「彼女は元気そうだった。おまえの話はほとんど出なかった。お互いにその話になるのをなんと
 なく避けているみたいに。わかるだろ、そういう感じって。でも址後におまえのことを少し訊か
 れた。何をしているかとか、そんなことだよ。絵を描いているみたいだと言っておいた。どんな
 絵かはわからないけれど、∵八で山の上に罷もって何かを描いているんだと」
 「とにかく生きてはいるよ」と私は言った。

  雨田はユズについて更に何かを語りだそうな様子だったが、結局思い直して口をつぐみ、何も
 言わなかった。ユズは昔から雨田に好意を持っていたし、いろんなことを彼に相談していたよう
 だ。たぶん私とのあいだに関することを。ちょうど私が絵のことで雨田によく相談していたのと
 同じように。しかし雨田は私には何も語らなかった。そういう男なのだ。人からいろんな相談を
 される。でもその内容は彼の中に溜まるだけだ。雨水が樋を伝って用水桶に溜まるみたいに。そ
 こからよそには出ていかない。桶の縁から溢れてこぼれ出ることもない。たぶん必要に応じて適
 切な水量調整がおこなわれるのだろう。

  雨田自身はたぶん誰にも悩みを相談したりしないのだろう。自分か高名な日本画家の息子であ
 りながら、そして美大にまで進みながら、画家としての才能にさして恵まれなかったことについ
 て、おそらくいろいろと思うところがあったはずだ。言いたいこともあったはずだ。しかし長い
 付き合いの中で、彼が何かについて愚痴をこぼすのを耳にしたことは思い出せる限り一度もなか
 った。そういうタイプの男だった。
 「ユズにはたぶん恋人がいたのだと思う」、私は思い切ってそう言った。「結婚生活の最後の頃に
 は、もうぼくとは性的な関係を持たないようになっていた。もっと早くそれに気がつくべきだっ
 たんだ」

  私がそんなことを誰かに打ち明けるのは初めてだった。それは私が一人で心に抱え込んできた
 ことだった。

 「そうか」とだけ雨田は言った。
 「でもそれくらい君たってちゃんと知っていたんだろう?」
  雨田はそれには返事をしなかった。
 「違うのか?」と私は重ねて尋ねた。


 「人にはできることなら知らないでいた方がいいこともあるだろう。おれに言えるのはそれくら
 いだ」
 「しかし、知っていても知らなくても、やってくる結果は同じようなものだよ。遅いか早いか、
 突然か突然じやないか、ノックの音が大きいか小さいか、それくらいの違いしかない」

  雨田はため息をついた。「そうだな、おまえの言うとおりかもしれない。知っていても知らず
 にいても、出てきた結果は同じようなものかもしれない。しかしそれでもやはり、おれの目から
 言えないことだってあるさ」

  私は黙っていた。

  披は言った。「たとえどんな結果が出てくるにせよ、ものごとには必ず良い面と悪い面がある。
 ユズと別れたことは、おまえにとってずいぶんきつい体験だったと思う。それはほんとに気の毒
 だったと思う。でもその結果、ようやくおまえは自分の絵を描き始めた。自分のスタイルらしき
 ものを見出すようになった。それは考えようによってはものごとの良き面じやないか?]
  たしかにそうかもしれないと私は思った。もしユズと別れなければ――というかユズが私から
 去っていかなければ――私は今でも生活のためにありきたりの、約束通りの肖像画を描き続けて
 いたことだろう。しかしそれは私か自らおこなった選択ではなかった。それが重要なポイントな
 のだ。

 「良い面を見るようにしろよ」と帰り際に雨田は言った。「つまらん忠告かもしれないが、どう
 せ同じ通りを歩くのなら、日当たりの良い側を歩いた方がいいじやないか」
 「そしてコップにはまだ十六分の一も水が残っている」

  雨田は声をあげて笑った。「おれはそういうおまえのユーモアの感覚が好きだよ」
  私はユーモアのつもりで言ったわけではなかったが、それについてはあえて何も言わなかった。
  雨田はしばらく黙り込んでいた。それから言った。「おまえはユズのことがまだ好きなんだ
 な?」
 「彼女のことを忘れなくちやいけないとは思っても、心がくっついたまま離れてくれない。なぜ
 かそうなってしまっている」
 「ほかの女と寝たりはしないのか?」
 「ほかの女と寝ていても、その女とぼくとの間にはいつもユズがいる」
 「そいつは困ったな」と彼は言った。そして指先で額をごしごしと撫でた。本当に困っているよ
 うに見えた。

  それから彼は車を運転して帰って行った。

 「ウィスキーをありがとう」と私は礼を言った。まだ五時前だったが、空はずいぶん暗くなって
 いた。日ごとに夜が長くなっていく季節だった。
 「本当は一緒に飲みたいところだが、なにしろ運転があるものでね」と彼は言った。「そのうち
 に二人でゆっくり腰を据えて飲もう。久しぶりにな」

  そのうちに、と私は言った。

  人には知らないでいた方がいいこともあるだろう、と雨田は言った。そうかもしれない。人に
 は聞かないでいた方がいいこともあるのだろう。しかし人は永遠にそれを聞かないままでいるわ
 けにはいかない。持が米れば、たとえしっかり両方の耳を塞いでいたところで、音は空気を震わ
 せ人の心に食い込んでくる。それを防ぐことはできない。もしそれが嫌なら真空の世界に行くし
 かない。
  目が覚めたのは真夜中だった。私は手探りで枕元の明かりをつけ、時計に目をやった。ディジ
 タル時計の数字は1:35だった。鈴が鳴っているのが聞こえた。間違いなくあの鈴だ。私は身
 体を起こし、その音のする方向に耳を澄ませた。
  鈴は再び鳴り始めたのだ。誰かが夜の闇の中でそれを鳴らしている――それも前よりももっと
 大きく、もっと鮮明な音で

                                                         この項つづく

 

【今夜のアラカルト|グローバールなトムヤンクン麺】

  

 

昨年7月18日に登場した清食品のトムヤンクヌードルは衝撃的だった。カップヌードルは3分あ
ば完成する。そこで、作った経験はないが、本場のそれも15分あれば完成するというので、早速ネ
ット・サーフ。❶水を入れた鍋を暖め、レモングラス、ガランガル、コリアンダー、ライムの葉を加
え煮立てる、❷エビ、魚、唐辛子、ライムジュースを加え、沸騰させソースを取る。 ライムジュース
または魚醤で調味し、コリアンダーの葉で飾れば完成。これから暑くなる季節には打って付けの家庭
料理。これが世界化しないはずがない。

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最新スマートプリント電子工学

2017年04月21日 | ネオコンバーテック

         その異なるものよりこれを視れば、肝胆も楚越(そえつ)なり、
        その同じきものよりこれを視れば、万物もみな一なり

                         徳充符(とくじゅうふ)

                                                 

           ※ 静止した水はいっさいを包むあらゆるものは違うという点から見れば、
         どれ一つとして同じ物はない。たとえば、すぐ近くにある肝臓と胆嚢(た
         んのう)でさえ、楚の国と越の国ほどのへだたりがある。これに対し、あ
         らゆるものは同じだという点から見れば、万物はすべて一つである。


        ※ 徳充符:荘子にとって徳の充実とは、いっさいの固定観念から脱却し、

          のれを虚にすることにほかならない。"徳充ちたる符"は、いっさいをある
          がままに受けいれていく人間にのみ与えられる。
  

幻の果実アドベリー

 

【DIY日誌:中断と再開】 

● 開店休業中スリーディプリンタ屋 

すっかり掲載しなくなった「スリーディプリンタ」。言い訳じみているが、ハードの組み立ては簡単
で、デザイン/ソフトの考案/習得に時間が掛かるのは常識、環境工学研究所WEEF の仕事にを抱え
ていてはとても時間が割けないというのが実情で、プリンタは収納庫に放置で断念。

 
● シロアリ駆除は、考案の燻煙法のテスト

第1回目の試作機をテスト。不具合5項目――❶天板厚み不足、❷と出ノズル口径変更、❸注水ノズ
ル口径変更、❹ノズル材質変更、❺逆止弁追加。尚、駆除方法はマル秘。このトライは、この夏に従
来法(散布法)との時間差併行テストを実施(予定)。

  
【ネオコン倶楽部:最新スマートプリント電子工学】 

● 完全な2次元のナノマテリアルプリントトランジスタ
             ―― 複合ナノシートと電解質の併用で実現 

  Apr. 07, 2017

今月7日、ダブリン大学のJonathan Coleman教授らの研究グループは、完全な2次元のナノマテリアル
プリントトランジスタを製作。これらの材料は、新しい電子特性と低コスト化の可能性を組み合わせ
ている。この画期的な新機能は、デジタルカウントダウンを表示警告する食品包装、ワインの最適温度を知ら
れるラベルなどモノ情報(IoT)などの新しい未来的な機能付加を実現する。またICT(情報通信技術
や製薬業界、太陽電池からLED にわたり、電子デバイスを安価にプリントし、インタラクティブな
食品/薬などのスマートラベルから次世代紙幣セキュリティや電子パスポートなどラベル、ポスター、
パッケージなどの広範囲の用途が想定される。このプリントされた電子回路は、消費商品の情報を収
集/処理/表示/伝達を実現する(例えば、上写真のミルクカートンのように)。この様に2次元ナ
ノマテリアルは、従来のプリンタブルな電子デバイスで使用されている材料と競合できると考える。

また、研究グループは、このプリンタブルな電子デバイスは、過去30年間、グラフェンベースは研
究開発されてきた。これらの分子はプリンタブルなインキに容易に変えることができるが不安定であ
った。カーボンナノチューブや無機ナノ粒子などの代替材料を用いて、克服しようとする試みが数多
く行われてきたが、これらの材料は性能や生産性に難点を抱えていた。プリントされた2次元デバイ
スの性能は、高度なトランジスタとだ比較できるほどではないが、プリンタブルトランジスタの性能
向上できると考えている。

このインクを作るため、研究グループは2008年にColeman 研究室で開発された「液相剥離」を利用し
て層状結晶を剥離する。これにより、溶液中に分散した2次元シートが大量に生成され、インクジェ
ットプリンタで印刷できるが、当初の大きな課題は、ナノシート・ネットワークの電流をオン/オフす
る方法を探し出す必要があった。スイッチングのために十分な電流レベルを得るためには、より厚い
ネットワークが必要とされるだけでなく、スイッチングの効率も低下する。そこで、従来の誘電体材
料の代わりに新しい形態の固体電解質を開発し電気化学的克服法を考え出す―――窒化ホウ素ネット
ワークの細孔をイオン液体で充填し、固体のような構造を与え、電荷を蓄積してスイッチングを起こ
すためのイオン移動度を伴うというものである。

下図の構造説明図のように、イオン液体中で ❶アルミナ被覆PET上に、❷グラフェン電極、❸窒化ホ
ウ素誘電/絶縁体、❹セレンタングステン超伝導チャネルナノシートで構成する2次元ナノ材料を作
製。これらのナノシートは、数ナノメートルの厚さで、数百ナノメートルの幅を有する平坦なナノ粒
子。重要なことに、異なる材料から構成したナノシートは、導電性、絶縁性または半導体性の電子特
性を有し、電子工学のすべての構成要素を含むものである。液体処理は、インクに加工するのが容易
な形態で高品質の2次元材料を大量に生成できるのが特徴で、非常に低コストで回路印刷できる。ア
ニメーションポスターからスマートラベルにわたる広範囲の用途を実現するが、一方で、移動性、オ
ン/オフ比、スイッチング速度を向上させるなどの、パフォーマンスを大幅改善する課題が残る。


All-printed thin-film transistors from networks of liquid-exfoliated nanosheets, Science  07 Apr 2017:
Vol. 356, Issue 6333, pp. 69-73 DOI: 10.1126/science.aal4062

 

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』   

   16.比較的良い一日 

  免色が電話を切ったすぐあとに、人妻のガールフレンドから電話がかかってきた。私は少し驚
 いた。夜のこんな時刻に彼女から連絡があるのは珍しいことだったからだ。

 「明日のお昼頃に会えないかな?」と彼女は言った。
 「悪いけど、明日は約束があるんだ。ついさっき予定を入れてしまった」
 「他の女の人じゃないわよね?」
 「違う。例の免色さんだよ。ぼくは彼の肖像画を描いている」
 「あなたは彼の肖像画を描いている」と彼女は繰り返した。「じゃあ、明後日は?」
 「明後日はきれいそっくり空いている」
 「よかった。午後の早くでかまわない?」
 「もちろんかまわないけど、でも土曜日だよ」
 「それはなんとかなると思う」
 「何かあったの?」と私は尋ねた。
  彼女は言った。「どうしてそんなことを訊くの?」

 
「君がこんな時刻にうちに電話をしてくるのは、あまりないことだから」

  彼女は喉の奥の方で小さな声を出した。呼吸の微調整をしているみたいに。「今はひとりで車
 の中にいるの。携帯でかけている」
 「車の中でひとりで何をしているの?」
 「車の中でひとりになりたかったから、ただ車の中でひとりになっているだけよ。主婦にはね、
 そういう時期がたまにあるの。いけない?」
 「いけなくはない。まったく」

  彼女はため息をついた。あちこちのため息をひとつにまとめ、圧縮したようなため息だった。
 そして言った。「あなたが今ここにいるといいと思う。そして後ろから入れてくれるといいなと
 思う。前戯とかそういうのはとくにいらない。しっかり湿ってるからぜんぜん大丈夫よ。そして
 思い切り大胆にかき回してほしい」
 「楽しそうだ。でもそうやって思い切り大胆にかき回すには、ミニの車内は少し狭すぎるかもし
 れない」
 「贅沢はいえない」と彼女は言った。
 「工夫してみよう」
 「そして左手で乳房をもみながら、右手でクリトリスを触っていてほしい」
 「右足は何をすればいいのかな? カーステレオの調整くらいはできそうだけど。音楽はトニー・
 ベネットでかまわないかな?」

 「冗談で言ってるんじやないのよ。私はしっかり真刻なんだから」

 「わかった。悪かった。真剣にやろう」と私は言った。「ところで今、君はどんな服を着ている?」
 「私か今、どんな服を着ているか知りたいわけ?」と誘いかけるように彼女は言った。
 「知りたいな。それによってこちらの手順も変わってくるから」

  彼女は着ている服についてとても克明に電話で説明してくれた。成熟した女性たちがどれくら
 い変化に富んだ衣服を身につけているか、そのことは常に私を驚かせる。彼女は口頭でそれを一
 枚一枚、順番に脱いでいった。

 「どう、十分硬くなったかしら?」と彼女は尋ねた。
 「金槌みたいに」と私は言った。
 「釘だって打てる?」
 「もちろん」

  世の中には釘を打つべき金槌があり、金槌に打たれるべき釘がある、と言ったのは誰だったろ
 う? ニーチェだったか、ショーペンハウエルだったか。あるいはそんなこと誰も言っていない
 かもしれない。
  私たちは電話回線を通して、リアルに真剣に身体を絡め合った。彼女を相手に――あるいは他
 の誰とも――そんなことをするのは初めてだった。しかし彼女の言葉による描写はずいぶん細密
 で刺激的だったし、想像の世界で行われる性行為はある部分、実際の肉休による行為以上に官能
 的だった。言葉はあるときにはきわめて直接的になり、あるときにはエロティツクに示唆的にな
 った。そんな言葉のやりとりをひとしきり続けた末に、私は思いもよらず射精に至った。彼女も
 
オーガズムを迎えたようだった。

  私たちはしばらくそのまま、何も言わずに電話口で息を整えていた。

 「じやあ、土曜日の午後に」と彼女はやがて気を取り直したように言った。「例のメンシキさん
 についても、少しばかり話したいことかあるの」
 「何か新しい情報が入ったのかな?」
 「例のジャングル通信をとおして、いくつかの新しい情報が。でも直接会って話すことにする。
 たぶんいやらしいことをしながら」
 「これから家に帰るの?」
 「もちろん」と彼女は言った。「そろそろ家に戻らなくちやならない」
 「運転に気をつけて」
 「そうね。気をつけなくちや。まだあそこがひくひくしているから」

  私はシャワーに入って、射精したばかりのペニスを石鹸で洗った。そしてパジャマに着替え、
 その上にカーディガンを羽織り、安物の白ワインのグラスを手に持ってテラスに出て、免色の宮
 のある方を眺めた。谷間の向こうの、彼の真っ白な大きな宮の明かりはまだついていた。家中の
 明かりがしっかりついているみたいだった。彼がそこで(おそらくは)一人で何をしているのか、
 私にはもちろんわからない。コンピュータの画面に向かって、直観の数値化を探求し続けている
 のかもしれない。

 「比較的良い一日だった」、私は自分に向かってそう言った。

  そしてそれは奇妙か一日でもあった。そして明日がどんな一日になるのか、私には見当もつか
 なかった。それからふと屋根裏のみみずくのことを思い出した。みみずくにとっても今日は良い
 一日だったろうか? それから私は、みみずくの一日はちょうど今頃から始まるのだということ
 に気づいた。彼らは昼間は暗いところで眠っている。そして暗くなると森に獲物をとりに出かけ
 る。みみずくにはたぶん朝の早い時刻に尋ねなくてはならないのだ。「今日は良い一日だったか
 い?」と。

  私はベッドに入ってしばらく本を読み、十時半には明かりを消して眠りに就いた。朝の六時前
 までそのまま一度も目が覚めなかったところを見ると、たぶん真夜中に鈴は鳴らされなかったの
 だろう。

 ♞  There are horrible people who, instead of solving a problem, tangle it up and make it
       harder to solve for anyone who wants to deal with it. Whoever does not know how to
       hit the nail on the head should be asked not to hit it at all.

                                                                                                              Friedrich Nietzsche

 

 

    17 どうしてそんな大事なことを見逃していたのか

  私が家を出ていくとき、妻が最後に口にした言葉を忘れることができなかった。彼女はこう言
 った。「もしこのまま別れても、友だちのままでいてくれる? もし可能であれば」と。私には
 そのとき(そしてその後も長いあいだ)、彼女が何を言おうとしていたのか、何を求めていたの
 か、うまく理解できなかった。何の昧もしない食物を口にしたときのように、途方に暮れてしま
 っただけだった。だからそう言われたとき、「さあ、どうだろう」としか答えられなかった。そ
 してそれが私が彼女に面と向かって口にした最後の言葉になった。最後の言葉としてはずいぶん
 情けないひとことだ。

  別れたあとも、私と彼女とは今でもなお一本の生きた管で繋がっている――私はそのように感
 じていた。その管は目には見えないけれど、今でも小さく脈打っていたし、温かい血液らしきも
 のが二人の魂のあいだを僅かに行き果していた。そういう生体的感覚が、少なくとも私の側には
 まだ残っていた。でもその管もいつかそう遠くない日に断ち切られてしまうことだろう。そして
 もしいずれ切断されなくてはならないのなら、私としては二人のおいたを結ぶそのささやかなラ
 イフラインを、なるべく早く生命を欠いたものに変えてしまう必要があった。その管から生命が

 失われ、ミイラのように干からびたものになってしまえば、鋭い刃物で切断される痛みもそれだ
 け耐えやすいものになるからだ。そしてそのためにはユズのことをできるだけ早く、できるだけ
 多く忘れてしまう必要があった。だからこそ私は彼女に連絡をとらないように努めていた。旅行
 から帰ってきて、荷物を引き取りにいくときに一度だけ電話をかけた。私はあとに残してきた画
 材一式を必要としていたから。それが今のところ、別れたあとにユズと交わした唯一の会話であ
 り、その会話はとても短いものだった。



  我々が夫婦関係を正式に解消し、それからあとも友だちの関係でいられるとは、私にはとても
 考えられなかった。我々は結婚していた六年の歳月を連して、ずいぶん多くのものごとを共有し
 てきた。多くの時間、多くの感情、多くの言葉と多くの沈黙、多くの連いと多くの判断、多くの
 約束と多くの諦め、多くの悦楽と多くの退屈。もちろんお互いに口には出さず、自分の内部に秘
 密として抱えていることもいくつかあったはずだ。しかしそのような隠しごとがあるという感覚
 さえ、我々はなんとか工夫して共有してきたのだ。そこには時間だけが培うことのできる「場の
 重み」が存在した。我々はそのような重力にうまく身体を連合させ、微妙なバランスを取りなが
 ら生きてきた。そこにはまた我々独白の「ローカル・ルール」のようなものがいくつも存在した。
 それらを全部なしにして、そこにあった重力のバランスや「ローカル・ルール」を抜きにして、
 ただ
単純に「良き友だち」なんかになれるわけはない。

  そのことは私にもよくわかっていた。というか、長い旅行のあいだ一人でずっと考え抜いた末
 に、そういう結論に私は達していた。どれだけ考えても、出てくる結論はいつも同じだった。
  ユズとはできるだけ距離を置き、接触を断っていた方がいい。それが筋の通ったまともな考え
 方だ
った。そして私はそれを実行した。

  またその一方で、ユズの方からも連絡はまったくこなかった。一本の電話もかかってこなかっ
 たし、一通の手紙も届けられなかった。「友だちでいたい」と口にしたのは彼女の方であるにも
 かかわらずだ。そしてそのことは思いのほか、予想を連かに超えて私を傷つけた。いや、正確に
 言えば、私を傷つけたのは実際には私自身たった。私の感情はそのいつまでも続く沈黙の中で、
 刃物でできた重い振り子のように、ひとつの極端からもうひとつの極端へと大きな弧を描いて行
 き
来した。その感情の弧は、私の肌にいくつもの生々しい傷跡を残していった。そして私がその
 痛みを忘れるための方法は、実質的にはひとつしかなかった。もちろん絵を描くことだ。

                                     この項つづく

  

滋賀の隠れた名産品「笹寿しセット」 (有)仲よし(道の駅 藤樹の里あどがわ)

彦根市長選挙の連呼を逃げるかのように湖西へ車を走らせる。途中、海津大崎~管浦間の土砂崩れ
事故で
不通。折り返し国道を通り高島の安曇川へ向かう。「道の駅 藤樹の里あどがわ」で二人で「
鰊そば」を頂きドライブを折り返す。途中、ハードトップの左ループジョイント金具が脱落のトラ
ブルに見舞われ(修理)、木之本から北陸高速自動車道に入り、開設された小谷城趾スマートイン
ターチェンジを下り、長浜バイパス道を経由し国道8号線を走る。途中、マツダ自販店により故障
を伝え帰宅する。早速、買ってきた、アドベリークッキーを食べ、「笹寿しセット」と白い金麦を
食べまた飲み干す。

 幻の果実アドベリー

 

  

 

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今夜も技術がてんこ盛り

2017年04月17日 | ネオコンバーテック

             徳は名に蕩(とう)し、知は争いに出(い)ず             
                         
                                        「人間世」(じんかんせい)   
  

                                                 

       ※ ガツガツと肩ひじ張り、人よりぬきんでようとしたところでどうなるか。
       才子は才で身を械ぼし、策士は策に倒れる。人間世-人間社会に生きて、
       危害を避け、天命を全うするには、どうすればよいか。本篇もまた、さま
       ざまな事例に即して「無為」を説き、「無用の用」を語る。

     ※ 雑念を去れ:われわれがなぜ徳を失いなぜ知に頼るようになったか、おま
       えはわかっているだろうか。徳を失ったのは名誉心にとらわれたためであ
       り、知に頼るようになったのは争いに必要だからだ。名誉心にとらわれ、
       知に頼っているかぎり、人間どうしの対立抗争は激しくなるばかりだ。名
       誉心も知も、相手を傷つけ自らを滅ぼす凶器にほかならぬ。凶器に依存し
       て、いったい何かできるだろう(孔子の弟子が衛国の救済に赴くための暇
       乞する場面)。

 

 Apr. 12、 2017

● ソフトバンク 世界第7番級 350メガワットソーラーインドで稼働

今月11日、SB Energy Holdings Limitedは、インド・アンドラプラデーシュ州に建設した出力350MW
のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の営業運転を開始。同州カルヌール地方の「Ghani Sakunala Solar
Park
」 で今年3月29日に竣工。世界で7番目に大きな太陽光発電所となる。電力販売契約時の予定
よりも51日早い運転となる。 発電した電力は、プロジェクト落札時に合意した「25年間、4.63
ルピー/kWh(約8.70 円/kWh)」の売電価格で、インドの電力会社であるNTPC Limitedに売電する。
400K/V の送電線に接続し、インドの約70万世帯を超える一般家庭へ供給する。同発電所は、イン
ド中央政府によって09年に施行された太陽光発電施策「JNNSM(Jawaharlal Nehru National Solar Mis-
sion
:ジャワハルラル・ネルー・ナショナル・ソーラー・ミッション)」の下で初めての
運転となる。
SB Energy は現在、ソフトバンクグループの完全子会社で、独占禁止法に関する規制当局からの承認
をもって、バーティ・エンタープライゼズ・リミティッド、フォックスコン・テクノロジー・グルー
プの3社による合弁会社となる。SB Energy はインド中央政府による太陽光ならびに再エネ普及促進
施策の下で、20ギガワットの再エネ発電所建設を目指す。



【ネオコン倶楽部:世界最高の水酸化物イオン伝導ナノシート】

  Apr. 14, 2017

今月15日、物質・材料研究機構の研究グループは、層状複水酸化物ナノシートが10-1 S/cmに達する
非常に高い水酸化物イオン伝導性を示すことを発見したことを公表。この伝導率は従来の水酸化物イ
オン伝導体――クリーンなエネルギー変換技術として注目される燃料電池では、電解質として水素イ
オン伝導体 (例えばNafion®)  を用いる方式が主流だが、強酸性環境中での動作となるため、使える
触媒が白金系金属にほぼ限定されるなどの制約がある。伝導イオンとして水素イオンの代わりに水酸
化物イオンを用いる方式も可能です。その場合アルカリ性環境中での動作となるため、Fe, Co, Ni等の
遷移金属元素形
触媒が使用でき、コストを大幅に低減できると期待されているものの、既存の水酸化
物イオン伝導体は、水酸化物イオンの伝導率が10-3〜10-2 S/cmと低いことが大きなネック――と比べ
10~100倍という高い値で、無機アニオン伝導体の中でも世界最高であり、✪固体電解質として、❶
アルカリ燃料電池や❷水電解装置等への応用が期待されている。

☑ 研究成果

今回の研究では、層状複水酸化物を化学反応により層1枚にまで剥離し、得られた単層ナノシートの
イオン伝導度を測定しました。その結果、室温付近で10-1 S/cmに達する極めて高い値を示すことを見
出す。❶単層ナノシートの表面が多くの水分を吸着し、❷水酸化物イオンが自由に動くことができ、
❸イオン輸送特性が著しく向上する。また、ナノシートの厚み方向の伝導率に比べ4~5桁も高く、
究極の2次元ナノ構造に由来した機能であると推測している。

 

  Mar.30, 2017

 


【ネオコン倶楽部:デジカメでX線計測 元素分析・イメージング技術】 

X線反射率法は、面内の場所的な違いがない、均一な薄膜・多層膜試料の深さ方向の情報(各層の密
度、厚さ、表面と各界面のラフネス)を決定しようとするものであり、深さ方向分布が、試料面内の
どの位置でも同じであり、均一であるという前提のもとで用いられる。その典型的な面積は、X線反
射率法では10mm×15mm程度である。このような広い面積にわたって均一である場合には、全
く問題ないが、産業上での応用においては、もっと微小な試料を評価したい、または、同じ試料のな
かの薄膜・多層膜の構造の違いを画像化したいという容貌があった。


研究チームは、光学顕微鏡などに搭載されることの多い可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメ
ラをほぼそのまま利用して、蛍光Xによる元素分析やイメージングを行う方法を開発。❶まず、レン
ズとセンサの間に、X線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付け、❷試料から出てくる蛍光X線
が、この窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされます。❸作りだされた電荷の数を瞬時に計
測すると、入ってきたX線のエネルギーを検出。ただ、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、
また、ある時は失われる。そこで、❹電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量
入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが
安定に取得できる。実際に今回開発した手法で、上図のようなお皿を蛍光X線分析したところ、青の
顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは不検出であった。❺さ
らにピンホールカメラの原理を利用し、その元素がどのように分布しているかを画像化に成功する。
今後は元素の移動を可視化する動画像の取得に活用し、化学反応の過程を追跡する研究などで材料開
発貢献に期待している。

 
Figure 1: Principle of retrieving X-ray energy-dispersive spectra from camera images.

 Apr.  14, 2017

 
【ネオコン倶楽部:世界最高の電流密度の低コスト高温超電導線材】

高温超電導体は超電導が生じる温度が高く、冷却に安価で豊富な液体窒素の利用が可能である一方、
超電導状態を維持して通電できる電流は、周囲の磁場が強くなると共に減少するという性質がある。
このため、線材に強い磁場が加えられる環境で使用する機器(MRI、NMR、医療用を含めた加速器、
産業用モータ、航空機用モータ、発電機、リニアモータカー、核融合、超電導電力貯蔵システム、超
電導変圧器など)には、磁場中でも高い特性を維持する線材が必要となる。そこで、イットリウム系
酸化物超電導線材は、他の高温超電導材料に比べて本質的に磁場中での性能が高い線材であり、長尺
化、高性能化が図られているが、現状では、線材が高価であることや高温・高磁場(例えば液体窒素
中で数テスラ)での使用では磁場中での臨界電流値が不十分である。このため、気相法で超電導層を
成膜する技術を中心に、人工ピン止め点導入により磁場中特性の向上が図られてきたが、依然、高コ
ストなため一層の特性向上を必要としていた。



今月14日、産業技術総合研究所らの研究グループは低コストプロセスである溶液塗布熱分解法によ
るイットリウム系酸化物の高性能・長尺超電導線材を超電導層の中に直径数十ナノメートルの人工ピ
ン止め点(BaZrO3)を均一に分散させることに成功――溶液塗布熱分解法による線材として、良好な
超電導特性を示すものの――したが、気相法などによる高性能線材には及ばず超電導特性の向上に取
り組み、❶高温超電導体のイットリウム系酸化物超電導線材の超電導層の形成プロセスを改良して実
現、❷低コストなプロセスで磁場中の臨界電流密度を向上させて、高温超電導線材のコスト課題の解
決へ、❸モータや発電機など省エネ産業用機器、MRIや重粒子線加速器など医療機器の超電導磁石へ
の応用できるなどの成果をえたことを公表。

☑ 研究成果

同上研究グループは、低コスト化のために開発してきた溶液塗布熱分解法では多数回原料溶液を塗布・
熱処理を繰り返すが、❶一回当たりの塗布膜厚を数十ナノメートルに薄膜化することで、❷人工ピン
止め点を超微細化して、磁場中の特性を画期的に向上させることに成功。この基本原理をもとに、人
工ピン止め点の高濃度化を施すなどさらなる特性向上を図り、現時点で世界最高の磁場中の臨界電流
密度(液体窒素温度、磁場 3テスラ(T)中で1平方センチメートルあたり400万アンペア)を実
現。臨界電流値は360アンペアを超え、並行して、実際の製造プロセスに適用できるかどうか基本
原理を検証し、5ナノメートルの線材を作製して長尺化の見通しを得る。

  Apr. 13, 2017

【RE100倶楽部:最新超音波式風速計】

 ● 世界最軽量の3D超音波式風速計登場/TriSonica™Mini

今月18日、風力発電制御には風速計が欠かせない。米国のシンクロネス社らは、世界初、最小・最
軽量の
三次元超音波式風速計を開発販売開始する(上図ダブクリ参照)。このTriSonica™Mini、❶
側面が75ミリメート、❷重量が50グラム未満
の世界最小の風速計。 ❸3軸(x、y、z)の風速と風
向を毎秒30メートル(67ミリパスカル)まで10ヘルツのサンプリングレートで測定する。❹こ
のソリッドステート・ウインドシステムには可動部分がなく、製品の耐久性、精度、信頼性を最大限
に引き出せるとのうたい文句。対象市場として、風力発電システム以外にも、気象計測や無人車両(
UAV)市場を中心に、モバイルアプリケーションや狭いスペースに理想的な3次元超音波風速計向け
対応(4つの冗長な測定経路と独自の幾何学的特徴技術は特許出願中/詳細不詳のため要調査)。

尚、シンクロネス社は、18年以上にわたり、魅力あるソリューションの提供を行っており、 同社
は、医療機器、航空宇宙、およびカスタムオートメーション業界における強力な顧客ポートフォリオ
を保有するとのこと。 製品ライフサイクル全体にわたりエンジニアリングサービスを完全に保証す
る。下記に、関連する国内の特許事例2件を参考掲載しておく。

   

特開2001-278196  航空機用超音波式対気速度センサ

気象観測に用いられている音波風速計は、一定区間を伝搬する超音波の伝搬時間が、風の影響で変
化することを利用したもので、全方位的に所定の間隔で配設された複数個(一般には6個)の超音波
送受信器は平面上のあらゆる方位の風を測定することが出来る。しかし、超音波送受信機同士の空気
力学的干渉により、強風時の測定は困難で、航空機搭載が可能な大きさのものでは20m/s以下、
地上設置用の大型装置でも60m/s以下が測定可能領域である。この測定可能領域では航空機に利
用するには高速側の計測範囲が充分とはいえず、気象観測用の超音波風速計は、航空機に搭載する対
気流速計測器には適していない。

超音風速計のセンサ・ブローブを前方方向からの気流に対して乱れを生じにくい形状に改良し、か
つ複数個の超音送受信機を基体の前後方向に位置を異ならせて配置する形態で低速航空機に搭載す
るものであるから、従来のピトー管では不可能であった航空機の低速度領域の対気速度計測が可能と
なる。本発明を操縦用計器に適用すれば、その結果として低速飛行時の速度表示が従来より高精度と
なり、航空機の飛行安全性を向上させることができる。また、慣性計測装置など適宜の計測器により
対地速度が計測されれば、その位置での風速を割出すことができ、空中の特定位置の風を計測するこ
ともできる。更に、これを成層圏プラットフォーム用飛行船に適用した場合には、飛行船を一定位置
にとどめるための制御用センサとしても使用することができる。




特開2011-089844  風向風速計測装置および風向風速計測システム  
 

室内の風速の計測には、熱線式や超音波式の風速計がよく用いられている。❶熱線式風速と❷超音
風速計はともに、微風域を含めて測定範囲が広く、応答性が良い点で優れる。熱線式風速計
音波
風速計を比較すると、

  1. 熱線式は超音波式に比べ構成が簡単で安価であるとの利点を有する。
  2. また、超音波風速計は、超音波の送信部と受信部の間の伝搬時間差を利用して風速を計測す
    るため、送信部と受信部の間の空間に温度や圧力の不均一な場所があると、超音波の伝搬速度
    の変化やレンズ効果による超音波の散乱が生じることにより、計測誤差が発生しうる。このた
    め、超音波風速計は、サーバールームやデータセンターなどの空間的な温度変化が大きい領
    域での風速の計測には不適であ
    る。熱線式風速計にはこのような問題がない。
  3. しかし、その一方で熱線式風速計は、計測できるのが一般に風速のみであり、単体では風向を
    計測することができない。
  4. 熱線式風速計に工夫を施して、風向も計測可能にしたものに、温度に応じて抵抗値が変化する
    2本の直線状のヒータを、各々の一端で互いに接続して30度~90度のかぎ型に配置した風
    向風速センサであり、電圧をかけられた各々のヒータからの信号を処理することにより風向と
    風速を検知できるが、2本のセンサ(ヒータ)を用い、これらのセンサをかぎ型に形成してい
    るため、装置構成が複雑になる。
  5. 熱線式は、2本のセンサの出力を比較、演算して風向を求めるため、信号処理も複雑になる。

 以上、今夜も技術がてんこ盛りである。
                                                              

 

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アトマイザー成膜工学考

2017年04月11日 | ネオコンバーテック

 

                 成ると虧(か)くるとあるの故は、昭氏の琴を鼓するなり    

                「成」と「虧」/「斉物論」(さいぶつろん)     

                                                

      ※ 昭文が琴をかきならせばメロディーが成立するが、背後の無限のメロディーの
             一つ
にすぎない。つまり、彼がいかに努力しようとも、無限のメロディーが残
             され、メロディーを「成す」ことで無限のメロディーを「虧(うしな)う」。
       すべての
メロディー(無声の声)を聴くとは、琴をかきならさぬということで
       ある。だからこそ聖
人は、思考を離れた無心の状態を最高の知恵と考え、選択
             を行わず事物を自然の
ままにまかせる。「明」によるとはこのことである。

     ※ 太古の人こそ、最高の知の所有者だったといえるのではなかろうか。なぜなら
             ば、かれらは自然そ
のままの存在であり、かれらの意識は、主客未分化の、い
       ねば混沌状態だったと考えられるからであ
る。この混沌こそ、もっとも望まし
             いありかたなのである。時代が下ると、人々は自己を取りまく世
界を意識しは
             じめた。こうして認識作用が生まれたが、客体としての事物に区別は立てなか
             った。さ
らに時代が下ると、人々は事物の区別を意識するようになったが、ま
             だ価値概念は発生しなかった。
しかし、やがて価値概念が発生するや、「道」
             は虧われた。そして、「道」が虧われると同時に、人間
の執着心が成ったので
             ある。だが、果して「道」には、成虧の別があるのだろうか。

         ※ ここで、レヴィ=ストロースの『野生の思考』が脳裏を過ぎることとなる。

                             

  ♕♛

【量子ドット工学講座35】

☑ 最新アトマイザー成膜工学

先回の取り上げた「超音波噴霧緻密膜のペロブスカイト太陽電池製造技術」(『完全電動自動車時代
』2017.04.08)をうけ、最新の超音波液体噴霧式塗工(コーティング)技術をリサーチ。ここで、基
板上に薄膜を成膜する方法には、化学気相成長(CVD)法などがあるが、化学気相成長法では真空
下での成膜を必要とし、真空ポンプなどに加えて、大型の真空容器を用いる必要がある。さらに、化
学気相成長法は、コストの観点等から、成膜される基板として大面積のものを採用することが困難で
あった。そこで、大気圧下における成膜処理が可能なミスト法が注目されている。

● 技術事例:特開2017-020076 成膜装置及び成膜方法



【符号の説明】

1 霧化器  2 超音波振動子  3 ミスト搬送管  4 ミスト噴射ヘッド部  4e 排気用空洞部
4m ミスト空洞部  4S 噴射面  5 原料ミスト噴出口  6 排気口  7 補助部材  8 マイ
クロ波発生器  9 反射板  71 貫通口  90 載置部  M1 原料ミスト  SP7 中空部

【要約】

基板10が載置される載置部90と、載置部90に載置されている基板10の上面に向けて、噴射面
4Sの原料ミスト噴出口から原料ミストを噴射するミスト噴射機構(霧化器、ミスト搬送管及びミス
ト噴射ヘッド部)と、ミスト噴射機構の噴射面4Sと基板10の上面との間に形成される反応空間と
なる補助部材7の中空部SP7にマイクロ波を導入するマイクロ波発生器8とを備え、補助部材7の
上面及び下面はそれぞれ、原料ミスト噴出口から噴射される原料ミストが中空部SP7内を通過して
基板10の上面に到達可能な複数の貫通口71を有している成膜装置で、比較的低い温度環境下で薄
膜を成膜することができる成膜装置。

-----------------------------------------------------------------------------------------

ミスト法を利用した成膜の従来技術として、たとえば、特許文献に開示された技術がある。これによ
ると、❶金属を含む原料溶液をミスト化させる工程と、❷基板を加熱する工程と、❸加熱中の基板の
第一の主面上にミスト化された原料溶液である原料ミストとオゾンを供給する工程とを備え、オゾン
を供給することで、➀原料ミストの反応性を高め、基板に対する加熱処理における➁加熱温度の抑制
を図る。しかし、前出の特許文献の技術は、基本的に熱エネルギーを利用して薄膜を成膜する方法で
あり、薄膜の成膜に際し加熱処理により溶媒の蒸発や溶質の分解、酸化等の化学反応を進行させる必
要があり、比較的低い温度環境下で薄膜の成膜の実現は不可能である。

この技術の成膜装置は、薄膜原料を溶媒により溶解させた原料溶液をミスト化して得られる原料ミス
トを大気中に噴射し、基板が載置される載置部と、基板上面に向けて、噴射面から原料ミストを噴
射するミスト噴射機構に、ミスト噴射機構の噴射面と基板の上面との間に形成される反応空間にマイ
クロ波を導入するマイクロ波発生器とを備える。マイクロ波発生器により反応空間にマイクロ波が導
入され、溶媒を沸点以下の状態で蒸発させり、比較的低温な温度環境下で基板の上面に薄膜を成膜す
ることができるというものであり(実施事例記載なし)、従って、超音波アトマイザー方式ではない


● 技術事例:US 9533323 B2 Ultrasound liquid atomizer:超音波液体噴霧装置


【符号の説明】

1.圧電トランスデューサ本体 1a応力集中ゾーン 1b変形増幅ゾーン 2.単一ピエゾ圧電セラミック
3.微小穿孔膜 4.液体を含むキャビティ 5.後部質量 6.プレストレスネジ 7.電極 8.リンク部材
9.多層圧電セラミック1 0.ベルマウス 11.電気接地リターン 12.トランスデューサカバー 
13.リザーバ 14.プラグ 15.モジュール 16.先端 17.開口部またはバルブ1 8.電源ケーブル
19.電子モジュール20.電気コネクタ 21.同軸管 22液体存在センサー 23.センサー戻りケーブル

図1Aの圧電トランスデューサは、好ましくは 50kHz~200kHzの範囲で振動する圧電変換器本体1を備
える。図1Bは、同じアトマイザーを示しているが、アトマイザーの様々な部分の長手方向の変位の最
大振幅を示す曲線が並んで図示されている。圧電トランスデューサ本体1は、2つのゾーン、即ち、
応力集中ゾーン1aと変形増幅ゾーン1bとによって特徴付けられる。

【要約】

開口部と第2の端部とを画定する第1の端部を有する硬質圧電変換器本体(1)と、圧電変換器本体
(1)の内側に、霧化される液体を収容するための空洞を含む超音波液体噴霧器、その対称軸をさら
に備える本体(1)と、 第1の端部に取り付けられ、開口部を覆う微小穿孔膜(3)と、 圧電振動子
本体を振動させるように構成された圧電部材と、 圧電振動子本体(1)をその対称軸に平行な方向に
振動させる、圧電部材(2,9)が第2端部に向かい配置されていることを特徴とする。

-----------------------------------------------------------------------------------------
US9533323 
図12 噴霧装置の振動挙動のモデル図


● 技術事例:US 39607,889 B2 Forming structures using aerosol jet.RTM. deposition
       エアロゾルジェット(登録商標) 堆積
 

     Mar. 28, 2017
【要約】

1つ以上の物理的、電気的、化学的または光学的特性において5%以下の許容差を有する受動構造の
直接描画のための方法および装置。本装置は、堆積時間を延長することができる。この装置は、補助
のない動作のために構成されてもよく、センサおよびフィードバックループを使用してシステムの物
理的特性を検出し、最適なプロセスパラメータを識別および維持する。

以上、アトマイザー方式噴霧塗工装置及び方法に関する最新技術動向を、ロールツーロール製造方式
に最
適な技術動向を、ペロブスカイト型太陽電池だけでなく、電子デバイス全般を対象に調べてみた
が、噴射量の制御法としてパルス制御で精密塗出できるものならば量産化の主流になっていく可能性
が高い。

 

    

 読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅰ部』 
 

    12.あの名もなき郵便配達夫のように

  免色が帰ったあと、その午後ずっと私は台所に立って料理をしていた。私は過に一度、まとめ
 て料理の下ごしらえをする。作ったものを冷蔵したり冷凍したりして、あとの一週間はただそれ
 を食べて暮らす。その日は料理の日だった。夕食にはソーセージとキャベツを葬でたものに、マ
 カロニを入れて食べた。トマトとアボカドと玉葱のサラダも食べた。夜がやってくると、私はい
 つものようにソファに横になり、音楽を聴きながら本を読んだ。それから本を読かのをやめて、
 免色のことを考えた。

  彼はどうしてあれほど嬉しそうな顔をしたのだろう? 彼は本当に私の役に立てることが嬉し
 いのだろうか? どうして? 私にはよくわけがわからなかった。私はただの名もなき貧乏な画
 家だ。六年間一緒に過ごした妻に去られ、両親とも不仲で、住むところもなく、財産らしきもの
 もなく、友だちの父親の家の留守番をとりあえずさせてもらっている。それに比べて(わざわざ
 比べるまでもないのだが)彼は若くしてビジネスで大きな成功を収め、この先ずっと不自由なく
 暮らせるほどの財産を手に入れた。少なくとも本人はそう語っている。顔立ちは端正で、英国車
 を四台所有し、とくに仕事らしい仕事もせず、山の上の大きな家にこもって優雅に日々を送って
 いる。そんな人間がなぜ私みたいなものに個人的な興味を持つのだろう? なぜ私のためにわざ
 わざ夜中の時間を割いてくれるのだろう

 弦楽四重奏曲第15番 ト長調 

  私は首を振って読書に戻った。考えても詮無いことだ。どれだけ考えたところで結論が出るわ
 けではない。もともとピースが揃っていないパズルを解こうとしているようなものだ。しかし考
 えないわけにはいかなかった。私はため息をつき、また本をテーブルの上に置き、目を閉じてレ
 コードの音楽に耳を澄ませた。ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団の演奏するシューベ
 ルトの弦楽四重奏曲十五番。

  私はここに住むようになってから、毎日のようにクラシック音楽を聴いている。そして考えて
 みたら、私が耳を傾けている音楽の大半はドイツ(及びオーストリア)古典音楽だった。雨田典
 彦のレコード・コレクションはおおむねドイツ系古典音楽で占められていたからだ。チャイコフ
 スキーもラフマニノフもシベリウスも、ブィヴァルディもドビュッシーもラヴェルも、お義理の
 ようにひととおり置いてあるだけだった。オペラ・ファンだからもちろんヴェルディとプッチー
 ニの作品はいちおう揃っていた。しかしそれもドイツ・オペラの充実した陣容に比べれば、それ
 ほど熱意の感じられない揃え方だった。

  おそらく雨田典彦にとっては、ウィーン留学時代の思い出があまりに強烈だったのだろう。そ
 のせいでドイツ音楽に深くのめり込むようになったのかもしれない。あるいは逆かもしれない。
 彼はもともとドイツ系の音楽を深く愛していて、そのせいで留学先をフランスではなくウィーン
 にしたのかもしれない。どちらが先なのか、私にはもちろん知りようがない。
  しかしいずれにせよ私は、この家の中でドイツ音楽が偏愛されていることに対して、苦情を言
 い立てられるような立場にはなかった。私はただのこの家の留守番に過ぎず、そこにあるレコー
 ド・コレクションを厚意で聴かせてもらっているだけなのだ。そして私は、バツハやシューベル
 トやブラームスやシューマンやベートーヴェンの音楽を聴くことを楽しんだ。それからもちろん
 モーツァルトを忘れてはならない。彼らの音楽は深みのある優れた、美しい音楽だったし、そう
 いう種類の音楽をゆっくり腰を据えて聴く機会を、私はそれまでの人生においてもったことがな
 かった。日々の仕事に追われていたし、またそれだけの経済的な余裕もなかったからだ。だから
 私はそういう機会を自分がたまたま手にできているあいだに、ここに揃えられた音楽をできるだ
 けしっかり聴いてしまおうと心を決めていた。

  十一時過ぎに私はソファの上でしばらく眠った。音楽を聴いているうちに眠りに落ちたのだ。
 眠っていたのはたぶん二十分くらいだろう。目覚めたときレコードは既に終わって、トーンアー
 ムは元の位置に戻り、ターンテーブルは停止していた。居間には勝手に針が上がるオートマティ
 ックのプレーヤーと、マニュアル式の本格的なプレーヤーの二台があったが、私は安全を期して
 ――つまりいつ眠り込んでもいいように――だいたいオートマティックの方を使うようにしてい
 た。私はシューベルトのレコードをジャケットに入れ、それをレコード棚の所定の位置に戻した。
 開け放した窓の外からは虫たちの声が盛大に聞こえた。虫たちが鳴いているからには、まだあの
 鈴の音は聞こえてこないのだ。

  私は台所でコーヒーを温め、クッキーを少し食べた。そしてあたりの山を覆う夜の虫たちの販
 やかな合唱に耳を澄ませた。十二時半少し前にジャガーが坂道をそろそろと上ってくる音が聞こ
 えた。方向転換をするときに一対の黄色いヘッドライトが窓ガラスを大きく横切った。やがてエ
 ンジン音が止み、車のドアが閉められるいつものきっぱりとした音が聞こえた。私はソファに座
 ってコーヒーを飲みながら呼吸を整え、玄関のドアベルが鳴るのを待った。



   13.それは今のところただの仮説に過ぎません

  我々は居間の椅子に腰を下ろしてコーヒーを飲み、その時刻が近づくのを待ちながら時間つよ
 しに話をした。最初はあてもない世間話のようなものだったが、沈黙がひとしきり二人のあいだ
 に降りたあと、免色はいくぶん遠慮がちに、しかし妙にきっぱりとした声で私に尋ねた。

 「あなたには子供がいますか?」

  私はそれを聞いて少しばかり驚いた。彼は人に――まだそれほど親密とは言えない相手に――
 そういう質問をする人物には見えなかったからだ。どう見ても「君の私生活には首を突っ込まな
 いから、そのかわりこちらの私生活にも首を突っ込まないでくれ」というタイプだ。少なくとも
 私はそのように理解していた。しかし顔を上げて免色の真剣な目を見ると、それがその場でふと
 思いつかれた気まぐれな質問でないことがわかった。彼は前からずっと、そのことを私に尋ねた
 いと思っていたようだった。

  私は答えた。「六年ばかり結婚していましたが、子供はいません」
 「作りたくなかったのですか?」
 「ぼくはどちらでもよかった。でも妻が望まなかったのです」と私は言った。彼女が子供を作り
 たくなかった理由については、あえて説明しなかった。それが本当に正直な理由だったのかどう
 か、今となっては私にもよくわからなかったからだ。

  免色はどうしようか少し迷っているようだったが、やがて心を決めたように言った。「こんな
 ことをうかがうのは、失礼にあたるかもしれませんが、ひょっとして、奥さん以外の女性がどこ
 かで、密かにあなたの子供をもうけているかもしれないという可能性について考えてみたことは
 ありますか?」

  私はもう一度まじまじと免色の顔を見た。不思議な質問だった。私はいちおう記憶の抽斗をい
 くつか形式的に深ってみたが、そういうことが起こり得る可能性にはまったく思い当たらなかっ
 た。私はこれまでそれほど多くの女性と性的な関係を持ったわけではないし、もし仮にそんなこ
 とが起こっていたとしたら、きっと何らかのルートを通じて私の耳に届いているはずだ。

 「もちろん理論的にはあり得るかもしれませんが、現実的には、というか常識的に考えて、そう
 いう可能性はまずないと思います」
 「なるほど」と免色は言った。そして何かを深く考えながら、コーヒーを静かにすすった。
 「しかし、どうしてそんなことをぼくにお訊きになるのですか?」と私は思い切って尋ねてみた。

  彼はしばらく目を閉じて窓の外を眺めていた。窓の外には月が出ていた。丁昨日の月ほど異様
 に明るくはないが、じゆうぷんに明るい月だった。切れ切れになった雲が、海から山に向けて空
 をゆっくりと流れていた。

  やがて免色は言った。

 「以前にも申し上げたように、私はこれまで一度も結婚したことかありません。この歳まで、ず
 っと独り身でした。仕事が常に忙しかったということ心ありますが、それ以上に、誰かと一緒に
 暮らすということが私の性格や生き方に合わなかったからでもあります。こんなことを言うと、
 ずいぶん格好をつけているように思われるか心しれないが、良くも悪くも私は一人でしか生きら
 れない人間です。血縁というようなものにもほとんど関心を持っていません。自分の子供を持ち
 たいと思ったことも一度もありません。それには私なりの個人的な理由もあります。おおむね私
 地震の子供時代の家庭環境によってもたらされたことなのですが」

  彼はそこで言葉を切って、一息ついた。そして続けた。
 「しかし数年前から、自分には子供がいるのではないかと考えるようになってきたのです。とい
 うか、そう考えざるを得ないような状況に追い込まれた、と言った方がいいか心しれません」

  私は黙って話の続きを待った。

 「こんな込み入った個人的な話を、ほんのしばらく前に知り合ったばかりのあなたに打ち明ける
 というのは、我ながらずいぶん奇妙なことに思えますが」と免色はとても談い微笑を口もとに浮
 かべながら言った。

 「ぼくの方はべつにかまいません。免色さんさえよるしければ」

  考えてみれば、私にはまだ小さい頃からなぜか、それほど親しくない人から思いも寄らぬ打ち
 明け話をされる傾向があった。もしかしたら私には、他人の秘密を引き出す特別な資質みたいな
 ものが生まれつき具わっているのかもしれない。それともただ熟達した聴き手みたいに見えるの
 かもしれない。いずれにしても、そのことで何か得をしたという覚えは一度もない。なぜなら、
 人々は私に打ち明け語をしてしまったあとで、必ずそのことを後悔するからだ。

 「こんなことを誰かに語すのは初めてです」と免色は言った。

  私は肯いて語の続きを待った。だいたいみんな同じことを言う。

  免色は語り始めた。「今から十五年ほど前のことになりますが、私は一人の女性と親しく交際
 していました。当持私は三十代の後半で、相手は二十代後半の美しい、とても魅力的な女性でし
 た。聡明な人でもあった。私なりに真剣な交際だったのですが、彼女と結婚する可能性がないと
 いうことは、前もってきちんと相手に伝えていました。仏には誰とも結婚するつもりはないのだ
 と。相手に空しい期待を抱かせるのは、私の望むところではありません。だからもし彼女に他に
 結婚したいと思う相手ができたなら、私はいっさい何も言わずに身を引くと。彼女も仏のそうい
 う気持ちを理解してくれました。でもその交際が続いているあいだ(二年半ほどですが)、我々
 はとてもうまく、仲良くやっていました。目論ひとつしたことはありません。いろんなところに
 も一緒に旅行もしたし、私のうちに泊まっていくこともしばしばありました。だから私のところ
 には彼女の衣服がひと揃い置いてありました」
 彼は何かを深く考えていた。そして再び口を開いた。

 「もし私が普通の人間なら、というか、もう少し普通に近い人間であれば、何の迷いもなく彼女
 と結婚していたことでしょう。私だって迷いがなかったわけではない。しかし―――、彼はそこ
 で間を置き、小さな一息をついた。「しかし結局のところ、私は今あるような一人きりの静かな
 生活を選び、彼女はよ健全な人生設計を選びました。つまり私よりは、もっと普通に近い男性と
 結婚することになったのです」

  最後の最後まで、彼女は自分が結婚することを免色には打ち明けなかった。免色が最後に彼女
 に会ったのは、彼女の二十九歳の誕生日の一週間後だった(誕生日に二人は銀座のレストランで
 一緒に食事をしたのだが、そのとき彼女が珍しく無口であったことを彼はあとになって思い出し
 た)。彼が当時赤坂にあったオフィスで仕事をしていると、彼女から電話がかかってきて、ちょ
 っと会って話をしたいのだけれど、これからそちらに行ってかまわないかと言った。もちろんか
 まわない、と彼は言った。彼女がそれまで彼の仕事場を訪れたことはコ皮もなかったが、そのと
 きはさして不思議には思わなかった。それは彼と中年の女性秘書の二人だけしかいない小さなオ
 フィスだったし、誰に気兼ねをすることもなかった。それなりに大きな会社を主宰し、多くの人
 を使っていた時期もあったが、それは彼が一人で新たなネットワークを企画している時期にあた
 っていた。企画を立ち上げる時期には一人で寡黙に仕事をし、それを展開する時期にはアグレッ
 シブに広く人材を用いるというのが彼の通常のやり方だった。


  恋人がやってきたのは夕方の五持前たった。二人は彼のオフィスのソファに並んで座って話を
 した。五時になったので、彼は隣の部屋にいる秘書を先に帰宅させた。秘書を帰宅させたあと、
 一人でオフィスに残って仕事を続けるのは、彼にとっては普段どおりのことだった。仕事に没頭
 してそのまま朝を迎えることもよくあった。彼としては彼女と二人で、近くのレストランに行っ
 て夕食をとるつもりだった。しかし彼女はそれを断った。今日はそれはどの時間がないの、これ
 から銀座に出て人に会わなくてはならないから。

 「何か話したいことがあるって電話で言ってたけど」と彼は尋ねた。
 「いいえ、話なんてとくにないの」と彼女は言った。「ただちょっとあなたに会いたかっただけ」
 「会えて良かった」と彼は微笑んで言った。彼女がそういう率直なものの言い方をするのは珍し
 いことだった。どちらかといえば婉曲な表現を好む女性だった。しかしそれが何を意味するのか、
 彼にはよくわからなかった。

  それから彼女は何も言わずにソファの上で身体をずらせ、免色の膝の上に乗った。そして両腕

 を彼の身体にまわし、口づけをした。舌をからめあう深い本格的な口づけだった。長い口づけが
 続いたあと、彼女は手を伸ばして免色のズボンのベルトをゆるめ、彼のペニスを探った。そして
 硬くなったものを取りだし、それをしばらく手に握っていた。それから身をかがめて、ペニスを
 口にくわえた。長い舌先をそのまわりにゆっくり這わせた。舌は滑らかで熱かった。

  その一連の行為は彼を驚かせた。なぜなら彼女はセックスに関しては、どちらかといえば終始
 受け身だったし、とくにオーラルセックスに関しては――おこなうことに関してもおこなわれる
 ことに関しても――いつも少なからず抵抗感を抱いているように見受けられたからだ。しかし今
 日はなぜか、彼女は自分から積極的にその行為を求めているようだった。いったい何か起こった
 のだろう、と彼はいぷかった。

  それから彼女は急に立ち上がり、履いていた黒い上品なパンプスを放り出すように説ぎ捨て、
 ワンピースの下に手を入れて手早くストッキングを下ろし、下着を下ろした。そしてもうコ皮彼
 の膝の上に乗って、片手を使って彼のペニスを自分の中に導き入れた。それは既に十分な湿り気
 を帯び、まるで生き物のように滑らかに自然に活動した。すべては驚くほど迅速におこなわれた
 (それもどちらかといえば彼女らしくないことだった。ゆっくりとした穏やかな動作が彼女の特
 徴だったから)。気がついたときには、彼はもう彼女の内側にいて、その柔らかい装が彼のペニ
 スをそっくり包み、静かに、しかし躊躇なく締め上げていた。
                                                         この項つづく

 

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鴨嘴な風力発電

2017年01月17日 | ネオコンバーテック

 

 

 

                    リスクが富を生む。    /    ピーター・ドラッカー

 

                                                     

                             Peter Ferdinand Drucker
                                          Nov. 19, 1909 - Nov. 11, 2005
                                     

  

【RE100倶楽部:スマート風力タービンの開発 12】

● 事例研究:バイオミメティクスを応用したブレード形状

【特開2016-188697  とんぼの翅構造の一部を模した翼】

 
ディズニーチャンネルのテレビアニメキャラーのカモノハシパリーがなんともかわいい、「フィニアス
とファーブ」。
ところで、この鴨嘴を模った流線型の新幹線への設計反映は、産業の技術開発や物づく
りに、生物が持っている優れた機能を模倣して生かそうとする「バイオミメティクス」の一例である。

このように、生物の中で、とんぼは、特別の飛行能力を有している。とんぼは、長い2対の翅を持って
いて、これをそれぞれ交互にはばたかせて飛行するが、翅を止めて滑空することも出来る。また、高
移動をしたり、空中でホバリングしたり、瞬時にスピードや方向を変えることすら出来る。さらに、

行時の騒音もほとんどなく、しかも驚くほどの省エネ飛行を実現している。しかし、このトンボの
よう
に自由自在に空を飛ぶことの出来る機械はまだ存在しない。通常の航空機等の翼と比較してみた
い。航
空機の翼やプロペラ、風力発電の翼、タービン翼、スクリュー、扇風機の羽根、へリコプターや
オート
ジャイロの回転翼、ドローンのプロペラなどをはじめ翼構造が使われている機械は多く存在する。
これ
を風力発電のブレードに応用しようとする新規考案が提案されている。

これらの航空機や風力発電等の翼やプロペラは長年の技術革新の積み重ねで現在のものとなっているが、
今なお、世界各地でトラブルを起こすことがしばしばある。これらの翼に対して、とんぼの翅は軽く丈
夫にできている。翅脈というスジが,網の目のようになって骨組みとなり,その間に透明な膜が張られ
ている。とんぼの翅の断面を見てみると折れ線グラフのようにがたがたしている。一見すると、この翅
でどうして飛べるかとても不思議である。しかし、良く調べてみると、気流の中では、とんぼの翅の凹
部では気流が渦となってくるくるとボールベアリングのように回転する。これによって、とんぼの翅上
面の流れは翅下面と比較すると非常に早く流れることからベルヌーイの定理により、揚力を得て翅は上
方に浮くこととなる。

従来の翼理論からすると、とんぼの翅に気流の渦が出来ることは失速しやすく、性能が劣ると考えられ
ていた。しかし、とんぼの持つ4枚の翅は1枚が消失しても飛ぶことが出来るほど高性能なものであるこ
とが見出された。とんぼの翅の特性を生かし、バイオミメティクスという将来の技術の一つとして産業
に生かそうという動きが出てきている。しかしながら、とんぼの翅は上述のように極めて細い骨組みと
ごく薄い膜で構成されており、その断面は航空機などの翼とは全く異なりでこぼこで華奢に出来ている
ため、このままではごく小さな模倣機械であれば開発可能ではあるが、少しでも大型のものを作ろうと
すると、その脆弱さが障害となって、とても産業に役立たせることは出来ないという問題がある。

この改善策として、カーボンファイバー製の骨組みに薄膜を貼り付けるなどの方法も考えられるが、極
薄の翅である限り、その強度では、その使途も限られたものになり、とても風力発電用風車や実際の航
空機等には利用は出来ないという大きな欠点がある。事実、とんぼの翅状態では産業に生かせるほどの
ものにはなってはいない。さらにバイオミメティックスの中でも、とんぼの翅に関して現時点において
は公開された技術は見当たらない。

Nov. 4, 2016

【要約】

気体、液体、気液混合体のいずれか一の中で使用する翼6において、該翼6の上部をとんぼの翅構造の
一部を模した外板1とし、該翼6下部は航空機の翼の下部形状を持つ外板2とし、該両外板1、2を合
体させ、両外板1、2内部を構造体5としてなることを特徴とする。望ましくは、該航空機の翼の下部
形状を持つ外板2はほぼ平らであるもの、下にややふくらんだもの、逆に上に反ったものの中から目的
に合わせて一を選択する。さらに望ましくは、該翼6にウイングレットやフクロウのセレーションを模
した突起を設けるとさらに効率が上がる揚力が大きく失速しずらく強度の強いとんぼの翅構造の一部を
摸した翼を得る。

 【符号の説明】

1 翼上部外板 2 翼下部外板 3 翼前縁 4 翼後縁 5 翼構造体 6 翼 7 前縁脈 8 結節 
9 縁紋 10 透
明膜 11 翅脈 12 三角室 13 とんぼの翅14 気流 15 渦 16 補助翼 
17 翼弦長 18 中心線 19 最大 
翼厚 20 最大キャンパ 21 翼弦線 22 ブレード 
23 風 24 回転軸 25 支持具 26 垂直尾翼 27 胴体
 28 水平尾翼 29 ウイングチッ
プフェンス 30 突起 31 ウイングレット

本発明は、上記のとおり構成されているので、次のような14項目の効果がある。

1.とんぼの翅は非常に華奢に出来ているが、本発明の翼は、その上部をとんぼの翅構造の一部を模し
    た外板
とし、該翼の下部を航空機の翼の下部形状を持つ外板とし、該両外板を合体させてなること
  から、該翼内部
に構造体、燃料タンク、支柱、制御装置、高揚力装置などを格納するスペースを設
  けることが可能であるとい
う大きな利点がある。
2.このため、該翼の構成材料にもよるが該翼の強度を大きくすることが可能となるという利点がある。
3. これにより、従来は模型程度でしかとんぼの翅の性能を生かせなかったが、本発明の翼は産業化を
  大きく
前進させられるという大きな利点がある。
4.特に航空機の翼やプロペラに本発明の翼を使用すると、揚力が従来の翼よりも大きくなるため、低
    速度であ
っても失速したりせず、これにより燃料消費を抑えることが出来、経済的であるなどの大
    きな利点がある。

5.さらに、風力発電用風車に本発明を使用すると、使用する翼の揚力が大きいことから微風でもスム
     ースに回
転させることができるため、発電量が他の風車に比べて大きくなるという利点もある。
6. このことは、本発明の翼を水力発電用プロペラや水車、あるいは海洋発電用プロペラにも使用可能
  である。

7. 従って、再生可能エネルギーの一端も担えるという大きな利点がある。
8.しかも、本発明は、翼構造を持つあらゆる機械等に組み込み可能であるという大きな利点がある。
9.さらに、本発明を模型や玩具の翼やプロペラにも使用することも出来るという利点がある。
10.本発明の翼の末端にウイングチップフェンス、ウイングレット、レイクドウィングチップの中のい
  ずれか一を加えて設けると、燃費、効率が上がるため航空機に本発明を使った際には経済的になる
  という利点がある。

11.また、本発明の翼の一部にフクロウの翼のセレーションを模した突起を加えて設けると、騒音を大
  幅に減少させることができることから、風力発電用風車の騒音で近隣住民を悩ますような負担を軽
  減できるという利点がある。

12.本発明の翼は、強度に優れ、しかも揚力が大きく、従って微風でも作動することから、飛行機の翼
  やプロペラ、ヘリコプターの回転翼、水中翼、水力・風力発電の翼、タービンブレードの翼、人力
  飛行機の翼、翼構造とした飛行船などをはじめとして、ありとあらゆる翼に取って代わることが可
  能であるという大きな利点がある。
13.
また、本発明の翼を一体成型で作ることも可能であるため、比較的小さな翼やプロペラなどは生産
  性の向上が見込めるという大きな利点がある。

14.本発明の翼は、従来の翼とは異なり曲面より平板で構成される部分が多いため、比較的容易に製造
  出来るとという利点がある。

【実施例7】

図19は実施例7であり、本発明の一実施例である。図10の本発明のブレード22(翼6)等の端部
にウイングチップフェンスを設け、さらにブレード22(翼6)の翼下部外板1の一部にフクロウの翼
にあるセレーションを模した突起を設けたものの右側面図である。図中、29はウイングチップフェン
ス、30は突起である。1~6は図18と同様である。一般的に翼6の上方と下方を流れる気流の流速
が著しく異なるため圧力差が出来る。このため、翼6の上では翼6の下よりも気圧が低くなる。したが
って、飛行中の翼6の下側から上側に渦となって気流が回り込むという現象が起き揚力が減少する原因
となる。そこで、この減少を食い止めるため、翼6の端部にウイングチップフェンス29を設けること
により、揚力の減少がある程度抑えられ効率的になる。このことは、風力発電用風車の翼や、プロペラ
などでも同様におきることから、ウイングチップフェンス29は翼構造を持つものに対しては非常に有
効であり、省エネルギーにつながる。なお、ウイングチップフェンス29に換えてレイクドウイングチ
ップまたは後述のウイングレットを設けても良い。また、ふくろうの翼に並ぶセレーションと呼ばれる
細かなやや曲がった櫛のような突起30は翼6が飛行中に風を切る音を消すので、これを風力発電用風
車のブレード22(翼6)の一部に設けると、近隣住民が現在騒音に悩まされているが緩和されるとい
うメリットがある。この該セレーションは非常に細かなため、図19~図23において記載の該突起
30は理解のため誇張略記してある。

【実施例8】

本発明の一実施例である。図10の翼の端部にウイングレットを設けたことを示す右側面図である。図
中、31はウイングレットであり、1~6、22、30は図19と同様である。本図に使用するウイン
グレット31は、図19の説明と同様に航空機等の翼端に発生する渦が翼6の上では翼6の下側よりも
気流の流れが早くなり気圧が低くなるため翼6の下から上に気流が渦となって上側に回りこみ折角の揚
力を減少させてしまうが、翼端に本図のようにウイングレット31を設けると、翼6の上側に回りこむ
渦を減少させることが出来るという利点がある。また、本図のブレード22(翼6)にも図19と同様
に突起30を設けてある。この突起30は前述のようにフクロウの翼のセレーションという突起30で、
風切り音を低減するという効果がある。図22は、図21の正面図で翼端部分である。図中、1、2、
6、22、30、31は図21と同様である。本図にあるように、本発明のブレード22(翼6)端部
にウイングレット31を設けてある。また、翼6とウイングレット31の下側には図21と同様に突起
30を設けてある。

【実施例9】

図23は、実施例9で、本発明の一実施例である。図中、1、2、6、22、30、31は図22と同
様で、24、25は図14と同様である。本発明のブレード22(翼6)に突起30とウイングレット
31を設けた風力発電用風車の正面図である。本図の風力発電用風車はとんぼの翅構造を生かした効率
的なものであるため、微風でも回転して電気エネルギーを生み出すことが可能である。また、ブレード
22(翼6)が2枚であるが、それ以上のブレード枚数を増やすことも可能である。

このように、わたし(たち)イメージしている風力発電のブレードは、①微風でも発電でき、②静粛性を保てるという
基本設計にある。 



                                                           この項つづく

       

【量子ドット工学講座31:最新高効率太陽電池技術事例】

● 特開2016-219740  光電変換装置

従来の単接合タイプの光電変換装置は、光電変換層を形成する材料としてシリコンを用いているが、
用上の光電変換効率はせいぜい15%程度が実態。シリコンの半導体基板上に、シリコンよりもバンド
ギャップの大きい量子ドット集積膜タイプが提案されている。下図8は、光電変換装置の電流-電圧線
の概念図。図8において、実線はシリコン基板の電流-電圧曲線、破線はシリコン基板よりもバンドギ
ャップの大きい量子ドットの集積膜105の電流-電圧曲線に対応する。

光電変換効率は、開放電圧をVoc、短絡電流密度(短絡電流Iscを太陽電池の受光面積で割った値
)をJscとしたときに、おおかた、これらの積を入射光強度で割った値として示される。また、吸収
できる光の波長領域は光吸収層(光電変換層という場合がある)を構成する材料のバンドギャップ(シ
リコン基板の場合、約1.1eV)を上限とする領域に限られる。このため光電変換装置の光電変換効
率を向上させるには、より高いバンドギャップを有し、自ずと開放電圧(Voc)を高めることのでき
る光吸収層の形成が必要になってくる。

しかし、量子ドット集積膜は、シリコン基板に比べて、バンドギャップが大きい分、照射される光量に
対する発電量(最大出力(Pmax))の変化が大きく、日照量の低い条件下では、短絡電流(Isc)
が大きく低下。光電変換層の機能を果たすどころかほぼ絶縁体になってしまう場合があるため、シリコ
ン基板上に量子ドット集積膜を積層した光電変換装置は、シリコン基板で出力される電流を外部に出力
させることが困難になるおそれがある。この新規考案は、量子ドット集積膜を有していてもシリコン基
板から出力される電流を外部へ出力できる光電変換装置の提案である。

 Dec. 22, 2016

 【要約】

第1の導体層1と、シリコン基板3と、シリコン基板3よりもバンドギャップの大きい光電変換層5と、
第2の導体層7とが、この順に配置されており、光電変換層5に、第1温度Tのときに、シリコン基
板3と第2の導体層7との間がオープン状態となり、第1温度Tよりも低い第2温度Tのときにシ
ョート状態となるスイッチ部材9を備えている。スイッチ部材9は、正の温度特性を示すサーミスタ、
もしくは光電変換層5よりも熱膨張係数の小さいセラミックス部材11aと、シリコン基板3と第2の
導体層7との間を接続する金属部材11bとを有する複合体11を構造とする、量子ドット集積膜を有
していてもシリコン基板から出力される電流を外部へ出力させやすい光電変換装置を提供する。

下図1 は、本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面模式図であり、(a)は、光電変換
装置が
高い温度に置かれている場合、(b)は、光電変換装置が(a)の場合よりも低い温度に置かれ
ている場合である。
上図2は、本実施形態の光電変換装置の電流-電圧線の概念図であり、(a)は、
陽射しが強く、光電変換装置
の温度が高い第1温度Tの状態、(b)は、陽射しが弱く、光電変換装
置の温度が低い第2温度Tの状態である。

【符号の説明】

1 第1の導体層 3 シリコン基板 5 光電変換層 7 第2の導体層 9 スイッチ部材
11 複合体

上図1に示す光電変換装置Aは、第1の導体層1と、シリコン基板3と、シリコン基板3よりもバンド
ギャップの大きい光電変換層5と、第2の導体層7とが、この順に配置された構成となっている。この
光電変換装置Aでは、シリコン基板3とバンドギャップの大きい光電変換層5とは、第1の導体層1と
第2の導体層7との間で電気的に直列接続された状態にある。この場合、光電変換層5にスイッチ部材
9が設けられている。このスイッチ部材9は、光電変換層5を挟むように設けられているシリコン基板
3と第2の導体層7との電気的な接続の状態を温度の変化によって変化させる機能を有する。

例えば、高、低、2つの温度を設定し、高い方の温度を第1温度Tとし、第1温度Tよりも低い温度
を第2温度Tとしたときに、スイッチ部材9を含む光電変換装置Aが、例えば、高い方の温度である
第1温度Tに達した場合に、スイッチ部材9は、シリコン基板3と第2の導体層7との間をオープン
状態(絶縁された状態)とする。このとき、シリコン基板3と第2の導体層7との間では、電流(また
は、キャリア(電子e、ホールh))は光電変換層5内を流れることになる。

反対に、スイッチ部材9を含む光電変換装置Aが低い方の温度である第2温度Tになった場合には、
図2(b)に示すように、光電変換層5の短絡電流(Isc)が低下するのに併せて、スイッチ部材9
がシリコン基板3と第2の導体層7との間をショート状態(短絡した状態)に変化させる。これにより、
シリコン基板3と第2の導体層7との間を流れる電流(または、キャリア(電子e、ホールh))は、
主として、スイッチ部材9内を流れるようになる。


図2(a)(b)を基に、図1(a)(b)に示した2つの光電変換装置Aの電流-電圧特性を比較す
ると、シリコン基板3と、これよりもバンドギャップの大きい光電変換層5とが組み合わさった光電変
換装置Aの場合、バンドギャップが約1.1eVのシリコン基板3の方は、陽射しの強弱によって異な
る温度になっても短絡電流(Isc)の変化は小さい。一方、バンドギャップの大きい光電変換層5の
方は、光電変換装置Aの温度が低くなると短絡電流(Isc)が大きく低下してしまう。つまり、光電
変換層5は、バンドギャップが約1.1eVであるシリコン基板3に比べて、バンドギャップが大きい
分、照射される光量に対する発電量の変化が大きいことから、日照量の低い条件下では、温度の低下と
ともに、光電変換層5としての機能を果たし難くなり絶縁性が高くなってしまう。このため、シリコン
基板3上に、これよりもバンドギャップの大きい光電変換層5を直列接続した光電変換装置Aでは、シ
リコン基板3から出力される電流を外部に出力させることが困難になる。



これに対し、本実施形態の光電変換装置Aでは、バンドギャップの大きい光電変換層5が日照量の低下
によって絶縁体化するような条件下においても、光電変換層5に設けたスイッチ部材9中を電流(また
は、キャリア(電子e、ホールh))が流れるようになることから、シリコン基板3において生成した
キャリア(電子e、ホールh)を外部へ容易に移動させることができる。

図3は、本実施形態の光電変換装置の第2の導体層と光電変換層との界面を平面視した模式図であり、
(a)は、スイッチ部材が光電変換層の面内に配置されている場合、(b)は、スイッチ部材が光電変
換層の側面(周囲)に配置されている場合である。図3は一例である。

スイッチ部材9は、図3(a)に示すように、光電変換層5の面内に複数個が均等に分布するように配
置されるか、または、図3(b)に示すように、光電変換層5の側面(周囲)において、向かい合う側
面間で対称的に配置されることが望ましい。上記した接続性能を示すスイッチ部材9としては、例えば、
正の温度特性を示すサーミスタを挙げることができる。具体的には、チタン酸バリウムを主成分とし、
これに微量の希土類元素を含有させたセラミック製のPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミス
タを用いるのが良い。

図4は、スイッチ部材の他の例を示すもので、管状のセラミック部材に軸芯として金属部材を導体とし
て組み込んだ複合体を示す模式図である。スイッチ部材9の他の例として、図4に示すような、セラミ
ック部材11a中に光電変換装置Aの使用環境下で導電性を示す金属部材11bを組み込んだ構造の複
合体11であっても良い。この場合、金属部材11bを取り囲むセラミック部材11aは熱膨張係数が
光電変換層5を構成する材料よりも小さいことが望ましい。例えば、光電変換層5がシリコンよりもバ
ンドギャップの大きいCuGaSe(1.65eV)によって形成されたものであった場合、セラミ
ック部材11aとしては、CuGaSeの熱膨張係数(10×10-6/℃)よりも熱膨張係数の小
さいコージエライト(熱膨張係数:2×10-6/℃)やチタン酸アルミニウム(熱膨張係数:1×
10-6/℃)が好適である。金属部材11bとしては、貴金属、卑金属、アルミニウムおよびトタン
など、種々の金属を適用することができる。

図5は、セラミック部材中に金属部材を組み込んだ構造の複合体をスイッチ部材として用いたときの複
合体の温度の違いによる長さの変化を示した断面模式図であり、(a)は温度が高い第1温度Tのと
き、(b)は温度が低い第2温度Tの状態のときを表す。このような複合体11をスイッチ部材9と
して適用すると、光電変換装置Aの温度が低い、いわゆる第2温度Tの状態のときに、シリコン基板3
側および第2の導体層7側の両表面に接した状態としておいても、光電変換装置Aの温度が第2温度T
よりも高い第1温度Tに変化した際には、光電変換層5の厚み方向の熱膨張の方が複合体11の熱膨
張よりも大きいために、複合体11の端面に露出させた金属部材11bは第2導体層7の表面から離れ
てしまう。

 つまり、陽射しが強く、光電変換層5が発電する場合には、光電変換層5は高い温度Tの状態となる
が、スイッチ部材9の部分だけはシリコン基板3と第2の導体層7との間が断線状態となることから、
光電変換層5内およびシリコン基板3内に生成したキャリア(電子e、ホールh)は、光電変換層5内
およびシリコン基板3内を移動することになる。

 一方、陽射しが弱く、光電変換層5の温度がTの状態となるときは、光電変換層5は発電し難くなり、
絶縁性が高くなるが、スイッチ部材9はシリコン基板3および第2の導体層7に接するようになるため、
シリコン基板3内に生成したキャリア(電子e、ホールh)は、スイッチ部材9である複合体11の軸
芯に設けられた金属部材11b内を移動する。

この場合、スイッチ部材9は、光電変換層5を貫通している貫通体であることが望ましい。スイッチ部
材9が光電変換層5を貫通している貫通体であると、光電変換層5の面内に複数のスイッチ部材9を均
等に配置させることが可能になることから、シリコン基板3と第2の導体層7との間に流れる電流によ
るインダクタンスを低くすることができる。これによりシリコン基板3から出力される電流の外部への
出力がより容易になる。

本実施形態の光電変換装置Aでは、光電変換層5がシリコンの量子ドット集積膜であることが望ましい。
光電変換層5がシリコンの量子ドット集積膜であると、ペアを成すシリコン基板3のバンドギャップ(
約1.1eV)に対して、光電変換層5のバンドギャップを1.5eV以上、粒径によっては1.7e
V以上にできることから、より高い開放電圧(Voc)を得ることができ、発電の最大出力(Pmax
をさらに高めることができる。

また、シリコン基板3および光電変換層5がともにシリコンにより形成されたものであるため、材料の
格子定数の差がほとんど無いことからシリコン基板3と光電変換層5との間の格子の不整合を減少させ
ることができるため、シリコン基板3と光電変換層5との境界付近のキャリアの移動度を高めることが
できる。


次に、本実施形態の光電変換装置の製造方法について説明する。図6は、本実施形態の光電変換装置の
製造方法を示す工程図である。ここでは、バンドギャップが1.1eVのシリコン基板3の他、第1の
導体層1にアルミニウム、第2の導体層7にインジウム錫酸化物(ITO)を、さらに、光電変換層5
として、シリコンの量子ドット(バンドギャップ:1.7eV)を、それぞれ適用し、スイッチ部材9
として、上記したチタン酸バリウムを主成分とするPTCサーミスタと、コージエライト-ニッケル
(Ni)製の複合体11を適用した例を基に説明する。

上図6(a)に示すように、まず、一方の主面に第1の導体層1としてアルミニウムの金属膜を形成し
たシリコン基板3を用意する。第1の導体層1の形成には、例えば、蒸着法を用いる。次に、(b)に
示すように、シリコン基板3の第1の導体層1側とは反対の表面に、スイッチ部材9を形成する。スイ
ッチ部材9としては、PTCサーミスを用いた場合と複合体11を用いた場合の2種類を作製する。こ
のとき、複数個のスイッチ部材9を均等な配置とし、同じ高さになるようにする。次に、(c)に示す
ように、シリコン基板3の表面のスイッチ部材9の周囲に、光電変換層5として、シリコンの量子ドッ
を含む溶液をスピンコート法により成膜して量子ドット集積膜を光電変換層5として形成する。

最後に、光電変換層5の表面に蒸着法により第2の導体層7を形成する。以上のような基本的な工程を
経ることにより、図6(d)に示すように、本実施形態の光電変換装置Aを得ることができる。
なお、比較例となるスイッチ部材9を有しない光電変換装置を形成する場合には、スイッチ部材9を形
成する工程((b)工程)を省いて行う。

得られた光電変換装置Aおよび比較例となるスイッチ部材9を有しない光電変換装置について発電性能
を評価する。評価方法としては、正午頃の日中と、朝夕に近い時間帯とに発電させて、そのときの短絡
電流を測定して比較する。

①スイッチ部材9を備えた光電変換装置Aは、スイッチ部材9を有しない光電変換装置に比べて、朝、
夕時に測定した短絡電流(Isc)が5倍ほど高かった。②また、スイッチ部材9の比較では、複合体
11を用いたものはPTCサーミスタの場合に比較して、短絡電流が1.1倍ほど高いという結果が得
られている。

                                                                                      (了)

   ● 今夜の一曲

モーツァルト 弦楽四重奏曲 String Quartet No.14, in G, K.387

ハイドンにささげられたいわゆる「ハイドンセット」6曲の第1曲。第4楽章のフーガ風ソナタの運動
が素晴らしいとされる
。  

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キンタ・ラス・カブラスの錨銲効果

2016年11月25日 | ネオコンバーテック

 

  

                   およそ国の亡ふるや、その長ずるものをもってなり。
                   人の自ら失うや、その長ずるところのものをもってなり。

                         「枢言」 / 管子


        ※ 凡國之亡也,以其長者也。人之自失也,以其所長者也,
          故善游者死于梁池,善射者死于中野。

          国は長所が徒となり滅び、人はそ特技が徒となって身
          を滅ぼす。泳ぎの名人は溺れ、弓の達人は弓で殺され
          るようなものだ。と説く。          


          

                                                                                                  
                                                                                
                                                    管子 Guan-zi   720–645 BC

 

 


【表面錨銲工学:リチウムイオン電池寿命を12倍に 新正極加工法】

22日、エンジン部品や工作機械、電池製造などを手掛ける安永はリチウムイオン電池の正
極板製造に独自技術を導入し、電池寿命を同社の従来製品比で12倍以上に向上に成功した
と発表。微細加工技術を用い、正極板の集電体と活物質の結合力を改良することで実現。電
池反応の中心的役割を担い、電子を送り出し受け取る酸化・還元反応を行う活物質。この活
物質と
集電体(電極)は、一般にバインダーなどの結着材の力で面結合している。しかし、
セル製作時の曲げ
応力や、充放電による活物質の膨張収縮などによって徐々に剥離していく。
そしてこの剥離が電池の
寿命に大きく影響する。

※ 錨銲(びょうかん)とは、。

  電極表面に微細な溝を形成

 

そこで、株式会社 安永は この活物質と集電体の結合力向上に取り組んだ。独自の微細金型
形成技術を用い集
電体に微細な特殊加工を施し、電極表面に規則正しい幾何学模様の微細溝
を形成
。これにより
極表面積が拡大し、さらに活物質層に対してのアンカー効果で剥離を
抑制することに成功した。さら
に集電体への微細加工時に形成される貫通穴が、両面からの
活物質同士の結合による剥離耐性
の向上と、電解液の偏在防止という相乗効果を生むことも
分かった。

次に、この正電極を用いた試作セルで、第三者による充放電サイクルの耐久試験評価を行っ
た。
初期容量から70%に減る時点までを寿命とする。すると従来品は5千サイクルで容量
が70%にまで減少したのに対し、開発した正電極を用いたセルでは6万サイクルを必要と
た。つまり、寿命が約12倍に向上したことになる。なお、試作したセルは500mAh
ミリアン
ペアアワー)のラミネートセルで、正電極材料にはリン酸鉄リチウムを、負極は
覆天然黒
鉛電極を使用している。

同社によれば今回の微細加工による集電体と活物質の剥離抑制技術は、特に導電性の低いリ
ン酸鉄リチウムやチタン酸リチウムなどに対し、抵抗低減効果による高速充放電性能の向上
に有効だという。今後はリチウムイオン電池を長寿命化できるメリットを生かし同技術を電
気自動車EV)や モバイル機器などさまざまなアプリケーション向けに展開していくとの
こと。


ここでは、同社の独自の「微細金型形成技術」や製造条件、例えば、プレス条件などの詳細
は不詳(直接メーカに問い合わせればよいが、想像はつくので是非に及ばず)であるが、正
極材である「
リン酸鉄リチウム」や正極の構造や製造法がこの種のイオン電池の特性を決定
するものであることが了解できる。なので、下記に関連するとおもわれる特許技術事例を掲載
しておく。


※ 参考特許:



【概要】

冷媒が蒸発する際の気化熱を利用して熱源を冷却する装置として、例えば、ヒートポンプ、
冷凍機等の熱交換器。また、熱源を利用して液体を気体に変換することによるガスの体積膨
張や圧力増加を利用する装置に、火力発電、原子力発電、地熱発電、又は海洋温度差発電等
の各種発電に用いられる発電機がある。これらは、熱伝達効率を向上させるために、伝熱面
積の増大、及び冷媒又は液体の核沸騰促進する方法の研究及び開発が行われている。

しかし、伝熱管は、伝熱管の外表面に複雑な機械加工が施こされ、多孔質層などは、金属粒
子を成形し焼成され加工される。このため、伝熱管は、既存の設備、装置等への追加・改造
が困難である。さらに、複雑な機械加工によって伝熱管を形成する場合、その加工性の制約
等から材質が制限される。

この特許技術(上図)は、熱交換器の放熱面に設置する箔状の伝熱部材で、放熱面に沿い配
置される平坦部と、少なくとも一方の面側に突出する複数の突出部の構成・構造をもち、突
出部の先端に第1開口と平坦部側の第2開口を形成することで空隙を備えることで、装置等へ
追加・改造等を容易に行うことができる伝熱部材及びその製造方法を提供する(上図の記号
Sは断面積である)。

 タップ密度計

正極活物質を含むスラリーを正極板に塗布及び乾燥して正極を作製する際、乾燥時間を速め
る観点から、正極材料のタップ密度――粒状の物体を一定容積に容器に規定条件で詰めた嵩
密度のこと――を高める試みがなされ、例えば70℃~250℃の大気中でスラリーを噴霧
及び乾燥させるスプレードライ法があるが均質にタップ密度を大きくすることが難しい。こ
のため、三井造船株式会社は、リチウム原料と、鉄原料と、リン原料との混合物を焼成して
リン酸鉄リチウムの一次粒子を調製する一次焼成工程(ステップS102)と、一次焼成工
程で得られたリン酸鉄リチウムの一次粒子と、クエン酸とを含む混合物を焼成して、炭素被
覆したン酸鉄リチウムの二次粒子を調製する二次焼成工程(ステップS106)とで、タ
ップ密度を従来よりも簡便に高めることができるリチウム二次電池の正極活物質の製造方法
が提案されている(下図参照)。

  Aug. 18, 2016

非水電解液二次電池として、正極電極部材、負極電極部材、及び電解液を備えたものが知ら
れている。また、正極電極部材は、正極集電体と、該集電体上に積層された正極活物質層と
を備え、前記負極電極部材は、負極集電体と、該集電体上に積層された負極活物質層とを備
えている。また、正極電極部材と負極電極部材は、通常、セパレータを介して隔てられてい
る。

この種の非水電解液二次電池として、正極活物質がリン酸鉄リチウム化合物といった鉄を含
有する化合物であるものが知られている。かかる非水電解液二次電池は、自動車に装備され
たり、高温環境下で放置されたり使用されたりする場合がある。このような場合、非水電解
液二次電池内部が高温となり、正極活物質中に存在している鉄(Fe)が電解液中に溶出す
るおそれがある。そして、溶出物が負極電極部材の表面で析出し、析出物が該表面を被覆す
ることによって、耐久性の低下や容量の低下が生じるという問題がある。

そこで、このような正極活物質からの鉄の溶出が抑制された非水電解液二次電池が提案され
ている。例えば、活物質または活物質を構成する原料中のFe不純物を、磁力発生装置によ
って除去し、Fe不純物が除去された活物質を用いて製造された非水電解液二次電池が提案
されている。

しかし、正極活物質中の不純物は除去されても、正極活物質構成成分の鉄が含まれ、不純物
を除去しても、高温環境下で放置されたり使用されたたときに、耐久性の低下や容量の低下
が依然として生じる。このため、正極集電体と、集電体上に塗布された正極活物質を含む
極電極
部材と、負極電極部材と、電解液とを含み、正極活物質は、少なくとも鉄含有する正
極活物質とこの酸化物とから構成され、酸化物が、正極活物質の集電体側よりも反対側に多
く含有されることで、高温環境下で放置や使用された場合でも、容量の低下や耐久性の低下
が十分に抑制された非水電解液二次電池の提案がなされている(下図)。

Apr. 21, 2014

 

【こんな技術紹介:深穴90度曲げ放電加工】

岡山大学大学院自然科学研究科の岡田晃教授らのグループは、深穴加工の方向を90度曲げ
られる放電加工技術を開発した。球状電極をワーク(加工対象物)に近接させて金属を溶か
す。金型の冷却用流路などの加工用として利用を提案している(「日刊工業新聞」2016.08.
29)。株式会社 安永の記事を深掘りしていたら、新聞ではなく旧聞なのは、個人的な思い入
れがあるため―――20数年程前金属に直径で50ミクロンを金型の枘穴(ほどあな)加工を
エッチ
ングできない検討したことを突然思いだした(上写真)。

この方法は、球状電極を導電性のワイヤやテープ材でつり下げ、そこにワークを近付けて放
電を起こす。球状電極の自重を利用するため電極の下方向に穴があく。ワークを傾けること
で穴の方向を変える。
テープ材がたわんで変形するため、曲がった穴の中でも球状電極に給
電できる。テープ材は周囲を絶縁膜で覆い、テープ材とワークとの間の放電を防いだ。ワー
クをわずかに振動させて加工粉を排出し、通電によるショートを防いだとのこと。

それで、加工性というと、
アルミ合金でU字状の深穴を加工できることを確認。球状電極の
直径は5・5ミリメートルで、ワークは0・05ミリ―0・18ミリメートルの振幅で振動
させる。加工の位置精度は約0・5ミリメートルで、金型冷却用の流路には十分な精度とい
う。放電加工はこれまで、穴の形状に応じて専用の電極を用意する必要があった。新手法は
一つの電極で深穴の曲率を変えられる。今後は加工が難しい超硬合金などにも利用していく
とのこと。


 

 

【我が家の焚書顛末記 25:中国思想 管子        

 

   枢  言  ―― 名言抜粋 ――


  理路整然とした論文も大事であるが、なにげなく述べられた短いことぱの中にも、見
 逃すこ
とのできないような深い意味がかくされていることがある。本篇は、管子の重要
 な短言を集め
たものである。「言々これ珠玉」といえるであろう。

  ことば ------------------------------------------------------------------

 「民と地とを先にするときは得、貴と驕とを先にするときは失う」
 「これを量るに少多をもってせず、これを称るに軽重をもってせず、これを度るに短長
 をもっ
てせず」
 「愛は憎しみの始め、徳は怨みの本なり」
 「およそ国の亡ふるや、その長ずるものをもってなり。人の自ら失うや、その長ずると
 ころの
ものをもってなり」

 ------------------------------------------------------------------------------

  「治者はその名をもってす」

  最高の原題である道は、天にあっては太陽、人にあっては心である。万物は、「気」
 があれば生存
し、なければ死滅する。生存できるのは、「気」があるからだ。
  政治のうえで「気」に当たるのは「名分」である。「名分」さえ正しければ治まる。
 国が冶まるの
は「名分」が正しいからだ。

 -----------------------------------------------------------------------------

 管子曰:「道之在天者日也,其在人者心也。」故曰:「有氣則生,無氣則死,生者以其
 氣。有名則治,無名則亂,治者以其名。」

 ------------------------------------------------------------------------------

  名君の心得

 「人民を没する、人民に利益をもたらす、人民の役にたつ、人民を安心させる」
  これは退を実践する者のみがなしうることだ。帝王がすなわちそれである。帝王こそ
 は政治のうえ
でなにを優先し、なにを後回しにするかを心得ていた。土地や人民の利益
 を優先させれば必ず成功す
るが、貴族や高官の利益を優先させれば必ず失敗する。だか
 らこそ、昔の名君は、なにを優先し、な
にを後回しにするか、とくに慎重を朗したので
 ある。

 ------------------------------------------------------------------------------

 樞言曰:「愛之利之,益之安之。」四者道之出。帝王者用之而天下治矣。帝王者,審所
 先所後,先民與地,則得矣。先貴與驕,則失矣。是故先王慎貴在所先所後。


 ------------------------------------------------------------------------------

  貴族、人民、金持の扱い方

  君主は、貴族、人民、金持の扱い方には慎重でありたい。貴族の扱いを沼気にすると
 は家柄にとら
われずに賢人を抜擢することである。人民の扱いを慎重にするとは役人を
 おいて監視させることであ
る。金持の扱いを慎重にするとは生産を奨励し、かれらに富
 を独占されないようにすることである。

  君主が臣下から侮られるか尊敬されるかは、この三者をいかに良うかにかかっている。
 その扱いはよ
ほど慎重にしなければならないわけだ。

  -------------------------------------------------------------------------------

  人主不可以不慎貴,不可以不慎民,不可以不慎富,慎貴在舉賢,慎民在置官,慎富在務
 地。故人主之卑尊輕重,在此三者,不可不慎。國有寶有器有用,城郭險阻蓄藏,寶也。
 聖智,器也。珠玉,末用也。先王重其寶器,而輕其末用。故能為天下生而不死者二,立
 而不立者四。喜也者、怒也者、惡也者、欲也者、天下之敗也。而賢者寶之,為善者非善
 也故善無以為也,故先王貴善。王主積于民,霸主積于將戰士,衰主積于貴人,亡主積于
 婦女珠玉,故先王慎其所積。

 -------------------------------------------------------------------------------

                                  この項つづく

 

 

【今宵も  ホットウィスキーとひとり鍋:ブリとトマトの野菜鍋】

材 料:ブリ 一切れ、豆腐 1/2丁、エノキダケ 50グラム、水 2カップ、野菜
    150グラム(水菜、白菜、ホウレンソウなど)、トマトソース(市販品)100
    グラム、醤油 大さじ2
作り方:鍋に水、トマトソース、醤油を入れ、ひと煮立ちさせ、ブリ、豆腐、エノキダケ、
    野菜を加え加熱(塩分0.1グラム、400カロリー)。
 

     

昨夜は、前の職場のOB会の定期総会と工場見学あり出席し帰りに近くのセブンイレブンで
「キンタ・ラス・カブラス / カベルネ・ソーヴィニヨン2014」(チリワイン)とビー
フジャーキーを買う。それにしても、ワン・コインで買えるんだと感心しつつ頂く。同席し
ていた大橋富造現多賀町議員が、あそこで仕事をしていたんだねと元実験室と検査室を指さ
しそう言うので、目をやり仰ぎ見る。たくさん仕事をしたもんだと、俄に思い出したかのよ
うにそう応えた。

「酒に対して当(まさ)に歌うべし 人生幾何(いくばく)ぞ 譬(たと)えば朝露の如(ご
と)し 去る日は苦(はなは)だ多し 慨(がい)して当に以(もっ)て慷(こう)すべし
幽思(ゆうし)忘れ難」である。瞬く間の半世紀、人生いまだ語らずだと、強がりながら、
酸味のきいたカベルネを飲み干すこと美味し。

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錬金術立国への夢

2016年11月12日 | ネオコンバーテック

 

 

                   未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん / 論語    
                    

              ※ 季路問事鬼神、子曰、未能事人、焉能事鬼、
              曰敢問死、曰未知生、焉知死。

               いまだ人に仕えることもできないのに、
              どうしてよく神や先祖の霊に仕えることができようか。

                                                                               
          
                                                                                                                  孔子 B.C. Sep. 28, 552 - Mar. 9, 479

    

 

 
【錬金術立国への夢:水素大量製造型酸化物ナノ複合化陽極材料】

時代は確実に、不確定な、憂鬱な、動乱色に染まりつつある。それを横目に寡黙に問題解決の任務をこなす
アドホックな技術集団がいるとすれば、それは現代の墨子であろう。さて、

9日、産業技術総合研究所の島田寛之らの研究グループは、水素社会の実現に向け、水を電気分解(電解)
て水素を合成する技術の1つである固体酸化物形電解セルSOECによる水電解で、水素製造に必要なエネ
ルギーを従来の水電解技術より20~30%削減でき、白金などの貴金属電極が不要な、セル面積あたりの
水素製造量(合成速度)が多い酸化物ナノ複合化陽極材料の開発の成功を公表。

それによると、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)とサマリウム添加セリア(SDC)の
一次粒
子をナノレベルで均質化させたナノ複合構造の二次粒子を設計し、噴霧熱分解法――球状で
粒子径が揃った
微粒子が合成可能2相以上からなる複合微粒子を単一プロセス――で合成する二次
粒子である酸化物ナノ複
合粒子内には電子とイオンそれぞれの伝導経路が構成、広い反応場と高い
電気伝導性を示す。この材料を用
いてSOECで高温水蒸気電解を行い、電解電流密度は2.3 A/cm2
(450 ℃、電解電圧1.3 V)であった。
また、セル面積あたりの電解水素の合成速度も、高分
子形の水電解での合成速度の2倍以上を達成し、電解
セルのコンパクト化を可能とする。

【成果】 

  • 二種類の10ナノメートルレベルの酸化物ナノ微粒子を均質に複合化した二次粒子の陽極材料を開発
  • 二次粒子内にイオンの伝導経路を構築し、電極反応点数を飛躍的に増加
  • 既存の水の電気分解技術を超える電解電流密度を酸化物形で実証し、水素社会の実現を促進 

水電解による水素製造技術としては、固体高分子形やアルカリ形があるが、作動温度が低く電解電圧が高い
ためエネルギー変換効率に限界がある。一方、SOECを用いた高温での水蒸気電解は、電解電圧が低くシス
テム内で無駄なく熱を利用できるため、高効率でエネルギーキャリアを製造できる次世代の水電解技術とし
て期待されているが、電解電流密度が低いためセル面積あたりのエネルギーキャリア合成量が十分ではなか
った。 

SOECの陽極は、電気伝導率が高く電極抵抗が小さいほど、高い電流密度が得られる。現在、SOEC陽極材料
として一般的に使用されている電子伝導性のペロブスカイト型構造材料La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)では、
イオン伝導性材料のガドリウム添加セリア(酸化セリウム):GDC)と複合化して、電極内に電子とイオン
れぞれの伝導経路を形成すると同時に、反応する点を増やすことにより、電極抵抗を低減させている。

 Nov. 9, 2016

これによると、SOEC の電解電流密度を飛躍的に増加させる高性能陽極として、高電子伝導性のペロブスカ
イト型構造材料SSCと高イオン伝導性材料のSDC をナノメートルレベルの一次粒子とし、両者が均質な三次
元ネットワークを構成する酸化物ナノ複合構造の二次粒子を設計。噴霧熱分解法により、このナノ複合化構
造二次粒子を合成、この粒子からなる陽極材料を作製。

今回用いたSSCは、LSCFよりも高い電子伝導性を示す材料であり、また わずかながらイオン伝導性も併せ
持つ。しかし、このSSC自体がもつイオン伝導性のために、SDCGDC等の高イオン伝導性材料と複合化し
ても陽極性能を向上させる効果を得ることが難しかった。また、これらのイオン伝導性材料と複合化すると、
電極内のSSCのネットワークが途切れ電子伝導率が低下してしまうために、これまではSSC単体で用いられ
ていた。今回、マイクロ構造による電極内の電子伝導経路を構築して、SSC自体の電子伝導率を低下させる
ことなく、ナノ構造により二次粒子内にイオンの伝導経路を構築して電極の反応点数を大幅に拡大させた
(上図1)。これにより、SSC単体では得られなかったSDCとの複合化効果が得られるようになり、電極性
能が著しく向上する。

ナノ複合化により、これまでSOECを用いた高温水蒸気電解の最大の損失要因であった陽極の電極抵抗を大
幅に低減できた。今回開発した材料を陽極として用いたSOECの電流密度は、2.3 A/cm2750 ℃、電解電圧
1.3 V)であった(下図)。これは、既存の水電解技術であるアルカリ水電解や高分子形電解、これまでの
SOEC 高温水蒸気電解の2~10倍である。また、実用化の目安であるSOECの容積1dm3(想定電極面積
1200 cm2)あたりの水素製造量1 Nm3/hを達成するには2 A/cm2の電解電流密度が必要とされている。



今回開発した陽極を用いたSOECの電解電流密度はこれを上回っており、水素ステーション用などの水素製
造装置に適用でき、電解装置を従来よりもコンパクトにできる。また、開発した陽極材料を用いたSOEC
の電解水素の合成速度は、高分子形電解やアルカリ水電解と比べ、セル面積あたり2倍以上の水素を合成で
きた。電解熱中立点で電解することで、外部から供給する電力を従来より20~30%削減できるという
SOECによる水電解の利点に加え、今回の陽極材料により大量水素製造できることで、再生可能エネルギー
を活用した水素製造時のコストを低減、水素社会の実現を促進する。  

ここで、鍵となる「高温水蒸気電解法」と「噴霧熱分解装置」の最適と思われる特許事例の2例を以下のよう
掲載しておく。いつものことなのだが、短時間で膨大なデータから2つだけ取り出すのも「情報処理リテラシ
ー」が問われ、あれも掲載したい、これもふれておきたい拡散し、肝心なことが抜けてしまうことをおそれる
が、今日は土曜とあって湖北ドライブを楽しんできた(疲れた)こともあり、「ナノテク」は「デジタル」(
電算機)抜きには語れず、かつまた冒頭の「錬金術立国への夢」の実現できない。そんなことを踏まえ、「ネ
オコンバーテック」を駆使した環境システムの開発と未来を担えるのはわたし(たち)だと確信しつつ、今夜
は適当なところで切り上げる。

● 高温水蒸気電解法を用いるメリット 

高温水蒸気電解法を用いるメリットを具体的に説明する。水の電気分解に必要なエネルギー(ΔH)
は次式
(1)で表される。ここで、ΔGはギブスエネルギー差、TΔSは可逆反応熱を意味し、Δ
Gは電気エネル
ギーで、TΔSは熱エネルギーで与えられる。

    ΔH=ΔG+TΔS                    (1)

ΔHは温度による変化が小さいのに対し、ΔGは高温になるにつれて小さくなる。このため、高温
環境下で
水蒸気の電気分解を行うことにより、水の電気分解に比べて電気分解に必要な電気量を低
減することができ
。この性質により、室温での水の電気分解よりも30%程度少ない電力で同じ
水素製造量が得られるため、
高いエネルギー効率で水素製造を行うことができる。

さらに、原料が水であるため、二酸化炭素を生じない再生可能エネルギーによる電力と二酸化炭素を生じな
い熱源を用いれば、全く二酸化炭素を排出せずに水素製造が可能となる。また、製造した水素を一時的に貯
蔵する方法としては、(1)圧縮して高圧水素ガスにする、(2)液化水素にする、(3)水素吸蔵材料に
吸蔵する、という3つの水素貯蔵方法が知られている。これらのうち、水素吸蔵材料は一般的に水素を吸蔵
するとき発熱して、水素を放出するときに吸熱する。

このため、水素を水素吸蔵材料に吸蔵する水素貯蔵方法は、熱エネルギーが水素製造に及ぼす寄与が大きい
高温水蒸気電解法との組み合わせに適している。

下図の特許事案は、株式会社 東芝の「水素製造装置、水素製造方法及び電力貯蔵システム」で、水素製造
に係る入熱を低減して、高い水素製造効率を実現する製造装置、方法及び電力貯蔵システムである。 

【解決手段】水素製造装置10は、供給された原料水を加熱して水蒸気を発生させて、所定の温度
まで昇温
させる第1加熱部12と、水蒸気を入力して、高温水蒸気電解により水素と酸素とを生成
する電解セル17
と、生成された水素と電解未反応分の水蒸気とを入力して、水素吸蔵材料の水素
化反応に必要な温度よりも
高い温度で、水素と水蒸気とを分離する水分分離器18と、分離された
水素と水素吸蔵材料との混合物を水
素化反応させて、水素を水素吸蔵材料に吸蔵させる水素化反応
器21と、を備えている。



● 噴霧熱分解装置の最適化

噴霧熱分解装置には、セラミックス製の炉心管と、電気ヒーターとが備えられている。そして、噴
霧熱分解
装置では、炉心管を電気ヒーターにより加熱して、原材料を炉心管内部で熱処理される。
電気ヒーターによ
る加熱、熱分解処理を行うため、原材料の大量処理が困難である。また、イニシ
ャル・ランニングコストの
面においても、スケールアップが困難である。さらに、セラミックス製
の炉心管のため、昇温、降温に時間
がかかるなど作業性が低減する。炉心管としてセラミックスチ
ューブが使用されていることが一般的となっ
ている。この場合には、電気ヒーターで加熱する際に、
ヒートショックが起こり、炉心管が割れてしまう等
の不具合も生じやすい。更に、セラミックスチ
ューブ製の炉心管の一部が剥離してしまう等の問題もある。
炉心管の一部が剥離してしまうと、炉
心管の割れた破片が製品へ混入してしまい、製品の品質を著しく低下
させてしまう。

また、直火式噴霧熱分解装置では、原材料を熱分解処理する熱分解処理部で、加熱の際に、局所的
な高温部
が生じてしまい、品質低下を生じさせやすい。さらに、局所的な高温部を生じさせないよ
うにするために、
温度制御することも難しい。このため、大川原化工機株式会社の下図特許事案
「噴霧熱分解処理装置、及び
噴霧熱分解処理方法」では、噴霧熱分解装置の大型化、製品の高品質
化、及び製品の大量処理が可能となる
噴霧熱分解処理装置を提供されている。

【解決手段】原料液滴を噴霧する噴霧器9と、噴霧器9から噴霧された原料液滴を、高温雰囲気下
で加熱、
分解させる円筒状の反応炉3と、反応炉3の外周3aを、反応炉3の鉛直方向下側から上
側に向けて、熱風
を通過させる通風部7と、を備える。上記反応炉3は、金属製からなり、通風部
7を通過する熱風を反応炉
3に当てて、反応炉3内で原料液滴を加熱、分解させる噴霧熱分解処理
装置1。 


  ● 今夜の一曲 

 「イッツ・マイ・ライフ」はアメリカ合衆国のロックバンドのボン・ジョヴィの楽曲である。こ
の楽曲は、彼らの7枚目のアルバム『クラッシュ』に収録され、アルバムからの最初のシングルと
して日本では2000年5月10日にリリースされた。各国の週間シングルチャートは、ドイツ
で2位、イギリスで3位、オーストラリア、アイルランドで5位などとなった。

 


 

 

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大津から黒の革命

2016年11月10日 | ネオコンバーテック

 

                                            羯諦羯諦波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆

                                                                                                                         般若心経

                                  往き往きて、彼岸に往き   

                 全うし彼岸に到達した者こそ 

                 悟りそのものである、めでたし
                     
                     
                 ※ 真言の結び(唯識論の核心部分に相当)

 

                                                                                                                                    
                                                                                                           釈迦 abt. B.C 500 ? -

  

     

【我が家の焚書顛末記 17:中国思想 管子】      

  軽 重    ――管仲の経済政策――  

 「経済政策」といっても、もらろん二千数百年前のことである。ここに集録されているエピソ
 ドは一見、たわいない。だが、武力侵略と掠奪による富国策しか念頭になかった当時の背景
を考

  えると、管仲の発想はなみなみならぬものがある。「まず物質的な基礎をつくる」ために、かれが、人間
  心埋、権力、客観情勢など一切のものを運用した点をくみとることができよう。

 --------------------------------------------------------------------------------------

  ことぱ

 「楚の黄金あるは、斉に菑石(しせき)あるに中るなり。いやしくもこれを操(と)りて工(た
 くみ)ならず、これを用いて、善ならざるあれば、天下、倪(げい)して是(み)んのみ」
 「国、塩なければ腫る、守圉の国は塩を用ること独り甚だし」
 「粟重ければ、万物軽し。粟軽ければ、万物重し。両者衡立せず]
 「下はすなわちその囷京実し、上はもって上に給し君のためにす。一挙して名実ともに在るなり。
 民なんぞなさざらんや」

  --------------------------------------------------------------------------------------

   泥棒を生む社会

 「ひとりの農夫が耕作しないために、人民の中に餓死者が出ることもある。ひとりの女が機を織
 らないために、人民の中に餓死者が出ることもある。
  逆に、二人前の仕事をする者は、たとえ収入が少なかろうと、自分の子供を売るようなことは
 ないだろう。三人前の仕事をする者は、衣食にこと欠くことがないだろう。四人前の仕事をする
 者は、租税を完納できるだろう。五人前の仕事をする者は、かなりの物が買えるようになり、死
 者を葬る余裕もできるだろう。
  ところが、人民は実際には二人前の仕事もできない状態にある。にもかかわらず、人民からき
 びしく租税をとりたてるなら、追剝が跋扈して独り歩きもままならず、余財を蓄えていても守る
 べくもない。このうえ法をきびしく適用しようものなら、それは人民を殺すに等しい。
  もし、一日に三合の穀物しか食べられないとしたら、"村"ごとに、食を求めて盗みをはたらく
 泥棒が出よう。一日に二合しか食べられないとしたら、"里"ごとに泥棒が出よう。一日に一合し
 か食べらりないとしたら、家ごとに泥棒が出よう。それが道理というものだ。ところが現在、人
 民はろくな収入もないのに、、普段の四十倍もする穀物を食べなければならない。これでは盗み
 をはたらくなというほうが無理である。
  このうえ、朝にに政令を発して、その日の夕方までに納税するよう命じたとしよう。蓄財のあ
 る者はすぐ納めるだろが、ない名は衣類を売り払わなければならなくなる。農夫は穀物を、市価
 の三割で売らなけれぱならなくなる。こんな不穏な政令が出されると、せっかく生産した織物も
 すぺて他国へ流れてしまう。それでも誅求を続けるなら、人民はもはや耐えきれず、国の威令の
 及ばぬ山中へ逃げてしまう。こういう君主の下では、兵士たらもまた、大切に扱われることはな
 く、家族が誰敗して、会うことができない。人民は山にかくれ、兵士は国外に逃亡する。これこ
 大戦もしないのに内部から国が崩壊するということなのだ」

 --------------------------------------------------------------------------------------

 管子曰:「農不耕,民或為之飢。一女不織,民或為之寒;故事再其本,則無賣其子者。事三其本,
 則衣食足。事四其本,則正籍給,事五其本,則遠近通,死得藏,今事不能再其本,而上之求焉無
 止,是使姦涂不可獨行,遺財不可包止,隨之以法,則是下艾民,食三升,則鄉有正食而盜,食二
 升,則里有正食而盜。食一升,則家有正食而盜。今操不反之事,而食四十倍之粟,而求民之毋失,
 不可得矣;且君朝令而求夕具,有者出其財,無有者賣其衣屨,農夫糶其五穀,三分賈而去,是君
 朝令一怒,布帛流越而之天下。君求焉而無止,民無以待之,走亡而棲山阜。持戈之士,顧不見親,
 家族失而不分,民走於山中,而士遁於外,此不待戰而內敗。」

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     独占の排除

  「一国の支配者たるものは、問季を辿じて生産計画を円滑に行なわせ、経済を豊かにさせろよ
 う配慮しなければならない。

  物資が載寫な国には、どんなに遠くからでも人民は集まってくるし、開発が進んだ国からは、
 逃げ
だす人民はひとりもいない。日々の暮らしにも事欠くものに礼儀を説いたとてなんになろう。
 生活に
ゆとりがでみさえすれば、道徳意識はおのずと高まるものだ。
  今日、わが国は主君みずから率先して開墾事業を進め、穀物の生産を増大させた。土地は、人
 民一
人につき数畝にも達しているにもかかわらず、街には餓死する者がいる。それは穀物を独占
 してし
まう看がいるからだ。
  また、わが君は多量の貨幣を鋳造した。その貨幣はひろく流通し、人民一人につき数十枚数百
 枚に
も達している。にもかかわらず、金に困ってわが子を売る者さえいる。それは、貨幣が少数
 者の手に
握られているからだ
  されば君主たるもの、穀物・貨幣の集中を防ぎ、貧富の差をやわらげるべく手を打だなければ、
 い
かに農業を奨励し、貨幣を発行しようとも、人民はなおも貧苦にあえがなければならない」

 --------------------------------------------------------------------------------------

 管子曰:「今為國有地牧民者,務在四時,守在倉廩。國多財,則遠者來。地辟舉,則民留處。倉
 廩實,則知禮節。衣食足,則知榮辱。今君躬犁墾田,耕發草土,得其穀矣。民人之食,有人若干
 灸畝之數,然而有餓餒於衢閭者何也?穀有所藏也。今君鑄錢立幣,與民通移,人有百十之數,然
 而民有賣子者何也?財有所并也;故為人君不能散積聚,調高下,分並財,君雖彊本趣耕,發草立
 幣而無止,民猶若不足也。」

 --------------------------------------------------------------------------------------

   夷狄掌握の法

  桓公が管子にたずねた。
 「四方の夷狄を支配下にねさめないと、かれらほ天下に害毒を流し、わが覇業をも失敗させかね
 ない。
かれらを従わせるために、なにかよい方法はないか」
  管子はこうこたえた。
 「各地の特産物を利用することです。すなわち、呉や越には、真珠・象牙を、発や朝鮮には、虎
 や釣
の皮・皮ごろもを、禺氏には、白璧を、そして、崑崙虛には、璆・琳・琅玕を納めさせるの
 です。

  真珠は、手のひら口の中にも隠れるほど小さなものですが、値は千金。呉や越に、これをわが
 国への貢物とさせ、それにたいして当方が千金をむくいるならば、かれらは八千里の道をも遠し
 とせず、入朝してくるでしょう。
  虎や豹の皮は、それで金を包むと、なかの金と同じ値うちがあります。発や朝鮮に、これをわ
 が国への貢物とさせ、それにたいして当方が千金をむくいるならば、かれらは八千里の道をも遠
 しとせず入朝してくるでしょう。
  白璧もまた、懐や腋の下に隠れてしまうほど小さいむのですが、やはり千金の価値があります。
 禺氏には、これをわが国への貢物とさせ、それにたいして当方が不全をむくいるならば、かれら
 は八千里の道をも遠しとせず入朝してくるでしょう。
  さらには、璆・琳・琅玕でかんざし、耳環をつくれば、それぞれに千金の価値をもつものです。
 崑崙虛にたいし、これら宝玉をわが国への官物とさセ、当方からは千金をむくいるならば、かれ
 らもまた、八千里の道をも遠しとせず入朝してくるでしょう。
  要するに、各地の特産物を買い入れて流通を促進し、かれらの当方にたいする依存度を深めて
 ゆけば、かれらは自然に入朝してこようというものです」

 --------------------------------------------------------------------------------------

 桓公曰:「四夷不服,恐其逆政,游於天下,而傷寡人,寡人之行,為此有道乎?」管子對曰:「
 吳越不朝,珠象而以為幣乎!發朝鮮不朝,請文皮毤。服而以為幣乎!禺氏不朝,請以白璧為幣乎!
 崑崙之虛不朝,請以璆琳琅玕為幣乎!故夫握而不見於手,含而不見於口,而辟千金者,珠也,然
 後八千里之吳越可得而朝也。一豹之皮容金而金也,然後八千里之發朝鮮可得而朝也,懷而不見於
 抱,挾而不見於腋,而辟千金者,白璧也,然後八千里之禺氏可得而朝也。簪珥而辟千金者,璆琳
 琅玕也,然後八千里之崑崙虛可得而朝也;故物無主,事無接,遠近無以相因,則四夷不得而朝矣。」

 --------------------------------------------------------------------------------------

ここは管子(管仲)の温故知新ですね。

                                      この項つづく

  

大津から黒の革命:薄い黒鉛シートを開発】
 

  Nov. 10, 2016 

黒鉛の材料メーカー「日本黒鉛グループ」が、バッテリーの電極に使う製品をてこ入れする。高性能を
売りに自動車向けに売り上げを伸ばしており、来年末に完成予定の新工場で生産量を十倍に増やす。黒
鉛を細かく粉砕する工程に改良を加え、黒鉛の層を百ナノメートルほどに薄く剥がし取った「薄片化黒
」の生産に成功。電極に薄く黒鉛を塗ったシートを売り出した。硫酸などの化学薬品で溶かす他社製
品に比べ、生産工程は減らせる一方で性能は引けを取らず、環境への負荷を抑えられる利点がある。リ
チウムイオン電池向けに2012年から販売を始め、現在は塗工シートで年5トン、1千万円を売り上
げる。生産を拡大するために、現在の瀬田工場(同市栗林町)の隣接地に新工場建設に着手。17年末
の完成後は年50トンの生産を見込んでいる。

日本黒鉛工業(グループ)株式会社は、ブレーキ用材料や部品の成型に使う塗料など、自動車部品関連
の黒鉛を主力とする。ただ、伸長するハイブリッド車や電気自動車(EV)は、エンジン系をはじめ部
品が少なくなるため、部品メーカーは対応が急務になっている。
そこで同社が目を付けたのは、EVに
欠かせないバッテリーだ。リチウムイオン電池の電極にも黒鉛が使われる。黒鉛を薄くできれば、導伝
率を高められるため、電池を大型化しなくても容量を増やすのと同じ効果が得られる。独自技術で勝負
できると、10
年から開発を始めたグループの販売会社、日本黒鉛商事の松尾滋久取締役営業本部長
は「小さなメーカーだが、黒鉛の粉末から塗料まで一貫して生産できるのは弊社だけ」と胸を張る。

ループの現在の売上高は70億円。シートが占める割合はまだわずかだが、松尾取締役は「今後、EV
が普及する10~15年後には、売上高を倍増させる大きな柱の製品に成長させられる」と期待をかけ
ている(中日新聞 「薄い黒鉛シートを開発 大津の材料メーカー」2016.11.10)。

ここでは、群薄片化黒鉛製造技術に関連する新規考案を俯瞰、掲載する。まずは、薄片化黒鉛製造装置
を積水化学工業株式会社の特許を参照(下図)する。


● 特開2014-118315 薄片化黒鉛の製造装置及び製造方法 積水化学工業株式会社



 
【概要】

原料としての黒鉛が貯留されている原料槽1と、25℃及び大気圧下で液体である第1の流体52を供
給する流体供給源22と、第1の流路2Aを構成している第1の流路構成部材と、第1の流路2Aの下
流側に接続されており、第1の流体52を150℃以上の高温及び5MPa以上の圧力となるように加
熱する機能を備えた加熱部2と、加熱部2に接続されており、下流端が第1の流路2Aに連ねられて連
続流路を構成している第2の流路2Bと、第2の流路2Bに接続されており、加熱された黒鉛を冷却し
かつ減圧することにより剥離する冷却槽3と、薄片化黒鉛を取り出すことを可能とするように第2の流
路2Bに接続されている取出流路29とを備える、薄片化黒鉛の製造装置で積層数が少なく厚みの薄い
薄片化黒鉛を容易に得ることを可能とする薄片化黒鉛の製造装置の提供。

次に、日本黒鉛工業株式会社の保有特許より、恣意的に参照する。

● 特開2015-098129  円筒状メッシュシリンダ及び円筒状メッシュシリンダの製造方法



【概要】

端縁に沿って複数の穴が形成されて設けられた接合部を有するシート状部材の端縁同士を突き合わせて、
薄膜状の連結部材を押圧体により押圧しながら超音波振動を用いて接合して円筒状を形成したのち、さ
らに連結部材とその周辺部を樹脂2で覆うことにより樹脂層8を形成する円筒状メッシュシリンダで、
従来技術では、連結部材で覆われている部分でも連結部材とシート状部材の接合が不十分であると、円
筒状メッシュシリンダを一定期間使用していると、毛細管現象等でその部分からもインキやペーストが
漏れ出すという問題があり、連結部材を用いた超音波振動による接合だけでは、長期間に亘っての十分
な印刷耐久性を得られない場合があった問題を解決するというもの。新規考案としては新規性は薄い事
案である。

● 特開2015-111554
  カーボンコート層、塗料、集電体、電池及びカーボンコート層の形成方法



【概要】

リチウムイオン電池用のアルミ箔、銅箔、ステンレス箔等の集電体に内部抵抗を低減する目的等で設け
られるカーボンコート層において、このカーボンコート層用の塗料に、使用温度を超えて高温になると
ガス発生する材料を添加し、この塗料を集電体上に塗工し、カーボンコート層を作成することにより、
リチウムイオン電池内が急激に温度上昇した場合、活材と集電体との間の通電を発生ガスにより遮断で
きるようにした、カーボンコート層又はその塗料に係るものである。リチウムイオン電池の安全性対策
として、電解液の温度が急激に上昇するとガスを発生し、活材層と集電体の通電を遮ることができるカ
ーボンコート層を提供技術である。

最近のリチウムイオン二次電池の市場は、ノートパソコン、携帯電話等の民生用から電気自動車、ハイ
ブリッド自動車さらに定置用蓄電池(Energy Storage SystemESS)にも展開されている。また、リチウ
ムイオン二次電池等では、集電体の処理について検討されているが、充放電を繰り返す中で、電極にデ
ンドライトが析出し、短絡若しくは過充電等による電池の内部温度が上昇することによって発火、破裂
または爆発が発生する危険性がある。充放電を繰り返す中で、電極にデンドライトが析出し、短絡若し
くは過充電等による電池の内部温度が上昇することによって発火、破裂又は爆発が発生する危険性があ
る。また、電池組み込み工程でも、コンタミが原因で熱暴走を起こし、発火を引き起こした事例も報告
され、電池の内部温度が上昇することによる発火等の危険性を未然に防止する有効な手段がなかったが、
本事案は、リチウムイオン二次電池の集電体上に、使用温度を超えて高温になるとガスを発生する材料
を含むカーボンコート層を設け、電池内温度が使用温度を超えて上昇した場合に、電池の導通を妨げる
ガスを発生させるようにしたことを最も主要な特徴としており、重要かつ新規性に富んだ特許である(
詳細は上表1をダブクリ)。


● 特開1995-147159  一次電池 日本黒鉛工業株式会社 



【概要】

正極活物質と導電性物質とを含有する正極合剤を備えている一次電池であって、導電性物質として、厚
1μm以下、平均粒径1~50μm及び比表面積5~50m2 /gの薄片黒鉛粉末を含有している
ことを特徴とする。好ましくは、正極合剤中において、正極活物質100重量部に対して、薄片黒鉛
粉末が0.5~10重量部含有されることで、正極活物質と導電性物質とを含有する正極合剤を備えて
いる一次電池で、導電性物質を変更することによって、一次電池の性能を向上させ、特に寿命を長くで
きるようにすることであり、
一次電池の正極合剤に添加する導電性物質――薄片黒鉛粉末を使用し、
従来の黒鉛粉末と比較し、極めて有効に電子を運ぶことができ、成形性も向上、一次電池の寿命が延び、
正極合剤の生産性も高く、不良品も発生しない。また、導電性物質の添加量削減を可能とする製法であ

従来のリチウム電池に対し負荷特性、特に低温での連続放電特性及びパルス放電特性を改善するため、、
述の日本黒鉛工業株式会社の特許―――正極合剤成形体を構成する導電炭素材として、所定のサイズ
及び比表面積を有する薄片状黒鉛粉末を含有させる製法技術を踏まえ次の特許技術が提案されている。

● 特開2009-295307 
  リチウム電池用正極合剤成形体及びリチウム電池 FDKエナジー株式会社



【概要】

リチウム電池用正極合剤成形体12は、リチウム電池10の構成要素であり、正極活物質及び導電炭素
材を主構成材料として含む。このリチウム電池用正極合剤成形体12は、正極活物質である焼成二酸化
マンガンと、導電炭素材である黒鉛粉末と、バインダとを含む成形用材料を成形して得られる。焼成二
酸化マンガンの平均粒径は35μm以上40μm以下である。黒鉛粉末の平均粒径は35μm以上、見
掛け密度は0.05g/cm以下である。バインダの含有量は1重量%以下であることで、負荷特性
を向上させることができるリチウム電池用正極合剤成形体を提供するというものである。

従来においてリチウム電池用正極合剤成形体を製造するにあたり、所定の成形性及び成形体強度を得る
ためには、少なくとも数重量%程度のバインダ成分を添加する必要があった。しかし、バインダの増量
は通常電解液含浸の妨げとなり、放電特性にとってマイナスの影響を及ぼす。また、導電炭素材である
黒鉛の比率を高くすれば結着性を向上できるが、その反面で正極活物質である焼成二酸化マンガンの充
填容量が減少してしまい、同様に放電特性にとってマイナスの影響を及ぼす。

以上、足早に俯瞰してきたがこのナノグラファイト・ナノカーボン・ナノグラフェンの領域は急テンポ
で進化している、百ナノメーターを切るダウンサイジングの加工技術は未来を決定すると言っても過言
ではない世界が広がっている。
 

 

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2つの最新ネオコン技術事例

2016年11月08日 | ネオコンバーテック

          自分の生命を愛しても憎んでもいけない。だが生きている限りは生命を
                           大切にするがよい。長く生きるか短命に終るかは、天に委せるがよい。

                                          ミルトン 「失楽園」

                                               

                                              
                                                                                                                                    John Milton
                                                                                                                     Dec. 9, 1608 - Nov. 8, 1674
                                                                                                                              
                                              

 

  

【RE100倶楽部:人工光合成の効率を百倍以上】

● 人工光合成における太陽光のエネルギー変換反応を高効率化する新しい材料

将来に向けた持続可能な地球環境社会を構築していくためには、二酸化炭素などの温室効果ガスを低
減し
ていくことが急務であり、化石燃料に頼らない貯蔵可能なクリーンなエネルギーの創出が望まれ
ている。人
工光合成は太陽光と水と二酸化炭素を用い、酸素と水素および有機物などの貯蔵可能なエ
ネルギーを人工
的に生成する技術であり、注目を浴びている。

  Oct. 19, 2016

これまで、太陽光と水が反応する明反応の電極は、半導体材料や、比較的大きい粒子状の光励起材料
を密
度の低い構造で固めた材料が用いられていましたが、太陽光(可視光波長)の中で利用できる波
長の範囲が
狭いことから化学反応に十分な電流量を取り出すことが困難であったが、この方法では、
フレキシブル実装シ
ート上にキャパシタなどの受動素子を形成するための電子セラミックスの成膜法
(ナノパーティクルデポジショ
ン(NPD)を改良し、光励起材料の原料粉末をノズルで吹き付ける際、
原料粉末を薄い板状に破砕しながら基板上に積層させる薄膜形成プロセス技術を開発。開発した技術
の特長は以下のとおり。

尚、材料内部の構造解析は国立大学法人東京大学幾原研究室と共同で行っている。

(1)利用可能な太陽光波長域の拡大(左/下図)

光励起材料の原料粉末を、成膜後に原子レベルのひずみを持つ結晶構造となるような組成にすること
で、新技術適用前と比べて太陽光のエネルギーを吸収できる最大波長を490 nmから630 nmへと広げ、
利用可能な光の量を2倍以上に向上させることに成功。

 Nov. 7, 2016

(2)高い電子伝導特性 (右/上図)

形成された薄膜は、ミクロ・マクロな欠陥がないため結晶性が良く、材料中の粒子間の電子伝達特性
に優れた緻密な構造となっている。これにより太陽光で励起された電子を効率的に電極に伝えること
が可能となる。

(3)水との大きな反応表面積を確保するナノサイズの粒子で構成された構造体

薄膜の表面構造は、材料と水との反応表面積が大きく、また、材料結晶中の電子密度の高い結晶面が
膜表面に規則的に形成。その結果、水と光の相互反応を大幅に促進させることに成功(下図)。



今回開発した新技術により、光励起材料をそのまま用いる場合と比べて、太陽光の中で利用可能な光
の量が2倍以上に広がり、さらに、材料と水との反応表面積を50倍以上に拡大することに成功。こ
により、電子および酸素の発生効率を百倍以上に向上できることを確認。今後、光励起材料とプロ
ス技術のさらなる改良を進め、明反応の電極の特性向上を図るとともに、暗反応部(ニ酸化炭素還
元反応)・
全体システムの技術開発についても取り組み、人工光合成技術の実用化を目指す。 


※ 参考特許

・ 特許5491189  固定化装置 谷岡 明彦 他 2014年05月14日

【スーパーエンジニアリングプラスチック】

● 単層CNT添加で世界最高水準の耐熱性と機械強度を達成

  Darth Vader  Nov. 7, 2016

単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)らの研究グループは、スーパーエンジニアリングプラス
チックの一種であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にスーパーグロース法で作製した単層カー
ボンナノチューブ(SGCNT)を加えることで、世界最高水準の耐熱性(4500℃)と機械強度(曲
げ強度1.8倍)を同時に達成し、かつ射出成形可能な新しいスーパーエンジニアリングプラスチック
PEEK/SGCNT複合材料」を開発に成功したと公表(上写真)。

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は溶融成形可能なスーパーエンジニアリングプラスチックと
しては最も高い耐熱性を有し、さらに耐疲労性、耐環境性、難燃性および成形性に優れ、金属に比べ
て軽量であるため、電気・電子分野、自動車分野および航空宇宙分野において広く用いられている樹
脂です。しかし、適用範囲の拡大のためには、さらなる高機能化、特に耐熱性の向上が求められてい
た。今回
、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構などの研究グループ、PEEKスーパーグロ
ース法で作製した単層カーボンナノチューブを添加、世界最高水準の耐熱性(450℃で2時間でも
安定)、PEEK単体に比べ引張強度(約1.2倍)、曲げ強度(約1.8倍)の機械強度を併せ持つスー
パーエンジニアリングプラスチック「PEEK/SGCNT複合材料」を開発。
この材料はPEEKと同様に射
出成形により様々な形態を簡便に作り出すことも可能。これまで軽金属材料などを使用せざるを得な
かった種々の用途に対してPEEK/SGCNT複合材料が適用でき、特に軽量化が求められる自動車部材、
航空・宇宙産業用部材などへの適用が想定されている。この開発の特徴は以下の通り。

(1)樹脂へのSGCNT高分散化

CNTは、これまでその電気伝導性、熱伝導性、機械特性に注目した材料開発が進められていたが、近
年、CNTの添加による高分子材料の耐熱性向上効果が注目されている。特にSGCNTCNTの中でも添
加による複合材料の耐熱性向上効果が高いことが分かっている。この耐熱性向上効果の発現にSGCNT
をできるだけ均一に、かつ一本一本孤立に近い状態で高分子材料中に分散させる必要がある。これま
CNTの複合材料研究では有機溶媒にCNTを分散し、これに高分子材料を溶解させ、有機溶媒を除去
することにより複合材料を得ていたが、溶解する有機溶媒のないPEEKに対しては、新しい作製手法を
開発する必要があった。
今回、量産化可能で、SGCNTをPEEK中に連続的に解繊・分散する超高分散
技術を開発成果につながった。

(2)耐熱性
 

樹脂の耐熱性の指標として、荷重たわみ温度※6と連続使用温度※7の二つがよく知られていた。PEEK
の荷重たわみ温度は150℃、ガラス繊維や炭素繊維を添加することにより300℃まで大きく向上
させることができる一方で、連続使用温度は240℃程度であり、ガラス繊維や炭素繊維の添加で向
上させることはできないことが課題となっていた。これを荷重たわみ温度の上限値300℃まで向上させ
ることができれば、アルミニウム材料のうち、300℃以下で使用され、より軽量化が求められてい
る用途でのアルミニウムなどの代替材料となると見込まれている。
 

連続使用温度を向上させるためには、PEEKの熱分解を抑制する必要がありますが、熱に対して安定し
ており分散性に優れたSGCNTをPEEKに超高分散することで、PEEK/SGCNT複合材料では連続使用温
度をPEEKより向上させることに成功。下
図は、PEEKもしくはPEEK/SGCNT複合材料を一定温度下
で2時間保持した際の重量変化率を示しています。450℃で2時間保持した場合、PEEK単体では重
量変化率が-18%だったのに対し、PEEK/SGCNT複合材料ではSGCNTの添加量を1wt%から5wt
%まで増やすにつれ重量変化率は小さくなっていき、5wt%では、重量変化率は -0.5%まで低減
できました。重量変化はPEEKが熱分解し、発生した低分子成分の気化により生じるので、この重量変
率の低減は、SGCNTPEEKの熱分解を抑制したことを意味しています。


また、下図に熱処理前と熱処理後のPEEKおよびPEEK/SGCNT複合材料の状態を示す。図中赤枠は試
料が連続使用温度以上に達し、溶融や変形が生じたことを意味し、一方SGCNTの添加量が2wt%およ
び5wt%のPEEK/SGCNT複合材料は、450℃においても試料に溶融や変形が生じず(図中青枠)、
PEEK単体に比べ連続使用温度が向上しています。

(3)機械特性

SGCNTは他のCNTと同様に高い機械特性を有しているので、PEEK/SGCNT複合材料ではPEEK単体に
比べ引張強度と曲げ強度を向上させることができ、SGCNTを5wt%添加した場合、引張強度で約1.2
倍、曲げ強度で約1.8倍の向上が見られました。このような機械強度は、SGCNTPEEK中での分散
性や、成形条件を最適化することでさらなる向上が見込まれている。


(4)成形性

PEEK/SGCNT複合材料は、成形の条件は異なりますが、通常のPEEKと同様の形状に射出成形を行う
ことが可能です。金属材料や高耐熱性の熱硬化性樹脂はダイカスト法※8やプレス成形などによって成
形を行うことから、成形コストがかかり、また成形形状に制約が生じます。しかしながら、射出成形
可能なPEEK/SGCNT複合材料は、連続的に、かつ安価に成形を行うことができる

 May. 5, 2008

スーパーグロース法

 

   ● 今夜の一品

【シャープナーの特徴】 

従来の一般的な研ぎ器では波刃の頂点(凸)部しか研げず、凹部は全く研げません。そのまま研いでい
くと
波形状が崩れてしまい、切り刃の性能を損ねてしまう。貝印の独自の独立サスペンション構造は
刃線
に沿って砥石ユニットが可動するために、刃線を崩すことなくタッチアップする。これは便利。
おすすめだ。


 

 

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ナノカーボン電子工学千一夜

2016年10月19日 | ネオコンバーテック

 

  

 

                倉廩が実つれば礼節を知り、衣食足れば栄辱を知る

             倉廩實、則知禮節;衣食足、則知榮辱  
                                 
                          牧民 / 管子          
                     

                            

                                                     管子 Guan-zi   720–645 BC

 

 Oct. 06, 2016

【温室効果ガスのメタン、排出量推定の2倍 ?】

十月に入り、米国では秋の涼しさが少なくなっていることが話題となっている(下写真ダブクリ)。そう
いえば、強力な温室効果ガスのメタンの全世界排出量が、現在の推定値の2倍である恐れがあるとする研
究論文が5日、科学雑誌「ネイチャー」に発表されている。論文は、気候変動を抑制する取り組みへの課
題が上乗せされたとしている(上写真ダブクリ)。
産業活動由来の排出と地質学的な自然要因による排出
を合計したメタンの全排出量は、現在の推定値より60~110%高い
この研究結果は、11月4日に
発効の「パリ協定(Paris Agreementeement)」でも掲げられている。平均気温上昇値を産業革命前比で「
2℃未満」とする地球の温暖化抑制に向けた目標への世界的な取り組みに深刻な影響を及ぼす恐れがある
と指摘。

メタンは、二酸化炭素に次ぐ地球温暖化の原因。18世紀半ばに産業革命が始まって以降の積算温度の約
5分の1に寄与。なお、湿地や山火事、シロアリ、野生動物などの自然要因も、年間のメタン排出量では
大きな割合を占める。ただ、大気中のメタンの大半は、化石燃料の生産や畜牛、埋め立て地、水田など、
人間の活動によって排出されたもので、その濃度はこれまでの推定値の最大約2倍に上る。

 Oct. 05, 2016

● 温暖化で秋の涼しさが消えていく!?



● 日本発アレルギーフリー大豆チーズ

食用油脂大手の不二製油が、豆乳を発酵させたチーズの量産に日本で初めて成功(読売新聞 2016.10.19)。
牛乳から作る本物のチーズと同様に、加熱するととろける。学校給食用などに10月から売り込んでおり
乳製品アレルギーの悩みから解放されそうである。この発明の特徴は、
豆乳に含まれる発酵を妨げる油分
の分離。チーズにするのが難しかった油分を含む生クリーム状の「豆乳クリーム」の分離することで、牛
乳由来と遜色ないチーズに仕上がる。尚、詳細は今のところわからない(参考:特開2015-065949 大豆蛋
白質含有チーズ様食品 不二製油株式会社)。これは何を意味するのか? 大豆などの種子で、乳製品、食
肉製品のアレルギーフリーの付加価値を加えた代用品として賄えるという日本発の食品革命が勃興する?


尚、
文部科学省が2013年に行った調査では、食物アレルギーに苦しむ児童・生徒の割合は07年から
1.9ポイント増の4.5%(約45万人)に増えた。給食でチーズを食べた児童が死亡する事故も起き
ているとこの記事は伝えている。

  Oct. 08, 2016

 【ナノカーボン電子工学千一夜

 昨夜の「ナノカーボン電子デバイス工学の此岸」では、ローレンスバークレー国立研究所(Lawrence Ber-
keley National Laboratory)の研究ブルー婦らが、カーボンナノチューブをゲートとして使用し「世界最小」
のトランジスタの開発に成功(2016.10.07)を取り上げている(下図ダブクリック)。この発明の特徴は、
これまでの最小のトランジスタの寸法が5ナノメートルと考えられていたものので、カーボンナノチュー
ブのゲー
を採用することで限界を打ち破ることに成功していることにある。尚、同研究所のAli Javey
授は、米国特許(US9299940B2Carbon nanotube network thin-film transistors on flexible/stretchable substrates
Mar.29,2016)を公開しているので願参照の程。
 

  Oct. 07, 2016

● 多孔質グラフェン電極の量産

国国国国内でも、ナノカーボンなどの領域の研究成果があいついで報告されている。まず、11日には、東北大
学原子分子材料
科学高等研究機構(WPI-AIMR)の伊藤良一准教授らの研究グループが、ワンステップで
大量作製が可能な3次元構造
をもつ多孔質グラフェン作製手法を開発し、またその多孔質グラフェンから
水素発生電極を作製に成功。それによると、現在水素は二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとし
て注目されており、さらに、再生可能エネルギー電力を貯蔵・運搬するエネルギーキャリア――貯蔵でき
ない電気を化学物質に変換し、エネルギーの貯蔵・運搬を可能にする化学媒体。例えば、水素、アンモニ
ア、メタン、ギ酸、過酸化水素、アルコール、ジエチルエーテル、トルエンなどの化学物質があり、燃料
電池などを用いてそれらの化学物質から再度電気が取り出せる物質――の有力候補として期待されていま
す。しかし、水素を発生させるために必要な水の電気分解装置は高価で希少な白金を水素発生電極として
使用しており、より安価な代替電極の開発要求に応えることができる。

 Oct. 08, 2016

その製造方法はの特徴は、(1)ニッケルナノ粒子を加熱することで多孔質化しそのまま連続してグラフ
ェンを蒸着させ
ることで作製工程とコストを削減できる。(2)さらに、曲率半径50ナノメートルで曲
がったグラフェンの格子が化学ドーパントを吸収しやすい特性を利用して従来の2~3倍以上の化学元素
種をドープする手法を開発し、従来のグラフェンでネックだった触媒特性の改善する。この新たな多孔質
グラフェンを用いると効率よく水素発生できる電極(白金フリー)で安くて環境負荷が少なく、また大量
生産できると期待されている。

 Oct. 11, 2016

※ "Correlation between chemical dopants and topological defects in catalytically active nanoporous graphene”

 
DOI: 10.1002/adma.201604318

   Oct. 12, 2016

● 3次元集積化グラフェントランジスタ――従来比千倍、軽量で省電力なデバイス

12日、前出原子分子材料科学高等研究機構の田邉洋一助教らの研究グループは、次元ナノ多孔質グラフ
ェンを
用いたグラフェントランジスタの3次元集積化に成功する。従来の炭素原子一層からなる2次元シ
ートであるグラフェンは優れたトランジスタ性能を示するが、実用的な性能を得るには何千枚ものグラフ
ェンを集積化し実用レベルまで性能を向上させる必要があり、多孔質を持つ3次元グラフェンをトランジ
スタに用いることで、集積してない2次元グラフェントランジスタの最大1000倍の電気容量を達成で
きる。近年、携帯情報端末の普及や小型化・高性能化に伴い、省電力で軽量かつ高性能なデバイスの開発
が求められています。グラフェンは2次元のシート材料であり、安価で軽量かつその優れた電気特性から
トランジスタなどの半導体集積回路に必要不可欠なシリコンの代替材料として有力視されているが、応用
研究や商品化では、必ずしも2次元シート状が最適ではない。



3次元ナノ多孔質グラフェンを用いて電気2重層トランジスタを作製しました。そしてこのトランジスタ
が従来の平面構造のグラフェントランジスタと比較して100倍高い伝導度の応答と1000倍高い電気
容量を示す(上図1)。3次元ナノ多孔質グラフェンはシリコン基板に比べ、表面積あたりの重さが1万
倍程度軽く、高い易動度から消費電力の低減が見込まれていることから、省電力かつ軽量・高性能なデバ
イス開発に寄与する。この
研究では、3次元ナノ多孔質グラフェンの表面積を最大限に活用するために、(1)ナ
ノ多孔質構造を破壊しないように臨界二酸化炭素乾燥させたナノ多孔質グラフェンを作製し、(2)こ
れをトランジスタの伝導経路
(チャネル)と作用(ゲート)電極に用い、室温で安定な陽イオンと陰イオンか
ら構成される液体(イオン
液体)を試料全体に浸透させることにより、図1に示すような作用電極とチャネ
ル間に電場を印加することでチャネル
の電子濃度を変化させる電気2重層トランジスタを作製。

 DOI: 10.1002/adma.201601067

図2(c)の3次元ナノ多孔質グラフェントランジスタの振る舞いからは、ディラック電子を利用した電界
効果トランジスタの特徴である電気伝導度の極小と伝導キャリアが電子型から正孔型に反転するという2
次元グラフェンシート特有の現象が観測。(図2(b))このことから3次元構造を持つグラフェントランジ
スタは2次元グラフェンの特性を良く保持する。図2(d)の静電容量の測定からは、これまでの2次元グ
ラフェンシートを用いた平面構造のデバイスと比較して100-1000倍程度高い値を示すことが分か
りました。これは、今回のデバイス構造を用いることで高度に集積化されたグラフェンシート全体の電子
状態を制御することが可能である。

さらに、3次元ナノ多孔質構造の特徴を考慮した理論を用いることで、異なる電子濃度状態で測定した磁
気抵抗効果とホール抵抗が1
つの曲線で表されることを観測(図3(a), (b))。これは、「曲面上に閉じ込
められた伝導電子が外部からかけた磁場方向に対して様々な向きを持つ」という3次元ナノ多孔質グラフ
ェンに特徴的な振る舞いである。今回開発したトランジスタは電子の易動度が、必要とされる性能値20
0cm/Vsをはるかに上回る5000-7500 cm/Vsである。この成果は、ゲート電圧に対し
て非常に直線的なデバイス動作と十分な電子数の制御幅を併せ持つ高密度集積型グラフェントランジスタ
の動作と輸送現象を世界で初めて実現・実証し、グラフェンを用いたシリコンや貴金属への代替デバイス、
例えば光応答デバイスや高集積された立体回路、さらには、光-電気変換デバイスの性能を飛躍的に向上
させる可能性がある。

以上、グラフェンやナノカーボンなどのの非黒鉛系炭素電子デバイス開発成果事例を足早に俯瞰する。シ
リコン系を上回る品質と価格特性をもつ。研究開発と同時に、コストレス、プロセスレス技術を伴走開発
させるならば、世界のトップランナーとなることはできるだろうと。そう思える。

  

【我が家の焚書顛末記 Ⅹ:中国思想 管子】   

    牧  民    ――民を養うには―― 

  「牧」は「牧場」「牧畜」の牧、つまり飼育するという意味。「牧民」とは、要するに、人民を
 育することである。きわめて即物的な考え方だが、古代社会では当然のことであったろう。
それはと
 もかく、この篇は『管子』の思想大系の中で枢要な部分を占めている。
 
 
 ことば

 「およそ地を有し民を牧する者は、務め四時に在り、守りに倉廩在り」
 「倉廩が実つれば礼節を知り、衣食足れば栄辱を知る」
 「政の興るところは、民心に順うに在り、政る廃るところは、民心に逆らうに在り」
 「予うるの取るたるを知るは、政の宝なり」
 「民を御するの轡は、上の貴ぶところに在り、民を道くの門は、上の先んずるところに在り。民を召
 くの路は、上の好悪するところに在り」

 「衣食足れば栄辱を知る」

  一国の支配者たるものは、四季を通じて生産計画を円滑に進ませ、経済を豊かにさせるよう配慮し
 なければならない。
  物資が公営な国には、どんなに遠くからでも人民は集まってくるし、間発が迎んだ国からは、逃げ
 だす人民はひとりもいない。日々の暮らしにも事欠くものに、礼儀を説いたとてなんになろう。生活
 にゆとりができさえすれば、道徳意識はおのずと高まるものだ。
  君主が財政上の無理をしないこと、これが民生安定の根本である。生活が安定すれば、人民は礼・
 義・廉・恥の徳をよく守り、かくして、君主の威令は国のすみずみまでゆきわたる。
  支配者たるものは、なによりも経済を重視しなければならぬ。刑罰などは二義的なものにすぎない。
 まず民生を安定させ、道徳意識を高めること、これが国家存立の基礎である。さてその上で.神霊・
 宗廟・祖先を崇拝する。つまり宗教心を涵養し、人民を教化することだ。

     牧民の方程式「倉廩実つれば礼節を知り、衣食足れば栄辱を知る」-まず物質的な基礎を固
    めることだ、というのは今日では新しい考えでもなんでもないが、紀元前七世紀ごろ、これを
    は
じめて解明したのは、まさに卓見であった。春秋中期いらい、鉄の使用が普及しはじめ、農
    業生産力
と交易の発展がいちじるしくなった。この時代的な背景を的確にとらえたのが管子で
    ある。
人民を治めるには、抽象的なお説教ではなく、①生産を奨励して物質的に豊かにする→
    ②その結果、自然に人民が集まり、生活が豊かになれば道徳が高まり秩序がととのう→②物質
    的に恵まれ道徳的に高められた人民をさらに教化すれば万全である。――これが管子による牧
    民(人民飼育)の方程式であった。

  ------------------------------------------------------------------------------------------

 凡有地牧民者,務在四時,守在倉廩。國多財,則遠者來,地辟舉,則民留處;倉廩實,則知禮節;衣
 食足,則知榮辱;上服度,則六親固。四維張,則君令行。故省刑之要,在禁文巧,守國之度,在飾四
 維,順民之經,在明鬼神,祇山川,敬宗廟,恭祖舊。不務天時,則財不生;不務地利,則倉廩不盈;
 野蕪曠,則民乃菅,上無量,則民乃妄。文巧不禁,則民乃淫,不璋兩原,則刑乃繁。不明鬼神,則陋
 民不悟;不祇山川,則威令不聞;不敬宗廟,則民乃上校;不恭祖舊,則孝悌不備;四維不張,國乃滅
 亡。 
 

 -------------------------------------------------------------------------------------------

    国を支える四本の綱

  国家は四本の綱によって維持されている。
  四本のうち一本切れると安定を欠く。二本切れると危機に瀕する。三本切れると転回する。日本と
 も切れると滅亡してしまう。安定は、とりもどすことができる。危機は、脱することも可能だ。転覆
 
したところで建てなおす方法はまだ残されている。しかし、滅亡してしまったものは、どうすること
 ができようか。
  四本の網とはなにか。
  礼・義・謳・恥の四つの徳がそれだ。礼とは節度を守ることである。義とは自己宣伝をしないこと
 である。廉とは自己のあやまちをかくさないことである。恥とは他人の朋影にひきずられないことで
 ある。
  みなが節度を守るなら、身分秩序は安泰である。だれも自己宣伝をしなければ、うそいつわりはな
 くなる。自己のあやまちをかくす考がいなければ、不正はおのずと影をひそめる。他人の憑事にひき
 ずられる者がいなければ、だいそれた悪事も企みようがない。

 ------------------------------------------------------------------------------------------

 國有四維,一維絕則傾,二維絕則危,三維絕則覆,四維絕則滅。傾可正也,危可安也,覆可起也,滅
 不可復錯也。何謂四維?一曰禮、二曰義、三曰廉、四曰恥。禮不踰節,義不自進。廉不蔽惡,恥不從
 枉。故不踰節,則上位安;不自進,則民無巧軸;不蔽惡,則行自全;不從枉,則邪事不生。 
 

 ------------------------------------------------------------------------------------------

   民心を得る基礎

  人民の願いを・祭して、それをかなえてやること、これが政治の要諦である。人民の願いを無視し
 た
政治は、ゆきづまらないわけがない。
  人民はだれしも苦労をいとう。だから君主は人民の苦労を除く方法を講じなければならない。
  人民はだれしも貧乏を嫌う。だから君主は人民の生活を豊かにさせなければならない。
  人民はだれしも災難を逃れたい。だから君主は人民の安全をはからなければならない。
  人民はだれしも一族滅亡の憂き目を見たくない。だから君主は人民の繁栄をはからなければならな
 い。

  以上の条件が満たされた結果はどうなるか。
  苦労を除いてくれる君主のためなら、人民はいかなる苦労もいとわないだろう。生活を豊かにして
 くれる君主のためなら、人民はいかなる貧乏にも耐えしのふだろう。安全をほかってくれる君主のた
 めなら、人民はいかなる災難をも甘んじて受けるだろう。繁栄をはかってくれる君主のためなら、人
 民は合をかけても闘うだろう。

 ------------------------------------------------------------------------------------------

 政之所興,在順民心。政之所廢,在逆民心。民惡憂勞,我佚樂之。民惡貧賤,我富貴之,民惡危墜,
 我存安之。民惡滅絕,我生育之。能佚樂之,則民為之憂勞。能富貴之,則民為之貧賤。能存安之,則
 民為之危墜。能生育之,則民為之滅絕。故刑罰不足以畏其意,殺戮不足以服其心。故刑罰繁而意不恐,
 則令不行矣。殺戮眾而心不服,則上位危矣。故從其四欲,則遠者自親;行其四惡,則近者叛之,故知
 「予之為取者,政之寶也」。 

 -------------------------------------------------------------------------------------------

古代・春秋時代の中国と現代の中国がことなる、なので「倉廩が実つれば礼節を知りうるか、衣食足れば
栄辱を知りうるか」と反問する必要があるというのが、内村剛介の問題提起であり、わたし(たち)にい
まも問われているようである。これがわたしの主テーマでもある。
                                                                                この項つづく 

 

【世界の朝食:今日は韓国】

● Typical Korean Breakfast

 

 

コメント (3)
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蓄電池でもトップランナー Ⅱ

2016年08月27日 | ネオコンバーテック

 


        国家を超えて普遍的な倫理を語る器量をまったく持っていないことも露呈してくれた。
        こういった重大なことがサリン―オウム事件がのこした影響のうち、長く尾をひいて
        ゆくものだとおもう。
 
                                     「政治・社会・経済を讀む―サリン・オウム事件」

                                                           八重洲レター 1995年

 

                                                                                                                                                                       Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

      ※ 当時、麻原は天才という噂を、千人に一人クラスの知性の持ち主たちから聞かさ
             れる。
その教祖が集団殺人を指示し? 忖度、実行された結果責任を彼らはどう
       考るのだろうか?あるいは、被害者(家族を含む)
の失われた基本的人権をどの
       ように救済、回復し、未来社会に担保されるべきなのか?未だに深い闇の中にあ
       る。
       

 

  

【再エネ百パーセント時代:固体リチウムイオン電池もトップランナー】

  

 日本で誕生したリチウムイオン電池は,携帯電話などの小型民生用に関しては韓国メーカーの後
塵を拝する状況となっていたが、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車,家庭用蓄電池など
の中・大型蓄電池の大幅な需要の拡大が見込まれ、安全性と高エネルギー密度,長寿命を兼ね備え
た革新的蓄電池であるバルク型全固体電池の研究開発が、日本の大学や企業において活発に進めら
れ成果報告が相次いでいる(上図ダブクリ参照)。たとえば、3月22日、広く普及しているリチ
ウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発される。東京
工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループは、リチウ
ムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見により実現
――
などの成果事例も報告されている。

 Aug 24, 2016

さらに直近の8月24日、光学ガラス専業メーカーの株式会社オハラは、酸化物系材料を用いた全
固体リチウムイオン電池で、マイナス30℃の低温下においても駆動する電池の試作・実証に成功
したと公表。
一般に全固体電池は界面抵抗が大きく、中でも酸化物系の無機固体電解質を用いたも
のは、低温下
の特性が低下する。電池を積層構造化することで、緻密で効率的な構造を持つ全固体
電池を作成し固体電解質に酸化物系固体電解質「LICGC」、正極と負極に酸化物系材料を用い、粉
末シートを積み重ね一括焼結。一般的な小型電子機器向けに使用される液体リチウムイオン電池で
は駆動が難しいマイナス30℃という低温下での駆動に成功する(上写真参照)。
 

また、この電池は電解液や一部の全固体電池で使用される金属リチウムを使用せず、200℃の高
温環境でも燃えず大気中で安定し、硫化物系の無機固体電解質を使用した全固体電池と比較し、安
価に製造できる特徴がある。今後、酸化物系固体電解質であるLICGCの固体電池への採用を進める
方針。今回試作に成功した全固体リチウムイオン電池は、現在小型電子機器に搭載され、電解液を
用いたリチウムイオン電池と置き換わる可能性があり
、17年にかけ課題抽出し対策をねり、19
年の電池部材の主流として、需要拡大が見込まれる住宅などの定置型蓄電池システムや電気自動車
向け電池向け市場での拡販を目指す。


ところで、同社の「積層シートの一括焼結製法」とはいかなるものか?「特許5144845 固体電池
株式会社オハラ 2013年02月13日
」(下図参照)ではつぎのようなもの。 

 【符号の説明】

10 固体電池 12 固体電解質 14 正極(図2においてはグリーンシートである) 16 負
極(図2において
はグリーンシートである) 18、20 酸化物 22 正極集電体 24 負極集
電体 26 リチウムイオン 



上図のように、固体電解質12、正極14、そして、負極16のグリーンシートがそれぞれ準備さ

れる。この固体電解質グリーンシート12の仮焼成体の両面(上図においては、固体電解質12の
上面及び負極16の上面になっているが、どちらでもかまわない)にジルコニア前駆体が有機溶媒
に分散した溶液を塗布し室温で溶媒を乾燥させた。作製した正極、負極グリーンシート仮焼成体を
固体電解質の両面に配置し、ホットプレスにて加圧しながら、加熱温度120℃で10分間保持し
た後、室温まで冷却した。その後、作製した積層体をジルコニア製のセッターに挟み、大気を入れ
た電気炉内において550℃で1時間、更に920℃で10分間の焼結を行い正極、固体電解質、
負極の一括焼結体を作製した。この一括焼結体の含水分量は150ppmであった。また、各電極
グリーンシートをそれぞれ積層せずに同条件で焼結体を得たところ、正極の空隙率は11%、負極
の空隙率は7%であった。


さらに、一括焼結体の上面であるコバルト酸リチウム表面に蒸着法にてAlを成膜し集電体を形成
した。また、チタン酸リチウム負極側にCuをスパッタリング法にて薄膜を形成し、集電体を構成
した。得られた集電体付き積層体を150℃で真空乾燥し、その後、露点温度-60℃以下のAr
雰囲気のグローブボックス内で、正極にAl箔を、負極にCu箔を集電リードとして乗せて、ラミ
ネートセルに封入した。得られた固体電池を室温にて2.7Vにて定電流-定電圧充電を行ない、
0.05mAにて放電したところ、正極活物質換算で115mAh/gの容量が得られるというも
の。

昨夜の「ナトリウム硫黄で蓄電池のマイクログリッド」に続いて「全固体電池:全固体リチウムイ
オン電池」の話。後は日本のお家芸である、「自在な高い品質でローコスト生産」でトップを走る
ことになる。これも面白い。

 

   

【帝國のロングマーチ 32】
 

               

● 折々の読書  『China 2049』50          

                                     秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
   

【目次】     

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣) 
 

       

   第11章 戦国としてのアメリ力 

                            釜底抽薪――釜底の薪を抽く

                           『兵法三十六計』第十九計 

把柴火从锅底抽掉,才能使水止沸。比喻从根本上解决问题(お湯が沸いている釜の底から薪を抜け
ば、釜の湯はいずれ冷める。そうなれば簡単に処理できるという理)。
 

   extracting the firewood from under the cauldron

 【第3段階】競争力を測定する

  戦国時代の多くの物語において、策謀家は戦略を選ぶ前に、力の均衡を慎重に判断する。こ
 れは、伝統的なアメリカのビジネスルール、「測れるものは改善できる」に通じる教えだ。シ
 ンプルな教えだが、意味は奥深い。改善しなければならないものをよく知らなければ、改善で
 きないということだ。競争で前を走る者を抜くには、自分がなぜ後れをとったかを知る必要が
 ある。毎年、中国はアメリカとの比較における自国の競争力を 分析している。なぜ、アメリ
 カも同じことをしないのだろうか。

  1986年に設立された非営利の米国競争力協議会は、アメリカの国際経済競争力の強化を
 目指しており、メンバーは企業のトップ、大学総長、全国労働機関の長、著名な研究機関から
 なる。この協議会の刊行物には、アメリカの製造業は遅くとも2017年までに競争力を失い、
 一方、中国は、政府が製造業と工業に多額の資金役人をするなどの理由から、トップに居続け
 るという予測が、詳しく書かれている(注2)。

  アメリカ政府も同様に、よりしっかりとアメリカの競争力を測定すべきだ。ホワイトハウス
 は連邦議会に、アメリカの競争力が主要なライバルと比べてどうかという予測や、その傾向を
 載せた年次報告書を提供すべきだ。情報コミュニティをはじめとする政府の多くの部署が、そ
 の作業に関わる必要があるだろう。対象とするのは、すべての国ではなく、中国をはじめとす
 る上位10カ国だけでいい。

 【第4段階】競争戦略を考え出す

  戦国の戦略ではしばしば、指揮官がどのように「修正」を受け入れて、競争相手より迅速に
 カを増していくかが語られる。重要なのは、戦略を変えるべき時を見極め、望む結果を得るた
 めに新たな戦略を断行する柔軟さである

  ウッドロー・ウィルソン国際学術センターのアメリカ/グローバル経済プログラムの部長で
 米国競争力協議会の元会長でもあるケント・ヒューズは、中国の技術力の進歩を、1957年
 にソ連が打ち上げたスプートニク人工衛星と比較した。スブートニクは、アメリカの技術的優
 位と軍事的優位への挑戦と見なされたが、それがアメリカの工学と科学教育への投資と、民間
 セクターの革新を促したことに、ヒューズは注目した。今のところ、中国の発展は、そのよう
 な強い反応をかき立ててはいない。ヒューズは、競争力を維持するための有望な提言をいくつ
 もした。その中には、民間セクターと公共セクターが協力して、競争力を高め、財政・金融改
 革、技術革新を進め、生涯にわたって学習する文化を創造するという提言も含まれており
 (注3)、それがアメリカの民間の研究開発を向上させた(注4)。同様に、元IBM副社長
 で、ニューヨーク大学に所属する著名な数学者、ラルフ・ゴモリーは、「アメリカの製造業の
 真の復活」を促進し、中国の「政府による土地やエネルギーの提供、科学技術への莫大な投資、
 低 金利あるいはゼロ金利の融資」に対抗することを提案する(注5)。米中経済安全保障調
 査委員会のパトリック・ムロイも、「全般的なこの状況は、アメリカの経済的優位や国の安全
 に長期的脅威を及ぼす」という理由から、新たな競争戦略の必要性について述べている(注6)。



  公共政策アナリストのロバート・アトキンソンとスティーヴン・エゼルは、アメリカの競争
 力を高めるための、複数の行政機関による計画を提案してきたが、党派の政治的思惑からそれ
 が妨害あるいは中止されることを懸念している。ふたりは保守的な人々にこう警告する。「右
 派は、世界を牽引するアメリカの軍事力がほんの少しでも傾けば敏感に察知するが、不思議な
 ことに、アメリカ経済の衰退が国の安全、特に防衛力を脅かすことには気づいていない」左派
 に対しては、「アメリカが新技術の国際競争で負けたら、『社会正義を前進させる』という自
 分たちの使命を達成できないことを左派の議員は知るべきだ」と忠告す(注7),

 【第5段階】国内で共通性を見いだす

  戦国時代のリーダーたちは、同盟国と親密な関係を結び、共通の目的のもと、たえまなく変
 わる協力体制を作り上げた,昔も今も、分裂は危険である。アメリカの対中政策を修正すべき
 だと主張する人は(政府の中にも外にも)大勢いるが、往々にしていくつかの党派に別れ、互
 いをライバル視している。少なくとも1995年以降、北京の中国人学者は、自国の対中政策
 を批判するアメリカ人は政治的見解の相違から分裂し、決して互いに協力しようとしないとい
 うことを、嬉々としてわたしに語ってきた。 中国に変化を期待するアメリカ人同士が手を結
 ぶという時代は、とうに終わった。

  これからは、中国政府の改革を促そうとするアメリカの有害で時代遅れなアプローチを変え、
 中国を変えていくために、アメリカ人は垣根を越えて大々的に手を結ぶべきだ。例えば、ダラ
 イこフマを支持する人は、国防総省の空海戦闘構想を後押しする防衛専門家と手を組むべきで
 あり、中国での人権保護を主張する人は、知的財産保護を求める産業界と連携する必要がある。
 さらには、「一人っ子政策」の修正を求める中絶反対グループは、連邦議会の民主主義を促進
 する組織と連携すべきだ。

 【第6段階】国家の縦の協力体制を作り上げる

  中国が南シナ海に関する要求を拡大し、フィリピンの漁船を脅し、ベトナムの地震石油探査
 船が敷設中のケープルを切断し、さらに、最近になって東シナ海に防空識別圏を設定したのに
 は理由がある。その一帯の豊富な天然資源を狙う中国は、近隣諸国が団結して中国の野望を妨
 害しないよう威嚇しているのだ。

  囲碁をしてもしなくても、敵の一団に囲まれたら危険だということはわかる。中国もまた、
 近隣諸国がそのような同盟を結ぶことを恐れている。アメリカはまさにそれを、モンゴル、韓
 国、日本、フィリピンなどの国々とともに進めるべきだ。そうした連携の脅威だけでも中国政
 府をためらわせ、その敵意を抑制できるかもしれない。中国は、アメリカとその同盟国がソピ
 エト連邦を封じ込めたことを知っている。アメリカが中国の近隣諸国への援助を強化し、協力
 を促していけば、中国は孤立し、取り残されたように感じ、タカ派がその責めを負うことにな
  るだろう。

 【第7段階】政治的反体制派を守る

  ソ連の崩壊を導いたのは、ソ連や東欧の反体制主義者で、彼らは検閲や宣伝工作、宗教迫害、
 経済的奴隷化が永遠に続く未来を拒み、戦った。その戦いの指導者はヴァ
ーツラフ・ハヴェル
 やレフ・ヴァウェンサ、アレクサンドル・ソルジェニーツィンら
だった。彼らは、勇気と情熱、
 信念を武器として、ソピエト連邦と鉄のカーテンを崩
壊させた。しかし、彼らは自分たちだけ
 でそれを成し遂げたわけではない。トルーマ
ンからレーガンヘと続く大統領たちが、彼らを
 擁護したのだ,彼らが投獄されれば、
アメリカの大統領がその釈放を要求した。彼らが資金を
 必要とすれば、アメリカ人が
送金した。彼らが政府に禁じられている発言をしようとする時に
 は、アメリカ人が印
刷機を貸し、彼らの戦いと信条を、ラジオ・フリー・ヨーロッパを通じて
 何百万軒も
の家に伝えた。 

  今日、中国は、仏教徒のチベット人と、イスラム教徒の新疆ウィグル人への迫害を強めてい
 る。チベッ
トでは、夜間外出禁止令を敷き、抗議者を逮捕し、罪のない一般市民を殺害し、ダ
 ライ・ラマの最近の言
葉によれば、その地域を「この世の地獄」に変えてしまった(注8)。
 新疆ではインターネットと電話回線が日常的に遮断されてい
る。さらに、チベットと新疆には、
 政府の支援によって漢民族が移住し、その割合が
劇的に増加している(注9)。

  中国はキリスト教徒も迫害している。一般に、外国人はパスポートを提示しなければ、教会
 の礼拝に出席できない。なぜか? 中国は無神論の共産党に支配されてお
り、政府は国民を国
 営でない教会から遠ざけたいと思っているからだ。多くの専門家
は中国には6千万~1億人の
 キリスト教徒がいて、その数は増えていると推定す
る(注10)。テキサス州に拠点を置く人権
 団体チャイナ・エイドの創設者で、代表でも
あるボブ・フー(傅希秋)は、中国人が信仰と自
 由を守るのを支援しようとしてい
る。この組織の目的は、法改正を進め、中国にある「家庭教
 会」に資金を提供し、服
役中のキリスト教徒を支援することだ,フーは、一人っ子政策に起因
 する暴力に焦点
を当てるとともに、中国のその他の人権活動も支援している,最近では、軟禁
 されて
いた盲目の人権活動家、陳光誠が自宅から脱出し、アメリカに渡るのを助けた(注11)。 

  1989年の天安門広場での虐殺を生き延びた反体制主義者、揚建利は、25年にわたって、
 中国政府に説明責任を果たさせるために戦っている。彼は中国国内の民主主
義擁護団体と、世
 界中の人権活動家と結びつけるための団体、「公民力量一を設立した
注12)。そうした活動
 を咎められ、5年にわたって収監されたが、釈放されたのは、
アメリカ両院と国連の満場一致
 の支持を得て非営利団体が働きかけた結果だ。彼の釈
放は、国外からの支援があるかないかで、
 反体制主義者の運命が大きく変わることを示している。楊を支えたのと同等の力で、アメリカ
 政府が中国の他の多くの反体制主義者を支えれば、彼らがどれほどの力を発揮できるか、想像
 していただきたい。

  下院議員のナンシー・ペロシが常にダライ・ラマを支持してきたように、ジョージ・W・ブ
 ッシュ大統領は中国における信仰の自由を拡大しようとするフーの努力を支持した。だが、残
 念ながら、オバマ大統領は支援を求めるフーの嘆願に沈黙で答えたそうだ(注13),オバマ大
 統領は、中国の人権問題を中国政府が気にかけている貿易関係などの問題と結びつけようとし
 なかった。オバマ政権は、2009年4月に胡錦濤国家主席と開催した「戦略経済対話」に人
 権を盛り込むことさえしなかったのだ
  アメリカ政府は、100年マラソン計画に立ち向かう時に、最も有力な陥力者になるであろ
 う人々のカを軽撹してはならない。
 


手に汗で本著の核心を読み飛ばす。次回は【第8段階】に移り、後2回で掲載は終了する。

                                      この項つづく 

  ● 今夜のアラカルト

【無花果とマンチェゴのクルトンハーブサラダ】 

●作り方:①ニンニクをパン表面にラビング(こすりつける)。②パンを大きく三角形にカット。
     ③中火でフライパンを加熱し、オリーブオイルを加え先程のパンを入れ、海塩、黒こし
     ょう、ハーブ(パセリ、タイム、ローズマリーチャイブまたはタラゴンなどみじん
     切り
混合)を加え3~4分をきつね色なるまで加熱する。④ニンニクと海塩をペースト
     にマスタード、蜂蜜、シャンパン酢、オリーブオイルを加え(泡立て器などで)混合し、
     エシャレットとハーブを加え混ぜドレッシングとする。⑤大きなボールに、ルッコラ
     
マスタードグリーンまたは水菜などのすこし苦みのある野菜を入れ、1/4カット
     の無花果と長方形にスライスしたマンチェンゴチーズを加え、④のドレッシングを振り
     入れ、さらに、③でローストしたクロトン(カットパン)を混ぜ皿に盛り合わせる。

     ※ 材料のアレンジは適当に!

 

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技術・経営・労働

2016年07月31日 | ネオコンバーテック

 

 

 




            どれほど自分を偉くしても、悟りを開いても最後の最後に、接近不可能な「空隙」がある。

                                  「吉本隆明さん、今、死をどう考えていますか?」

                                                                      講談社 2009.08

 

                                              
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

  May 24, 2016 inhabitat

Dubai debuts world’s first fully 3D-printed building

 



【ダッチオーブンで豚スネ肉の白ワイン蒸し】

分厚い金属製の蓋つき鍋のうち、蓋に炭火を載せられるようにしたものをダッチオーブンと言う。鋳鉄
製のものが一般的だが、アルミ合金や鋼板製・ステンレスのものもある。蓋は全体的に平らなデザイン
周囲に縁取りがあり蓋の上にも炭などの熱源を置くことができ、オーブンと同じように上下から同時
に加熱するこ
とができ、炭火を利用したローストチキンやピザ、パンなどの調理に適し、蓋をフライパ
ンのように用いることもで
きる。豪州ではキャンプオーブン、フランスではココット(と呼ばれ、南ア
フリカのポティーやバルカン半島のサッチ
もほぼ同じ構造。このオーブンを使いイタリアンな野外料理
を1つつくってみよう。

炭の力、鍋の重み、肉の昧、それぞれが存在感を主張しあっている。決して柔らかい肉質ではないが、
噛めば噛むほど肉らしい肉。オッソプーコという有名な料理は、牛スネ肉の筒切りの煮込み。いずれに
してもスネ肉は、硬いが、味のある肉であることは確か。肉屋さんに注文するときは、前足を骨つきカ
タズネ、後足をトモズネまたはウシロスネと呼ぶ、店頭にはない、手に入りにくい素材なので、早めに
注文した方が良い。

● 材料(4人分):骨つき豚スネ肉 4本(前足、後足いずれでも)、玉ねぎ 1/2個、ニンジン
  1/2本、セロリ 1本、ローリエ 2枚、ローズマリ・セイジ 少々、白ワイン 300CC、
  ブイヨン 400CC、オリーブオイル 大さじ4

● 作り方:①肉を覆っている硬い筋と脂を取り(A)、包丁のの先で肉をところどころ刺し、(B)塩、
  コショウをやや多めにすり込んで(C)、約こ分間おく。②銅に適当な大きさに切った野菜、香草類
  (D)をオリーヴオイルで炒めてから肉を入れ、さらに全体を炒める(E)。③肉に多少焼き色がつ
  きはじめたら、白ワインをかけ回し(F)、約10分間ふたをして蒸す。次にブイヨンを足し、ふた
  の上に炭をのせて煮続ける(G)。途中、煮汁をかけながら約1時間煮る。④食べる時は、肉の繊維
  に直角になるように薄く切り、煮汁を網でこしてソースとする。
 

 

 

5 Great Dutch Ovens: And 10 Recipes to Put Them to Work

 【即席露天風呂「ダッチハブ」登場】 

外の空気を吸って景色を楽しみながら入る露天風呂は、室内のお風呂よりも気持ちよさが数段違う、そ
もそも露天風呂がある家は見かけない。そんな露天風呂をどこにでも設置して入浴できる即席露天風呂
Dutch Hub」が市販。これが即席露天風呂のDutch HubDutch Hubはオランダのハンドメイド製品で、
風呂釜は色あせしないポリエステル製。燃料は蒔き(バイオマス)で外付けの熱交換器を加熱し、お湯
を沸かす構造。
 



風呂釜は高さ84×横170×縦260センチメートルで重さが約75キロメートル。650リットル
の水を投入可能で、水から38度のお湯を沸かすまでには約2時間かかる。お風呂は4人用で、コイルの
上にフライパンを載せると料理を作ることも可能です。Dutch Hubの価格は税込約60万円)。ただし、
記事作成現在ではオランダとベルギーへの発送のみ対応(日本からの注文を受け付けていまない)。

  Dutchtub Original | Collection | Weltevree

  Home | Weltevree

  

World's First 3D Printed House under Construction in Amsterdam

このように、オランダは国土文化を背景に、重商主義政策の基本となる、移動性前提とした、日用品、
ハウジング、
農作物の品質改良、農園経営、運河などの設計に長けている。これは日本も同様であるの
で参考になるが、「ダッチハブ」に関しては少々不満が残る。その1つは、大きさ、せめてハブ本体は
分割できないか、2つめは重いということ。例のナノセルロースファイバー樹脂で3次元プリンタで製
作できないということである(ナノセルロースファイバー樹脂製バネの製作はわたしにとって喫緊課題
である。こんなこと書くと中国と米国にすぐにパクられのでますいかな)。
 

   doi:10.1038/ncomms12265

【熱を流すだけで金属が磁石になる】

磁石の性質は熱の流れとは無関係で、温度を上げても下げても、磁石ではない金属が磁石になることは
ないと考えられていたが、世界で初めて熱を流すだけで、磁石ではない金属が磁石に変わる現象を観測
できたと東北大学の研究グループが発表。これまで、物質の持つ基本的な性質の1つの磁性は、電子が
持つ「スピン」と呼ばれるミクロな自転運動の軸が揃うことにより、マクロな磁気的性質(S極とN極)
が生じるからだと理解されてきた。また、電流と垂直な方向に外部から磁場を加えると、電子が磁場に
よる一方向の力でて曲げられに電子がたまることで、電流の流れと磁場の向きの両方に垂直な方向に電
圧(=起電力)が生じるホール効果に対し、磁石中の磁化に垂直な方向に電流を流したときに、磁化が
外部から加える磁場と同じ働きで、電流の流れと磁化の向きの両方に垂直な方向に起電力が生じる異常
ホール効果も発見されてきた。

さらに、磁性体に温度差を与えることによってスピン角運動量の流れ(スピン流)が生成される スピン
ゼーベック効果で、磁石ではない金属の薄膜を積んだ磁性体中に温度勾配を作ると、磁性体中をスピン
の流れ(=スピン流)が伝わり隣り合う金属へ流れ込み、電子のスピンと軌道の相互作用により上向き
スピンを持った電子と下向きスピンを持った電子が互いに逆方向に散乱することで生じる逆スピンホー
ル効果によって電圧に変換されることが発見されてきたが、これらの一連の現象は、理論的には、熱非
平衡状態で生じる磁化(非平衡磁化)上での振る舞いは実験では確認されていなかった。

  July 26, 2016 

今回の成果では、絶縁性の磁石であるYIG薄膜上に、磁石ではない金属の代表例として、金(Au)
薄膜を積んだ試料を用意し、YIG薄膜の側もしくは金薄膜の側を熱し、温度勾配がをつくり、熱が温
度の高い側から低い側に流れた状態で、外部から磁場を加えてYIG薄膜中の磁化を垂直方向に向け、
金薄膜に電流を流し、温度勾配の大きさに比例したホール電圧を測定する。このホール電圧は、外部磁
場に
比例し大きさが変化することから、温度勾配によって金薄膜中に磁化が生じることを示した。つま
りは、磁石ではない金属中に、温度勾配によって非平衡磁化が生じることを世界で初めて証明する。

た、測定ホール電圧から見積もった磁化の大きさは、単位体積当たり100万分の1電磁単位で、極め
て微小な磁化を電気信号として検出する。今回観測したホール効果は、磁性体が持つ通常の磁化による
異常ホール効果とは異なり、熱非平衡状態で生じた非平衡磁化で、「非平衡異常ホール効果」と命名す
る。

また、微小な磁化を電気信号検出できることで、さまざまな材料における熱非平衡状態の磁化特性を評
価・解明
する新しい磁化測定法に利用でき、磁化測定法の確立で温度勾配(熱流)と磁化との関係解明
――電子の自転「スピン」を使った熱利用技術――は、日常生活での廃熱熱を利用(=削減)する省エ
ネで緻密でたおやかな社会の実現に貢献するものと来されているが、太陽光(熱)や廃熱で発電するこ
とができる?なら新しいモータが誕生する。これは面白い。
 

【技術・経営・労働】

入社時はカラー受像器の部品製造の仕事に携わり、入社定年する10年前からコンピュータ通信画像処
理関連機器類製造の事業開発に携わった時代を振り返ると、激しく変化する技術革新のなかで、多方面
にわたり、問題解決に、結構、真剣に奔走してきたなと改めて思うことがある。その当時、社員の平均
年齢が28歳ということからも伺えるように、わたしの周りの人たちはキラキラしていた。会社経営が
思わしくなく倒産の危機にも見舞われたし、労働組合の総評運動で倒産会社の雇用危機反対する活動に
参加したりしていた。新しい局面にぶつかる度、自己啓発していくしかなかった。勿論、先輩たちのサ
ポートも有り難かったが、「できる限り少ないリスクで、最大の効果を出そう」と心に決めていた。だ
から、働く仲間だけでなく、経営サイドの考え方はもちろん、その社会・政治背景も、自分なりに理解
し、予測や仮説(仮構力)を立て行動してきた。だからこそ、いま社会で起きている問題の解決方法も
もてるのも、そんな経験が役に立っているのだろう。ただ、違うのは、20、30年前の変化スピード
より現在のスピードが幾何級数的に早い。これは、メリットも大きいが、デメリットの方がより大きい
ケースもあり得る。それでどうなんだ?と問われれば、例え人類が滅亡しても、残った地球上に生命が
繁殖するだけだと答えることにしている。これは話が大きすぎた。

                                          


 ● 今夜の一曲

goodbye holiday 弱虫けむし

 

   影では悪口言うよ。
   誰も彼も信じられず…孤独の空間
   それが僕にとって居心地よく

 

   良いことしてない
   だけど悪いこともするはずなく
   それでも何だか僕は後ろめたい気持ちになる

 

   背後で誰かが僕を大馬鹿だと噂してる
   笑われけなされそして追い込んでく…
   逃げ場もない……

   ささいなことでも
   すぐに絶望して苦しくなる
   曇ったため息ついた黄土色の……

   いつか見てろ(リフレイン6回)

   キレそう。
   時にはやはりキチガイです。通院する。

   被害者妄想なのに暴走する…止められない

   みんなの前なら余計昂奮する気がするんだ

   「ナイフでメッタ*し」

   なんて変な事が頭を過ぎる

   *り魔*人

   決して人ごとには思えなくて憎しみ…恨みのほど…躱せなくて怖くなった

   狂気を演じていたら

   現実にもおかしくなり

   いつでもどこでも

   実は狂いたいよ

   …狂いたいよ。


   母に抱かれた子供のように

   この夜だけは眠らせてネ

   安らかな気持ちで夢を見てる静かな時

   掻き乱すのさ

   邪魔をするのさ

   声が。

   いつか見てろいまに見てろいつか見てろいつか見てろいまに見てろいつか
   見てろいまに見てろいつか見
てろいまに見てろいつか見てろいまに見てろ

   弱虫毛虫な僕が・・・

   弱虫毛虫な僕が・・・

                          作詞/作曲 児玉一真                             

 

Goodbye holiday(グッバイホリデー)は08年に広島で結成された児玉一真、大森皓、福山匠、山崎晃
平からなる、ポップでロックな4人組バンド。15年4月にavexよりメジャーデビュー。愛称は「ぐっ
ほり」。広島で児玉が同大学の福山と高校時代の後輩の山崎(当時高校三年)と前ギターを誘い結成。
オリジナル曲を制作しながら学内やライブハウスで活動。10曲入り自主制作アルバムの販売も行う。
今年2月、メジャー1st Full ALBUM「with YOU」をリリース。 3月~4月、with YOU tour〜みんなひっ
つきもっつきじゃ〜を開催。4月、「奇跡の星」がテレビ東京系金曜8時ドラマ「ドクター調査班〜医
療事故の闇を暴け〜」の主題歌に。5月、「弱虫けむし」がNHKみんなのうた6月~7月度ラインナッ
プに。7月、「奇跡の星/弱虫けむし」をリリース。この「弱虫けむし」が、わたしに印象を与えたの
でブログ初掲載。最初、バンプ・オブ・チキンが歌っているのかと間違える。

 

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七夕に不貞寝の猛虎

2016年07月07日 | ネオコンバーテック

 

                       

              わたしは、どのように小さい闘争であれ、また、大きな闘争であれ、発端の
       盛り上がりから、敗北後の孤立裏における後処理(現在では闘争は徹底的に
       やれば敗北にきまっている)にいたる全過程を、体験したものを信じている。
        

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

二期咲きのグラハム・トーマスの横には色鮮やかに凌霄花 (のうぜんかずら:Trumpet creeper)が咲綻
ぶ季節だが、花の命は短くて、掃除が大変だと言いつつ、箒とちり取りを残したまま買い物に出かける
日常の一齣を切り取る

【波形超界面工学の此岸:波形選択無線多元アクセス方式】


上図の従来の無線アクセス方式の(a)周波数分割多元アクセス方式、(b)時分割多元アクセス方式、
(c)符号分割多元アクセス方式で、FDMA方式は周波数軸(f)上において各ユーザの通信信号を
分割し多重化を実現、TDMA方式は時間軸(t)上において各ユーザの通信信号を分割し多重化を実
現、CDMA方式は符号軸(拡散符号など)上において各ユーザの通信信号を分割し多重化を実現する。
尚、周波数軸(f)、時間軸(t)および符号軸(拡散符号など)の3軸は、直交(独立)するため任
意の組み合わせが可能となる。これを実現した例として、上図10に示すOFDMA方式があり、OF
DMA方式は、直交サブキャリアによるFDMA方式+TDMA方式で、各ユーザの通信信号を分割し
多重化を実現する。特に同一周波数帯を複数のユーザ無線通信の無線多元アクセスする場合、多岐に渡
る研究が取り組みまれ、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、OFDMA方式等で無線周波数
資源を分割し多重化――携帯電話のセルラネットワークを始めとして多元アクセス――が行われていが、
周波数軸(f)、時間軸(t)、および符号軸(拡散符号など)の3軸を利用する方式は、周波数利用
効率が理論的限界に来ている。また、近年携帯電話やスマートフォンなど等の通信端末や無線LAN等
が爆発的に増加するなか、このような無線通信の利用拡大を背景に周波数資源の枯渇が心配され、周波
数資源枯渇のためによりさらなるユーザ多重化方式が求められている。

そこで、下図のような先行技術が参考となる。この事例は、通信を行う電子機器を高電力信号から守る
ため、非線形に表面電流、または表面波を吸収するメタサーフェスが提示されているが、現実的に高電
力信号は、インパルス的な短いパルス幅の電波となり、このメタサーフェスは、短いパルス幅の電波を
吸収し、長い電波を透過させるもので、通信機器外郭に取り付けられ、通信機器を保護するもので、通
信自体に用いられていない。


Waveform-Dependent Absorbing Metasurfaces DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.111.245501

名古屋工業大学の研究グループは、新規な電磁界特性「波形(パルス幅)選択性」を用いた、全く新しい
無線多元アクセス方式で、電磁界特性(透過・吸収など)の周波数だけでなくパルス長(信号励振時間)
により変化させることのできる新たな電磁界現象を使い、新規無線多元アクセス方式を開発し、従来の
多元アクセスの分割軸である周波数、時間、符号に「波形軸」を追加させ、これまでの通信理論の限界
を突破する(1)周波数利用効率の実現や、(2)枯渇しつつある無線周波数資源の飛躍的拡張を実現
する。つまり、従来の通信システムにおける周波数、時間、符号の3軸に、パルス幅選択性の概念(波
形軸)を導入し、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯域においてパルス幅による波形選択を
行う波形選択フィルタを用いた多重化した通信システムおよび通信端末を新規呈示する。これはまた新
しいステージに誘う工学だ。

 
「特開2016-119646  波形選択フィルタを用いた通話システム、通信端末」

【要約】

従来の通信システムにおいて、送信側にパルス時間波形制御器10、および受信側に波形選択フィルタ
20を有することを特徴とする通信システム1により、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯
域においてパルス幅による波形選択フィルタによる多重化した通信システム1を提供する。また、パル
ス時間波形制御器10および波形選択フィルタ20を電気的に接続して通信機能として一体に設置する
ことにより、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯域においてパルス幅による波形選択フィル
タによる多重化した通信端末2を提供することで、
送信側に変調器12、受信側に復調器16を有し、
多重アクセス通信路30を介して通信を行う通信システム。または、送信側に変調器12および周波数
変換器14、受信側に復調器16および周波数変換器14を有し、多重アクセス通信路30を介して通
信を行う通信システムの提案(下図6)。

 【特許請求範囲】

  1. 電波の励振時間であるパルス幅を特定のパルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末
    と、前記送信側通信端末が送信した前記電波を受信する受信側通信端末と、を備え、前記受信側
    通信端末は、波形選択フィルタおよび受信部を有し、前記波形選択フィルタは、前記特定のパル
    ス幅の前記電波を選択的に透過または反射し、前記受信部は、前記波形選択フィルタが透過した
    前記特定のパルス幅の前記電波を受信する、通信システム。
  2. 前記波形選択フィルタは、導電性部材と、前記導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、RL回路
    およびRC回路のうち一方または両方を備え、前記RL回路は、インダクティブな成分を持つ回
    路素子および抵抗成分を持つ回路素子を有し、前記RC回路は、キャパシティブな成分を持つ回
    路素子および抵抗成分を持つ回路素子を有し、前記波形選択フィルタは、電波の励振時間である
    パルス幅によって電波の吸収率が異なることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
  3. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形制
    御器と、周波数領域での多重化を行う送信側周波数変換器と、を有し、前記送信側通信端末によ
    って送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に制御され、
    かつ、前記送信側周波数変換器によって周波数領域での多重化が行われており、前記受信側通信
    端末は、前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波のうち、特定の周波数
    領域の信号を選択的に受信する受信側周波数変換器を有することを特徴とする請求項1または2
    に記載の通信システム。
  4. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形制
    御器と、アクセス時間での多重化を行う送信側アクセス時間制御器と、を有し、前記送信側通信
    端末によって送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に
    制御され、かつ、前記送信側アクセス時間制御器によってアクセス時間での多重化が行われてお
    り、前記受信側通信端末は、前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波の
    うち、特定のアクセス時間の信号を選択的に受信する受信側アクセス時間制御器を有することを
    特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
  5. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形
    制御器と、拡散符号領域での多重化を行う符号拡散器と、を有し、前記送信側通信端末によって
    送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に制御され、か
    つ、前記符号拡散器によって拡散符号領域での多重化が行われており、前記受信側通信端末は、
    前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波のうち、特定の拡散符号で信号
    拡散された信号を選択的に受信する符号逆拡散器を有することを特徴とする請求項1または2に
    記載の通信システム。
  6. 電波の励振時間であるパルス幅を特定のパルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末
    から、前記電波を受信する受信側通信端末であって、波形選択フィルタおよび受信部を有し、前
    記波形選択フィルタは、前記特定のパルス幅の前記電波を選択的に透過し、前記受信部は、前記
    波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波を受信する、受信側通信端末。
  7. 送信する電波の励振時間であるパルス幅を制御するパルス時間波形制御器を備えたことを特徴と
    する請求項6に記載の受信側通信端末。
  8. 電波の励振時間であるパルス幅が特定のパルス幅となっている前記電波を選択的に受信する受信
    側通信端末に前記電波を送信する送信側通信端末であって、前記電波のパルス幅を前記特定のパ
    ルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末。

 

 

● 七夕に不貞寝の猛虎

6日、ジャースの前田健太投手が、本拠地でのオリオールズ戦で代走デビュー。前日5日には4回4失
点で今季6敗目を喫したが、この日は“足”でチームに貢献した。試合は延長14回までもつれたが、
ドジャースが4-6で敗れた。4-4の同点で迎えた8回、1死から8番エリスが四球を選ぶと、ロバ
ーツ監督は審判に代走を告げる。姿を現したのは、なんと前田! 一塁線に沿って軽やかなダッシュを
繰り返して準備を進めた前田は、アットリーが放った右翼への二塁打で快足を飛ばして三塁まで進んだ
が、後続が倒れて生還することのない「初夏の夢と帰した」というが、さすが、ショーマン・シップの
国、ア・メ・リ・カだと感嘆する。さて、さて、である。



“超改革”をテーマに掲げ、ドラフト1位ルーキーの高山俊を開幕1番に抜擢。横田慎太郎や北條史也
ら若手選手を次々に抜擢、開幕当初はフレッシュなパワーで勢い良く飛び出した"
我がタイガース"――
"我が"など厚かましい"エセ・タイガース・ファン"であるが、テレビ観戦途中で民放は非情にも打ち切
るためそうならざるをえない。いや、だからこそ理性的になり細々と細々なファンとして今日に至るの
だが
徐々に順位を下げ7月に入りヤクルトに逆転を許し、単独最下位に転落。ここまで79試合を消
化し、34勝43敗8、勝率は0.447。原因はとにかく貧打。
チーム打率0.241は、12球団で
ワースト。加えて本塁打42もリーグワースト、
防御率は3.64から3.61で先月は3.44と月を追
うごとに改善されていっている中で打率0.231と歯止めが止まらない。
中でも不安なのが、これまで
チームを牽引してきた鳥谷敬の不振。プロ入りから12年に渡って2割後半から3割のアベレージを安定
して残してきた男が、今季はまさかの打率0.233と大不振。


今宵は七夕。「七夕の宵に不貞寝猛虎 」と一句もまた一興かと、いつか優勝と願かけ希つなぐ"似非ファ
ン"。

 ● 今夜の一曲

Glass Onion / The Beatles  

I told you about strawberry fields
You know the place where nothing is real
Well here's another place you can go
Where everthing flows
Looking through the bent backed tulips
To see how the other half lives
Looking through a glass onion 

I told you about the walrus and me-man
You know that we're as close as can be-man
Well here's another clue for you all
 The walrus was Paul
Standing on the cast iron shore-yeah
Lady Madonna trying to make ends meet-yeah
 Looking through a glass onion
Oh yeah, oh yeah, oh yeah
 Looking through a glass onion
 

I told you about the fool on the hill
I tell you man he living there still
 Well here's another place you can be
 Listen to me

Fixing a hole in the ocean
Trying to make a dove-tail joint-yeah
 Looking through a glass onion 

グラス・オニオンは、68年に発表されたビートルズのイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビ
ートルズ』、通称ホワイト・アルバムに収録されたレノン=マッカートニー作の曲。このアルバムで初
めてリンゴ・スターが登場。彼の威勢のいいドラムで曲は始まり、続いてポール・マッカートニーの
4001Sによる硬く締まったベースが続く。全編におけるストリングスのアレンジはジョージ・マー
ティンによる発案。

 

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イントロダクション X

2016年06月20日 | ネオコンバーテック


 
  

   

        会社を定年になって、男女の性が介在しないままにもうひと山もふた山も時間が続いていく。
            老齢化
社会と言うか超老齢化社会です。ひと昔前だったら、盆栽いじって孫の守をしていり
       ゃいいじゃねえか
ということだったんだろうが、そんな条件ないよね。大変だな、見当つか
       ねえな、という問題が消費社
会のなかでせりあがっている。

                                     「海を流れる河」  岩波書店 2009.04


                                         
                              Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

 【おしまいの断片・考 Ⅲ】 

   イントロダクション


                                          テス・ギャラガー
                                           村上春樹 訳 

   本書の最後のセクションは、自分の病状がどんどん悪化し、死へと向かっているということを彼がだんだ
 ん自覚していく過程を扱っている。前にも述べた『GRAVY』の中で、自分が以前にほとんど死にかけて
 いたとレう記憶を語ることによって(1976年から77年にかけて彼はアルコール中毒のためにもう少し
 で命を落とすところだったのだ)、レイは今ここにある死の持つ破滅的な意味を、べつのものに置き換えて
 いる。要するに、彼はきたるべき自分の死を、かつての死からの脱出のあかしとして捉えたのである。そし
 て、自分は十年に渡る実り多き歳月を余分の恩恵として与えてもらったのだと考えてみれば、死というもの
 もまた違った様相を帯びてくるものではないかという境地に彼は達したわけだ。それでもやはり、このセク
 ションの導入の役割を果たしているチェーホフの二つのパッセージ(『虫のしらせ』と『雀の夜』)は彼の
  内心のパニックを示している。『医者は言った』における事実そのままの描写や、『目覚めよ』における死
 の「予行演習」と並んで、そこには『プロポーズ』の挑むような姿勢もあり、また最後のお別れのリハーサ
 ルとしての二扁の詩『いらない』『大枝の向こうに』もある。レイが死んでから三週間後のことだが、彼の
 最後の校正(私たちがアラスカに最後の旅行をする前に彼はそれを済ませておいた)を原稿に書き込んでレ
 るときに、私ははっと気づいたのだ。レイの亡くなる前夜、私が無意識のうちに、『いらない』に記されて
 いるのとまったく同じ行動をとったのだということに。いつもなら「おやすみ」の指示を意味した三つのキ
 スは、レイがそのまま目を覚まさないという可能性を含んでいた。「大丈夫よ」と私は言った、「ゆっくり
 お休みなさい」そしてしばらくして「愛してるわ」と。「僕も愛しているよ」と彼はそれに対して言った。
 「君ももうゆっくりお休み」それっきり彼はもう二度と目を覚まさなかった。そして翌朝の六時二十分、彼
 は息を引き取った。

  セルフ・ポートレイトとも言うべき『残光』の中で、「気取って」斜にくわえられた煙草は、これが最後
 の一瞥にしてしまった状況を茶化しているかのように見える。この作品ではカーヴァーは、もっと能力のな
 い作家だったら、ここから哀しくも剌のある小さな帝国を切り出していったのかもしれないところを、彼に
 してはぎりぎりまでアイロニーの地点に接近している。最後の詩である『おしまいの断片』の中ではその声
 はより高められたコーダを獲得している。生きる努力、書く努力の核心は、慈しみ愛されたいという求めの
 中にあったのだし、そしてその求めを自分に叶えてやっていいんだという気持ちは――「自らを愛されるも
 のと呼ぶこと」そしてまたもっと進んで「自らをこの世界にあって愛されるものと感じること」――これで
 なんとか達成されたのだという認知が、そこにはある。アルコール中毒から立ちなおった人間にとって、こ
 の自己認識や、そして自らの心の中に育ませたより普遍的な愛の心は、決して小さな達成ではない。彼は自
 分が恩寵を受け、祝福されたのだということを承知していた。そしてまた自分は書くことによって、自分自
 身や作品の中で描いてきた人々が置かれていた往々にして苛酷な世界を遥かに超えたところに到達すること
 ができたし、そしてまた自分の書いたものを通してワーキング・クラスの生活が文学の一部に組み込まれる
 ことになったのだ、ということも承知していた。彼のタイプライターのそばには、こう書かれた紙片が置い
 てあった。「こんな思いつきに一人酔っているのを許してほしい、でも僕はいま実にこう恩ったのだ。僕が
 書く詩はどれもみんな『幸せ』という題で呼ばれるべきだと」そして彼は、その早すぎる自らの死を決して
 承服しなかったにもかかわらず、長い夏の夕暮れに、我々が二人の作家として、愛する者同士として、また
 助け合う人間同士としてともに過ごした人生について語り合うあいだ、その感謝の念に満ちた静けさをいつ
 も変わることなく維持しつづけた。

  六月の半ばまでには彼の最後の本も出来上がり、私はそのためのタイトルも見つけていた。タイトルは初
 期の詩である『仕事を探そう』の中からとった。タイトルについてあれこれ討議はしなかった。何も言わな
 くても、私たちには、それが正しいものであることがわかっていた。結婚式のあとで我々は信じられないよ
 うな素晴らしい贈り物を受け取っていて、それが我々のタイトルの選択に影響を及ぼしていたのだと思う。
 二人の友人であった画家のアルフレード・アレギンは大作にかかりきりになっていたのだが、その絵につい
 てのミステリアスで興味しんしんの情報は、彼の奥さんであり、やはり画家のスーザン・ライトルの口から
 時折、我々のもとにもたらされていた。我々の結婚披露宴の前日に、アルフレードとスーザンが車の屋根に
 絵をくくりつけてやってきた。私たちの居間の壁にかけてみると、それは勢いの良い、様式化された滝に向
 かって宙を飛んでいる何匹もの鮭を描いた絵であることがわかった。空にはレイが「幽霊鮭」と呼ぶところ
 のものが、雲のかたちに組み込まれて、本物の鮭とは逆の方向に向かって進んでいた。背景の岩にもまた、
 前歴史的な眼が埋めこまれ、生命が宿っていた。

  毎朝、私たちはその絵の前でコーヒーを飲んだ。レイはよくそこに日がな一日座り込んで、一人で瞑想に
 耽っていたものだった。今それをみると、彼独特の鮮やかな生命力は、私たちの家のすぐ下を流れる川で年
 ごとに繰り広げられていた、あの歳月のひと巡りのページェントの中に埋めこまれているように私には思え
 る。その絵の中では魚は上流へと向かっている。必死の形相で水面から宙に飛び上がり、光に向けて果てる
 ことなく身を曲げている。そして彼らの頭上には幽霊鮭たちが、逆流に妨げられることもなく、苦闘からも
 解放されて、のんびりと浮かんでいる。

  二人にとっての最後のフィッシング旅行となったアラスカ行きでは、本の完成を祝って、そして私たち自
 身を祝って、レイと私はペリエのグラスをあげて乾杯をした。完成できるかどうかおおいに危ぶまれたこの
 本を、私たちはなんとか二人で仕上げることができたのだ。本の最後の仕上げにかかっているとても大事な
 時期に、ちょうど何人かの長逗留の来客があり、またレイの息子がドイツから訪ねてきていた。それでも我
 々は、一日を細切れにして仕事をつづけ、ようやく完成へと持ち込むことができた。「本ができたことを彼
 らには黙っていよう」とレイは私に言った。彼らというのは来客たちのことである。「君にここにいてもら
 いたい」そしてその本が、病魔の襲来までの-結局それが最後の襲来になったわけだが――何日かの貴重な
 午前中を私たち二人だけで水入らずで過ごすための口実となった。来客が帰ったあとで、私たちは片っ端か
 ら電話をかけてまわり、なんとかしてロシア旅行の段取りをつけようとした。チェーホフの墓参りをしよう、
 ドストエフスキーとトルストイの家を訪ねようと。私はアフマトーヴァに関連したいくつかの場所を見つけ
 たかった。

 現実となることはなかったにせよ、その最後の日々に立てたそんな旅行計画は、私たちの気持ちを盛り上げ
 てくれる夢の旅に他ならなかった。レイが病院に収容されたあとで、私たちは二人でそのことを話した。も
 し実現していたら、これは素晴らしい旅になっていたのにね、と。「私は行くわよ。あなたのぶんまで行く
 わ」と私は言った。「君より先に僕が行くさ」と彼は言ってにやっと笑った、「僕の方が身軽だからね」八
 月の二日にレイがポート・エソジェルスの家で息を引き取ったあと、何週聞にもわたってレイの死を悼む手
 紙や葉書が世界じゅうから文字どおり山のように寄せられた。そこに書かれたことがらに私の胸はしばしば
 激しく揺さぶられた。彼らとレイとの出会い(それがほんの短い出会いであっても)、彼がロにしたこと、
 彼の行ったちょっとした親切、私が彼に出会う以前の彼の物語。新聞の追悼記事も全国から私のもとに送ら
 れてきた。そしてある日、ロンドンからの小包を開けると、「サンデー・タイムズ」の追悼記事が出てきた。
 そこには 上着のポケットに両手をつっこんだレイの写真が掲載され、その上の見出しにはただひとことこ
 う書いてあった、「アメリカン・チェーホフ」と。「ザ・ガムアィアン」の方には所有形が使ってあった、
 「アメリカズ・チェーホフ」。私はレイと二人で一緒にそれを見ているような気がした。そして彼にもこれ
 はちゃんと通じているんだと身のうちに感じた。まさに叙勲ともいうべきそのどちらの見出しを実際に前に
 したとしても、レイは謙遜に身をちもこませつつも、それでもやはり無上の幸福に浸ったことだろう。

  最後に、レイが自分の詩作を、小説の執筆に飽きたときにときどき休憩がわりに戻ってくる単なる趣味と
 か気晴らしという風に見なしてはいなかったということに是非触れておきたい。詩は魂の必要な行き場であ
 ったのだ。彼が詩作を通してたどり着いた真実は、彼が初期に敬愛していたウィリアムズさえもが想像しえ
 なかったほどの、技巧の放棄を物語っていた。彼はミゥオシュの『詩学?』の中の数行を読んで、それに感
 じ入ったものである。


  私はいつももっと広々としたフォームを求めてきた。
  詩とか散文とかいったせせこましい区別から自由になって、
  作者や読者を崇高なる苦悩の前に栖すことなく、
  私たちが互いに理解しあえるようなフォーム。
  詩のいちばん根本の部分には野卑な何かがある。
  自分の中にそんなものが存在していたなんて知らなかったものが出てくる。
  私たちは目をみはる。まるで虎がそこから飛び出してきて、
  光の中に立って、尾をさっとうち振っているみたいに。


  レイは虎を隠れ場所から追い立てるために、自分の詩作を利用した。それに加えて、彼は自分の執筆生活
 を、読者に製品を提供するためのものだという風には見なしていなかった。
  そして時折彼は、短篇小説を書くようにという外部からのプレッシャーがあるとわざとそれを無視した。
 彼はなんといっても短篇小説の書き手として名をなしていたし、出版のことを考えても読者のことを考えて
 もそこがいちばん「おいしい」分野であったにもかかわらずだ。
 彼はそんなことは気にもしなかった。彼はミルドレッド・アンド・ハロルド・シュトラウス文学賞――これ
 は散文の作家のみを対象とする賞である――を与えられたとき、彼はすぐに机の前に座って二冊の詩集を完
 成させた。彼は「キャリアを築いていく」ことなど考えもし 心なかった。彼は天職を生きていたのであっ
 て、それゆえに、詩であれ散文であれ、彼の書くものはみんな内なる声に結びついていた。そしてその声は
 時を追うごとに、何の仲介もなしに主題を語ることをますます強く求めるようになっていった。そして詩こ
 そが、もっとも良くそれを可能ならしめるフォームだったのである。

  晩年のレイがあまりにも多くの時間を詩作に当てたことで、レイの小説は好きだが詩の方はどうもという
 人々は、あるいは彼がどうかしてしまったのではないかと思いたくなるかもしれない。しかしそれでは、レ
 イの詩がこの情念を失った時代に向けて差し出している見事に新鮮なるものを、見逃すことになるだろう。
 この国においては、詩人の貢献に対しての評価は、小説作家にふんだんに向けられるそれに比べて大きく立
 ち遅れているから、レイの詩人としてのインパクトが正当に評価されるまでには、まだ少しの歳月が必要と
 されそうである。今までのところ、彼の詩作についてのいちばん鋭い評論は「ミシガン・クォータリー・レ
 ヴュー」1988年春号)に掲載されたグレグ・クズマのものだろう。レイは短篇小説を再生させる上で大
 きな貢献をなしたわけだが、それに負けず劣らず、彼自身のやり方で、詩というものがどのような形を取り
 うるかということを問いなおす上でも大きく貢献したのだと言うことができるだろう。何はともあれ、彼は
 その最後の十年間を通じて、これを書きたいと自分が思うものを書き、自分がこう生きたいと思う人生を生
 きた、それだけは確かだ。

  彼の人生における同伴者として私は、彼がその旅路を通して詩を育みつづけることに対して自分かいさ
 さかなりとも手助けできたことを、とても嬉しく思っている。彼のあまりにも早すぎる旅立ちにおいて、彼
 がそこからそれこそ貪るように引き出していた慰めと生気のことを思えばなおさらのこと。

今回で「イントロダクション」は終了することになる。「レイは虎を隠れ場所から追い立てるために、自分の詩
作を利用した」とテス・ギャラガーが作風を解説する件で、何て、浅はかな理解しかできていなかったのかと、
極度な眼精疲労中で読み進めるなかで混乱し自責し、これまでワレットにしまってきた紙幣のように一篇、一篇
を放蕩、散財するのは惜しいと、かすみ目状態で読み返している自分がいる。
  
                                          この項つづく




【イントロダクション X:再エネ電動飛行機時代】
 



NASA claims progress on hybrid plane engine

● 電動飛行機、NASAが開発へ 

米航空宇宙局(NASA)は17日、化石燃料を使わない次世代の電動飛行機「X―57」(通称・マクスウェ
ル)の開発に乗り出すと発表した。従来の飛行機より大幅にエネルギー効率がよく、騒音や二酸化炭素の排出も
劇的に減らせるとしている。来年中にも試験機の打ち上げを目指す。NASAは、今後10年をめどに燃費や安
全性を大幅に高めた次世代飛行機を開発する計画を進め、X―57はその中核の一つ。細長く伸びた左右の主翼
に取り付けた計14個の電動モーターでプロペラを回して飛行する。19年には、9人乗りの小型機の実現を目
指す。乗用車のエンジンの約5倍の出力が必要で、高性能モーターなどの開発が焦点になる。NASAによると、
電動飛行機はエンジンを使う従来機と比べ、高速で飛ぶときにも効率よくエネルギーを使えることから、高速飛
行と省エネを両立できるという。運航コストは従来機の6割ほどに抑えられるとみている。通称のマクスウェル
は、電磁気学を確立した英物理学者にちなんだ。ボールデン長官はワシントンであった講演で、「新しい航空時
代を切り開く第一歩となる」などと述べる。

NASA Announces New Electric Airplane

欧州航空防衛大手エアバス・グループとドイツの総合電機大手シーメンスは4月、航空機にも利用可能な電気も
しくはハイブリッド型エンジンの開発に共同で計200人のエンジニアを充てる計画を発表した。ハイブリッド
型はトヨタ自動車のプリウスに搭載されているのと似たものが想定されている。尚、化石燃料に頼らない飛行機
の話題では、太陽電池を動力源にした「ソーラー・インパルス」が今年4月、太平洋上空を2日半かけて飛び、
米カリフォル
ニア州内に無事着陸していた。同機の飛行速度は時速30~40マイル(時速約48~約64キロ)。
一方、X―57の場合は
時速175マイル(時速約282キロ)に達すると予想されている。ここでも、再エネ
百パーセントのイントロダクションは、欧米が選考している。

 





【イントロダクション X:再エネ素材CNF時代】


※ 京都大学 矢野浩之教授


先日、いつものバーバーショップ『多美理容室』で床屋談義していると、鉄より5倍強くて、5倍軽い夢の素
といわれるセルロースナノファイバー(CNF)が話題に上る。というより、マスターが偉く感心して話して

れるので、どこまで、実用化してきているのかネットサーフしてみる。もっとも、このブログでも掲載している

が(『武闘依存症の行方』2013.01.21など)、この分野の研究で世界をリードしているの日本だが昨年9月29
日には、森林分野のノーベル賞といわれる「マルクス・バーレンベリ賞」を磯貝明東大教授ら日本人研究者3人
が受賞。特定の酸化反応を使い、木材繊維を20分の1以下のエネルギーでナノレベルまでほぐす方法――N-
オキシル化合物によるセルロースの表面酸化反応を利用し、最大繊維径1000ナノメートル以下で数平均繊維
径が2~150ナノで、セルロースの水酸基の一部がカルボキシル基およびアルデヒド基からなる群から選ばれ
る少なくとも1つの官能基に酸化され、またセルロースI型結晶構造を有する微細セルロース繊維(「特開2008-
001728  微細セルロース繊維 」)など――を発見したことが評価されている。

実用化動向では、製紙関連企業では、日本製紙クレシアからCNFのシートを挟み込んだ大人用紙おむつを1日
に発売しているし、王子ホールディングスは13年にCNFの透明シートを三菱化学と共同開発するなど事例が
徐々に増えてきている。もっとも、CNFは夢の素材といわれる分、技術的課題も多く、樹脂とCNFをなじま
せることは、水と油を混ぜるようなもので、また、現在の製造コストは1キロあたり数千~1万円と、炭素繊維
の3000円程度より高いが、価格は量産効果で一気に下がる可能性がある。実際、20年ごろには1000円
程度まで下がるとの予測があるほか、潜在的には500円以下に抑えられると言われるが、『スマートキャンテ
ィ構想』(ドライマウスからスマートキャンティ」2015.02.06)あるいは『ゼロ廃棄物工学の此岸:木質バイオ
マス粘土革命』([木質バイオマス粘土革命」2016.05.20)としてブログ掲載しているように三次元プリンターな
どを使い、自動車、飛行機、船舶、メガフロート、ハウジング、橋梁、タンクなどコンクリート・鉄鋼 との代替
できそうだ。エレベーターなどのワイヤー・宇宙エレベータへの用途も含め限りなく展開できそうである。こん
なおいしい話はめったにない。

  


 ● 今夜の一品

また、1つ世界を席巻す雲丹醤油という「調味料」が誕生している。液体・パウダー・固形とバイオーションは
様々。寿司、パスタ、刺身、スープ、ラーメン、うどんと醤油・味噌料理のレシピに広がりをあたえる。

 

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