極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギー革命元年Ⅱ

2018年04月16日 | ネオコンバーテック

      
                                     

9 行  軍

狭い意味の「行軍」ではない。車を戦場にすすめる場合の基本がここに述べられている。な
かでも現象によってその本質を見破る観察法はするどい。

人心把握
部下は数が多ければよいというものではない。むやみに進撃することをつつしみ、力を集中し、
情をよく把握できてはじめて勝利が得られるのだ。将たる者がここに思いを致さず多数を
たのんで
敵を斜視するならば、逆に捕排にされることは必至である。多数の兵士を掌握する
場合、罰
についてはとくに注意しなければならない。すなわち、部下がよくなじんでいない
うちに、わずかの過失があったからといって、これを罰するならば、その部下は心服
しない
心服しない者は使いにくい。逆に、すっかりなじんでいて、過失があってもこれを罰しない
ならば、押れてしまって使いにくくなる。したがって、部下に対してはつねづね、温情をも
ってあたると同時に、威厳をもって軍紀を整えて
こそ必勝の態勢ができあがる。平素から命
令が行なわれていれば、いざというときにも人民は服従する。逆に、平素から命令が行なわ
れていな
ければ、いざというときにいくら説教しても人民は服従しない。つねづね、人々か
ら信じら
れている者こそが、人々とともに成果を期し得るのである

部下の掌握 部下の掌握については、『孫子』の各篇で触れられているが、ここでは、

①部下の致が多い少ないということが問題ではなく、一致結束しているかどうかということ。
②剖というものは、一定の条件を前提として、考えなければならない。必要なのに剖しない
と、統制を乱すこと。
③仁と威の両面が必要であること。
④平素から正しい管理が行なわれていなければ、いざという時に及んでも用をなさないこと。
……を説いている。

   
高橋洋一 著 『戦後経済史は嘘ばかり』   
 

第6章 不純な「日銀法改正」と痛恨の「失われた20年」
第1節 「失われた二十年」の原因は何か?

前章で見たように、日本銀行が「「資産価格」と「一般物価」を分けて考える」という金融
政策のセオリーに反して、二般物価」が問題ある水準ではなかったのに金融引
き締めを行っ
た結果、日本経済はどん底に叩き込まれることになりました。そして、そ
れが間違いだった
ことを認めたくないとばかりに引き締めに固執したために、「失われ
た二十年」といわれる
デフレの泥沼にはまってしまったのです。

1980年度からバブルが崩壊した1991年度までの平均経済成長率は「名目で6・3%
実質で4・3%」だったのに対し、1992年度から2011年度までの平
均経済成長率は
「名目でマイナスO・1%、実質でO・8%」と、大幅に落ち込んでし
まいました。日本が
低成長率に甘んじていた期間も、アメリカ、イギリス、ドイツ、フ
ランスなどの欧米各国は
年3~4%の成長率であり、日本だけが苦境にあえいでいるよ
うな体たらくです。

なぜ、そのようなことになってしまったのか。本章で、「失われた二十年」の謎を解き明か
していくことにしましょう。
そのことを考えるにあたり、まず最初に、「失われた二十年」
の原因について考えて
みたいと思います。これまで幾度も述べました通り、私は「失われた
二十年」の原因は、日銀の金融政策の失敗(不必要、かつ過度の金融引き締め)にあると考
えています。しかし世の中には、様々な理由を並べる人たちがいます。たとえば、ざっと次
のようなものが菓げられるでしょう。

・不良債権が足自になった
・づフンスシート不況になった
・IT投資、デジタル化に出遅れ、生産性が上がらなかった
・ゾンビ企業が生き残り、イノベーションに後れをとった
・岩盤規制を打ち崩す構造改革が不十分だった

それぞれ、至極もっともな意見ですが、しかし結論を先にいってしまえば、いずれの見方も
経済の「原因」と「結果」を見誤っている私は思います。

第2節 不良債権が足伽になった」はまったくのウソ

まず、「不良債権が足抱になった」という議論を検証しましょう。「バブル崩壊後に日本経
済の足を引っ張ったのは、不良債権だ」と思っている人はたくさんいます,しかし、不良債
権というのは金融機関の経営の問題であり、経済全体に大きな影響を及ぼすほどのものでは
ありません。「不良債権の先送りが経済低迷の原因だ」などといわれましたが、不良債権の
先送りはいつでも起こっている現象です。ミクロのことだけを見ていえば、不良債権の先送
りはしないほうがいいに決まっています。しかし、マクロ側から見ると、マクロ経済を良く
すれば不良債権は自然に減少していきます,景気が減速して資産価値が落ちるから不良債権
になっていくのです。経済全体が良くなれば、貸付先の企業業績も少しは良くなるでしょう。
株価も上がりますし、不動産の値段も上がって担保価値も上昇します。先送りしている問に
実体経済が成長すれば、不良債権問題は片付いていきます。不良債権のすべてがすっきりと
なくなることはありませんが、問題にはならなくなります。

「原因」と「結果」でいえば、不良債権問題の「根本原因」は、主として金融政策の失敗で
あり、不良債権というのは単なる「結果」にすぎません。おそらくバブル崩壊後に日銀がき
ちんと金融緩和して経済成長を促していれば、不良債権問題は5年くらいで問題のないレベ
ルにまで解消したでしょう。それが10年も20年も長引いてしまったのは、低成長、マイ
ナス成長で経済が伸びなかったからです。この20年間に他の先進国が大幅にGDPを伸ば
しているのに対して、日本だけがほとんどGDPを伸ばしていません。間違えてはいけませ
んが、それは日本が不良債権問題を抱えているから伸びなかったのでは決してありません。
これほど長期間にわたってGDPを伸ばせなかったからこそ、不良債権問題が早期に片付か
なかったのです。金融機関が不良債権を抱えているから、貸出しを抑制し、貸し剥がしが起
こるといわれていました。たしかに金融機関が回収を急ぎたかったのは事実でしょう。

しかし、本当に儲かる貸出先であるのなら、金融機関Aが貸し剥がしをしたとしても、金融
機関Bが貸し出すはずです。儲かるとわかっているのに貸さないことはありません,おそら
く、その貸出先は、どの金融機関も貸出しできないほどの厳しい経営状態にあったのです,
なぜそうなったのか。もちろん、経営の失敗という事もあると思いますが、経済全体が低迷
しているという要素が多分にあるはずです。過度の円高が続いていたことも原因でしょう。
マクロ経済全体を良くすれば、より多くの企業が息を吹き返します。経済全体を良くすれば、
儲かる企業が増えてきて、自然に不良債権は減少し、貸し渋りも減っていきます。不良債権
や貸し渋りが経済成長を妨げたという見方は正しくありません。金融機関の不良債権をすべ
てゼロにしたところで、日本経済のGDPが伸びるという保証はどこにもありません,

その反対に、日本経済全体を成長させれば、不良債権は必ず減少していきます。このような
説明と軌を一にするのが、「バランスシート不況」についての見方です。「失われた二十年」
の時期に、よくフ、ハランスシート不況」ということがいわれました。これは、資産価値が
落ちたために企業が債務超過になると、財務内容(バランスシート)を正すために収益を借
金の返済に充てようとするのでゾ設備投資や消費が抑制されて景気が悪化する、という考え
方です。たしかに、そうとも見えるのですが、これも「原因」と「結果」の見誤りです。マ
クロ経
済政策で景気が上向けば、資産価値が上がるので、自ずと解消される問題です。不良
偵権もバラン
シートも、個別企業の経営の問題であり、「ミクロ」の世界です。それが日本
経済全体という「マクロ」
の原因になることはほぼないと思っていいでしょう。その反対に
「マクロ」経済は「ミクロ」に必ず影響を与えます。金融政策と財政政策
でマクロ経済を良
くすることが、個別企業にとって一番恩恵かおる道なのです。

第3節 経済が収縮するデフレ不況下で、できるはずがないこと

次に、「IT投資、デジタル化に出遅れ、生産性が上がらなかった」「ゾンビ企業が生き残
り、イノベーションに後れをとった」「岩盤規制を打ち崩せなかった」という議論について
見ていくことにしますが、これらも結論は「ひと言」で終わりです。「経済が収縮するデフ
レ不況下で、そんなことができるはずがない」――それだけです。たしかに事実関係を見れ
ば、「失われた二十年」の期間を諸外国と比べると、日本のIT分野をはじめとする投資額
が低かったことは否定できません。投資が低ければ、必然的に生産性は低くなります。そう
すると諸外国に勝てるはずもなく、経済が悪化していく――という見立てになるのですが、
しかし、考えるべきは「なぜ投資額が低かったのか」です。つまり、それが「原因」なのか
「結果」なのかです。

設備投資の理論は非常に単純で、要は投資に見合うだけの収益が得られるかどうかで、投資
額の多寡が決まってしまいます。ということは、将来の成長性が期待できるかどうか、実質
金利が低いかどうかのいずれかが、大きな要因になります。将来の成長性が高いと期待でき
れば、投資しても必ず大きなリターンかおりますから、みんなが喜んで積極投資に走るはず
です。また、実質金利が低ければ、資金調達コストが下がり、その分、収益が見込めること
になりますから、これまた投資に積極的になるはずです。 しかし、現在の日本のような「
安定成長期」には、将来の成長性はたかが知れています。となれば、民間の投資を増やせる
かどうかのポイントは「実質金利が高いか低いか」に絞られることになります。

ところで、「実質金利」は、「名目金利-(マイナス)予想インフレ率」で求められます。
つまり、予想インフレ率が上がれば実質金利は下がります。反対に、どれほど名目金利が低
くても、デフレの影響で予想インフレ率が大きく下がっていれば、実質金利は上がることに
なります。このように「デフレによって予想インフレ率が下がり、実質金利が上がる」とい
う状態になると、経済にとんでもないマイナス圧力がかかります。諸外国と比べて実質金利
が上がれば、設備投資がしづらくなると同時に、円高にもなります。円高になれば、輸出競
争力が低下してしまい、輸出企業を中心に大きな打撃を受けることになります。さらに予想
インフレ率が高いということは、インフレ効果で投資金額が将来的には実質的に縮減してい
くことが期待されるということでもありますが、デフレであれば逆になります。しかもデフ
レであれば消費停滞、賃金削減の負のスパイラルが発生し、経済の活性化など夢のまた夢に
なります。

「失われた二十年」の日本は、このような状況でした。まさに、金融政策の失敗以外の何も
のでもありません。こんな、何から何までマイナスの状態で、どうやって設備投資を増やせ
るというのでしょうか。「産業構造の転換が遅れてゾンビ企業が生き残ってしまったこと」
も、「岩盤規制を打ち崩せなかったこと」も、すべて「原因」は同じです。将来の成長性が
期待できる状況、すなわち経済の「パイ」が大きくなっているときであれば、思い切って投
資をし、構造を転換して新たなジャンルに足を踏み出すことも容易です。実質金利が高くて
も、思い切った投資をすることができます。しかし、何から何までマイナスの状態では、そ
んなことをしてみせろ、というほうが一問というものです。「原因」と「結果」でいえば、
明らかに「投資の出遅れ」「ゾンビ企業」「岩盤規制改革失敗」は原因ではなく結果です。
根本的な「原因」はデフレであり、それを招来した誤った金融政策なのです。

                                  この項つづく

       Apr.15, 2018

 Apr. 5, 2018

【健康寿命生物工学論Ⅰ:細胞の若返り技術に道】

マウス造血幹細胞コンパートメントの高齢化を解決する大規模クローン解析

4月5日、加齢によって白血球の一種になる能力を失った血液のもとになる細胞を、若いマ
ウスに移植すると、その能力を取り戻したとする研究成果を、東京大と米スタンフォード大
の共同研究チームが発表。チームは、仕組みを解明できれば、血液細胞を若返らせ、免疫機
能の回復につながる可能性があるとしている。今月、米科学誌セル・ステムセルに掲載。

 研究成果のポイント

  1. 加齢により、造血幹細胞の能力のうち自己複製能は比較的維持されるのに対し、リン
    パ球系への分化能力は大きく低下する。
  2. リンパ球系細胞への分化能力を失った造血幹細胞が加齢により著明に増加する。
  3. しかし加齢による造血幹細胞の分化能力の低下は可逆的である。
  4. 血液細胞の加齢による変化を正しく理解することにより、新しい加齢メカニズムの同
    定や白血病発症の原因究明につながる。

【概要】

血液中の赤血球や白血球などは骨髄にある造血幹細胞から作られる。加齢により、白血球の
一部で免疫をつかさどるリンパ球をつくる能力は落ちることが知られている。東京大学幹細
胞治療部門の中内啓光特任教授らの研究チームは、生後20~24カ月の高齢マウスの骨髄
から造血幹細胞を採り、血液をつくれなくした別の若いマウスに移植➲高齢マウスの造血幹
細胞を移植したマウスは、リンパ球をほぼつくれなかった。しかし、そのマウスの造血幹細
胞を含む骨髄を別の若いマウスに移植し、観察を続けたところ、造血幹細胞がリンパ球にな
る能力を持ったことを確認した。➲1回目でなく2回目の移植で能力を持った理由は解明さ
れておらず、今後の課題。研究チームの一員、スタンフォード大の山本玲研究員は「リンパ
球になる能力が回復したことは細胞の『若返り』を示唆している。加齢メカニズムの解明に
つながる」と話す。



フローサイトメトリーflow cytometry)とは
細胞を懸濁させた液体を細胞が一列になるように流れている状態にし、それにレーザー光を
当てて反射する光を測定し、光の強さを電気信号に置き換えて定量化し、細胞一つ一つの情
報を自動的にサンプリングする方法。
細胞1個1個の相対的大きさや形状、内部構造の違い
、細胞の同定や細胞群を構成する種々の細胞の存在比を短時間で解析できる。
また、細胞を
蛍光抗体で標識することによって細胞表面にある抗原量を定量的に測定することもでき、細
胞の形態の差としては現れない細胞の性質の差を識別することが出来る。
また、液滴となっ
た細胞懸濁液に電荷を与えることで、性質の異なる細胞を分取も可能。

  No.192

 【ソーラータイル事業篇:テスラのソーラールーフタイル事業  

テスラ社の屋根型ソーラータイル事業はさらに進化した「3IN1 ROOFシステム」はコスト半
分、空調冷暖房費33%削減、性能は3倍と社長も舌を巻くほどのパーフォマンスを実現。
それじゃテスラとパートナーとなり、その地域、その顧客の希望をかなえるトータールシステ
テムの提供を事業展開させた方が早く、世界規模の環境保全を実現でき、雇用と社会の安定・
安心に貢献できるのではと考えてみた。



【ソーラータイル事業篇:従来製品の総費用半分の屋根用ソーラ】
 

ステラ社の新しい「3in1ルーフ」ソーラータイルは、テスラ屋根の半分の価格で住宅に電
力を供給できる。同社のソーラー
屋根はいち早く注目浴びるてきたが、同社社長のイーロン
・マスクですら想像を超えるスピードで進歩してきている。例えば、「3in1ルーフ」は断
熱、強風、太陽光の3つを一括対応――
従来のスレートタイルよりも軽量で屋根裏部屋への
伝熱はゼロを達成し冷暖房費を削減、二酸化炭素排出量を大幅削減を実現。
同社の屋根用ソ
ーラの価格は平方フィート当たり約11ドル(93平方メートル当たり約1,100円)。
従来の
スレートルーフィングより軽く、10平方フィートあたりわずか110ポンド(約16,800円
)で、より軽い荷重構造で。屋根は屋根裏のデッキと断熱材との間の結露をなくし、カビや
腐敗を防止、風速200 mph (毎秒89.4メートル)強度、耐紫外線、耐久性、断熱仕様(対従
来製品の3倍増)、冷暖房空調(HVAC:heating, ventilating, air conditioning)コストを最大3
8%削減(対従来製品)の仕様となっている。また、新商品購入は 500ドルの手付け金を支
払えば2019年度に設置でき、先着購入者千名のお一人様に駐車場用充電装置を無償取り付け
する。
 3in1 Roof

シングルおよびダブルワイドサイズのモジュラー住宅は、縮小した壁、天井、屋根の垂木の
ため、市場で最もエネルギー効率の低い構造。
3 IN 1 ROOFシステムは、モジュラー製造業
者が屋根裏部屋の換気口をバイパスすることができるため、モジュラーディーラーの屋根覆
いになりつつあり、モジュラーの居住スペースの残りの部分と同じように暖房や空調がほと
んど簡単に行えます。
所有者は、劇的な気温の変化による被害の恐れなしに、必要な貯蔵ス
ペースのためにその気候制御上部領域を使用することができます。

 Supremacy 1000™

Supremacy 1000(上写真)は、99.99%の信頼性設計された24Vdc(直流)リチウムイオン電
池――高エネルギー密度、軽量、高速充電、長寿命、信頼性解析保証の特徴をもつ――で構
成された
コントローラは、「3in1屋根用ソーラー」と構造物のエネルギー駆動機器と照明
間のインテリジェントゲートウェイ機能を発揮。同装置は
、隣のドアや何千マイルも離れた
コントローラ、
選択的共有電力、双方向インターフェイスの機能をもつ。また、特定者内の
情報共有や緊急事態下で病院や学校などのエネルギー受容者とのネットワーク拡張も可能で
ある。


Mar 19, 2018

【スマートグリッド篇:電力とデータの両方を無線伝送技術】

3月19日(ドイツ時間)、インフィニオン(Infineon Technologies)は。独Würth Elektronik
eiSos
と共同でワイヤレス電力伝送開発キット「760308EMP-WPT-200W」の提供を公表。この
特徴は送信側と受信側のコイル間で、200Wの電力とデータの両方をワイヤレス伝送できる。
同キットは、送信ユニットと受信ユニット、電源の3ユニットで構成。送信ユニットは、WPT
(ワイヤレス電力伝送)コイルから構成されたフルブリッジと共振回路に加え、直列接続の
共振コンデンサーから成り、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)モードで動作する。これにより、
キット全体の効率を高めると共に優れたEMC特性(電磁両立性:electromagnetic compatibility
が提供できる。

受信ユニットには、ダウンストリームフィルタリングとふるい分けを行う同期整流器が含ま
れ、ユニット間の交番磁界をAM変調することでデータ伝送が可能。同キットの想定用途とし
て、センサー機器の充電中にデータを基地局に送信することなどを挙げている。
Würth Elekt-
ronik
eiSosWPT部門責任者は、この回路は10ワットから数キロワットにまで拡張が可能で、
医療機械、IoT(モノのインターネット)など環境条件の厳しい分野で今後活用を見込むと話
す。同キットは2018年第3四半期に提供を開始する予定。

 ● デミオ試乗

すごいことなってるわ!息子も驚いとる。腕前も確かだが安全運転。ただし、台車。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新量子ドット工学講座

2018年04月04日 | ネオコンバーテック

  

      
                                     
6 虚  実

味方の「実」で敵の「虚」をつき、力ずくでなく敵の優拉にたつ。相手の力、欲望、弱点を
活用
することによって主席権をとることができる。味方が果申し相手を分散させれば少数で
も多数に
勝てる。

自由自在な変化

戦闘に際しては、次の四つの方法で敵情を把捉しなければならない。

一、十分に戦局を検討し、彼我の優劣を計算する。
一、敵に誘いをかけてみて、直ちに行動に移るかどうか、その出方を旅亭する。
一、敵の態勢を固定化させ、その死命を制しうる急所をつかむ。
一、小競り合いを試みて、故障のどこが強力か、どこが手薄かを判断する。

こうして味方の態勢を整えるわけだが、前述のとおり、戦闘態勢の神髄は、変幻自在で固定
した態勢をもたないことである。こちらの態勢が流動的で固定していなければ、敵側の間者
が陣中深く潜入していたところで、何もさぐり出すことはできないし、敵の軍師がいかに知
謀にたけていても、あらかじめ計略をめぐらすことはできない。敵の態勢に応じた自由自在
の変化によって勝利をつかかというやり方は、一般のものにはとうてい理解できないもので
ある。かれらは、こちらの採った戦闘態勢が勝利をもたらしたのだということはわかっても、
その態勢を生み出した根本に、固定した戦闘態勢を否定する変幻自在の考え方があ置にと
いうことまではわからない。したがって一度勝利をもたらした戦闘態勢をくり返し使おうと
しがちであるが、これはまちがいである。あくまで敵の態勢に応じて無限に変化することを
忘れてはならない。

       

 なぜ、かまぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか  No.29        
 

● エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議 活動の紹介

島根県・浜田から 中国ウィンドパワー株式会社

当時、中国ウィンドパワーがGE社製風車1基の建設を計画した土地は県立浜田海岸自然
園に近接していることから島根県景観条例により規制の網がかかっていました。
地元の理解
が得られないと条件をクリアできないため申請手続きになかなか入れず、結果として着工が
2年近くも遅れました。ところが、たまたま松江市で反対運動が起きたため、それに反発し
て地元から抗議の声があがったのです。

「なんで、おれたちの意見を聞かないで、松江で勝手に反対するんだ」

こうして地元が応援に転じたお陰で、浜田市の後押しもあり着工の運びになったということ
です。建設時の難題は公道への接続道路が私有地だったため35メートルのブレード(羽根)
を搬入する際に崖を削ったり、ガードレールを一部撤去せざるを得なくなって、地権者の一
人が急に反対にまわり、ストップしたことでしたが、そのときも、誠意を尽くして説得した
結果、トラブルなしに工事が竣工しました。

次に建設したのが益田市の高津川風力発電所で、日本製の2000キロワット風車を1基建
てました。3番目に建設されたのが私たちが視察に訪れた江津東ウィンドファームで、日本
製の風車11基が日本海の海岸線に並ぶ光景はなかなか壮観でした。中国ウィンドパワーの
取り組みから学ぶ点は、建設後も地元との連携を維持していくために、どんなに小さなミス
でも全員に説明してまわり、騒音の苦情があればすぐに謝 りにいってメーカーと対策を講じ
るな
ど、クレームから逃げずに前向きに対応してきたことです。地元と顔の見える関係を築
くために自治
会と一緒に広い海岸の清掃に汗をかいていること、あるいは地元にお金(税金)
をまわすために高津
川の風車は益田ウィンドパワーという別会社にして地元に登記したとい
うことなども、「他人の赤ちゃ
んの泣き声はうるさいが、一度でも抱っこしたことがある親
戚の赤ちゃんの泣き声はかわいい」
のと同じことで、苦情より応援の声が大きい現状の原因
といってよいと思います。

中国ウィンドパワーの成功は、運営面ではこれまで述べたように地域とお互いに顔の見える
関係を築いたことが大きいといえますが、保守が行き届くように国内メーカーと
提携したこ
とも見落とすわけにはいきません。島根県多伎町の風車はヴェスタスといっ
て世界でベスト
セラーになっている機械ですが、止まったときなかなか修理に来てくれ
ないため1カ月も止
まっていたりすることがあるということですし、島根県企業局の風
車はノルディックスとい
う会社の風車で、建てたのがIHI石川島播磨でしたが、IH
Iが風車事業から手を引いて
しまったため、何かと不便をきたしているというように、
管理とか定期点検をする会社を選
び間違えると宝の持ち腐れみたいになってしまいます。それに対して中国ウィンドパワーは
機械の性能はメーーカーによるバラツキは道からずなくなることを見越して、計画段階から
管理・保守を重視してメーカーを選定したことは大変賢明だったと思いました。維持する人
さえ来てくれれば風車は故障しても動くわけです。ところが、来てくれなければ風車はいつ
までも止まったままです。

建設面の成功の要因ということがらいうと、中国ウィンドパワーの江津東ウィンドーファー
ムはトータル11]基の建設費は49位円でしたから、1基当たりの建設コストは4億円にな
ります。近くの県企業局は同じサイズで9基63位円でしたから1基当たり7億円もしたこと
になります。行政は入札でしかメーカーを決められないため結構いい値段で買わされるわけ
ですが、道路の建設費がコストに入っていないことを考慮しますと、極めて高くついたとい
えそうです。隣県の鳥取県北栄町は9基27億円でしたから1基当たり3億円でつくったこ
とになり、行政同士の比較でも大きな差が出たことになります。

中国ウィンドパワーの場合は、風況調査は当然のことながら、高圧線の敷設コストが1キロ
メートルー位円という現況を重く受け止めて、中国電力の高圧送電鉄塔の近くに立地させた
こと、取り付き道路の建設コストを低く抑えられたことなどが成功に大きくエネルギーから
経済を考える経営者ネットワーク会議 活動の紹介あずかっていると感じました。

そうした取り組みの中で特筆されるのが、「3・11」後に発足した固定価格買取制度の対
象から一時はずされかけたときの対応です。先発事業者の売電価格は適用になる後発の約半
分ですから、さらなる倒産が予想されました。ましてや、全国の風力発電のシェアの半分近
くをユーラスエナジーJパワー2社が占める現状の中で、零細の風力発電事業者はリーマ
ンショックなどの影響で運営に行き詰まり大手に吸収されることが多かったときです。危機
感を抱いた矢口さんは地域経済の担い手を自覚して運動を展開し、適用を受けられるように
するなどハ面六背の働きをしてきました。こうした経験と実績を10年以上も前から持つ矢
口さんをエネ経会議のメンバーに迎えられたことは嬉しいかぎりです。



神奈川県・小田原から ほうとくエネルギー株式会社

2012年12月には小田原市にメガソーラーを中核事業とした小田原ほうとくエネルギー株
式会社が誕生しました。
小田原はかまぼこはもちろんですが、干物、みかん、銘菓、木工製
品、鋳物、曽我梅
林の梅干、などなど、ご当地「小田原」ブランドを大切に守り育てるため
に結束して何
かをするという精神的土壌とでもいうような、つまり「顔の見える関係」を大
切にする
気風が昔から強く存在しました。小田原のご当地電力「ほうとくエネルギー」誕生
まで
のいきさつには、そうした精神的土壌が強く働いたように思われます。

ほうとくエネルギー副社長の志滓昌彦さんには子不経会議の臨時総会(2012年11月1
7日)で小田原再生可能エネルギー事業化検討協議会のコーディネーターとして事例
発表を
してもらいましたし、新会社のお披露目イベントとなった「小田原電力、はじま
ります。」
(2013年3月10日)でも、現職の立場で事例発表していただきました。そ
のときのス
ピーチの記録を元にして紹介します。冒頭にも触れましたが、小田原では古くから漁業農業、
林業、観光業、商工業全般を問わず地域起こしの取り組みが伝統的に営まれてきました。遠
く遡れば小田原北条氏の時代に達します。最近になって、そうした物心両面の営みを土台に
多様な市民団体を取り込んだ「無尽蔵プロジェクト」が生まれたのがよい例といえるのでは
ないかと思います。

小田原市のご当地電力の発足はいわば協働の精神的風土と加藤憲一市長が就任早々から地域

での再生可能子不ルギー自給化に取り組んだ成果といえるかもしれません。まず市主導の「
小田原まちづくり学校」が始まりました。第2弾の勉強会がまさに再生可能エネルギーをテ
ーマにしたもので、講師役の飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)さんと加藤市長がいろ
いろとやり取りする中で「小田原電力」のアイデアが生まれたわけです。さらに地元の商工
業者、地元の金融機関、地元の大学などが協議会を立ち上げそこでまとめた小田原電力の計
画が環境省の2011年度地域主導型再生可能エネルギー補助事業7件のうちの1件に選ば
れました。それを受けて、小田原再生可能エネルギして、2012年12月11日、元ソニ
ー上席常務としてパソコンやビデオ機器など半導体関連の具体的なビジネスモデル事業化に
多く
の実績を持つ蓑官武夫さんを社長に迎え、志澤さんを副社長として、地元企業24社の
出資
で「ほうとくエネルギー株式会社」設立の運びとなりました。

2013年3月10日、「小田原電力、ばしまります。」のキャッチコピーで、同社とエネ
経会議の共催でローカル子不ルギー・ミーティングを開き、映画『第4の革命』の監督カー
ル・フェヒナーさんをお招きしてダイジェスト販の上映とミニ講演を企画、併せて「ご当地
電カミニサミット」を行ないました。小田原には空かあり、海があり、豊かな森があり、川
があって、地熱にもめぐまれています。当面は小水力事業なども視野に入れながら小田原市
の「屋根貸し事業」に応募するなどしてメガソーラーから着手しますが、地域のコミユニテ
ィづくりのため市民ファンドのかたちで参加者を募ります。小田原は二官金次郎の経世済民
「報徳思想」を重んじる土地柄です。いわゆる「分度」の考え方で、使うエネルギーの量を
決めて使える範囲でやっていく(省エネ、節エネ)ことを旨とし、使えるだけ使ってしまう
といった従来のライフスタイルを深く反省して必要なエネルギーは自分たちでつくっていく
創エネ)、太陽光だけでなくさまざまな再生可能エネルギーをビジネス化することで地域
にお金をまわし、くらしやすいまちにして未来へつないでいく(推譲)、こうしたことを使
命としているところがほうとくエネルギーの大きな特徴で、大規模にやっているところとの
違いはここにあるといえます。ここではすべての活動を説明するだけのスペースがないため、
ごく一部の活動事例のみをご紹介しました。全体としては以下のような活動計画で臨んでい
ます。



【巻末資料】

エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議 今後の活動計画

1 地域で再生可能エネルギーを中心としたエネルギーの自給体制をつくることに資する活動

①各地での取り組みに関する情報の収集と共有

●全国各地で計画中あるいは進行中の再生可能エネルギーを中心としたエネルギー自給の取
り組みに関する情報を収集し、データベース化し、WEBサイト上にて会員間で共有できる
ようにします。
●情報収集と取材の体制を確立します。

②行政の施策についての勉強会の開催

●各地のエネルギー自給の取り組みの紹介や、環境省等からの講師派遣を受け、国行政の助
成メニューについての説明・意見交換等を行う勉強会を開催していきます。

●月1回ペースで全国9ヵ所で開催予定。(場所、日程は今後の調整に依る)
●対象は原則、会員。入会促進の機会にもしたいので、入会希望者も参加可とします。

③先進地事例視察

●再生可能エネルギーの地域での自給体制構築に向けての動きの実例について現地視察を行
います。
●年4回程度実施予定。
●上記②の勉強会との併催も検討中。
●対象は原則、会員。入会促進の機会にもしたいので、入会希望者も参加可とします。

④各地域での志民、行政、各種諸団体との連携、協議、情報交換と啓発活動

●本会と目的を一にする団体、地域でエネルギーの自給に取り組む団体等との連携を図りま
す。
●友好団体からの情報(例えば、勉強会やイベントの案内など)を適宜判断をし、WEBサ
イト上で告知します。

2 賢いエネルギーの使い方を学び実践することに資する活動

①省エネ・創エネについての知恵・技術情報の共有

●省エと創子不の知恵とノウハウについての情報を収集し、WEBサイト上にて会員間で共
有できるようにします。
●会員事業所での成功・失敗事例に関する情報を会員間で共有できるようにします。

②省・創エネセンターとテクニカルアドバイザー(技術的専門家グループ)の設置

3.組織確立と強化に資する活動

①法人化(一般社団法人)
②機能強化

●事務局体制の充実と強化をします。
●省・創エネセンターを創設し、稼働開始します。
●PR/広報チームを設置します。

③財政基盤の強化

●収入源の創出について調査研究します。

4.積極的な意見発信と発言力の強化 に資する活動

●社会への意見発信力の強化を図ります。行政や国への提言や要望を提出していき ます。
●様々な多数の会員が活動している組織であることの発信に心がけます。

5.会員間での情報の共有と連携促進に資する活動

①会員同士の情報/意見交換の場の設営(リアル&バーチャル)

●上記の勉強会、先遅延視察などと絡めて、各地域で会員の交流の場を設けます。

6.会議

●総会の開催 2013年5月
●臨時総会の開催 2013年11月新法人立ち上げ
●地区別会議の開催

その他 今後に向けての検討課題

①持続可能な企業経営と経済の実現のための調査研究と提言発信

●この国のエネルギーの方針は二回に明確にならず、国政選挙も絡み、まだまだ混沌とした
状況が続きそうです。そんな中、2年目を迎えたエネ経会議としては、法人化を含む組織の
機能強化と会員の拡充を回りつつ、世の中の動向にアンテナを掲げつつ、今とるべきアクシ
ョンとじっくり取り組むべき課題を峻別し、迅速かつ的確に活動をしていきたいと思ってい
ます。

あとがき

東日本大震災から2年半がたち、エネ経会議発足から1年半がたちました。原発問題を含め
たこの国のエネルギー政策は国民的な議論がないまま、いまだはっきりとしていません。
原発を動かさなければという議論は、電力会社とそこにお金を貸し込んでいる一部金融機関
の財務的な経営問題に起因するものでありましょう。いつぞやの銀行の不良債権問題と同じ
姿が見え隠れします。原発という不良債権の処理を一日も早く決断することによって新しい
動きに拍車がかかります。また、使用済み核燃料という負の遺産もこれ以上増やすことをや
めなくてはなりません。

限られた天然資源と温暖化に代表される自然環境の制約、人目の減少・高齢化の中で、省エ
ネを進め、安全・安心なエネルギー体制をつくっていくことは必須です。そのことは地域が
自立した持続可能な社会のあり方を実現していくため、この国の産業構造を変えていくため
の大きな力であり、いまがそのために舵を切るチャンスなのだと思います。これからもっと
食料も子不ルギーも必要になる発展途上国にとっても、早晩わが国が経験してきた問題に直
面するであろうアジアの国々にとっても、モデルとなりるあるべき姿を示すのが世界に向け
ての日本の責務だと思います。

経済界も先の利益だけに右往左往するのでなく、あるべき姿をきちんと描いて、それに向か
って現実対応しながら∵歩一歩進んでいく。売り上げとかシェアとかだけでなく、どんな世
の中を目指すのか、そのなかで自社がどういう役割を果たしていきたいのかをしっかり示し
ていくこと。それが会社という社会の公器の経営に責任を持つ者の醍醐昧だと思います。
世界に影響を及ぼすような巨大企業の社長であろうと、私たちのような、今月の資金繰りに
頭を悩ませながら、切った張ったの商売に四苦ハ苦の日々を暮らしている地域に根差したち
っぽけな中小零細企業の経営者であろうと、会社の規模に大小はあっても志の大きさには違
いがあってはならないのだと思います。政局がどうなろうと私たち地域の中小零細企業の経
営者ができること、やるべきことは変わらないと思います。けっして政治を諦めるのではな
く、経済人としてできること、やるべきことを粛々とやっていきたいと思います。それは自
らの決心と覚悟が求められることだと自戒を忘れることなく。

さいごに、この本の出版に際してお世話になった合同出版のハ尾浩幸さんはじめ多くの皆さ
ま、なかでもボランティアそのもので対談にお付き合いくださったアドバイザーの皆さま、
エールをお寄せくださった菅原文太さん、米倉誠一郎さん、同志であるエネ経会議会員の皆
さま、勝手気ままな息子、弟、副社長を温かく見守ってくれている鈴威かまぼこの会長の智
恵子、社長の博晶、社員の皆、そして、留守がちな家をしっかり守ってくれているわが妻知
子に心より御札を申し上げます。
                                    
鈴木悌介

どっかりと地に足をつけた市民運動が展開されていくさまに触れ感銘する。方や製造責任を
忘れたかのような原発再稼動を急ぐ、支離滅裂漂う政府・大手電力会社の動き。ノーモア!
原発、ノーモア!核兵器である。


                                                        この項了

 No.184 
【量子ドット工学講座 No.52:最新量子ドットLEDディスプレー事業】

矢野経済研究所は2018年3月、量子ドット(QD)ディスプレイとその関連部材の世界市場を
調査し発表した。QDディスプレイ市場は2017年見込みが200万枚となり、前年比58.5%と大き
く落ち込んだ。その後は回復し、2019年には550万枚の市場規模が予測されている。
QDディ
スプレイは、光エネルギーを吸収、変換する機能をもつQDを液晶ディスプレイ(LCD)に応
用した製品。バックライトの消費電力を増やさずに高い色再現性を実現する。ただ、QD材料
QDシートなど関連材料が高価であることや、QD粒子にガドミウムが含まれることもあって、
QDディスプレイ搭載のTVを量産している企業が、これまでは限定的であった。
こうしたこと
から、QDディスプレイのメーカー出荷数量は、2016年の342万枚に対して、2017年は200万枚
まで落ち込む見込みだ。これに対して2018年からは、先行する韓国と中国のセットメーカーに
加えて、複数のセットメーカーやディスプレイメーカーが、QDディスプレイ搭載のTVやモニ
ターの量産を始める予定。同時に画面サイズの大型化や中級機種のTVにも搭載が見込まれる。
これらの状況を踏まえ、2018年は350万枚、2019年には550万枚へと、市規模は一気に拡大す
ると予測した。

Mar. 28, 2017

QDディスプレイ関連部材には、QD粒子とバインダーレジンを配合した溶液である「QD材料」
QD粒子を面状発光体にした「QDシート」、QDシートの上下に貼り合わせてQDの劣化を防
止する「QDシート用バリアフィルム」、発光効率や色純度を向上させる「QDカラーフィル
ター」、QDをエレクトロルミネッセンスとして用いた「QLED」などがある。
今回の調査で
は、関連部材の中でQD粒子の出荷数量(重量ベース)について予測した。2016年は3.11トン
となったが、2017年は1.9トンに縮小。しかし、2018年には3.85トンに増え、2019年は7.15
ンに拡大すると予測。
 今回の調査は、2017年12月~2018年3月に実施。QDディスプレイ関
連部材メーカー、QDディスプレイメーカー、セットメーカーなどに対し、専門研究員が直接
面談や電話/メールによるヒアリングなどを行った。調査結果は「2018年版 量子ドットディ
スプレイ部材市場の現状と将来展望」としてまとめている。

● アップル社が開発中の「MicroLED ディスプレイ」

スマートフォンやスマートウォッチに使われているディスプレイは液晶や有機ELが大多数。
Apple(アップル)社は「MicroLEDディスプレイ」をApple Watchや、ARメガネなどのAR
拡張現実)ウェアラブルデバイス用に開発中。この原理は、
ミクロなLEDを高密度に敷き詰め
ることで、有機ELをも超える明るさ、色再現度、長寿命、そして省電力性が実現できると期
待されている。
台湾紙のDigiTimes社によれば、Appleは台湾半導体ファウンダリのTSMCと共
同でふたつの大きさのMicroLEDディスプレイを開発しているとのこと。1.3~1.4インチの
Apple Watch用と、0.7インチ~0.8インチをARウェアラブルデバイス用の2種類。また、別の
プロジェクトではMacBookよりもずっと大型なデバイス用のMicroLEDも開発忠である。
これ
らのMicroLEDディスプレイは、2018年後半から2019年かけて量産予定。2018年後半の「Apple
Watch Series 4
」か、2019年の「Apple Watch Series 5」あたりで採用予定か、一方で、ARウェア
ラブルデバイス用のディスプレイの量産時期は決まっていないが、大型のMicroLEDディスプ
レイは2019年に量産予定。
このMicroLEDディスプレイは同型の有機ELディスプレイよりおよ
そ5倍ほど価格が高く、Apple Watchの最上位モデルに搭載されるのではとか普及には製造コ
ストダウンが前提とか噂されている。

 Apr. 3, 2018

AppleのMicroLEDディスプレイについては、BloombergAppleのカリフォルニア本社近くの
製造工場で開発・少量生産が開始されていると報じている。高価格が気になるが、まずはど
れだけ美しいのかをこの目で確かめる必要があると ギズモード・ジャパンは伝えている。

❑ 特開2018-044142 半導体ナノ粒子およびその製造

【要約】

コアと、コアの表面を覆いコアよりもバンドギャップエネルギーが大きくかつコアとヘテロ接
合するシェルと、を備え、光が照射されると発光する半導体ナノ粒子であって、コアが、M1、
M2、およびZを含む半導体であって、M1が、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくと
も一種の元素であり、M2が、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元
素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体か
らなり、シェルが、第13族元素および第16族元素を含む半導体である半導体ナノ粒子を特徴と
する、低毒性の組成とし得る三元系ないし四元系の量子ドットからバンド端発光が得られる構
成を備えた、半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供する。



❑ 特開
2018-049268 表示パネル、表示装置、入出力装置、情報処理装置、表示パネルの作製方法

【要約】

第1の機能層は画素回路および第1の絶縁膜を備え、第2の機能層は着色膜および第2の絶縁
膜を
備え、第1の絶縁膜および第2の絶縁膜はいずれも0.5μm以上3μm以下の厚さおよ
び3GPa以上1
2GPa以下のヤング率を備え、封止材は第1の基材および第2の基材の間
に挟まれる領域、第1の
基材および第2の基材を貼り合わせる機能を備え、構造体は第1の基
材および第2の基材の間に挟まれる領域、第1の基材および第2の基材の間に所定の間隔を設
ける機能を備え、画素は第1の基材、第2の基材および封止材に囲まれる領域、表示素子、画
素回路および着色膜を備え、表示素子は画素回路と電気的に接続され、着色膜と重なる領域
液晶材料を含む層を備え、液晶材料を含む層は上記の間隔を満たす表示パネルの提供。


 

 ● 今夜の一曲

『ときめきのルンバ』

「2009年8月19日にコロムビアミュージックエンタテインメント(現日本コロムビア)から発売され
た氷川きよしの19枚目のシングル。デビュー10周年シングル第2弾。A面の「ときめきのルン
バ」はこれまでの演歌路線とは異なり、昭和歌謡風の楽曲となる。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新有機電子工学

2018年03月21日 | ネオコンバーテック

 

      
                                        

2 謀  攻

「目的は勝利であって戦いではない」

戦争は目的ではなく手段なのだ。したがって、戦わずに勝つのが最高の勝ち方である。それ
が「謀攻」にほかならない。謀攻は単に小手先の術策ではなく、法則性に順った頬辺のない
勝ち方をいう。

兵力に応じた戦い方

戦争に際しては、次の原則を守らなければならない。すなわち、十倍の兵力があるときには、
敵軍を包囲する。五倍の兵力があるときには、敵軍を攻めまくる。二倍の兵力があるときに
は、敵軍を分断して戦う。互角の兵力であるときには、全力を尽くして戦う。劣った兵力で
あるときには、退却する。勝算がないときには、戦わない。もしこの原則を無視し、自軍が
弱小であるにもかかわらず強気一点ばりで戦うとすれば、むざむざ強大な敵の餌食になるだ
けである。

     

 なぜ、かまぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか  No.22   
  

● 対談5 新しい現実をつくる  

『ネイチャー・テクノロジーで未来を拓くパラダイムシフトを』 

  石田秀輝 東北大学教授工学博士

1953年岡山県生まれ。2004年㈱-NAX(現LIXIL)取締役CTOを経て現職。
ものづくりのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。2004年から
は、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものづくり「ネイチャー・テクノロジー」を提唱。
また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の人材育成や、子どもたちの環境教育に
も積極的に取り組んでいる。ネイチャーテック研究会代表、NPO法人サステナブル・ゾリ
ューションズ理事長、ものづくり生命文明機構理事、アースウォッチ・ジャパン理事ほか。
著書に『ヤモリの指から不思議なテープ』(アリス館/2011)『未来の働き方をデザイ
ンしよう』(日刊工業新聞社/2011)『自然に学ぶ!ネイチャー・テクノロジー』(G
akkenMook/2009)『地球が教える奇跡の技術』(祥伝社/2010)など多数。

 Dec. 21, 2016  

自然は唯一、持続可能な社会をつくっている

鈴木 本日は東北大学大学院環境科学研究科石田先生の研究室にお邪魔しています。すごく
広くて、それでいてオモチャ箱みたいな感じです。ネイチャー・テクノロジーを用いたシス
テムの模型が並んでいて、ほんとうに楽しい研究室です。一軒の家の電球がネイチャーこア
クノロジーが生み出した電気でまかなえて、しかも安いという画期的なシステムを開発され
たとかで、その模型が展示されております。石田先生のご専門はそうしたネイチャーこアク
ノロジーですので、ご専門の観点からエネルギーについて語っていただきたいと思って研究
室におうかがいしました。

石田 そもそもネイチャーこアクノロジーというのは、自然のすごさを賢く活かす、自然は
完璧な循環をもっとも小さな子不ルギーで駆動している、すなわち自然のなかにはゴミがな
い。自然はわれわれが知る唯一、持続可能な社会をつくっているわけです。

鈴木 自然のなかにすでにつくられているわけですね。

石田 そうです。すでにあるわけです。1992年のリオのサミット以来、私たちは「持続
可能な社会をつくろう」といって一生懸命努力したんですが、努力すればするほど理想から
乖離してしまう。であるならば、自然というものに頭を垂れて、持続可能な社会をつくるた
めには何か必要か、自然のなかのメカニズムやシステムをもう一回見直して、新しい暮らし
方とものづくりを考えるのがネイチャー・テクノロジーで、新しいテクノロジーをつくるた
めにまずライフスタイルをつくることから始めます。私たちが何もしないと2030年には
たいへんきびしい状態になるのは目に見えていますから、きびしい制約環境のなかでも心豊
かに暮らせる、そういう暮らし方のイメージをいまからつくっていく。そのときに必要にな
るテクノロジーは何でしょうか、という問いの答えを、自然のなかから抽出して、サステナ
ブルなかたちにデザインし直して、新しいテクノロジーに変えていく。それがネイチャー・
テクノロジーの本質です。

でも、いま、快適に暮らすためにはエアコンがないといけないとか、いろんな注文がつく。
エアコンはどんどんエコになっているんですが、どれだけエコになっても電気代はかかる。
エアコンをつくるための子不ルギーが要る。だから、視点を変えて、2030年になったと
き、どんな快適な暮らし方ができるのかというと、たとえば電気を使わないで、壁や床や天
井が家のなかの空気の湿度や温度を自動的に検知して一定に保つ、そういう材料を可能なか
ぎり活用したら、電源なしでも快適な暮らしができるわけです。そういうライフスタイルを
つくるために私たちは自然のドアをノックするのです。

鈴木 ああ、なるほど、すごいですね。
石田 自然のなかにそういうテクノロジーがあるだろうと考える。私の場合はサバンナ地帯
のシロアリの巣を見つけました。昼間は50度、夜は零度と寒暖の差が大きいにもかかわらず
巣のなかは30度、プラスマイナス1度に保たれています。それを日本という高温多湿のモン
スーン地帯で使おうとするとき、一番いいのは湿度を調整することです。どのような土にも
いえることですが、実は土の中には3~10ナノメーターというものすごく小さな孔が大量に
開いていて、その孔が湿度を調整してくれるわけです。そういうメカニズムをコンパクトに
すればよいわけです

 July 6, 2017

たとえば(実物を手に持って)これは厚さ5ミリの板なんですが、実はこれがエアコンなん
です。上ですけれども、無数の小さな孔が開いていて、これを壁に貼るだけで人間が快適と
感じられるレベルに湿度が調整される仕組みなんです。そうすると体感温度がたとえば、夏
なら実際の温度より3度か4度下がるわけです。それだけで快適なんです。

鈴木 まさに、土壁のエアコンですね。
石田 土蔵をずっとシンプルにしたわけです。なんだ、日本には土蔵があるじゃないかとあ
とから気がつきました。ネイチャー・テクノロジーというのは我慢するのではなく、心豊か
に暮らすとしてもエネルギー資源を極力使わないようにしていく、それがネイチャー・テク
ノロジーの本質的なシステムの一つです。いま、電源を必要としないエアコンの導入で家庭
のエネルギー消費は、だいたい、2割か3割かは節減できると思います。

鈴木 まさかの「灯台下暗し」でした。
石田 自然はまさに宝ものの集まりです。たとえば、ヤモリの足の接着能力は強力で、ハガ
キー枚分の大きさで、約200キロの重量に耐えられます。軽四自動車のタイヤー本の接地
面積が、だいたいハガキー枚分ですから、4枚あれば車1台を吊り下げることができる。ヤ
モリの足の指には50万本もの毛が生えていて、さらにその毛の先が敷百本に分かれていて、
こすった下敷きに髪の毛がくっつくように、ナノメートルサイズの絹かく分かれた毛一本一
本と天井村との間に分子と分子が引きつけ合うファンデルワールスカが慟いてくっつく。こ
うしたヤモリの接着メカニズムがわかれば天井を走る車ができてしまう。



鈴木 驚くべきことです。
石田 汚れにくい表面を持つ材料を発見してタイルをつくったことがあります。タイルの表
面はカタツムリの殼から学びました。カタツムリの殼が汚れていることはほとんどありませ
ん。常にピカピカしています。ニワトリの卵も同じです。卵が鶏糞で汚れていても水で洗う
とつるっと落ちてしまいます。そういう表面を持ったタイルに油性ペンで線を引いたとしま
す。普通、油性ペンの跡を消そうとしたら、ベンジンやアルコール、強力な洗剤などを使わ
なければなりませんが、水で洗うだけできれいに落ちてしまいます。タイルの表面に油より
も水と結びつく性質を強く持たせたためです。カタツムリの殼の表面はタンパク質と炭酸カ
ルシウムが絡み合った複雑な構造をしていて、殼の表面の子不ルギーと水の表面のエネルギ
ーの差が殼と汚れ(油)のエネルギーの差よりも小さいために、殼と水のほうがよくなじみ、
結果として油と殼の間に水が入るので、油を浮かし汚れを落としてしまうわけです。ただし
、カタツムリの殼の表面は非常に複雑な構造ですから単純に真似るとなるとものすごいエネ
ルギーが必要になってきます。自然のすごさを大きな子不ルギーを使ってつくるとしたら本
末転倒ですから、そのまま模倣するのではなくリデザインしてエネルギーの消費を小さくす
るのがネイチャー・テクノロジーです。

自然から学ぶことはまだあります。1匹のクモが吐き出す糸は大きく分けると7種類ありま
すが、そのうち一番強度があるのが自分の体をぶら下げる牽引糸で、断面積を1平方ミリに
換算すると、10トン以上も吊り下げる力があって、クモは自分の体重の2倍くらいは余裕た
っぷりに吊り下げることができるわけです。さらにもっとすごいのは、その糸を常に2本出
していることです。1本が切れても落ちないようにもう1本でセルフビレイ(自己確保)し
ているわけです。

鈴木 ファーブル昆虫記のテクノロジー版ですね。石
田 自然のなかの虫たちが人間と同じ大きさだったら、それこそ尋常じゃない世界になりま
す。たとえばグンタイアリを人間の大きさに置き換えると重さ約4、5トンのものを口にく
わえながら時速120キロで疾走していることになります。それで「疲れた」などと言わな
いで一日中歩き続けているわけですから、まるで化け物の世界です。

 Oct. 17, 2016

エコのテクノロジーが消費の免罪符になっている「エコジレンマ」

鈴木 いつまでも聞いていたい気がしますが、先へ進ませていただきます。過去20年ぐらい
の間に、日本の電気使用量は3割ぐらい増えてまして、家庭用と産業用に分けたとき、工場
などで使う電気の量は大企業を中心とした省エネの取り組みなどでそれほど増えていないの
に、家庭用とか、業務用とかが増えているために全体の使用量が押し上げられています。技
術革新が進んで省エネ家電に切り替わったために、たとえば家庭用電気冷蔵庫の使用電力量
10年前に比べて半分になりました。なぜ、省子エネ家電になって個々の使用量が減ったと
いうのに家庭用全体の使用量が増えてしまうのか不思議でならないわけです。

石田 それをエコジレンマといっています。エアコンと冷蔵庫だけみても、冷蔵庫の電気使
用量は15年前の2割弱、エアコンは15年前の6割です。省エネ家電が大量に市販されて家庭
に入っているのに、家庭用のエネルギー消費は1990年に調べて1・3倍以上なんです。
日本は世界最高レベルのエコテクノロジーを持ち、日本人は世界最高レベルのエコ意識を持
っているのですが、これらを合わせると、環境劣化が加速してしまう。これがエコジレンマ
なんです。

この構造というのは、わかってしまえば当たり前のことですが、耳もとで「これとこれがエ
コ」とささやかれると「エコなんだから、エアコンをもう1台買おうか」「テレビもエコな
んだから、もう少し大きくしてみようか」「エコカー質ったんだから、週末には遠乗りして
みようか」となってしまう。エコによって増える消費のほうが、エコの技術によって環境の
劣化を抑える力よりもはるかに大きい。エコのテクノロジーが消費の免罪符になっているわ
けです。エコポイントだとか、高速道路の週末割引で、「国のお墨付きまでついたんだから
質っていいでしょ」ということになっていく。

Aug. 10, 2016

鈴木 結局、冷蔵庫をもう1台買ってしまったとか、テレビを大きくしてしまうとか、エア
コンを各部屋につけてしまうとか、われわれはそれが快適で豊かな暮らしだと思ってきたわ
けですね。その結果として電気使用量が増えてしまった。ところが、「3・11」後の冬、
家族でリビングルームで過ごす時間を増やして、個室の電灯やエアコンをできるだけ使わな
いようにしました。いままで忘れていた団欒を取り戻したわけですが、「これって、なかな
か豊かじゃないか」と実感しました。そういうふうに改めて気がついた部分があります。

石田 私たちが享受してきた豊かさは「物質的な豊かさ」なんですね。そして、いま、日本
人は物質的に豊かさの頂点にいる。ところが、人間は物質的に豊かになるとさらに豊かにな
ろうとする。それを否定するわけではないんですが、従来と同じ方向で豊かになろうとして
も、資源も、エネルギーも、やがてなくなるとわかっているわけですから、これはきびしい。
豊かさの価値観そのものを変えないといけないのに、変わっていないというか、どういうふ
うにみたらよいかわからないというのが問題なんです。

いま、まさにおっしゃったように、豊かであるというのはエコ商材がいっぱいあることだと
宣伝もするし、物質以外の豊かさを感じる機会が私たちにはあまりなかった。都会から地方
に来たり、自然が好きだとか、現実にそういう兆候が現れてきてはいますが、まだ具体的に
豊かさのかたちになってはいないんですね。だから、いまは「何かと何かを置き換えて、豊
かさを実感する」という段階に留まっていて、いわば足し算なんです。
「資源も、エネルギーも、もうないですよ」といわれながら足し算という選択肢しかないわ
けです。そうではなくて、豊かさを具体的なかたちにするような新しい価値観の足場という
ものを考えていかないといけないのです。

鈴木 そうですよね。身のまわりに物を持つことが豊かさだと信じ込まされてきて、結果と
して物はたくさんあるけれども豊かな感じはあまりなくて、一生懸命やっている割には「こ
れでいいの?」みたいに疑問符がついてしまう。

『エコジレンマ』ですかこれは面白い。エコトリレンマ、クワトロレンマもあるかもしれま
せんね。

                                   この項つづく

 

   No.174

【最新有機電子工学】

● 視認性抜群の小型有機ELパネル



❑ 特許事例1

特開 2018-028996
有機EL素子用の保護膜の形成方法、表示装置の製造方法および表示装置

【概説】

エレクトロルミネッセンスを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(organic electrolu-
minescence device)の開発が進み、この素子は、有機EL素子と呼称され、電圧を印加した
際に発光する電流注入型デバイスであり、ダイオード特性を示めす有機発光ダイオード(
Organic Light Emitting Diode:OLED)とも呼ばれている。有機EL素子は、水分に弱いため、
有機EL素子を覆うように保護膜を形成して、有機EL素子への水分の伝達を防ぐことが望
ましい。有機EL素子用の保護膜においても、性能を向上させることが望まれる。本件は、
下図のように、有機EL素子を有する表示装置の製造方法で、基板11上に有機EL素子を
形成する工程と、有機EL素子を覆うように保護膜16を形成する工程と、を有する。保護
膜16は、Siを含有する絶縁膜16aと、Alを含有する絶縁膜16bと、Siを含有す
る絶縁膜16cとを有する積層膜からなる。保護膜16を形成する工程は、有機EL素子を
覆うように絶縁膜16aをプラズマCVD法を用いて形成する工程と、絶縁膜16a上に絶
縁膜16bをALD法を用いて形成する工程と、絶縁膜16b上に絶縁膜16cをプラズマ
CVD法を用いて形成する工程を経て、有機EL素子用の保護膜の性能の向上させる製造方
法を提供している。


図3 表示装置の要部断面図
図4 表示装置の製造工程を示す工程フロー図
図5 同保護膜形成工程を示す工程フロー図
図6 表示装置の製造工程中の要部断面図
図22 保護膜の水分透過率について実験した結果を示すグラフ

【符号の説明】

1  表示装置 2  表示部 3  回路部 9  ガラス基板 10  基板 11  基板 12 
パッシベーション膜 13  電極層 14  有機層 15  電極層 16  保護膜 16a,
16b,16c  絶縁膜 17  樹脂膜 21  成膜装置 22  ロードロック室 23 
トランスファチャンバ 24,25,26  チャンバ 27  処理対象物 31  ステージ
32  シャワーヘッド 33  アンテナ 34  排気部 41  ステージ 42  上部電極
43  排気部 44  ガス導入部 45  ガス排出部 PH  ピンホール

尚、図22には、試料A、試料Bおよび試料Cについて、WVTRWater Vapor Transmission
Rate
)をCa法(カルシウム法)で測定した結果が示す。試料Aは、プラズマCVD法で形
成した窒化シリコン膜の単層により保護膜を形成した場合に対応している。試料Bは、プラ
ズマCVD法で形成した窒化シリコン膜と、その上にALD法で形成した酸化アルミニウム
膜との2層により保護膜を形成した場合に対応している。試料Cは、プラズマCVD法で形
成した窒化シリコン膜と、その上にALD法で形成した酸化アルミニウム膜と、その上にプ
ラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜との3層により保護膜を形成した場合に対応して
いる。試料Aと試料Bと試料Cでは、それぞれ、基板上に保護膜を形成してあり、その保護
膜のWVTRをCa法で測定している。また、試料Aと試料Bと試料Cとで、保護膜の厚さ
は同じにしてある。なお、試料Aと試料Bは、上記「検討の経緯」の欄で述べた保護膜に相
当し、試料Cが、本実施の形態の保護膜16に相当。

また、 図22のグラフに示されるように、WVTR(単位:g・m-2・day-1)は、試料
Aが1.7×10-3で、試料Bが3×10-4であるのに対して、試料Cは、検出限界以下
であり、1×10-6以下であった。この結果から、試料Aおよび試料Bに比べて試料Cは、
保護膜の水分透過率が非常に小さくなっていることが分かる。これは、保護膜16に相当す
る試料Cの保護膜が、試料Aや試料Bの保護膜に比べて、水分を通過させにくく、水分の侵
入を防止する膜として非常に優れていることを示す。上述のように、絶縁膜16aとその上
の絶縁膜16bとその上の絶縁膜16cとの積層膜を、水分防止膜として用いることで、有
機EL素子に水分が伝達されるのを的確に防止することができる。

     

❑ 特許事例2

特開 2018-04161018 有機EL表示装置 

【概説】

有機EL表示装置は、例えば、液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認
性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような照明装置を要しないため、
薄型化が可能となっている。有機EL表示装置では、発光効率を向上させるため、種々の検
討がなされている。例えば、特許文献(特開2006-302879号)に開示されるように、キャッピ
ング層を設ける方法が提案されている。この
方法によれば、有機発光ダイオードからの光を
効率良く外部に出射させて発光効率を向上させ得るが、さらなる発光効率の向上が求められ
ている。そこで、本発明は、発光効率に優れた有機EL表示装置を実現にあって、下図3の
ように、有機EL表示装置であって、有機EL層と、有機EL層の光の出射側に配置される
上部電極と、発光材料を含み、上部電極の有機EL層が配置される側とは反対側に配置され
る発光材料含有層とを有し、発光材料が有機EL層から発光した光により発光する構成構造
/構造技術が提供されている。



図1 有機EL表示装置の回路構成の一例を示す概要図
図2 有機EL表示装置の回路図の一例を示す図
図3 有機EL素子構造の断面の一部を示す断面図
図4 有機EL表示装置の各発光素子を対比して示す層構成図

【符号の説明】

10  有機EL表示装置、11  表示領域、12  データ駆動回路、13  走査駆動回路、
14  走査線、15  データ線、16  電位配線、17  第1の電位供給配線、18  第2
の電位供給配線、20  ドライバトランジスタ、21  ソース電極、30  スイッチトラン
ジスタ、40  蓄積容量、50  付加容量、60  有機発光ダイオード、100  基板、
201  第1の発光素子、202  第2の発光素子、203  第3の発光素子、401 
TFT層、402  平坦層、403  金属層、404  絶縁層、405  アノード電極、
406  バンク層、407  有機EL層、408  カソード電極、409  第1の封止膜、
410  第2の封止膜、411  第3の封止膜、421  第1のキャッピング層、422 
第2のキャッピング層、420  発光材料含有層

 Mar. 19, 2018  The Washington Post

● 今夜の寸評:世界の反動リスク

ぼんくらや偏重のリーダーが世界を跋扈しガチャガチャするのはするのはいいが、その責任
は取れない(取らない)リスクが残こされるだけである。ここでの肝は「易きに衝かず」だ
が、それができればことは丸く収まる。

  ● 今夜の一曲

YELL』 いきものがかり 作詞/作曲:水野良樹

「“わたしば”、今とこに在るの」と

踏みしめた足跡を何度も見つめ返す

枯葉を抱合秋め<窓辺に

かじかんだ指先で夢を描いた

翼はあるのに飛べずにいるんだ

ひと引こなるのが恐<てつらくて

優しいひだまりに肩寄せる日々を

越えて僕ら孤往な夢へと歩<

サヨナラは悲しい言葉じゃない

それそれの夢へと僕らを繋ぐYELL

ともに過ごした日々を胸に抱いて

飛び立つよ独りで未来(つぎ)の空へ.....



 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

全固体電池革命

2018年03月09日 | ネオコンバーテック

 

               尽心(じんしん)    /    孟子    

                                 

         ※ 心は活かして使え:伺かの機会に、ああ、かわいそうだと感じること
              がある。そのときの心を、ふだん平気で見すごしていた事がらにまで
              広めたもの、それが仁である。また、絶対によくないことだ、やるま
              いと決心することがある。そのときの心を、いままで平気で行なって
              きた事がらにまで広めたもの、それが義である。

       たとえば、他人を不幸にしたくないと思う心を拡大するなら、かぎり
       なく大きな仁となる。盗みははたらくまいと思う心を拡大するなら、
       かぎりなく大きな義となる。他人から名を呼び棄てにされたくないと
       いう気持を大切にし、自分にそれだけの実質を育ててゆくならば、行
       なうことすべて義の道に適うのである。

       盗みにもいろいろある。言うべきでないのに言い出すのは、何かを探
       り出す魂胆なのだ。言うべきことを言い出さないのも、やはり沈黙で
       何かを探り出す魂胆なのだ。これらも盗みのたぐいである。



     No.166

【蓄電池篇:最新全固体蓄電池技術】 

再生可能エネルギーこと自然エネルギーの世界的シフトの時代にあって、移動体用と定置用二次
電池の
大容量化の有力候補として、全固体蓄電池による革命がはじまっている。このブログでも
不定期に関連情報とその深掘りを行ってきたが、今夜も最新特許事例を掲載することでわたし(
たち)の(タイムライン上の)立ち位置を確認しておきたい。

周知の通り、
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極及び正極の間に挟まれた電解質
とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充放電を可能とした蓄電池。リ
チウムイオン二次電池には、従来、電解質として有機電解液が用いられてきたが、有機電解液は
液漏れを生じやすく、また、過充電または過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれも
あり、信頼性と安全性のさらなる向上が求められている。

このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されお
り、全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電
池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になる
とされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすること
ができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べてエネルギー高密度化が可能となるの
で、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。

❑ 特開2018-037230  全固体二次電池用負極シートおよび全固体二次電池の製造方法

【概要】

次世代のリチウムイオン電池として全固体二次電池の開発計画が進められている。❶例えば(下
図、特開2001-102066 参照)、活物質を酸化物ガラスで結着して成る正極と負極との間に酸化
物系無機固体電解質を介在させた発電要素を、グラファイトシートから構成した集電体を介し、
直列に積層/極群させたリチウム電池が、高エネルギー密度で、安全性と信頼性に優れる技術が
公開されて、全固体二次電池の開発の進行とともに、容量密度の向上やサイクル特性の向上等、
全固体二次電池の高性能化に対する要求が高まっており、上記の記載事例は、集電体をグラファ
イトシートの単層で形成することにより、集電体の重量を低く抑え、また電極と集電体との接触
抵抗も低減しているものの、❷グラファイトシートは、高分子フィルムを高温(例えば、2400℃)
で熱処理するため、ヘテロ原子を多く含有し、グラファイト構造とは異なり、リチウムイオンの
吸蔵量(容量密度)が不十分である。❸また、負極活物質がランダムに配置されていることによ
り、活物質の体積変化もランダムに発生し、充放電を繰り返すと、活物質間に間隙が生じ、サイ
クル特性が十分でなく、容量密度の向上およびサイクル特性の向上に対する要求に十全な対応が
困難である。このように
、ヘテロ原子の含有量を特定量以下に抑えたグラファイトシートが、全
固体二次電池において、負極集電体として機能するだけでなく、負極活物質層としても機能する
こと、充放電に伴う体積変化の方向を膜厚方向に規制でき、電池の長寿命化にも寄与する。 



下図のように、全固体二次電池の負極として用いることにより、優れた容量密度およびサイクル
特性を実現できる全固体二次電池用負極シートおよび全固体二次電池を提供にあって、周期律表
第1族また第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)を含有する固体
電解質層を、ヘテロ原子 質量%以下のグラファイトシート(B)上に有する全固体二次電池用
負極シート及び全固体二次電池を提供する。



【符号の説明】

1 負極集電体兼負極活物質層(負極) 2 固体電解質層 3 正極活物質層 4 正極集電体 5 作動
部位 10 全固体二次電池 11 2032型コインケース 12 全固体二次電池用シート 13 イオン伝
導度測定用治具または全固体二次電池

 【表4 電池評価】



【特許請求範囲】

    1. 周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質
      (A)を含有する固体電解質層を、ヘテロ原子1質量%以下のグラファイトシート(
      B)上に有する全固体二次電池用負極シート。
    2. 前記固体電解質層が、分散剤(C)を含む請求項1に記載の全固体二次電池用負極シ
      ート。
    3. 前記分散剤(C)が下記一般式(1)で表される請求項2に記載の全固体二次電池用
      負極シート。 式中、αは環構造を示し、Rは環α構成原子と結合している置換基
      を示し、mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数のRは同じでも異なっ
      てもよい。隣接する環α構成原子に結合するR1同士は、互いに結合して環を形成し
      てもよい。
    4. 前記グラファイトシート(B)が複数の孔を有し、真密度(g/cm)>前記無機
      固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である請求項1~4のいずれか1項に記
      載の全固体二次電池用負極シート。に対する見かけ密度(g/cm3)の割合が60
      ~98%である請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体二次電池用負極シート。
    5. 前記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である請求項1~4のいずれか
      1項に記載の全固体二次電池用負極シート。
    6. 正極活物質層と、請求項1~5のいずれか1項に記載の全固体二次電池用負極シート
      とを具備する全固体二次電池。

❑ 特開2018-037341 全固体電池の製造方法

【概要】

下図のように金属アルコキシドを原料としたLAGP  が含まれる正極層と負極層を備えた全固体電
池の製造方法を提供にあって、一体的な焼結体からなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方
法であって、非晶質のLAGPと正極用の電極活物質、および非晶質のLAGPと負極用の電極活物質
を混合した正極材料、および負極材料を作製するステップと、層状の正極材料と負極材料との間
に層状の固体電解質材料を挟持してなる積層体を焼成して積層電極体を作製するステップ(s6b)と
を含み、正極材料と負極材料の作製ステップでは、水系ストック溶液と金属アルコキシドを含ん
だ有機系ストック溶液との混合溶液に粉体状の電極活物質を混合し(s1a、s1b、s2、s10)、混合溶液
と電極活物質との混合物を不活性雰囲気で焼成よりも低い温度で熱処理し(s6a)、焼成ステップで
は、不活性雰囲気で650℃以下の焼成温度で積層体を焼結させる技術を提供する。

図2

【概説】

積層電極体の製造方法としては金型を用いて原料粉体を加圧して得た成形体を焼成する方法(以下、
圧縮成形法とも言う)や周知のグリーンシートを用いた方法(以下、グリーンシート法)などがある。
圧縮成形法では、金型内に正極層、固体電解質層、および負極層の各層の原料粉体を順次層状に
充填して一軸方向に加圧することによって得た成形体を焼成して積層電極体を得る。


グリーンシート法は、正極活物質と固体電解質を含むスラリー状の正極層材料、負極活物質と固
体電解質を含むスラリー状の負極層材料、および固体電解質を含むスラリー状の固体電解質層材
料をそれぞれシート状(グリーンシート)に成形するとともに、固体電解質層材料のグリーンシー
トを正極層材料と負極層材料のグリーンシートで挟持した積層体を焼成して焼結体にすることで
作製される。なお正極層および負極層(以下、電極層とも言う)に含まれている固体電解質は、粉
体状の正極活物質および負極活物質の表面に被膜されつつ、電極活物質の粒子間に介在すること
で電極層でのイオン伝導性を発現させる機能を担っている。

正極活物質や負極活物質(以下、総称して電極活物質とも言う)としては従来のリチウム二次電池
に使用されていた材料を使用することができる。また全固体電池では可燃性の電解液を用いない
ことから、より高い電位差が得られる電極活物質についても研究されている。固体電解質として
は、一般式LiaXbYcPdOeで表されるNASICON型酸化物系の固体電解質があり、このNASICON型酸
化物系の固体電解質としては、以下の特開2013?45738号公報に記載されているLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3
(以下、LAGPとも言う)がよく知られている。そしてLAGPの作製方法としては、金属アルコキシド
を原料とした周知のゾルゲル法があり、非特許文献1(Masashi Kotobuki, Keigo Hoshina, Yasuhiro-
Isshiki
, Kiyoshi Kanamura、「PREPARATION OF Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3 SOLID ELECTROLYTE BY
SOL-GEL METHOD」、Phosphorus Research Bulletin 、Vol.25(2011)、 pp.061-063
)にはゾルゲル法に
よるLAGPの作製方法について記載されている。また非特許文献2(大阪府立大学 無機化学研究グ
ループ、"全固体電池の概要"、[online]、[平成28年8月1日検索]、インターネット<URL:http://w

ww.chem.osakafu-u.ac.jp/ohka/ohka2/research/battery_li.pdf>
)には全固体電池の概要について記載さ
れている。

【特許請求の範囲

    1. 一体的な焼結体で、正極用の電極活物質と固体電解質を含む正極層、固体電解質を含
      む固体電解質層、および負極用の電極活物質と固体電解質を含む負極層がこの順に積
      層されてなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方法であって 一般式Li1.5Al0.5
      Ge1.5(POで表されるLAGPを前記固体電解質として、非晶質状態の前記
      LAGPと前記正極用の電極活物質とを混合した正極材料と、非晶質状態の前記LA
      GP
      と前記負極用の電極活物質とを混合した負極材料を作製する電極材料作製ステッ
      プと、層状の前記正極材料と層状の前記負極材料との間に、前記LAGPを含んだ層
      状の固体電解質材料を挟持してなる積層体を焼成することで前記積層電極体を作製す
      る焼成ステップと、を含み、前記電極材料作製ステップでは、前記LAGPのリチウ
      ムとリンの起源となる原料を含んで水を溶媒とした水系ストック溶液と、前記LAG
      のゲルマニウムとアルミニウムの起源となる金属アルコキシドを含んでアルコール
      を溶媒とした有機系ストック溶液との混合溶液を用いたゾルゲル法によって前記LA
      GP
      を作製するLAGP作製ステップと、前記混合溶液に粉体状の電極活物質を混合
      する活物質混合ステップと、前記混合溶液と前記電極活物質との混合物を不活性雰囲
      気で前記焼成ステップにおける温度よりも低い温度で熱処理して非晶質の前記LAG
      を生成させるガラス化ステップと、を実行し、前記焼成ステップでは、不活性雰囲
      気で650℃以下の焼成温度で前記積層体を焼結させる、ことを特徴とする全固体電池
      の製造方法。
    2. 請求項1において、前記LAGP作製ステップでは、前記有機系ストック溶液を露点
      -40℃以下の乾燥雰囲気で調合することを特徴とする全固体電池の製造方法。
    3. 請求項1において、前記LAGP作製ステップでは、前記有機系ストック溶液を露点
      140℃以下の乾燥雰囲気で調合することを特徴とする全固体電池の製造方法。
    4. 請求項1または2において、前記焼成ステップでは、200℃/h以上の速度で前記
      焼成温度まで昇温させることを特徴とする全固体電池の製造方法。
    5. 請求項1~3のいずれかにおいて、前記LAGP作製ステップでは、前記水系ストッ
      ク溶液の溶媒である水のモル数を、前記有機系ストック溶液の溶媒であるアルコール
      のモル数で割った比が0.1以上5未満となるように前記混合溶液を調合することを
      特徴とする全固体電池の製造方法。
    6. 請求項4において、前記LAGP作製ステップでは、前記水系ストック溶液と前記有
      機系ストック溶液との混合溶液に、さらに前記アルコールを追加することで前記比が
      0.1以上5未満となるように当該混合溶液を調合することを特徴とする全固体電池
      の製造方法。
    7. 請求項1?5のいずれかにおいて、前記LAGP作製ステップでは、前記水系ストッ
      ク溶液の溶媒である水のモル数を、前記有機系ストック溶液中の前記ゲルマニウム
      の起源となる金属アルコキシドのモル数で割ったときの比が170以下で、前記水の
      モル数を、前記アルミニウムの起源となる金属アルコキシドのモル数で割ったときの
      比が523以下となるように前記混合溶液を調合することを特徴とする全固体電池の
      製造方法。

以上、今夜は2つの事例しか掲載しなかったが、要注目情報である。眠れぬ夜が続く。実に面白い
時代だが、健康管理が大事で「インフル花粉症」「虫歯」「膀胱炎」などなど対策もある。凄い
時代だね、だよねぇ。


     

 なぜ、かまぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか ❦ No.15   
  

    ● 対談3 新しい現実をつくる  

   『3・11以降は、この国のありようを変えるチャンス』    

                              河野太郎 衆議院議員・現外務大臣  

 

自民党所属。1963年神奈川県生まれ。慶臆義塾大学経済学部中退。アメリカ・ジョージタウ
ン大学卒業。アメリカ滞在中、ワシントンで政治活
動にもかかわり、アメリカの大統領選挙に立
候補したアラン・クランスト
ン上院議員の遺財本部の財務部門でボランティアをしたり、リチャ
ード・
シェルビー下院議員の下でインタjンを務めた。帰国後、富士ゼロックスに入社。2年間
のシンガポール勤務などを経て、日本端子に入社。1996
年に衆議院選挙で初当選。核燃料サ
イクルには明確に反対しており「原子
力は経済採算性は合わない≒原子炉の新設はしないという
ことを政治主導
で決めるべき」と語っている。著書に『私が自民党を立て直す』(洋泉社新書/
2010)『原発と日本はこうなる南に向かうべきか、そこに
住み続けるべきか』(講談社/2
011)『「超日本」宣言わが政権構想』
(講談社/2012)、共著に『「原子カムラ」を超
てポスト福島のエネ
ルギー政策』(NHKブックス/2011)などがある。

  中小企業ができること、守りたいこと

 鈴木 私どもエネ経会議は地域の中小企業の経営者の集まりですが、いわゆる電気エネルギ
 ーを使わせてもらっている立場からすると、前もって15パーセントを数時間という
ことを
 言ってくれれば、いくらでも事前に手は打てるんですね。24時間ずうっと15パー
セント
 ということだとなかなか難しいかもしれませんが、ちゃんとした活か何ヵ月か前
に出てくれ
 ば十分に対策はできるんです。あとは総電力使用量を節電しながらどうやっ
て減らしていく
 かということをじっくり考えていくだけです。
 それにつけても、もったいないと思うこと
 があります。中小企業のオヤジというのは機械を買うと長く使うにはどうしたらよいか、耐
 用年数が10年のものでも15年、20年使うにはどうしたらよいかを考えるわけです。ところが、
 冷蔵庫や冷凍庫は技術革新が進んで、10年前に比べると電気の使用量が2割、3割少なくて
 済むわけですね。それなのに替えない。心のどこかにスケベ心があって、そのうち原発が動
 いてしまって電気代が下がってしまったら投資しただけ損してしまう、そういうソロバンを
 はじくためです。

 逆に考えれば、とりあえず原発なしでやってみようということがきちんとした方針として打
 ち出されれば、私たちは別のソロバンをはじいて、新しい設備に替えれば3年、5年で元が
 取れるなと思ってコ介に動くわけです。そうすると、結果的に新しいビジネスチャンスが生
 まれてきますし、技術革新が一層進むでしょうし、さらに電力使用量が減るという、よりよ
 い循環が生まれると思うんです。それなのに、このチャンスをなんで逃しちゃうのかな、何
 を言ってもダメなのかな、そう思えてしまうのが残念でなりません。

 ただ、純粋に考えてみれば、私たちに日本の国民の力を信じて、経営者のそういうたくまし
 さを信じて号令かけてくれれば、われわれがコ介に努力しますから、今年の夏を乗り切るの
 くらいわけなくできると思います。実際に2011年の夏はやりましたから。

 河野 やりましたねえ。あれを毎年やれと言われてもなかなか、きびしいけれども、ひと夏
 きちんと計画を立てて節電をやりましょうよといえば、かなりの節電ができると思う。去年、
 あれだけ節電してバブル時の電力使用量に戻りました。バブルのときから電力使用量が相当
 伸びていますから、抑えようと思ってやれば抑えられると思うし、税制をうまくするとか、
 規制緩和をやるとか、償却期回を変えるとか、後押しをすることは可能だと思います。

 鈴木 中小企業の経営者として、日々、売り上げをどう上げるかとか、今月の給料を社員に
 払えるかなど、切った、張ったに明け暮れているわけですが、心のどこかでふるさとをどう
 やって先へ渡していくか、そういうことを考えています。私たちは小田原でかまぼこをつく
 っておりますが、万がI、小田原でやれなくなってしまったとき、どこかへ行ってやろうと
 しても難しい。それを考えると、小田原というふるさとは未来から借りたものだから未来に
 どう返していくか、そういう思いが深まってきます。そうはいっても目の前のソロバンは犬
 切なので、両方が成り立つように考えていくと、いま、よりはるかにいいでしょう。そうい
 うやり方を選択するにはやっぱり分散型の再生可能エネルギーが向いています。地方の活性
 化の切り札にもなりえるでしょう。



  この国を変えていくターニングポイント

 鈴木 今回の原発の問題、エネルギーの問題は、それだけにとどまらず、地域のあり方、地
 域の独立、地域と国の関係ということもクローズアップされたように思います。
 河野 ありようを変えるチャンスですよ。

 鈴木 いい意昧での最後のチャンス、大震災の直後で難しいかもしれませんが、チャンスで
 あることは間違いないと思います。日本人は戦争をして原爆を経験してと、いままで何度も
 危機を乗り越えてきていますし、今度も乗り越えられると思います。鍵は私たち自身が腹を
 くくれるかどうかではないでしょうか。

 河野 政治家がビジョンをちゃんと見せて、向こうにはこういう日本があるよという具合に、
 具体的に示すことが大事だと思いますね。

 鈴木 ところが、なかなかそうなっていかない。カベはやはり利権の構造でしょうか。それ
 とも電力会社の問題もあるのでしょうか。たとえば、経営に変更が利かない何か特有の難問
 を抱えているとか。
 河野 でも、いまの総括原価方式だと、よっぽどヘマをしないかぎり赤字にはならないわけ
 ですから、こんな楽な経営方法はないと思いますよ。
 鈴木 結局、そこなんでしょうかね。だから、会社のトップに立つと俺の代で変えるような
 ことは言えないという……。

 河野 東京電力の荒木浩さんという社長、会長、相談役をやられた方は電力会社を普通の会
 社にしないといけない、電力業界を普通の業界にしないといけない、これが私の使命だとお
 っしやった。東京電力のスキャンダルで責任を取らされてしまったのが残念です。
 ところで、電力会社の中は原子力をやっている部局だけではないので、たとえば六ケ所村の
 再処理工場をどうするかというようなとき、たぶん、電力会社としては後ろ向きだったと思
 うんですよ。それなのに原子力をやっている部門がもう前のめりになっちやった。「産道に
 出てきた赤ん坊はとめられない」みたいな東電の南直哉元栓長の名言があって、実は、みん
 ながおかしいと思っているけど、とまらなかった。いまだに六ケ所村の再処理工場は問題だ
 らけで動かない。あれだって何月に竣工しますといって、直前になって延期を19回している
 わけだから、それも、ぎりぎりまで間に合うふりをしてです。



 鈴木 究極の責任の先送りという気がしますよね。よくダーウィンの進化論を持ち出してき
 て、生き残る者は大きいとか小さいとかに関係なく、いかに変化に対応するか、その術を心
 得ているからだといわれます。マネジメントの教科書にそれがよく出てきます。
 確かに現実に世の中がどのように変わっていくか、的確に早めに読んで、それに合わせてい
 くというこどが大切なんですが、どうも日本の企業を見ていると、特に大企業になればなる
 ほどそればかりやってきているような気がしてなりません。
 たとえば、原発をやってきた3栓は巨大企業じやないですか。世界的にも影響力のある企業
 でありながら、トップが「これからの世界の子不ルギーはこうあるべきだ。その中でわが栓
 はこういう役割を演じたいと思っています。だから、こうします」と、なんでそういう言い
 方が出てこないのかと不思議に思います。極論ですが、あれで会社の経営をやっていておも
 しろいのかなと思ってしまいます。

 河野 われわれが地方へ行くと、地方の経済界を背負っているのは必ずその地域の電力会社
 で、みんなそこを向いちゃっています。この地域の経済はこうやろうぜという前にもう最初
 から電力会社を筆頭に序列ができていて、そこがエスタブリッシュメントで、枠外みたいな
 のが騒いでいるというようなパターンをよく見受けます。それが中央へ行くと経団連があっ
 て、IT企業やら何やら新興企業が騒いでいる。そうじゃないと思うんですよね。やっぱり、
 会社だって寿命があって変わっていくなかで、どうやって老舗の地位を守っていくか。うち
 は社会にこういう貢献をしている、そこで利益をもらっている。老舗には老舗の行持がある
 と思います。

 鈴木 大きな上場会社というのは社会貢献という面でもものすごく能力が高いだろうと思い
 ます。だけどスタンスというのが、自分が社長の間はいかに株価をきちっとキープするか、
 そういうことが優先されてしまって、「もしかしたら直近の時点では会社にとってマイナス
 かもしれないけれども、近い将来のことを考えたらやるべきだ」という会社としての決断が
 なかなかしにくい。
 政治の世界も同じようなことではないかと思いますが、総理大臣になってもこの国は物事が
 決められない、変えられない。私たちはけっして政治をあきらめてはいけないと思いますが、
 それはそれとして自分たちにこれならできるというところから始めて、小さいことから動か
 していく。自分の会社とか、地域とかでやれるところで変えていく。
 小さいからできるということがあるはずなので、それを無数に連ねていけば、ゆくゆくは大
 きな力になるのではないかというのが私たちの考えです。
 とりあえず再生可能エネルギーに関しては、日本ではまだ数パーセントなので、あんなもの
 は頼みにならないという議論がありますが、「自分の会社は20パーセントやっている」「
 自分の地域はやっと5パーセント」とか、そういう規模であればできますよね。きなり30
 パーセント、50パーセントやろうとしてもできませんが、自分の影響力の及ぶ範囲で始め
 る、その仲間を無数に全国規模で連ねることができたら、おのずと20パーセント、30パ
 ーセントという規模に達するのではないかと思います。いまの経済界にいくら言っても変わ
 らなければ、自分たちでやれることから連やかに着手して新しい現実をつくっていこうとい
 うことなんです。



   市民が参加する政治ヘ

 河野 本当は政治がもう少しきちんと対応しないといけないんでしょうけど、大企業の取締
 役会が機能していないのと同じことで、政治も予定調和というか、表で議諭しないから、与
 野党で裏で協議して結論が出てから表に出てくるというかたちだから、なかなか真剣に議論
 できない。国民の前で本音で議論して決めるのが本当なのに、大企業も、国会も、オープン
 にして真剣な議論ができない。特に大企業は中から選ばれてきているから、どこを向いてい
 るかというと中を向いているような気がするんですよね。政治もそうやってなんとなく押し
 出された人がとりあえず中を見て、外を顧みない。それを変えないといけない。

 鈴木 日本人にそれがやれるんだろうかと、最近、私は懐疑的になりかけているんです。

 河野 それこそ学校から自治会から神社の総代会まで阿吽の呼吸が幅を利かせていることが
 確かに事実としてあって、そこで何か言うと「空気が読めないヤツだ」なんていうことにな
 っちゃう。みんながボランティアでやっている神社の総代なんかはみんなで気を遣いながら
 やらなきやいけないと思うけれども、世の中で選ばれて仕事でやっている政治は別物だと思
 うし、企業だって会社を背負って指揮命令系統で動いているわけだから、「仕事だろ」とい
 う部分がある。それがなんとなく混同されて一体化してしまっているところに問題の根があ
 るように思います。

 鈴木 いま、一つの政治のスタイルとして、いわゆるプロの政治家にお任せするのではなく
 て、自分たちの問題として街のことも考えて、自分たちの意見として直接いってやっていく
 という、そういう市民参加型の政治がこれからの姿だという見方もあると思うんです。日本
 にふさわしいのはどっちなんでしょうか。

 河野 もともと日本はみんなのことはみんなで決めてきたわけです。多少、空気を読みなが
 らというところはあるかもしれないけれども。ところが、最近、市役所なんかへ行くと「5
 番の番号杜をお持ちのお客様」と言う。市役所が市民を「お客様」と言っています。あなた
 はお客で、われわれは行政をやる、そりゃ違うだろと思います。みんなでやっていくことが
 大事なのに、それを「俺はお客様だから、これこれやってくれ」と言い、やっている側も「
 税金をもらっているんだからやりましょう」みたいなかたちにしてしまうと、その代わり税
 金もどんどん高くなりますよ。でも、それはお客様のニーズですからみたいな話にしてしま
 いかねない。

 鈴木 そのうち、言うこと聞かなくなってしまうわけですよね。勝手なことを言うヤツだか
 ら、ほっとけみたいな。
 河野 そうです、そうです。お客様の言ってることは信用できないから、とりあえず聞いて
 おけで済まされてしまう。

 鈴木 とりあえず聞きましたで、何も変わらない。
 河野 この情報を出すとお客様が騒ぐから「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネッ
 トワークシステム)」は隠しておきましょうみたいなことにだんだんなっていく。執行する
 側は役所かもしれないけれども、そこはみんなでいろんな議論をしたうえで決める、そうし
 ないといけない。

 鈴木 この間、地元の商工会議所でアメリカのオレゴン州ポートランドヘ視察旅行に行って
 きたんです。全米で一番住みたい街だといわれている都市で、毎週500人くらい人口が増
 えている。それほど人気のある都市なんです。地産地消も進んでいる。そこの市の仕組みを
 聞いてびっくりしました。人口が60万人くらいいるのに、市会議員が4人しかいないんで
 す。当然、4人では細かいことまで手がまわらないので、100とか、200とかの委員会
 があって、その全部に市民がメンバーになって参加して直接やっている。だから、街のこと
 を他人事ではなくて自分事として考えるということでした。ある意味、理想的だという気が
 しますが、日本ではどうかなとも思ったんです。市議会は機能しているのでしょうか。

 河野 市議会は大統領制みたいなものですから、一人ひとりが一つひとつの議案に関して「
 賛成しました」「反対しました」というのが出ないといけないわけですが、それなのに賛否
 を会派でしか出さないみたいなところがあったり、市議会の議事録が次の日に出ていないと
 いうところがたくさんあって、結局、どういう議論をしたのか見たくても見ることができな
 い。議事録は市議会が閉会してから掲載されますみたいなところがあって、そうやって市民
 をだんだん遠ざけていく。

 鈴木 遠ざけられてしまうから、市民も市会議員を垂く見なくなってしまって、市長に陳情
 ばかり集まってしまうわけですね。そういう意味で、今回、エネルギーのこと、特に原発を
 どうするのかとか、日本のこれからの行く末を決めていく大切なタイミングにさしかかって
 いる、そういう思いを強くしているんです。日本の問題点を一人ひとりが考えないといけな
 いと思います。
 あとはこの国の目指すべき姿として子不ルギー、原発を論じるうえで必ず出てくる言葉が、
 「そうはいっても原発をとめたらそこの人たちが食えないじやないか」というのと、「日本
 が原発から手を引いてしまうと、国家安全保障上、非常に危ない。だから、日本は原発をや
 っていかないといけない」というこの2つです。まず前者ですが、原発をとめても仕事はな
 くなりませんよね。

今回も、特に異論はない、次回は「原発をとめても仕事はなくならい」に移る。

                                   この項つづく

 ● 今夜の一曲

 

「スマイル」(原題:Smile)は、1936年のチャールズ・チャップリンの映画『モダン・タイムス』
で使用されたインストゥメンタルのテーマ曲で、チャップリンが作曲した曲。数多くの音楽家に
よりカバーされているが、ナット・キング・コールが1954年にリリースしたカバー版が追憶の歌
として今も色褪せることはない
1954年にジョン・ターナーとジェフリー・パーソンズが歌詞と
タイトルを加えた。歌詞では、歌手が聴衆に対して笑っている限りは明るい明日が常にあると元
気付けている。「スマイル」はチャップリンの映画で使用されて以来、スタンダードとなる。


  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蓬春と湘南電力

2018年02月05日 | ネオコンバーテック

 

                    万章(ぱんしよう)    /    孟子    

                                  
   
        ※ 諌めても聞き入れられなければ:斉の宣王が、孟子に、大臣のあり方
         についてたずねた。すると、孟子はきいた。「どの大臣のことをおた
         ずねですか」「大臣といえばみな同じではあるまいか」「いえいえ、
         親族の大臣も、親族関係でない大臣もいます」「では親族の大臣につ
         いてお伺いしたい」「君主に重大な過失があれば、諌めます。たびた
         び諌めても関きいれられないときは、君主をとりかえるのです」王は
         さっと顔色をかえた。孟子は言った。「お気を悪くなさいますな。王
         のたってのおたずねなので、あえて正しい答えを申しあげたまでです」
         王は顔をやわらげ、ついで親族関係でない大臣についてたずねた。孟
         子は答えた。「君主に過失があれば諌め、たびたび諌めて聞き入れら
         れなければ、その国を立ち去るのです」

        【解説】 君主をとりかえよ、見切りをつけて去れ、とは激しいことば
         である。しかし、高位につくのは一身のためではないという孟子の持
         説からすれば、当然すぎるほど当然のことである。

       ※ 古人を友とする:孟子が万章に言った。「一村の善士(品行正しく徳
         を積んだ人)は一村善士を友とする。一国の善士は一国の善士を友と
         する。天下の善士は天下の善士を友とする。天下の善士を友としてな
         お不足を感ずるならば、歴史をさかのぽってむかしの人物を考えるの
         だ。その人の詩を口すさみ、その人の書物を読むだけでなく、人とな
         りを理解しなければいけない。そこで、さらにその時代の背景を考え
         る。これがさかのぼって友を求めるということだ」 

 

日曜美術館「山口蓬春 絵に年をとらせるな」

日曜日、テレビで昭和を代表する日本画家山口蓬春が紹介されていた。近年、葉山にある記念館で日記
や手紙などの整理が進み、人と作品に新しい光が当たり、「絵に年をとらせるな」という言葉に注目さ
れているという。蓬春は常に新しい表現を模索し続けた。大和絵で華やかなデビューを飾るが、戦争中
藤田嗣治とともに新しい表現を模索する。戦後、「蓬春モダニズム」と呼ばれる絵で画壇のスターとな
るが、それにも飽き足らず事物の本質を描こうと変わっていく姿が浮き彫りにされる。山口 蓬春(やま
ぐち ほうしゅん、1893年10月15日 - 1971年5月31日)は、日本画家。北海道松前郡松城町(現・松前町
)生まれ1913年に東京・高輪中学校を卒業後、東京美術学校(現・東京芸術大学)に進学。松岡映丘に
師事し、大和絵を習得。23年卒業、1924年新興大和絵会に参加する。26年帝国美術院賞受賞。29年帝展
審査員。50年日展運営会参事、日本芸術院会員、54年日展運営会理事、58年日展常務理事、1965年文化
勲章受章、文化功労者。69年日展顧問。

● 蓬春モダニズムの展開

昭和22年、蓬春は疎開先の山形・赤湯から帰り、葉山に移る。さらに、1年半後には現在の記念館とな
っている一色海岸近くに待望の新居を構えるが、ちなみにこの画室は28年に同窓の建築家吉田五十八が
設計したモダンな内装である。海に近いこの画室から夏の葉山の海岸を思わせるモチーフがたびたび登
場することになる。戦後の発表の舞台は日展が中心となり、第3回日展に出品した《山湖》が始まりで
あった。昭和20年代、日本画滅亡論が唱えられるころ、日本画は急速に西欧近代絵画を吸収する。その
なかで、蓬春は19世紀の以後のフランスを中心とした絵画に接近し、戦時の表現を払拭した新しい日本
画を積極的にめざし、時代の思考や感覚をもとに近代の造形性を消化してゆく。漫然とした概念的な自
然描写を排した表現や「もっと明るく、もっと複雑な、もっと強い、もっとリズミカルな」と言う蓬春
の色感は、新鮮な画面を生み出している。独特の造形感覚とともに、《望郷》にみられるようなしばし
ば卓抜した感性は、蓬春芸術のみせる大きな魅力でもある。こうした蓬春の作品は発表のたびに話題と
なり、明るく近代的な造形の追求は、"蓬春モダニズム"とよばれる世界を創出する。

● 新日本画の創造

西洋画、古典大和絵から出発し、時代に即した日本画の創造を目指した蓬春。その画業においての最終
的な課題は、和洋の真の融和とされる。
かつては大和絵の文学的抒情性から抜け出すために、人物や動
物は画面から消し去られていた。蓬春は『新日本画の技法』の中で「構図の為に殊更に鳥を配置するよ
うなことはせず、たとえ鳥が無くても、自然感の出るものは、強いて鳥を配する必要はない」「従来の
花鳥画には、無理に不自然な鳥を配するような悪習慣がある」と述べている。
それが晩年に至り、《春
》《夏》《秋》《冬》の連作を描き始めてから再び登場する小鳥の姿には、伝統的日本画の画題にあえ
て挑戦する蓬春の円熟した境地が窺える。
現代の視点によって再び捕らえ直された花鳥画。同じモチー
フにより繰り返し描かれた静物画。テーマを絞り込んだ晩年の作品では、岩絵具の清澄な色彩はますま
す深みを増し、洗練された構図と共に、近代的な明るさに満ちている。それこそ画家が独自に到達した
新日本画の姿と見ることができると表される。
誰かが蓬春のレベルを維持しなくてはならない 蓬
春死後、美術評論家河北倫明氏はそう語る。蓬春芸術は、西洋画、日本画を超えた近代日本美術の一つ
の頂点として湘南で巨匠が創作を行った地である。

  鈴廣蒲鉾本店 

  

 ❦「再生可能エネルギー連続講座」第2回 ❦

● ふるさとは未来からの借り物

昼から、滋賀県立大学「近江環人地域再生学座」卒業生を中心とするNPO、環人8プラス主催の『再生
可能エネルギー』をテーマにした連続講座に参加。この講座は、湖東地域の方々を中心に『再生可能エ
ネル
ギーの推進』の理解を深めるため、自らが再生可能エネルギー推進の担い手になっていただくこと
を目
的として活動。今回、小田原の老舗かまぼこ店、鈴廣かまぼこ株式会社の鈴木悌介副社長を招き、
ゼロ・
エネルギーを目指した本社ビルの取り組みの他、今後の再生可能エネルギーや鈴木氏の展望等に
ついて
講演。

さて、講師の鈴木悌介(すずきていすけ)は、下表のように、1955年神奈川県小田原市生まれ。鈴廣
かま
ぼこグループ代表取締役副社長。一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議

表理事。神奈川県立湘南高校、上智大学経済学部卒業。1981年から'91年まで、米国ロスアンジェルスに
てスリミ、かまぼこの普及のため、現地法人の立ち上げと
経営にあたる。帰国後は家業の鈴廣の経営に
参画。
慶応元年(1865年)創業の歴史を尊重しつつ、変化し続ける日本人の食生活の中で、かまぼこの存
在価値を高めるべく挑戦の日々をおくる。「食べもののい
のちを大切に」をモットーとする。商工会議
所活動にもかかわり、日本の元
気は地域からと、地域の資産を活かした地域の活性化と自立を目指す。
2000年から'01年度小田原箱根商工会議所青年部会長、'03年度日本商工会議所青年部会長、'09年第3回ロ
ーカルサミット実行委委員長などを歴任。ア
ジア商工会議所連合会若手経営者委員会副委員長。小田原
箱根商工会議所副
会長、合同会社「まち元気小田原」経営諮問委員、場所文化フオー-ラム会員。 




 Mar. 21, 2016

講演は現場の実践をもとに話され、平易にして説得力のあるものであり、何の違和感も生じなかった。
当日の資料もここで一部掲載したが、まとめてブログや環境工学研究所 WEEFのHP(あるいは「飲み水
を守る会」のブログ)に後日掲載するので参考されたし。さらには、講師の手になる『エネルギーから
経済』の感想を後日掲載し、このテーマの深掘りを残件とする。

※ 鈴木 悌介(エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議 代表理事/鈴廣かまぼこグルー
  プ副社長):FACTA ONLINEhttps://facta.co.jp/article/201403036.html

※  鈴廣かまぼこグループ 副社長、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」代表理事
   鈴木悌
介 | ひと烈風録 | 週刊東洋経済プラス | 経済メディアのプラス価値tps://premium.toyokeiza
        i.net/articles/-/15322
  

      
     
No.143

【蓄電池篇:最新酸化物/グラフェン複合材料技術】

● 分子レベルの交互重ミルフィーユ構造:高容量・長寿命化を両立

<<先月25日、NIMSの研究グループは、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重
ねた材料を合成し、リチウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料として使うことで、従来の2
倍以上高い充放電容量と、長いサイクル寿命を両立に成功する。 



図1 酸化マンガンナノシート (赤・青) とグラフェン (緑) の複合材料構造の模式図

【概要】

  • NIMSは、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重ねた材料を合成し、リチ
    ウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料として使うことで、従来の2倍以上高い充放電
    容量と、長いサイクル寿命を両立させることに成功しました。高容量だが壊れやすい酸化マンガ
    ンをグラフェンで挟んだことで、酸化マンガンの形態が保持され、長寿命との両立が実現し、二
    次電池の高容量化と長寿命化を両立する負極材料として今後の応用が期待される。
  • 二次電池の高容量化が求められる中、現在負極に使われている炭素材料に代わる材料として、高
    い理論容量を持つ遷移金属酸化物に注目されているが、層状構造の酸化マンガンは、分子1層ま
    でバラバラに剥離したナノシートにして負極に使うことができれば、表面すべてが活性部位とな
    るため、大幅に容量を向上できると考えられている、酸化マンガンは充放電を繰り返すと構造が
    壊れやすく、しかもナノシートは団子状に凝集しやすいという課題を抱えていました。
  • 本研究では、溶液中に分散させた酸化マンガンナノシートとグラフェンを混ぜ合わせ、1層ずつ
    交互に積層させたミルフィーユ構造の複合材料を合成しました (下図参照) 。酸化マンガンとグ
    ラフェンは、ともに負に帯電しており、通常は反発しあいますが、研究グループが2015年に開発
    した技術を使い、グラフェンを化学的に修飾して正に帯電させることで、溶液を混ぜるだけで交
    互に積層させることに成功しました。この材料をリチウムイオン二次電池の負極として用いたと
    ころ、でした。これは、これまでに報告さ
    れている金属酸化物系負極材料の中で最も高い容量と長いサイクル寿命です。グラフェンで挟む
    ことで、充放電によって壊れやすい酸化マンガンの構造が保持されるとともに、電極材料全体の
    伝導性を改善した結果と考えらる。
  • 今回、2種類の物質を分子レベルで複合化することで、単独の材料では実現が困難な高度な特性を
    導き出しました。本材料は、二次電池以外にも、スーパーキャパシタや電極触媒など多くのエネ
    ルギー貯蔵および変換システムに大幅な性能向上をもたらすことが期待される。

 

 DOI: 10.1021/acsnano.7b08522
Titol: Genuine Unilamellar Metal Oxide Nanosheets Confined in a Superlattice-like Structure for Superior Energy
    Storage

関連特許:特開2015-201483  超格子構造体、その製造方法およびそれを用いた電極材料

【概要】

本健は、スーパーキャパシタ、擬似容量キャパシタ等に好適な超格子構造体、その製造方法およびそれ
を用いた電極材料を提供にあって、下図1のように、
超格子構造体が、M12+イオンとM23+イオ
ンとを含有する複水酸化物ナノシートと、還元された酸化グラフェンナノシートとが交互に積層され、
M12+イオンのM1元素は、Co、Fe、Ni、Mn、CuおよびZnからなる群から少なくとも1
つ選択される金属元素であり、M23+イオンのM2元素は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni
およびGaからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素であり、層間距離は、0.8nm以上1
3nm未満の範囲である(詳細は下図クリック)。 

 【特許請求範囲】

  1. M12+イオンとM23+イオンとを含有する複水酸化物ナノシートと、還元された酸化グラフ
    ェンナノシー
    トとが交互に積層された超格子構造体であって、前記M12+イオンのM1元素は、
    Co、Fe、Ni、Mn、Cu
    およびZnからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素で
    あり、 前記M23+イオンのM2元素は、Al、
    Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびGaから
    なる群から少なくとも1つ選択される金属元素であり、層間距離は、0
    8nm以上1.3nm未
    満の範囲である、超格子構造体。
  2. 前記M1元素はCoであり、前記M2元素はAlである、請求項1に記載の超格子構造体。
  3. 前記M1元素はCoおよびNiであり、前記M2元素はCoである、請求項1に記載の超格子構
    造体。
  4. 前記複水酸化物ナノシートの厚さは、0.48nm以上1.0nm以下の範囲である、請求項1
    に記載の超格
    子構造体。
  5. 前記還元された酸化グラフェンナノシートの厚さは、0.33nm以上0.83nm以下の範囲
    である、請求項
    1に記載の超格子構造体。
  6. 前記層間距離は、0.8nm以上1.1nm未満の範囲である、請求項1に記載の超格子構造体
  7. 前記複水酸化物ナノシートは、一般式[M12+1-xM23+x(OH)2]x+(xは0<
    x≦1/3の実数であ
    る)で表される、請求項1に記載の超格子構造体。
  8. 前記複水酸化物ナノシートは、一般式[M12+1-xM23+x(OH)2][Zn-x/n
    ・mH2O](Zは陰イオ
    ンであり、nは前記陰イオンZの価数であり、xは0<x≦1/3の実
    数であり、mは0<m<1の実数である
    )で表される層状複水酸化物から単層剥離されている、
    請求項7に記載の超格子構造体。
  9. 前記還元された酸化グラフェンナノシートは、酸化グラフェンから単層剥離された後、還元され
    ている、請
    求項1に記載の超格子構造体。
  10. 前記還元された酸化グラフェンナノシートの質量として前駆体であるグラファイトの質量(G)
    を用い、前記
    複水酸化物ナノシートの質量として前駆体である前記M12+イオンと前記M23
    +イオンとを含有する層
    状複水酸化物の質量(LDH)を用いた場合、前記グラファイトの質量(
    G)に対する前記層状複水酸化物の
    質量(LDH)の比(LDH/G)は、3以上4未満である、
    請求項1に記載の超格子構造体。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載の超格子構造体の製造方法であって、M12+イオンとM23
    +イオン
    とを含有する複水酸化物ナノシートが第1の非プロトン性極性溶媒に分散したカチオン
    性溶液と、還元さ
    れた酸化グラフェンナノシートが少なくとも第2の非プロトン性極性溶媒に分
    散したアニオン性溶液とを混
    合・撹拌するステップ  を包含する、方法。
  12. 前記混合・撹拌するステップにおいて、前記還元された酸化グラフェンナノシートの前駆体であ
    るグラファ
    イトの質量(G)に対する前記複水酸化物ナノシートの前駆体である前記M12+イ
    オンと前記M23+イオ
    ンとを含有する層状複水酸化物の質量(LDH)の比(LDH/G)は、
    3以上4未満である、請求項11に記
    載の方法。
  13. 前記アニオン性溶液において、前記還元された酸化グラフェンナノシートは、前記第2の非プロ
    トン性極性
    溶媒と水との混合溶媒に分散している、請求項11に記載の方法。
  14. 前記混合溶媒において、前記第2の非プロトン性極性溶媒(F)に対する前記水(H)の体積比
    (H/F)は、
    0以上0.5以下の範囲である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記第1の非プロトン性極性溶媒は、ホルムアミド、ジメチルスルホキド、メチルホルムアミド
    およびジメチ
    ルホルムアミドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記第2の非プロトン性極性溶媒は、ホルムアミド、ジメチルスルホキド、メチルホルムアミド
    およびジメチ
    ルホルムアミドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  17. 前記混合・撹拌するステップは、前記カチオン性溶液を室温で撹拌しながら、1mL/分以上1
    0mL/分
    の速度で前記アニオン性溶液を添加する、請求項11に記載の方法。
  18. 前記混合・撹拌するステップは、前記アニオン性溶液を室温で撹拌しながら、1mL/分以上1
    0mL/分
    の速度で前記カチオン性溶液を添加する、請求項11に記載の方法。
  19. 前記混合・撹拌するステップに先立って、酸化グラフェンナノシートが少なくとも第2の非プロ
    トン性極性溶
    媒に分散した溶液に、還元剤を添加後加熱し、アニオン性溶液を調製するステップ
    をさらに包含する、請
    求項11に記載の方法。
  20. 超格子構造体からなる電極材料であって、前記超格子構造体は、請求項1~10のいずれかに記
    載の超格子構造体である、電極材料。

以上のように、❶極容量が従来の2倍以上 (0.1A/gの電流密度で1325mAh/g) となり、❷5000サイクル
充放電
を繰り返しても、❸1サイクル当たりの容量減少はわずか0.004%と、1日1充放電で約15年間
使うことができるというから驚く。

物質・材料研究機構らの研究グループは2月3日にも厚さわずか数分子、2次元有機単結晶ナノシート
の大面積成膜に成功しこのブログでも掲載している(エネルギーフリー社会を語ろう!No.142)。さら
に、下図のように、中部電力とトヨタ自動車は、中古蓄電池を系統安定化向けに活用する。電気自動車
(EV)やハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の駆動用電池をリユース(再使用)
して大容量蓄電池システムを構築する。加えて使用済み電池のリサイクル(材料の再利用)についても
実証を開始する。1月31日に基本合意書を締結したことが公表されている。 そこに、昨日の「なぜ、か
まぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか?」(生成可能エネルギー連続講座)の基調講演での聴講で
ある。興奮しないわけがない。賢明なる読者者諸氏はお気付きのごとく、高性能な蓄電池が量産されそ
のリユース電池を再エネの出力変動を改善に使用するエンドレスループがよりスパイラルアップされる
ことで、低コストの燃料で環境に優しい「エネルギー地産・地消」が完成し、これに地方分権促進税制
だ導入されれば、環境・超少子/高齢・資源枯渇などの問題は解決されるというわけである。

かくして、神奈川は葉山の画家山口蓬春のモダニズム(それまでの価値観の全否定)と伝統の融合(不
易流行)
の果敢なる挑戦は、鈴木悌介鈴廣かまぼこグループ代表取締役副社長の 脱原発・エネルギーの
地産・地消、地方創生(あるいは「脱・欧米亜から稼ぎ資源国に貢ぐ前経済体制」)への挑戦とが合流
し湘南の風(いあ湘南の電力の風)となり旋風として駆け抜けていうるというわけで、それを担保する
科学技術力の実力が試されているということであろう。

出典:鈴木悌介氏

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新量子熱電変換子技術Ⅲ

2018年01月16日 | ネオコンバーテック

 

                  離婁(りろう)篇    /    孟子   

                                    

       ※ 孟子の嫌がらせ: 公行子(斉の大臣)の子息が亡くなり、右師の
                  王驩(おうかん)が弔問に行った。王驩が門を入ると、すぐ出迎え
         てあいさつをする者もあり、わざわざ席に近づいて話をかわす者も
         あるなかで、孟子だけは声をかけようともしない。王驩はにがにか
         しげに言った。

         「みなさんは、わたしにあいさつしてくがさるのに、孟先生だけはそ
         っぽをむいている。わたしを馬鹿にしているのだ」

         これを耳にした孟子は言った。

         「朝廷では席をはずして話しに行ったり、階段を隔てて挨拶をかわし
         たりしないのが礼法なのだ。わたしは礼法通りにしたのだが、王驩は
         馬鹿にされたと思っている。おかしなことではないか」

        〈右師の王驩〉 右師は高位の官名。権勢家王驩の思いあがった立居振
                舞いをにがにがしく思う孟子の気持が、ここによく現
                われている。
        〈朝廷では席をはずして……〉 喪の儀式の場を朝廷になぞらえ、礼法
                にことよせて正誤を皮肉ったのである。

     

     No.132   

【サーマルタイル事業:最新量子熱電変換子技術Ⅲ】

❏ トヨタ自工北アメリカ株式会社の特許事例

● 
US 9865790 B2 Nanostructure Bulk Thermoelectric Material :ナノ構造バルク熱電材料 

【実施例1】

多孔質シリカテンプレートは、ポロゲンとして界面活性剤を用いて調製した。使用した界面活性剤は、
PLURONIC界面活性剤P123(EO20PO70EO20)、F127(EO100PO70E100)、Brij-58(C16H。サブ36EO 20)、
CTAB)(式中、EOおよびPOはそれぞれエチレンおよびプロピレンオキシドを示す)を含む。鋳型は、
界面活性剤テンプレート化プロセスを用いて調製した。F127、P123、Brij-58、およびCTABでテンプレー
ト化された細孔の平均細孔直径は、それぞれ約12,9,6および2nmであった。ビスマステルル化物は、3電
極堆積回路を用いて堆積された。 1M HNO溶液に溶解した0.075Mビスマスおよび0.1Mテルライドを、
前駆体溶液および電解質として使用した。Ag / AgCl参照電極およびPt対電極を用いて、0.1VAg / AgCl
で堆積を行った。堆積は室温で行った。XRDパターン及びTEM観察により、約6nm、9nm及び12nmの直径
を有するBi 2 Te 3ナノワイヤが、絡み合ったセラミックマトリックスで堆積されたことが確認された。

 図6は、電着されたBi2Te3ナノワイヤのTEM画像を示す。試料のEDXBi 2 Te の形成を確認し、原子元
素百分率は37.46Bi、62.54%Teであった。図7は、電着されたBi 2 Te 3ナノワイヤのHRTEM画像を示す。

【実施例2】

キセロゲルメソポーラスシリカを、PLURONIC界面活性剤P123を鋳型とするゾル - ゲル法を用いて製造。
調製された六方晶メソ構造のシリカの細孔径は約9nmであり、Bi2Te 3の前駆体溶液は、0.0225モルのTe
よび0.015モルのBi(NO 33 H 2 O6M-HNO 3 150mLに溶解させ調製し60℃で測定。キセロゲルメソポーラ
スシリカの粉末5gを7mLの前駆体溶 液に添加した。サンプルを液体窒素中に3分間置いた。真空による
脱気の後、試料を室温に温める。シリカ粉末を遠心分離により前駆体溶液から分離し、次いで100℃で加
熱した。溶媒を除去した。 メソポーラス材料内部のビスマステルル化物の充填量を増加させるた
めに、上記プロセスの3および8サイクル実施。 浸透後、Bi 2 Te前駆体を有するメソポーラスシリカを
管状炉に入れた。水素を流しながら、温度を450℃に加熱し、30時間保持。 図8Aは、キセロゲルシリカ
の高度に秩序化されたメソスケールチャネルの一部における含浸がはっきりと観察されたBi 2 Te 3 - メソ
ポーラスシリカ複合体のTEM画像である。 図8Bは、キセロゲルシリカを希釈した(5重量%水溶液)
HFで溶解した後に、直径が10nm未満のBi 2 Te 3ナノワイヤを示す。 図8Cは、Bi 2 Te 3ナノワイヤの高分
解能電子顕微鏡(HREM)画像を示し、それらが単結晶であることを示している。 図8Dは、HFを用い
てシリカテンプレートを除去した後のBi 2 Te 3メソポーラスシリカ複合体のTEM画像を示す(下図8A~D
参照)。

窒素吸着実験は、典型的なメソポーラスシリカ試料の細孔容積が0.6472cm3 / gであることを示している。
すべての細孔をテルル化ビスマス前駆体溶液で充填することができると仮定すると、浸透の各サイクル
の後、Bi 2 Te 3 - メソポーラスシリカ複合体中のBi 2 Te 3の担持量は2重量%。したがって、8回の浸潤
の後、浸潤後の細孔容積の有意な減少がない限り、Bi 2 Te 3の総重量含量は16%であってもよい。また、
図9Aおよび9Bは、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)およびBrij-58(CH 3(CH 215(OCH 2)C
H2
20OH)を用いて調製したメソポーラスシリカ薄膜の代表的なTEM断面像を示す。界面活性剤である。
CTABテンプレート薄膜(図9A)は、規則的な2次元六方晶メソ構造に配列された旋回細孔チャネル(
細孔直径~3nm)を含む。 B58鋳型薄膜(図9B)は、整列した3次元立方体のメソポーラスネットワー
クに配置された細孔チャネル(細孔直径~5nm)を含む。規則的なメソ構造の選択領域電子回折は、図2
の挿入図に示されている。図9B。同様に、メソポーラスシリカモノリスは、同じ組み立てプロセスを用
いて調製することができ、例えば図1の装置を用いた電着を用いて半導体で充填することができる。 5
B。これらの代表的なTEM画像は、制御された細孔サイズおよび細孔の幾何学的形状(例えば、六方晶お
よび立方晶の細孔ネットワーク)を有するメソポーラスシリカテンプレートを作製するための効率的な
アプローチを明白に示唆する。ナノワイヤ構造は、テンプレートの細孔構造によって制御することがで
きる。例えば、2D六角形細孔チャネルを含むテンプレートは、2Dナノワイヤの作製を可能にする。 3D
結合孔チャネルを有するテンプレートの使用は、3Dナノワイヤネットワークの製作を可能にする。その
ような結合ネットワークは、電子輸送のための高度に結合する経路を提供する。

【電着】

電着条件および前駆組成を変えることにより、化学組成およびドーピングの制御を改善することができ
る。例えば、CdSe、CdTe、CdS、PbSe、PbTe、およびPbSのような半導体は、メソポーラスチャネル内に
堆積することができる。そのような組成制御は、今度は、デバイス輸送特性 水素気泡を生成する副反応
が起こり、気泡チャネルの内部に閉じ込められて反応物質の拡散が阻止される。副反応を最小限に抑え、
物質輸送および反応速度を制御するために、堆積条件(例えば、濃度、電位、電流、温度、および攪拌
速度)および異なる堆積技術(例えば、パルス堆積)を使用して、 、改善された組成物の制御、および
正確なメソ構造の複製が含まれる。デバイスは、単一のモノリシックナノ構造複合材料内にn型およびp
型の両方の脚部を有するように調製することができる。

p型脚のより高い正孔濃度は、半導体に高原子価金属イオンをドープすることによって、またはアニオン
サイトの欠乏を生成することによって、またはアニオンをより低い原子価イオンで置き換えることによ
って得ることができる。例えば、p型Bi 2 Te 3は、結晶構造中のBi 3+Sn 4+に置き換えることにより、
またはTe 2+の欠損を生じさせることによって得ることができる。 (例えば、Bi 2 Te 3-x、x> 0)、また
Te 2 - をより低い原子価のイオンに置き換えることができる。同様の概念を用いてn型半導体を形成す
ることができる。陰極電位を制御することにより、化学量論的および非化学量論的(p型およびn型の両
方)のBi 2 Te 3堆積させることができる。また、電解液に鉛イオンを導入して型Bi 2 Te 3を電着させ
ることも可能である。

したがって、バルクの多孔質媒体(このようなメソポーラスセラミック)を提供することができ、半導
体を細孔内に堆積させることができる。例えば、Bi 2 Te 3または他の半導体をモノリシックメソポーラス
シリカに電着させることができる。ドーパント(n-型ドーパントおよびp-型ドーパントなど)は、真性
半導体のナノ細孔に沿って注入されて、導電性ナノ構造ネットワークを提供することができる。

粒子から形成された複合材料

粒子は内部ナノ構造を有することができる。粒子は、半導体が注入されたナノ多孔質絶縁材料を研削ま
たは粉砕することによって形成することができる。
粒子は、セラミックまたは他の電気絶縁材料内にナ
ノ構造含有物を有することができる。

図10は、内部ナノ構造体の一部としてのナノワイヤ142などの半導体ナノワイヤを含むセラミック粒子お
よび半導体ナノ粒子144の粒子140の混合物を示す。この混合物を圧縮して(たとえば、ホットプレスし
て)、ディスクまたは他のバルク
熱電材料の形態。内部ナノ構造に含まれるナノワイヤを有するセラミ
ック粒子を調製もできる。



他の例では、ナノ粒子複合体は、半導体粒子を含まない粒子140から形成することができる。粒子間の接
触によって連続的な半導体ネットワークを提供できる。
粒子には、半導体シェルを設けることもできる。
セラミック/半導体ナノコンポジットは、多孔質セラミック粉末内に半導体(または半導体前駆体)を浸
透させることによっても調製できる。
多孔質セラミック粉末は、界面活性剤テンプレートアプローチまた
は他の市販の多孔質セラミック粉末を使用して調製されたメソポーラスシリカであり得る。
半導体前駆
体は、ガス状(水素化物など)または液体材料であってもよい

セラミック/半導体ナノコンポジットは、多孔質セラミック粉末内に半導体(または半導体前駆体)を浸
透させることによっても調製できる。多孔質セラミック粉末は、界面活性剤テンプレートアプローチま
たは他の市販の多孔質セラミック粉末を使用して調製されたメソポーラスシリカであり得る。半導体前
駆体は、ガス状(水素化物など)または液体材料であってもよい。熱電ナノコンポジットは、HIPプロセ
スを含む方法によって製造もできる。出発材料は、セラミック粒子、半導体粒子、および半導体浸透セ
ラミック粒子を含み得る。セラミック粒子は、メソポーラスシリカのようなメソポーラス粒子を含む。

セラミック/半導体粉末混合物のホットプレスは、改良された熱電材料を大量かつ低コストで製造を可能
にする。一例では、セラミック粉末と半導体粉末とを混合し、ホットプレス法を用いて混合物からバル
ク材料を形成する。一例では、半導体ナノ粒子とセラミック粉末との混合物は、10MPaおよび150℃で予
備プレスすることができる。約1インチの直径のディスクを形成する。次いで、ディスク(または他の形
状)を200~600℃および100~200MPaでHIP処理にかけることができる。このプロセスは、改善された熱
電材料を形成するために使用することができる。

セラミック粒子は、ナノ粒子であってもよく、シリカ、アルミナ、または他の酸化物を含んでいてもよ
い。セラミック粒子は、ボールミルプロセスまたは他のプロセスを用いて調製できる。市販の粒子を使
用することができる。他の電気絶縁材料の粒子を使用できる。半導体粒子(または他の導電性粒子)は、
テルル化ビスマスなどのバルクで熱電特性を有する材料のナノ粒子であってもよい。半導体ナノ粒子は、
溶液化学法、気相反応法、高エネルギーボールミリング、または他の方法を用いて調製できる。半導体
およびセラミック粒子は混合され、次いでモノリスにプレスされる。良好な粒子混合を得るために、こ
れらの粒子混合物のボールミル粉砕を使用できる。ホットプレス法を用いて、混合セラミック/半導体粒
子をプレスしてバルクにできる。粒子は、ナノ粒子構造を保持しながら、機械的強度のために融合でき
る。



11は、粒子180およびナノ粒子182によって形成された複合体を示す。示されているように、両方の粒
子は、図2に関連して前述したように、ナノ構造の半導体を含む。 他の例では、より大きなセラミック
粒子および半導体ナノ粒子を組み合わせることができ、半導体ナノ粒子は、セラミック粒子の周りにナ
ノ構造の導電ネットワークを形成する。 他の例では、セラミックナノ粒子と半導体粒子との混合物を組
み合わせ、プレスする。材料は、セラミック粒子が半導体粒子(例えば、シリカおよびテルル化ビスマ
ス)を粉砕する傾向の圧力で粉砕に抵抗するように選択できる。適切な圧力を加えることは、半導体ナ
ノ粒子を、セラミックナノ粒子の直径と相関する(例えば、同様の)直径に粉砕する傾向がある。シリ
カナノ粒子は、2~20nmのような直径をもつ安価な商業的供給源から得られる。半導体ナノ粒子を含む安
価な複合体を、2~20nmの直径をもつセラミック粒子と半導体粒子とを組み合わせる方法、混合物に圧力
を加えて半導体粒子のサイズを2~20nmに減少させることも含む。

以降、関連図のみ記載し、【ホットプレス】【材料システム】【その他の複合材料】の項目に亘る説明
を割愛する。、

 

                                                            この項了

 

【全固体型蓄電池:グラフェンボール】

サムスンSDIは、2018年のデトロイトモーターショーで、電気自動車の走行距離と充電容量を増や
すと主張する新しい全固体型蓄電池「グラフェンボール」を展示。エネルギー容量と充電速度を大
幅に向上させるものである(詳しくはこのブログ『凄い時代の儀礼Ⅳ』2017.12.01参照、上写真ク
リック参照)。この事業開発にも新たに「超高品質蓄電池事業」として部門プラットフォームを新
たに設け製造技術にフォーカシングンする。



【スマートフォーン習得日誌Ⅱ】

音割れの原因として、「ブルーツースアプリ起動」に気付きシャットダウン。これで解消した様だ
が当分、要観察。万歩計を紛失、かわりにスマホの付属「ヘルスケアーアプリ」を使用する。便利
でだが、宅トレには大きすぎる。アップルウォッチとの連携が好ましいのではと考える。段々面白
くなってきた。

 
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新無隔膜電解工学Ⅱ

2018年01月11日 | ネオコンバーテック

  

        離婁(りろう)篇    /    孟子  

                                 

      ※  水をたたえる: 弟子の徐子が孟子にたずねた。「孔子は、折りにふれて、
          『おお、水よ、水よ』と言ってこれを称賛してやまなかった。いったい、
          水の性質のどこを称賛したのでしょうか」「泉から滾々(こんこん)と
     湧き出す水は、昼も夜もけっして絶えることがない。そして、低地をひ
     たしては流れつづけ、ついには海に注ぐ。源のあるものは、すべてこの
     水のようなもの。孔子が称賛したのはこの点なのだ。水源がなければ、
     六、七月の雨期のあいだ、いくら集中的に降って、水路という水路をあ
     ふれんばかりにしても、雨がやめばまたたくまに干上がってしまう。実
     の伴わない名声は、この水源のない水と同様だ。だから君子は、このよ
     うな名声を受けることを恥とするのだ。」

   ※ 私 淑: 良きにつけ悪しきにつけ、伝統の感化力というものは五代も
     たてばおのずと消滅するのが通例だ。わたしは残念ながら、孔子に直接
     教えを受ることはできなかった。しかしわたしは、孔子の学問を受け継
     いだ人々を通じて、自分なりに向上しようと努めている。

   〈孔子の学問今・・・・・・・努めている〉この部分の原文は「私淑」。「私淑する」
   といえば、今日でも、直接には教えを受けられないが、自分なりに模範とし
   て仰ぐ意味に使われている。

      No.128

【水素エネルギー篇:最新無隔膜海水電解技術】

● 高性能電池開発事情:最新金属空気電池技術事例

昨夜の「特開2017-142884 アルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池」に引き続き、金属
空気電池の技術事例に参考にする。

❏ 特開2017-142884 アルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池   

【概要】

アルミニウム金属を活物質として含有する負極を用いた金属空気電池では、自己放電反応によるアル
ミニウム金属の減少や、放電により生成する水酸化アルミニウムが負極表面に蓄積すること等に起因
して、アルミニウム反応率が低下するという問題がある。この実情をふまえ、本件はアルミニウム反
応率が向上した金属空気電池の提供にあたり、自己放電や、放電により生成する水酸化アルミニウム
の負極表面への蓄積を抑制し、アルミニウム反応率が向上――空気極と、負極と、空気極と負極の間
に配置する電解液層と、電解液が循環する循環路とを備え、この循環路は電解液層及び電解液の収容
部を備え、負極に用いられる活物質は純度が99.5%の平板状のアルミニウム金属で、電解液層は
前記電解液で満たされ、前記電解液は1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液であり、外部環境温度が
25℃、放電電流が400mAの条件で放電した場合に、電解液が0cm/sを超えて13.3cm
/s未満の流速で電解液層を流れることを特徴とすることで自己放電や、放電により生成する水酸化
アルミニウムの負極表面への蓄積を抑制―――することを提供する。【選択図】図5



● 水電解要の炭素触媒に注目!

❏ 特開2017-210638 水電解用炭素触媒及びその製造方法、及び該炭素触媒を用いた
                     水電解用触媒インキ並びに水電解装置
   

【概要】

水素製造方法の一つに水電解。とりわけ、再生可能エネルギー由来電力は、二酸化炭素の排出を伴な
わず注目され、水電解の方法としては、一般に、アルカリ水電解と固体高分子水電解――アルカリ水
電解ではアルカリ水溶液を電解質とし、固体高分子水電解ではイオン交換膜を電解質――があり。固
体高分子水電解は、アルカリ水電解と比べて電流密度を上げられ、高い効率が得られるという特長が
あり、固体高分子水電解装置構成は、固体高分子電解質膜の両側に触媒層を設け、さらにその外側に
給電体と通電板の構成が代表的である。イオン交換膜は、主として、デュポン社製Nafionなどのスル
ホ基を有するフッ素系高分子が用いまた、触媒層は電極反応の反応場となる部分であり、一般に、電
極用の触媒と固体高分子電解質との複合体からなる。

このような電極用触媒には、従来、白金やイリジウムなどの貴金属微粒子、カーボンブラックなどの
炭素担体上に貴金属微粒子を担持したもの、電解質膜表面にメッキやスパッタなどの方法で形成され
た貴金属の薄膜などが用いられているが、白金などの貴金属は、高い触媒活性(プロトン還元活性)
とその活性安定性を示すが、非常に高価であり、資源的にも限られ、コスト高要因となっている。

この課題解決に、大環状化合物をカーボンブラックなどの電子伝導性炭素担体表面に担持し、炭化さ
せた炭素触媒、大環状化合物を含まない有機高分子材料を炭化させた炭素触媒などあるが、電池性能
は、比表面積の大きさや電子伝導性が重要であるのに対し、これらの有機高分子材料を原料とした炭
素触媒は、電子伝導性が低く、比表面積が小さいといった問題があり、充分な触媒活性を有する触媒
ではない。コスト、資源量などから使用量低減が求められる貴金属触媒の代替として、高電子伝導性
及び比表面積の大きい炭素担体を含む安価な水電解用炭素触媒や炭素触媒を用いた水電解用触媒イン
キと水電解装置を下図のように提案されている。その特徴は、窒素を含有し、X線光電子分光法(X
PS)により測定した、触媒表面の全元素に対する窒素原子のモル比をNとし、触媒表面の全窒素量
に対する、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN型窒素原子量の割合とN2型窒
素原子量の割合の合計(%)を(N1+N2)としたときの、表面末端窒素量{N×(N+N)}が
1.0~13.0であることを特徴とする水電解用炭素触媒よりて解決するものである(詳細は下図ク
リック参照)。

 Nov. 30, 2017

ここで、電極触媒だけでなく、蓄電池/電極/正極活物質粒子の重量あたりの容量を高め、高いエネ
ルギー密度を実現し電池反応の安定化を図る――例えば、二次電池の正極の活物質として、リチウム
と、マンガンなどの元素と酸素で構成されるリチウムマンガン複合酸化物を用い、還元された酸化グ
ラフェンで被覆することでこの活物質と、酸化グラフェンと、導電助剤と、バインダーで構成する活
物質層を形成し、活物質層を、アルコールに浸した後、加熱処理をすることで、酸化グラフェンが還
元された電極を作製するという「特開2017-045726  電極、及びその製造方法、蓄電池、並びに電子
機器
」株式会社半導体エネルギー研究所)のようにグラフェンを使ったエネルギー分野だけでなく半
導体、カラー表示装置分野などの電子器機材料のイノベーションが急速に進展してきており、高エネ
ルギー密度、急速充電、安全でコンパクト(高・軽・薄・小・安)な全固体型蓄電池の実用化が目前
に迫っており、「グラフェン工学時」(言い換えれば「ネオコンバーテック時代」)であることを
強調しておきたい。

● 水素モータ技術とは

ここで、海水電解方式での製造された水素/酸素は、蓄電池あるいはガス/蒸気タービン、燃料電池
だけでなく、水素モータ(あるいは水素/酸素ガス混合モーラ)つまり内燃機関(エンジン)発電技
術も触れておく。水素ガス直燃はエネルギー効率が高いが、騒音や窒素酸化物の排出などの対策をセ
ットしクリアーしなければないらない。例えば、「特開2017-122424  排気浄化装置」(株式会社デ
ンソー
) 「特表2017-538573  排気システム用の一酸化二窒素除去触媒 ビーエーエスエフ コーポレ
ーション)を参考に掲載しておく。

 ❏ 特開2010-106798 動力発生装置  

【概要】

動力発生装置は、下図のように、電力供給装置と、所定量の水を保持する貯水装置と、電力供給装置
から供給される電力により、貯水装置から供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置と、加熱装
置で発生した水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する水蒸気電解装置と、水蒸気電解装置で生成
された水素を貯留する水素タンクと、水蒸気電解装置で生成された酸素を貯留する酸素タンクと水素
タンクから供給される水素と前記酸素タンクから供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水
素-酸素エンジンと、水素-酸素エンジンで生成された水蒸気を水蒸気電解装置に排出する水蒸気排
出通路と、水蒸気排出通路に配置され、水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回収装置と、
の構成が特徴である。

水蒸気を水素と酸素に分解する水蒸気電解装置と、水素と酸素を燃料とする水素-酸素エンジンと
を搭載しているので、特殊な燃料や燃料電池のような複雑な装置を必要とせず、二酸化炭素や窒素酸
化物が排出されないクリーンでより安定した作動が可能な動力発生装置を提供できる。また、動力発
生装置は、排熱回収装置を備えているので、水素-酸素エンジンで発生した高温の水蒸気からさらに
動力を回収することができ、一層高効率な動力発生装置を提供される。
エネルギー効率が高く、クリ
ーンな動力発生装置をが提供できる。

動力発生装置1は、電力供給装置12と、所定量の水を保持する貯水装置13と、貯水装置13から
供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置14と、加熱装置14で発生した水蒸気を電気分解し
て水素と酸素を生成する水蒸気電解装置5と、水蒸気電解装置5で生成された水素を貯留する水素タ
ンク16と、水蒸気電解装置5で生成された酸素を貯留する酸素タンク17と、水素タンク16から
供給される水素と酸素タンク17から供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水素-酸素エ
ンジン8と、水素-酸素エンジン8で生成された水蒸気を水蒸気電解装置5に排出する排出マニホー
ルドP6と、排出マニホールドP6に配置され、水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回
収装置2と、を有する。【選択図】図1(詳細は下図クリック参照)。



【ソーラーフロート型海水電解水素製造システム】

● 再生可能エネルギーの低コスト水素生産型無隔膜電解槽

電気分解装置は、電気を使って水を酸素と水素に「分割」する。これは、クリーンエネルギーの将来
における主要なエネルギーキャリアとして役立つ貯蔵可能な化学燃料である。工業規模の水電解は、

在の電気価格では一般的に経済的でないが、このパラダイムは、再生可能エネルギーは将来的に電力
価格が非常に安くなり低くなる。太陽光や風力により過剰電力が発生した場合、部分的に無料利用で
きる。このシナリオでは、水電解の経済性は、電解槽の資本コスト支配され、電解槽の資本コストは
現在価格より大幅減額させる必要がある。この目的のためにこのレポートは、無隔膜電解槽の課題と
機会について開設する。これらのデバイスがうまく最適化され、スケールアップされれば、再生可能
エネルギーの水素製造費の破壊的低コスト化技術となるだろう。

水素は、貯蔵可能でエネルギー密度の高い燃料であり、幅広い産業および民生用アプリケーションに
有用となる1。 同様に重要なことに、太陽光発電(PV)などの再生可能な技術で発電される水電解由
来水素は、非常に低カーボンフットプリントとなる。しかしながら、水蒸気メタン改質(SMR)由来
水素より遙か衣に高価である。現在のところ、SMRより厄介な水電解の最大コストは、電解工程での
支出(opex)に依存する。2 米国の平均工業用電気代で電解水素製造の必要電力は、SMR(約1.59 $ [
kg H2] -1)でH24を製造するコストを大きく上回る。電解槽効率が100%でもこれは図1Aに示されいる
とおり、電力と電解装置の効率関数として電力運用を示す。カーボン価格がない場合、図1A(水電解
の経済学)
は、水電解米国の現在の天然ガス価格でSMRと競合する可能性がある場合、平均電力価格が
2~3kWh-1未満でなければならないことを示している。


幸いにも、太陽光発電と風力によって発電される電力のコストは引き続き減少し、これらの再生可能
資源からの非常に低コストの電力(≦3kWh-1)が遍在するまでには時間の問題である。再生可能な太
陽光および/または風の非常に高い市場浸透し、電力料金が無料になっている。 すでに、世界中の多
くの場所で、発電量と需要の不均衡のために、太陽光や風力発電所の発電電力が削減されている5
このようなシナリオは、水電解による水素製造の巨大な経済的機会を創出する。しかし、重要な注意
点がある。この低コストまたは無料電力は、太陽光発電の電力生産が最大になる日のごく部分的利用
でしかない。結果として、この再生可能なエネルギーの将来的に作動する電解槽は、容量係数(CF
が低く、寿命の間にはるかに少ないH2を生成する可能性が高い。

図1Bに示すように、電解槽の寿命を10年間一定とすると、今日の商用高分子電解質膜(PEM)電解槽
システム(1,000-1,500 $ kW-16の資本コストに基づく設備投資(設備投資)は、電解槽は風力発電
機と太陽光発電機のCFに似たCF(約20~40%)を持つ。電力フリーの限界では、図1Bの電解槽設備曲
線は、H2の価格の下限を設定し、安価な電気および低CFを特徴とする将来の電解槽資本コストの重要
性を強調する。この観察は、光電気化学セルおよびPEM電解槽を異なる構成で使用してH2を製造する
コストを分析した最近のテクノ経済分析と一致する。この研究では、グリッド接続されたPEM電解槽(
7%kWh-1で97%CF)を6.1kg-1とするH2の生産コストを推定し、同じ電解槽を太陽光発電プラント(CF
= 20.4%)は12.1 $ kg-1.3Shaner3の分析と 図1Bの曲線は重要なメッセージを示す。破壊的な電
解槽技術は、再生可能な太陽光または風力で駆動する水電解がSMRと競合水準まで資本コストを下げ
る開発を前提とする。電解槽のコストを削減する機会を理解するために、商業的に利用可能な電解槽
のタイプを簡単に見直すことは有益である。

現在、PEM電解槽とアルカリ電解槽の2つの低温電解槽技術が市場を支配する。7 市販のPEM電解槽は、
ナフィオン(Nafion)のようなプロトン伝導性固体ポリマー電解質を多孔質電極層の間に挟む「ゼロ
ギャップ」膜電極アセンブリ(MEA)設計に基づいている(図2A)。このアーキテクチャにより、高
い動作電流密度(0.6-2 A cm-2)が可能となり、純水から高純度H2が生成される。8.9.10


図2 低温電解装置技術の簡略側面図

従来のアルカリ電解槽は、液体25-35重量%KOH電解質中の0.1-0.4 A cm-2の水を分離し、ダイヤフラ
ムとして知られている微孔性仕切りを用いて2つの電極を分離した(図5B)。8 
両方のタイプの電
解槽において、膜とダイヤフラムは、電極間でのイオンの輸送を可能にすると同時に、爆発性混合物
を形成する可能性のあるH2およびO2生成物種を物理的に分離する重要な作業を行う。
PEM電解槽運転
における重要な役割にもかかわらず、膜は、かなり複雑なMEA構造の必要性、膜の汚れまたは不純
物の存在下での分解による装置の故障の危険性を含む欠点をもたらす。

膜の耐久性の問題は、装置の寿命および/または維持コストに直接影響を及ぼす他に、電解槽システ
ム内で使用される水の純度および材料に厳しい要件を課すことにより、電解槽システムの資本コスト
に影響を及ぼす。
この懸念の一部に起因して、いくつかのPEM電解槽部品は、典型的には耐腐食性で
あるが高価なチタンで作られる。
アルカリ電解槽に使用されるダイヤフラムは、高分子電解質膜より
も高価ではなく、PEM電解槽よりも簡単な装置構造で使用されるが、不純物による妨害を受けやすく
、これらの仕切りおよびバブル - 電極間に充填された液体ギャップは、典型的には、動作電流密度
を0.4Acm-2.11 
従来のPEMおよびアルカリ電解槽に代わるものとして、O2-およびH2-発生電極の間に
膜またはダイヤフラム仕切りが配置されていない電解槽構造の開発への関心が高まっている。これら
のいわゆる膜を持たない電解槽は、一般に、強制的な流体の流れ(移流)および/または浮力を利用
し、O 2およびH 2生成物を分離して対向電極に渡すことができる生成物の流れまたは浮力に起因する
分離に依存する。無電解電解槽は、使用される電極のタイプに基づいて分類することができる。

タイプⅠの装置(図2C)は、水性電解質が電極表面に平行に流れ、H2およびO2生成物を別々の下流流

出流路に運ぶフローバイ電極に基づいている。これらの装置は、層流燃料電池およびそれを前提とし
たフロ
ー電池と同様の構造を有している。それらの動作の基礎となる流体力学は、気泡の存在により
異なることが
ある。具体的には、過飽和条件下で操作されるⅠ型デバイスは、Segre-Silberberg 効果を
利用でき、流体速度勾配は、電極表面の発生気泡の集中に役立つ。流通
電極の代わりのⅡ型電解槽は、
流れる電解液が多孔質電極を通過するメッシュ形電極を使用(図2Dの挿入図)。図2Dは、新電解質が
加圧され外部室から電極間隙に流入間に、2つの円形金属メッシュ電極が対面配置構成を示す。
新鮮
な電解液が電極間隙に押し込まれると、生成H2とO2を別々の流出経路に流し発散する。 生成H2 純度
が99.83%および4Acm-2に近くの電流密度を達成。14. 
最近は、デバイス本体の一部の絶縁バッフル
により分離された斜めのメッシュ貫通形電極のⅡ型が実証さ
れた。3次元プリントで一体型にした簡
素な装置を実現、さらに、高速ビデオ解析によりクロスオーバー現象と不均一な電流密度の「その場
観察撮影」を実施する。

● 無隔膜電解電解槽

隔膜電解電解槽は、従来装置に比べ、いくつかの潜在的利点がある。第1に、膜を除去することで、
装置の複雑さ、材料コスト、アセンブリコストを低減することで、資本コスト削減機会が生まれる。
上記で言及した無隔膜電解槽のいくつかは、わずか3つの必須構成、すなわちアノード、カソード、
および装置本体から作製される。膜およびアノード/カソード触媒だけでなく、ガス拡散層、バイポ
ーラプレート、ガスケット、イオノマー、電流コレクタなどを含む単一のPEMセルとは対照的であ
る。典型的なPEMスタック中で最もコストがかかる部材を表1にリストアップする。一般に、より
少ない数の部品/より少ない種類の部品をもつデバイスは、組立て工程数の削減により低い製造コ
ストを実現する。構造材料の融通性が高い、単純なデバイス設計は、代替製造技術の使用機会を創
出する可能性、例えば、付加製造(AM)は、膜のない電解槽の迅速な試作および製造のための興
味深い機会を提供する。商用デバイスの低コスト製造にAMを使用する可能性は、関心のある特定
のデバイス設計およびAM技術のさらなる進歩に大きく貢献するだ
ろう。

膜のない電解槽の第2の利点は、長い作動寿命、不純物に対する高い耐性、および膜に害を与える極
端な動作条件に対するより大きな弾力性/耐久性をもつる装置である。隔膜を基材とする電解槽の主
な関心事は、供給水流より進入またはシステム自体内の構成要素から溶出するカチオン不純物に暴露
された場合、膜抵抗を増大することである16
。例えば、ステンレス鋼部品は、膜または電極触媒に悪
影響を及ぼす可能性があるFe3 +などの不純物が滲入しやすい16 。無隔膜電解槽は、水道水で動作す
る不純物耐性器機能であり、浄水ユニットのコストを削減し、低コスト材料をシステム構成要素に配
置する。

無隔膜電解槽の第3の利点は、電解質が十分に導電性である限り、多種多様な水性電解質で動作する
能力。この多様性は、電極間の液体電解質ギャップを直行するイオン移動が、電解質のpH及びイオン
種に対し柔軟なことである。PEM電解槽のイオン選択膜は、特定装置で使用可能な電解質の種類を大
きく制約されるが、無隔膜電解槽は、酸性、アルカリ性、中性溶液でその融通性が実証されている。
13,15,17

                                      この項つづく

 ● 世界最大の太陽熱発電

 

  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホットエレクトロンの慈雨

2017年12月27日 | ネオコンバーテック

 

  

        離婁(りろう)篇    /    孟子  

                                 

      ※  口が軽いのは:口が軽いのは、言葉に責任を感じていないのだ。

 

 

   

      No.123  

【最新光電変換技術篇:熱電子はソーラー変換効率を向上させる】 

  Dec. 20, 2017

12月20日、熱電子の研究は、エネルギーのアルゴンヌ国立研究所(上図参照)によると、太陽エネル
ギーと再生可能エネルギーの研究をヒートアップさせている。
ナノ科学者らは、高効率に光をエネル
ギーに変換する方法を発見したことを公表する。
アルゴンヌ研究者らのグループは、人間の毛髪のよ
りも小さいハイブリッドナノ材料で光子の完全エネルギー化に向け開発を行った
結果、ナノ材料の構
成要素に衝突する光子と同じ量のエネルギーを運ぶホットエレクトロン(熱電子が生じ、太陽電
池や光触媒の大幅な進歩につながる可能性がる。関係者によると、よ
り大きな粒子では、光子エネル
ギーに近いエネルギーを持つ高エネルギー電子はごくわずか。このため極小の
粒子を必要とする。
研究グループは、多くの光吸収させるため金属含有をゼロにし材料エネルギーの高い電子量を増加さ
せている。
ホットエレクトロンの最大化する条件決定のため材料設計計算し、酸化アルミニウムスペ
ーサで分割した金膜と銀ナノキューブで解決する。アルゴンヌ研究では、このナノ構造はホット電子
を高密度生成できる。
重要な進歩は、紫外から可視、近赤外に至るまで、非常に広いスペクトル範囲
高エネルギー電子を生成する能力にある。


❏ 半導体における衝突電離 

通常、半導体中の電子は、電圧の印加により低電圧側から高電圧側に移動する。電界が小さい場合は、
十分な速度まで加速される前に、半導体を構成する分子や原子に衝突するため、衝突と衝突の間の緩
和時間も長く、正のフィードバックが生じにくい。
電界強度を上げると、電子の運動エネルギも高くなり、緩和時間も短くなるため、衝突電離は生じや
すくなる(平均自由行程)。この衝突電離で生じた電子は電界で加速され、運動エネルギーが高い状
態になる、これをホット・エレクトロン (hot electron) と言う。 この衝突電離が生じると、キャリア
の量が増大するため、電流は急激に増加する。これを利用した素子が、アヴァランシェ・ダイオード
や、アヴァランシェ・光・ダイオードである。
その一方で、特に GaAs の MESFET や HEMT 等の電界効果トランジスタでは衝突電離で生じたホー
ルの流出先が存在しないため、単純な電流増幅だけでなく、蓄積されたホールによるポテンシャルの
変動による不安定現象(キンク現象と呼ばれる)が発生する。衝突電離は、半導体のキャリアの生成・
再結合の過程の一つであり、高電圧時の半導体物理を理解するには必須な項目である(Wikipedia)。



図1.イントラバント励起によるホットエレクトロン分布図
   a .イントラブランドポンプ条件下での貴金属の代表的な電子密度状態(N)図、spバンドの自
   由電子は、プラズモンディフェージングの間にポンプ光子(ψ)ポンプのエネルギーを捕捉
   し、電子 - 正孔対の分布を促進する。b.非熱(赤)キャリアは、最初に、励起時にフェルミ
      エネルギー(E F)に対して対称的な階段状の分布を形成する。電子 - 電子(e-e)散乱の後、
      フェルミ - ディラック分布を有する熱電子集団(シアン)が、非熱電子から、格子の電子温
      度より高い電子温度で形成される。

❏ 超広帯域プラズモニック・ナノパッチメタサーフェスの
                ホットエレクトロンの生成と異方性クーロン散乱  

Titol:Enhanced generation and anisotropic Coulomb scattering of hot electrons in an ultra-broad-
         band plasmonic nanopatch metasurface, Nature Communications. Oct. 17, 2017, doi:10.103
         8/s41467-017-01069-3                        

【要約】


熱エネルギー変換前のナノ構造体プラズモン励起によるエネルギー電子生成は、光エネルギー変換と
超高速ナノフォトニックスの広範な用途が提案されているが、「非熱的な」電子の使用は、主に、低
い発電効率と超高速減衰により制限される。過渡吸収分光法で測定する高濃度のホットエレクトロン
(=熱電子)を生成する銀ナノキューブに接合した金基板に含まれるブロードバンドプラズモニック
ナノナノチューブメタサーフェス(metasurface:超表面/超界面)の使用に関する実験と理論結果を
報告する。フェルミ面近傍のsp バンド内の異方性電子 - 電子散乱から生じる、非熱キャリアの3つ
のサブ集団の証拠を見つける。メタサーフェスのバイメタル特性は物理学に強く影響し、主に金中で
散逸が起こり、熱電子(ホットエレクトロン)生成の量子プロセスは両方の成分で起こる。この計算
は、強力な超高速非熱電子構成要素の作製にあたっては、幾何形状と材料の選択が重要である。


図2.地表面のジオメトリとキャラクタライゼーション
   a.
薄いAl2O3スペーサーを支持する50nmの厚さの金膜上に150nm(エッジ長)のPVP被覆コロイ
      ド銀ナノキューブを堆積させ、過渡吸収分光法で調べることによりNanopatchメタ表面を作製し
      た。b
.直径18mmのメタ表面フィルムの画像と、(c)表面上の離散ナノキューブの対応する走
      査電子顕微鏡写真(スケールバー= 500nm


図2.実験的および計算された吸光度スペクトルによる表面電荷分布の3Dマップ

a. 実験的および計算された吸光度スペクトルによる表面電荷分布の3Dマップ。多極モード(M)、金
バンド間遷移(IB)、四極モード(Quad)およびギャッププラズモンモード(Gap)に対応する示さ
れた波長における8nm Al 2 O3試料の表面電荷分布(任意単位)


図4.メタサーフェス上における非熱電子の生成と検出の向上

a.ギャップ共鳴における25nmAl2O3スペーサーと比較した8nmAl2O3スペーサー上のAgナノキュー
ブの正規化された微分吸光度のキネティックトレース、および(b)透過モードのSiO 2上の露出したAg
ナノキューブへの超高速(約100fs) 応答の減衰。40,40および500μJcm-2の入射フルエンス(吸収フル
エンスを一定に保つ)を用いて、8 / 25nmおよびSiO2サンプルをそれぞれ1100 / 1120,900 / 920および
500 / 365nmでポンプ/プローブし〜100fs応答は、高エネルギー非熱キャリアの緩和から生じる。
c、d.非サーマルキャリア発生率(c)とジオメトリとポンプ波長の関数としてのピーク非サーマルキャ
リア密度(d)の推定値との比較。NIRにおける興奮については、シグナルに対するより大きな寄与が
期待される。


図5.非熱的ホットエレクトロン生成の幾何学的依存性

表示された10個のナノ粒子構成の非熱的キャリア発生率は、対応するプラズモン共鳴波長でプロット
され、明確にするためにラベル付けされ色分けされている。赤いテキストは、ギャッププラズモン共
鳴に対応する。Agを用いるジオメトリーは、ダンピングが低く、運動量緩和時間が長いため、Au
りも高い速度を示し、間隙励起による生成は、裸のナノ粒子の共鳴よりはるかに効率的であることが
示されている。全ての場合において、ナノ粒子の体積は、ナノスフェアの直径185nmおよびナノロッ
ドの長さ340nm(100nmのエッジ)に対応する(150nm)に固定された。ナノパッチの幾何形状(5,7-10
では、Al2O3スペーサーを使用し、対応する厚さを標識した。

 図6.UVからNIRに及ぶメタ表面の過渡吸収測定

a.
130μJcm-2のフルエンスで1100nmで励起された8nmAl2O3 メタサーフェスの微分吸収スペクトル
マップ。b.図示のように
、ナノキューブ多極、四極、およびギャッププラズモン共鳴および金IB
遷移に対応する特徴を有するポンプパルスに対して+ 35fsで得られた定常吸収スペクトル(紫色)と
示差吸収スペクトル(青色)。
垂直の点線は、各遷移間のゼロ交差点に対応する。平面内電界配向の
IB遷移およびプラズモンモードのピークにおける表面電荷(c)および電界プロファイル(d)の断面図。
磁界強度スケールは、マルチモード(マルチ)モード、インターバンド(IB)トランジション、およ
び4極(クワッド)モードおよびギャップモードのための100×フリースペースの最大20×空きスペー
ス。
e選択された波長で(b)に示された4つの吸収特徴に対する対応する動態トレース。多極とIB
動力学は、熱電子 - フォノン散乱によって支配される応答を示すが、4極およびギャッププラズモ
ン共鳴は、非熱電子散乱から生じるはるかに速い応答を示す。

図7.超高速応答の寿命密度分析

図6の示差吸光度データに当てはめた対数尺度で表示される寿命密度マップ(LDM)。
各共鳴で寿
命の全範囲にわたる複数の異なるピークが観察され得る。
b、c 多極およびギャッププラズモン共鳴
における高速、中間(int)および遅い非熱電子散乱および熱電子散乱に対応する減衰関連スペクト
ル(DAS)の比較。
1100nmでの小さな変動は、残留ポンプ散乱によるアーチファクト。d-g図6eの動
力学と同じ波長でのLDM(青色の円)の寿命トレース。
非熱電子 - 電子散乱および熱電子 - フォ
ノン散乱からの寄与(完全な適合応答(赤線))が示されている(陰影領域)。
灰色領域はフォノン
- フォノン散乱(約10ps)と格子加熱による半無限減衰(約100ps)からの寄与。


図8.IB遷移からAuバンド構造内のキャリア位置特定の解決

a.ブリルアンゾーンのX、L、K対称点付近のフェルミレベルの3つのspバンド交差点を示すAuのバン
ド構造。
ギャップ共振におけるイントラバンドポンプ(赤矢印)は、フェルミ面を横切るspバンド内
の非サーマルキャリア分布(円)を促進する。
IBプローブの波長(青色の矢印)は、上のdバンドか
X線とL点の近くのフェルミ面の交差点までの遷移のみを監視する。
Auと強い類似性を示すAgのバンド構造。 AgにおけるIB遷移は〜4eVより高いエネルギーで起こり、
プローブ(青色矢)は測定範囲内のイントラバント遷移のみを監視する。
赤い矢印は、再び、ギャ
ッププラズモン共鳴におけるイントラブランドポンプ光子を指す。
(a、b)のデータは文献42,43
ら得られたものであり、分かりやすくするために最高エネルギーのdバンドと最初の2つのspバンド
のみを示す。
c.〜130μJcm -2で励起された8nm Al 2O3 サンプルのIB領域における減衰関連スペクトル(DAS)。
DASは分かりやすくするためにオフセットされrる。
高速非熱キャリアは、X点の近くのフェルミ準位
の下に存在するキャリアを示すX遷移を赤方偏移させ、L遷移で漂白剤も示す。
中間の非熱キャリアー
は、それらが吸光度の漂白を誘発するX点のみに局在するようにある。
ゆっくりと非熱的なキャリア
は、X点とL点の両方に近い遷移に摂動をもたらし、
K点でのIB遷移ははるかに高いエネルギーで起こ
り測定範囲では分解されない。

 図9.ギャップモードでの非熱応答のスペーサおよびポンプエネルギー依存性

ポンプエネルギー(ポンプ)とAl2O3スペーサの厚さが変化、非熱電子散乱に対応する寿命分布ピー
クがシフトする。
中間キャリアについては反対の傾向が観察される。3つの e-e 成分のピーク寿命対
ポンプエネルギーの異なる依存性は、非等方性崩壊を有する異なる非熱電子集団への帰属を支持。

線は補間直線。

今夜もいっぱいいっぱいです。

                                          

   

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

疲れているだけではいかない。

2017年07月22日 | ネオコンバーテック

 

            

         文公14元年:(‐613)~宣公18年(- 591)/ 楚の荘王制覇の時代 


                                             

   ※ 晋の襄公のあとを継いだ霊公( -620~ -607)は、年なお幼かったため、大夫
     趙盾(ちょうとん)が摂政となり、よく内外を治めて、諸侯の盟主たる面目を
     維持した。しかし趙氏の勢力はしだいに大きくなり、ついに無道の雲公を弑す
     るに至り、晋の国力の漸衰は免れなかった。一方、楚の穆王のあとを継いで立
     った荘王(‐613~ -591)は、「三年飛ばず鳴かず、一たび鳴けば人を驚かす」
     との豪語にたがわず、国内の反乱を平定し、長江流域の諸蛮夷を次々に滅ぼし
     た余勢を駆って、大兵を周の国境に進め、鼎の軽重を問い、眼中もはや周王室
     はない。自ら蛮夷と称した楚が、今や中原に晋と覇を争い、邲(ひつ)の戦い
     に大いにこれを敗って、ついに覇をとなえるにいたった。


      晋の趙盾(ちょうとん)、霊公を弑(しい)す / 宣公2年(- 607)


   ※ 霊公は、天下に剖をとなえた文公から二代役の晋の君主である。いわば三代目、
     文公とはうってかわった暗君であった。趙盾(趙宣子)は文公の亡命に同行し
     た趙衰の息子、今や趙氏の族長、晋の卿大夫の筆頭で毀損のほまれ高かった。
     【経】 二年、秋九月乙丑(いつちゅう)、晋の趙盾、その君夷皐(霊公)を
         弑す。

   ※ 趙盾、霊公を諌む:晋の霊公は君主らしからぬ振舞いが多かった。人民に重い
     賦役を課して王宮の壁を飾り立ててみたり、そうかと思えば、望楼から下を行
     く通行人めがけて弾き玉を浴びせ、びっくりして逃げまどう姿をみて面白がる
     のであった。あるとき、司厨長が熊の掌を半煮えのままで食膳に供したことが
     あった。霊公は腹立ちまぎれに司厨長を殺してしまった。そして死骸をもっこ
     に入れさせると、女官に兪じて車で朝廷の外へ棄てに行かせた。たまたま来合
     わせたのが、大夫の趙盾と士季(随会)の二人である。もっこから死体の手が
     はみ出ているのをみて、二人は女官を問いただした。案の定、雪公の仕業であ
     る。二人は、霊公を諌めねば、と思った。

     「二人で行って、もし聞き入れられなかったら、あとに続く者がいなくなる。
     わたしがまずお諌めしてみるから、失敗した場合、あなたがあとに続いてくれ」

      士季は、こう言い残して出掛けて行った。
      霊公は士季が現われても、最初は素知らぬふりをしていたが、三度目に軒下
     の水溜りに追いつめられて、仕方なしに振り向いた。
     「わるかったと思っている。これからは慎しもう」
      士季は深く頭を下げて、説き始めた。
     「だれしもまちがいはあるものでございます。大事な点は、まちがいを犯した
     らそれを改めることです。詩(大雅、蕩)にも、
     
       ”初め仙めを善くしないものはないが”
        終りを全うするものはすくない”

     とありますように、罪のつぐないをするのは、なまやさしいことではありませ
     ん。あなたが有終の美をおさめてこそ、国は安泰となるのです。それは、わた
     くしども臣下の願いであるばかりでなく、天下万民の望むところでもあります。  
     詩(大雅・蒸民)にはまた、
      
       ”天下に落度あれば
        仲山甫(ちゅうだんほ)これを補う”

     とあります。
      これは、仲山甫(周の宣王の宰相)が天子を補佐して、政治の足らぬところ
     を補ったことを称えているのです。あなたが罪のづぐないをなされますならば、
     君位は永久に安泰でございましょう」

      しかし、雲公の行ないはいぜんとして改まらなかった。
      士季に代わって、こんどは趙盾が何度も諌めた。うるさくなった霊公は、い
     つしかかれを暗殺しようと思うようになり、その仕事を鉏麑(しょげい)とい
     うお抱え力士に命じた。
      鉏麑は明け方近くをねらって、趙盾の屋敷内に忍び入った。そっと寝室に近
     づいてみると、戸はすでに開け放たれている。そして、室内では趙盾がもう出
     仕前の仕度をきちんと整えおわって、端座レたまま仮眠をとっているところで
     あった。鉏麑は、そっとその場を退くと、深い嘆息を洩らした。

     「恭敬の心を忘れぬ人こそ、人民に慕われるのだ。そういう人物を殺すのは、
     道にはずれた行為だ。かといって、主君の兪今に背くのも裏切り行為だ。どち
     らか一つを選んで汚名を着るよりも、死んだほうがましだ」
      かれはこう言って趙家の庭の神樹の特に頭をぶちつけて死んでしまった。 

 Jul.19, 2017 
【ZW倶楽部:30年後の廃プラ排出量現状の4倍】

今月19日、Science Advances の報告によると、70年前、プラスチックは使われなかっが、今後30年
間で、これまで以上の4倍のプラスチック廃棄物を排出すると予測する。
人類は2015年までに83億メト
リックトン(1メトリックトン=千キログラム)を生産し、同量のプラスチック廃棄物排出(このうち、
9%はリサイクル、12%は焼却、79%は廃棄)している。これの傾向が続くと、2050年までに260
億メトリックトンのプラスチック廃棄物が生産され、その約半数が埋立地や環境に投棄される。しかも、
プラスチックは容易に劣化せず、千年の終わりまでに地球上に数千トンの物質が存在すると予測している。

 No.46

【RE100倶楽部:太陽電池篇】

● 量子ドット工学講座 No.42 

特開2017-126622  間接遷移半導体材料を用いた量子構造を有する光電変換素子

シャープ社の最新事例によると、量子構造を有する光電変換層を備え、伝導帯のサブバンド間遷移を利用
する光電変換素子、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子半導体層を備え、この障壁層は、
間接遷移半導体材料により構成、量子層は、直接遷移半導体材料のナノ構造を有し、間接遷移半導体材料
は、室温におけるバンドギャップが1.42eVより大きい。障壁層の材料として、室温におけるバンド
ギャップが1.42eVより大きい半導体材料を用いることで、量子閉じ込め効果が強まり、障壁層の材
料として間接遷移半導体材料を用いることで、伝導帯まで励起されたキャリアの取り出し効率が向上でき
光電変換効率を向上させることができるというもの(詳細は下図ダブクリック)。

【符号の説明】

1…基板、2…バッファ層、3…BSF層、4…ベース層、5…超格子半導体層、6…エミッタ層、7…
窓層、8…コンタクト層、9…p型電極、10…n型電極、51…障壁層、52…
量子ドット層、53…
量子ドット、54…キャップ、100…太陽電池



     
● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

         第2章 「日本の年金制度がつぶれない」これだけの理由


     朝日新聞に対して厚労省が抗議した件は、表面的には計算式の問題ですが、突き詰め
    ていえば、「50%を割り込みそうだ」(朝日新聞)、「50%を上回る水準が確保で
    きる」(厚労省)という議論です。
     世界の基準にあてはめて見ると、日本の所得代替率は40%弱とされています。もと
    もと40%くらいのものを、50%を上回るか、下回るかで議諭しても意味かおりませ
    ん。
     政治家やメディアの人たちの所得代替率についての最大の誤解は、「所得代替率が高
    いほうがいい」と思い込んでいることです,
    「現役のときの7~8割くらいはもらえないと、老後に生活していけない」という意見
    もあるでしょう。もちろん、八割の給付をすることは不可能ではありません。そのかわ
    りに、現在払っている保険料は高くなります。国民全員が今よりもけるかに高い社会保
    険料を支払ってもいいと思うのであれば、8割給付は可能です。しかし、大半の人は、
    「これ以上、保険料が高くなったら生活していけない」と思うのではないでしょうか。
    保険料が低ければ、年金給付額は低くなり、保険料が高ければ、年金給付額は高くなり
    ます。これが、年金を保険数理で見たときの、数学的な「事実」です。

     現在の保険料負担は、客観的に見ればそれほど高くはありませんから、将来もらえる
    年金額が高くなることはありません。今くらいの保険料率であれば、所得代替率が50
    %にいくはずがないのです。
     先ほど紹介しましたが、OECDは統一した計算式を用いています。「現代ビジネス」
    の記事で取り土げた数字を再掲しますと、同じ基準で計算したときに、日本の所得代替
    率は36%、日本を除くG7の所得代替率は四八%、ギリシアはなんと96%です。ギ
    リシアは、現役時代の給料と同じ額を年金でもらえるということです。

     そんな高額の給付をしていたら年金は破綻します。負担を強いられる現役の人の生活
    は苦しくて仕方がないでしょう。
     所得代替率が高いギリシアのような国は、制度が回らなくなって破綻します。所得代
    替率が低い年金制度のほうが安定するのです。

                      第2章8節 「所得代替率」が低いほうが年金制度は安定する

    《所得代替率はどのくらいがいいのか》

     ・所得代替率低→低負担・低給付→制度は安定
     ・所得代替率高→高負担・高給付→制度は不安定

     年金制度としては、なるべく現役の人の負担を抑え、それに応じて、将来の給付もそ
    れほど多くしないという、現行の仕組みが一番安定します。
     年金制度は、所得代替率以前に、安定した年金制度であることが重要です。制度が安
    定していれば、将来、確実に年金をもらえます。
     今、支払う保険料が少なくて、将来受け取る年金額が多いという、夢のような話は存
    在しません。幻想に惑わされず、現実的に考えましょう,
     自分が納める保険料が月給のI〇%弱であるならば(会社負担額を加えると20%く
    らいになるので)、将来もらえる年金額は、月給の40%くらいです。「今の収入の4
    0
%ではとても老後の生活ができない」と思う人は、個々で老後に備える対策をしてお
    
くのが、一番の自己防術策です。

     あるいは高齢者でも働ける社会にしていくことも、とても重要な施策です。人ロが減
    少していく日本では、マクロ経済的に考えても、そのことはきわめて重要になるでしょ
    う。技能の継承という意味でも、それは大きな意味を持つかもしれません。
     ここで、人口減少になると将来の保険料も少なくなりますが、給付額も少なくなって、
    「保険料」=「給付額」にはあまり影響は出ません。しかし、これはあくまで「人
口減
    少が予定されているとおりであれば」という前提です。予定外の人口減少では大変
なこ
    とになるのはいうまでもありません,

     マクロ経済ばかりでなく、個人レベルで考えても、働けるならば働いたほうが、自由
    に使えるお金も増え、暮らしも充実できます。健康維持のためにも、働いたほうがいい
    という考えもあります,

     話を戻しますが、ともかく年金というのは、とてもシンプルです。冷たく感じるかも
    しれませんが、個人の事情は関係かおりません。
    「年金がこんな額では、老後に生活していけない」とか「うちの家計は、よそより大変
    なんだ」とかいった個人的な事情を考慮してもらえるわけではなく、負担に応じて給付
    額が決まります。
     公的年金というのは最低限の「ミニマム」の保障です。ミニマムの保障だからこそ破
    綻しないのであり、現役世代の給料と同じくらい年金をもらえる制度をつくってしまっ
    たら、現役世代の人は給料の大半を保険料として納めなければいけなくなり、制度はす
    ぐに破綻します。
     現役のときの保険料負担をできるだけ少なくする代わりに、老齢になってからもらえ
    る年金額は「ミニマム」というのが、現在の年金制度です。逆にいえば、負担の低さと
    給付の低さのバランスが取れていれば、そう簡単に破綻することはないのです。

                    第2章9節 所得代替率はどのくらいがいいのか

     年金制度が安定するかどうかは、「人数」の問題ではなく、「金額」の問題ですか
    ら、バランスシート(B/S)で考える必要があります。
     バランスシートは、左側に「資産」の額、右側に「負債」の額を書きます。国から見
    ると、徴収する保険料は「資産」です。給付しなければならない年金は「負
債」です。
     賦課方式の年金の場合は、将来にわたりずっと続くことが前提ですから、資産も負債
    も、過去から遠い先の分まですべてを足してバランスシートをつくります。国は永遠に
    保険料を徴収できますから、「資産」は無限大になります。一方で、国は永遠に給付を
    し続けますから、「負債」も無限大になります。しかし、将来の「資産」と「負債」の
    価値を現在価値に直すと、遠い将来に行けば行くほど現在価値は小さくなりますので、
    無限大にはならずに、計算可能な額になります。

     現在価値で見た「資産」の額と「負債」の額は一致します。バランスシートをつくる
    とぴったりと数字が合います。完全な賦課方式の場合は、バランスシートの「資産」と 
    「負債」が一致するように、「保険料」と「給付額」が決められるからです。
     では、どのくらいの数字になるのか,国は毎年財務データ(国の財務書類)を公表し
    ており、年金のバランスシートも試算しています。
     平成二十六年度(2014年度)の厚生年金バランスシート(人口:出生中位、死亡
    中位経済:ケースC)によれば、図5のようになります。 

        「負債」の年金給付債務は、2030兆円。これは国が支払わなければいけない年金額
        すべての現在価値です,
       「資産」のほうは、保険料1470兆円。徴収できる保険料総額の現在価値です。この
        ほか、国庫負担390兆円、積立金170兆円です。
     もし、債立方式でやろうとすれば、年金給付債務の2030兆円をすべて積立金で用
    意しなければなりません。しかし、実際には積立金は170兆円で、債務の1割にも
    たない額です。つまり、9割方は賦課方式でやっているということが、バランスシー

    から読み取れます,



                 第2章10節 年金のバランスシート」には債務超過はない

    

                                                       この項つづく

   

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』     

        第42章 床に落として割れたら、それは卵だ 

    『秋川まりえの肖像画』と、『雑木林の中の穴』、どちらも私が現在描きかけている絵だ。彼は
  その両方を、時間をかけて注意深く見ていた。まるで医師がレントゲン写真の中に微妙な影を深
  すような目つきで。
  「とても面白い」と彼は言った。「とてもいい」
  「両方とも?」
  「ああ、どちらもずいぶん興味深い。とくにこの二つを並べると、不思議な勣きのようなものを
  感じる。スタイルはそれぞれにまったく違っているけど、この二つの絵にはどこかでひとつに結
  びついているような気配がある」

   私黙って肯いた。彼の意見は、彼自身がこの数日ぼんやりと感じていたことでもあった。 

  「おれが思うに、おまえは新しい自分の方向を徐々に掴みつつあるようだ。深い森の中からよう
  やく抜け出そうとしているみたいだ。その流れを大切にした方がいいぜ」 

   彼はそう言って手にしていたグラスからウィスキーを一口飲んだ。グラスの中で氷がきれいな
  音を立てた。 私は彼に、雨田典彦の描いた『騎士団長殺し』を見せてみたいという強い衝動に
  駆られた。政彦がその父親の絵についてどのような感想を述べるか、それを聞いてみたかった。
  彼の目にすることは、あるいは私に何か重要なヒントを与えてくれるかもしれない。しかし私は
  その衝動をなんとか胸の内に押しとどめた。 

   まだ早すぎる、と何かが私を制止していた。まだ早すぎる。我々はスタジオを出て居間に戻っ
  た。風が出てきたらしく、窓の外を厚い雲が北に向けてゆっくり流れていった。月の姿はとこに
  も見えなかった。 

  「それで、肝心の話だ」と雨田が腹を決めたように切り出した。
  「それは、どちらかといえば話しにくい話なんだろうね」と私は言った。
  「ああ、どちらかといえば話しにくい話だ。というか、かなり話しにくい話だ」
  「でもぼくはそれを聞く必要がある」 

   雨田は身体の前で両手をごしごしとこすり合わせていた。まるでこれから何かひどく重いもの
  を持ち上げようとしている人のように。そしてようやく切り出した。 

  「話というのはユズのことだよ。おれは何度か彼女に会っている。おまえがこの春に家を出てい
  く前にも、出ていったあとにも。会いたいと言われて、何度か外で会って話をした。でもそのこ
  とはおまえには言わないでくれと言われていた。おまえとの間に秘密をつくるのは気が進まなか
  ったけど、まあ、彼女にそう約束したものだから」 

   私は肯いた。「約束は大事だよ」 

  「ユズはおれにとっても友だちだったから」
  「知ってる」と私は言った。政彦は友だちを大事にする。それがあるときには彼の弱みにもなる。
  「彼女にはつきあっている男がいたんだ。つまり、おまえ以外にということだけど」
  「知ってるよ。もちろん今は知っているということだけど」 

   雨田は肯いた。「おまえが家を出て行く半年くらい前からかな。二人がそういう関係になった
  のは。それで、こんなことをおまえに打ち明けるのは心苦しいんだけど、その男はおれの知り合
  いなんだ。仕事場の同僚だ」
   私は小さくため息をついた。「想像するに、ハンサムな男なんじやないか?」
  「ああ、そうだよ。とても顔立ちの良い男だ。学生時代にスカウトされて、モデルのアルバイト
  をしていたことがあるくらいだ。で、実を言うと、おれがユズにその男を紹介したみたいなかた
  ちになっている」 

   私は黙っていた。 

  「もちろん結果的にということだけど」と政彦は言った。
  「ユズは昔から一貫して、きれいな顔立ちの男に弱いんだ。ほとんど病に近いものだと本人も認
  めていた」
  「おまえの顔だって、それほどひどくないと思うけどな」と政彦は言った。
  「ありがとう。今夜はゆっくり眠れそうだ」 

   我々はしばらくそれぞれに沈黙を守っていた。そのあと雨田が口を関いた。 

  「とにかくそいつはかなりの美形なんだ。それでいて人柄も悪くない。こんなことを言って、お
  まえの慰めになるとも思えないけど、暴力を振るうとか、女にだらしないとか、ハンサムなこと
  を鼻にかけているとか、そういうタイプの男ではまったくない」
  「それは何よりだ」と私は言った。とくにそんなつもりはなかったのだが、結果的には私の声は
  皮肉っぽい響きを帯びて聞こえた。 

   雨田は言った。「去年の九月くらいのことだが、おれがその男と一緒にいるときに、偶然どこ
  かでばったりユズに出会ってね、ちょうど昼飯時だったから、三人で一緒にそのへんで昼飯を食
  べようということになったんだ。でもそのときは、まさか二人がそんな関係になるなんて考えも
  しなかったよ。彼はユズより五つくらい年下だったしね」
  「でも二人は時を置かず恋人の関係になった 

   雨田は小さく屑をすくめるような動作をした。おそらくものごとはとても迅速に進展したのだ
  ろう。

   「おれはその男から相談を受けた」と雨田は言った。「おたくの奥さんからも相談を受けた。そ
  れでかなり困った立場に置かれることになった」

   私は黙っていた。何を言っても自分か愚かしく見えることがわかっていた。
   雨田はしばらく黙っていた。それから言った。「実をいうと、彼女は今妊娠しているんだ」
   私は一瞬言葉を失った。「妊娠している? ユズが?」
  「ああ、もう七ケ月にはなっている」
  「彼女は望んで妊娠したのか?」
   雨田は首を横に振った。「さあ、そこまではわからん。しかし産むつもりではいるようだ。だ
  ってもう七ケ月だし、手の打ちようもないだろう 

  「彼女はぼくにはずっと、子供はまだつくりたくないと言っていた」
   雨田はグラスの中をしばらく眺め、顔を僅かにしかめた。「で、それがおまえの子供であると
  いう可能性はないんだな?」
   私は素早く計算をしてみた。そして首を横に振った。「法律的なことはともかく、生物学的に
  いえば、可能性はゼロだよ。八ケ月前にはぼくはもう家を出ている。それ以来、顔を合わせたこ
  ともない」
  「ならいいんだ」と政彦は言った。「しかしとにかく今、彼女は子供を産もうとしていて、その
  ことをおまえに伝えてもらいたいと言っていた。おまえにそのことで迷惑をかけるつもりはない
  ということだった」
  「どうしてそんなことをぼくにわざわざ伝えたいんだろう?」
   雨田は首を横に振った。「さあな。いちおう礼儀上、おまえに報告しておくべきだと思ったの
  かもしれない」

   私は黙っていた。礼儀上?

   雨田は言った。「とにかくこの一件については、おまえにどこかでしっかり謝っておきたかっ
  たんだ。ユズがおれの同僚とそういう件になっていることを知りながら、おまえに何も言えなか
  ったことは申し訳ないと思っている。いかなる事情があれ」
  「だからその埋め合わせに、この家にぼくを住まわせてくれたのか?」
  「いや、それはユズの件とは無関係だ。ここは何と言っても父親が長く住んで、ずっと絵を描い
  ていた家だ。おまえなら、そういう場所をうまく引き継いでくれるんじやないかと思った。誰で
  もいいからまかせられるというものではないからな」

   私は何も言わなかった。それはたぶん嘘ではないだろう。

   雨田は続けた。「何はともあれ、おまえは送られてきた離婚届の書類に判を捺して、ユズに送
  り返した。そういうことだよね?」
  「正確に言えば、弁護士宛てに送り返した。だから今頃はもう離婚が成立しているはずだ。たぶ
  ん二人はそのうちに時期を選んで結婚することになるんだろう」
   そして幸福な家庭を作るのだろう。小柄なユズと、ハンサムな長身の父親と、小さな子供。よ
  く晴れた日曜日の朝、三人が仲良く近所の公園を散歩している。心温まる風景だ。
   雨田は私のグラスと自分のグラスに氷を追加し、ウィスキーを往ぎ足した。そして自分のグラ
  スを手にとって一口飲んだ。

   私は椅子から立ってテラスに出て、谷間の向かいの免色の白い家を眺めた。家の窓の明かりが
  いくつか灯っているのが見えた。免色は今そこでいったい何をしているのだろう? 今そこで何
  を思っているのだろう?
   夜の空気は今ではかなり冷え込んでいた。すっかり葉を落とした樹木の枝を風が細かく揺らせ
  ていた。私は居間に戻り、椅子にもう一度腰を下ろした。

  「おれのことを許してくれるかな?」

   私は首を振った。「誰が悪いというわけでもないだろう」
  「おれとしてはただとても残念なんだよ。ユズとおまえとはお似合いのカップルだったし、とて
  も幸せそうに見えた。そういうものがこうしてあえなく壊れてしまったことについて」
  「でも追求するだけの価値はあるだろう」
  「エイハブ船長は鰯を追いかけるべきだったのかもしれない」と私は言った。
   政彦はそれを聞いて笑った。「安全性という観点から見ればそうかもしれない。しかしそこに
  芸術は生まれない」
  「おい、よしてくれよ。芸術という言葉が出てくると、話がそこですとんと終わってしまう」
  「おれたちはどうやらもっとウィスキーを飲んだ方がいいみたいだな」と政彦は首を振りながら
  言った。そして二人のグラスにウィスキーを注いだ。
  「そんなに飲めない。明日の朝には仕事があるんだ」
  「明日は明日だ。今日は今日しかない」と政彦は言った。

   その言葉には不思議な説得力があった。

                                      この項つづく

   ● 今夜の一枚の海溝変動図
Science Advances 19 Jul 2017: Vol. 3, no. 7, e1700113 DOI: 10.1126/sciadv.1700113
図1.
東北地方太平洋沖地震の2012~2016年間の海溝変位計測図(詳細は上図ダブクリ参照:英文)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心覆れば図反す

2017年06月13日 | ネオコンバーテック

           
      僖公二十四年:晋の文公、本国に帰る / 晋の文公制覇の時代  

 

                          


    ※ 心覆(くつがえ)れば
図(と)反す:三月、話は前にさかのぼる。
      公子時代の文公(垂耳)のお側役に頭須(とうしゆ)という男がいた。
      宝物の管理を職拐としていたが、垂耳が国外に亡命すると、自分の管
      理する宝物を盗み出して、国内に身をひそめた。そして、その宝物を
      全部しかるべき人物への贈り物とし垂耳の帰国がかなうよう運動して
      歩いた。

      垂耳が帰国して即位したので藻類は目通りを順い出た。だが、文公は、
      髪を洗っているからといって会見を断わった。頭須は取り次ぎの者に
      こう言った。「なるほど、髪を洗えば、頭はさかさまになっているは
      ず。さかさまの藻で考えれば、是非の判断も逆になりましょう。わた
      しに会おうとされないのもかりはない。わが君の亡命中、あとに残っ
      た者は国の守りを固め、国を出た者はわが君に従って諸国をめぐり歩
      きました。

      どちらもそれぞれに意義のある役目だったはずです。国に残ったから
      といって責められろのは心外です。いやしくも君主の地位にある昔が、
      わたくしごとき下賤者を目のかたきにされるようなことでは、人心を
      つかむことはできません」 取り次ぎの者が、このことばを文公に伝
      えると、文公はすぐに頭須を申に通した。



 No.34

 【RE100倶楽部:太陽光発電篇】 

June 1, 2017

● 実用化目前 1年以上安定駆動する印刷可能なペロブスカイト太陽電池

6月1日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究グループは、1年以上安定したハイブリ
ッド型ペロブスカイト太陽電池の試作に成功したことを公表。このブログ読者諸氏は周知のごとくペ
ロブスカイト太陽電池は、
商業化の可能性が非常に高く、安価で太陽エネルギーを効率よく電力変換
するデバイスである
。このように、22%以上の電力変換効率を達成しているにもかかわらず、安定
駆動の実用化要件を満たしていない。同研究ブループの成果によると、変換効率(11.2%)が低
下せず1年以上駆動しているという(Nature Communications に掲載された成果報告は下記に記載)。
今回、EPFLのMohammad Khaja Nazeeruddinの研究室は、MichaelGratzelSolaronixと共同で2次元/3
三次元ハイブリッド型ペロブスカイト太陽電池を設計――二次元ペロブスカイトの安定性向上と、全
可視光波長領域※1を効率的に吸収、電荷を輸送する3次元構造組み合わせたもで、日本ではおなじ
みの宮坂力桐蔭横浜大学教授らの活動領域で、このようにし て2次元/3次元ペロブスカイトは、そ
れぞれ12.9%(炭素ベース構造
)および14.6%(標準メソポーラス構造)の変換効率をもつ。

※1、この連載シリーズNo.27の「ガラス壁からの太陽エネルギーを利用する」(2017.05.30)の韓国
科学技術振興機構(KAIST)の事例は、赤外光の85.5%を吸光波長帯(もはやこれは熱電
変換素子
に包摂されるかのような機能をもつ)の事例もあり、同じハイブリッド型ペロブスカイト太陽電池で
も特性が  異なる点に着眼する必要がある。

【概説】

22%を超える電力変換効率(PCE)で、シリコン太陽電池の半分価格で匹敵する、有機鉛ハロゲン化
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、デバイスの安定性が低い弱点をもつ。実用化には20~25年間の
保証が必要であり、標準長耐久加速試験で、少なくとも1,000時間PCEが10%以下に低下。ハイブリッ
ドペロブスカイト太陽電池は、水分や水蒸気、紫外線、熱ストレスに脆弱で、水蒸気に曝されると、
ペロブスカイト構造は加水分解され、可逆的な分解を受け、例えば高吸湿性のCH3NH3XおよびCH(N
H22X
塩およびPbX2( X=ハロゲン化物)に分解する傾向があり、劇的に熱、電場および紫外線暴露
により加速される。材料の不安定性は、❶クロスリンク添加剤を使用してある程度まで制御するか、
❷または組成調整によって、前駆体にPb(CH 3 CO 22・3H 2 OおよびPbCl 2の組み合わせを加えるか、
❸またはCsおよびRbカチオンを含むカチオンカスケードを材料の光不安定性を低減し、❹または膜形
態を最適化するなど試験されているが、太陽電池の劣化は、❶ペロブスカイト層の不安定性に起因す
るだけでなく、❷太陽電池スタックの他の層の不安定性により加速する。例えば、有機正孔輸送材料
HTM
)は、水接触すると不安定となり、ペロブスカイトとHTMの間のバッファ層に、NiOxなどの
湿気遮断HTMを使用――室温で最大1,000時間の安定性をもたらす適切なデバイスカプセル化により、
部分的に抑制されるものの、このアプローチは、装置の複雑化、ならびに材料および処理のコストを
増加させる。また、デバイス安定性測定値の大部分は、不確定な温度で測定した場合、湿度条件の無
制御状態でデバイスを放置した場合に生じる。これこれに対し挑戦的に異なる戦略のもとで適切に比
較を行う。 他方、2次元(2D)ペロブスカイトは、優れた安定性/耐水性に、最近、3次元(3D)対
応物よりはるかに大きな関心を集めている。この点で、準2D(BA)2(MA)2Pb3I10BA = n-ブチルアン
モニウム)ペロブスカイトに基づく太陽電池は、最近は12%の効率を示すが、それらの性能は周囲条
件下で2,250時間運転した後に30%低下する。ここでは、2D / 3Dペロブスカイトでできた多次元接合
を工学的に改造し革新的なコンセプトで開発。この2D / 3Dインターフェースは、2Dペロブスカイト
の安定性を向上させ、全色吸収と優れた電荷輸送を実現し、効率的かつ安定性に優れた太陽電池の量
産製造を実現する。特にHTMを使用しない太陽電池やHTMを疎水性炭素電極で置換するモジュール
開発を行っている
。この構成では、❶大面積、❷完全印刷可能、❸低コスト、❹高効率、❺効率低な
しで、10,000時間以上(400日に対応)の驚異的な長期安定性を、酸素/水分の存在下で100cm2セル
面積(約50cm2 の活性面積)標準条件下で測定し実証された。

doi:10.1038/ncomms15684

図1 光学的および構造的特徴

(a)3%のHOOC(CH24NH3I、AVAIを用いた(HOOC(CH24NH32PbI4(青色破線)、3D CH3NH3PbI3
(黒色線)および2D / 3D(赤色線)の吸収スペクトル。 PbI2に対するAVAIのパーセンテージを増加
させながら420nmにおけるピークの強度を挿入した。
 (b)100%AVAI(パネルI)、3%AVAI(パネルⅡ)及び0%AVAI(パネルⅢ)ペロブスカイトのラマンス
ペクトル。 実線は、マルチガウスピークフィッティング手順(詳細は補足図※3)からの適合を表す。
3Dペロブスカイト主ピークの場合:78,109及び250cm -1; 2D、73,99,143,171cm-1、2D / 3D:62,87,112,
143,169cm-1
;
(c)100%AVAIのX線回折パターン(パネルI)。 3%AVAI(パネルⅡ)および0%AVAI(パネルⅢ)ペ
ロブスカイト。 星で示されるピークは、FTO / TiO 2基質に由来する。
(d)選択された角度での3%AVAIと純粋な0%AVAIペロブスカイトとを比較するX線回折パターンの拡
大( 基材:メソポーラスTiO2)。



図2.放射特性

(a)100%HOOC(CH24NH3I、以後のAVAI、3%AVAIでの2D / 3D、400nmでの励起、ペロブスカイトが
メソポーラス足場内に浸透しているTiO2側から励起する。
(b)上部ペロブスカイト層からの3%AVAI励起での2D / 3Dと、3D0%AVAIと比較してペロブスカイト
がメソ多孔性骨格内に浸透しているTiO2側から、600nmで励起した正規化PLスペクトル。メソポーラ
ス側(実線)。光の侵入深さは100600nmで、酸化物側からのペロブスカイト膜の励起(約1μm
骨格の厚さ)は骨格内で成長したペロブスカイトナノクリスタリットを調べ、ペロブスカイト上層か
らの励起はバルクペロブスカイトの固有特性が上に成長する。
(c)絶縁ZrO2メソ多孔性基体上に堆積した3%AVAIのバルクペロブスカイト(760nmでの最上層からの
励起)および730nmでの酸化物側からのPL動態。

図3.2D / 3Dインタフェースの第1原理シミュレーション

(a)3D / 2D界面の局所密度DOS)および(b)TiO2表面に接触する2D相との界面構造。(c)スピン軌道結
合(SOC、挿入図)を含めて計算した2次元および3次元フラグメント上に部分DOSを合計する。 2Dペロ
ブスカイトへの電子注入のための伝導帯状態と、可能であればTiO 2への伝導帯状態の良好な整列に注
目。

図4.2D / 3Dメソポーラス太陽電池の特性と安定性

(a)正孔輸送材料(HTM)を含まない太陽電池および標準的なHTMベースの太陽電池のデバイス漫画。
(b)2,2 '、7,7'-テトラキス(N、N'-ジフェニル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン)を用いた標準的なメソ細
孔構造における、3%HOOC(CH2)4NH3I、以後のAVAIを有する2D / 3Dペロブスカイトを用いた電流密
度電圧(J- N'-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)/ Au(挿入
図中の細胞の統計および画像を考案する)。
(c)Spiro-OMeTAD / Auセルの安定性曲線。AM 1.5G照明下、アルゴン雰囲気下、45℃の安定化温度下
での最大電力点での混合2D / 3Dペロブスカイトと標準3Dの比較。 実線は線形近似を表す。 挿入図に
チャンピオンデバイスのパラメータがリストを表示。


図5.
2D / 3Dカーボンベースの太陽電池の特性と安定性

(a)空気質量(AM)1.5G照明下で測定されたHTMフリー太陽電池中の3%AVAIを有する2D / 3Dペロブス
カイトを用いたJ-V曲線(デバイス統計および挿入図)。
(b)HTMを含まない10×10cm 2モジュール(
装置の統計およびインセット内の画像)中の3%AVAIを有する2D / 3Dペロブスカイトを用いたJ-V曲
線。
(c)55°の安定した温度および短絡状態で、1太陽AM 1.5 G条件下での典型的なモジュール安
定性試験。
標準的なエージング条件に従って行われた安定性測定。 aおよびbで表される装置の挿入
装置パラメータでは、
補足表2に報告されている。

● 補足図表(※3)Supplementary information


【方法事例】

● Spiro-OMeTAD※3ベースの太陽電池の作製

この
太陽電池は、フッ素ドープ酸化スズ被覆ガラス(NSG10)基材上に調製される。

  1. 異なる層の堆積の前に、基板を、hellmanex溶液(2vol%)中で15分間、蒸留水中で分間、最後
    にイソプロパノール中でさらに5分間超音波処理し、続いて15分間紫
    外線-オゾン処理。
  2. イソプロパノール9ml中のシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)からのチタンジイソプロポキシド
    ビス(アセチルアセトネート)
    75%を含有する溶液から噴霧熱分解により厚さ30nmのTiO 2ブロッ
    ク層を堆積。
  3. 450℃で焼結した後、メソポーラスTiO2層を、300rpmEtOH30NRD Dyesolペーストの400mg /
    ml
    溶液からスピンコートした。 500℃で30分間アニール。
  4. 基板が冷却されたら、1.25MのPbI 2 / MAI(1:1)DMSOに含む40μlの溶液を2段階法により上に
    スピンコートした。第1工程は
    1,000r.p.m. 10秒間(層のプレコンディショニング)および第2の
    工程を
    4,500rpmで行う。 30秒間。
  5. プログラム終了の10秒前に、文献38に記載されている貧溶媒法にしたがって、クロロベンゼン
    100mlをペロブスカイト層の上にスピンコートし、最後にペロブスカイ
    ト膜を100℃で1時間焼結。
  6. アニーリング時間の後AVAI:PbI 2(2:1)の1.1M溶液の異なる量をMAI:PbI 2前駆体溶液0,3および
    5%モル比)と混合することによって、2D/3D
    ペロブスカイトの異なる組成物も試験。、
  7. Spiro-OMeTADを、Li-TFSI(アセトニトリル中の520mg ml-1ストック溶液から7.0μlを含有するク
    ロロベンゼン溶液(
    400μl中、28.9mg、60mmol)から4000rpm20秒間スピンコートし、TBP(11.5μl)
    およびCo(II)TFSI(10mol%、40mgml-1ストック溶液から8.8μl)を添加。
  8. 最後に、100nmの金電極を蒸発させる。


●炭素系メゾスコピック太陽電池の作製

  1. FTOガラスを最初にエッチングして2つの分離した電極を形成した後、エタノールで超音波洗浄。
  2. その後、エアロゾルスプレーによる熱分解により、パターン化された基板をコンパクトTiO2
    でコーティングし、先に報告したように調製したTiO2スラリーのスクリーン印刷により、1μm
    のナノ多孔質TiO2層を堆積させた。 450℃で30分間焼結した後、2μmZrO 2スペーサー層を電
    子が背面接触部に到達するのを防止する絶縁層として働くZrO 2スラリーを用いて、ナノ多孔質
    TiO 2層の上部に印刷。
  3. 最後に、カーボンブラック/グラファイト複合スラリーを印刷し、ZrO2層の上に厚さ約10μmのカ
    ーボンブラック/黒鉛対電極をコーティングし、400℃30分間焼結した。室温に冷却した後、

    ロブスカイト前駆体溶液を、半連続印刷法により、カーボン対向電極の上部からドロップキャス
    ティングにより浸透させた。完全な印刷プロセスは空気中で行う。
  4. 50℃で1時間乾燥した後、ペロブスカイトを含むメゾスコピック太陽電池が得られた。ペロブス
    カイト前駆体溶液を以下のように調製した:3D前駆体溶液について、1.2μMのMAIおよび1.2μMの
    PbI2
    をγ-ブチロラクトンに溶解し、60℃で一晩撹拌。 2Dペロブスカイトの場合、1.2μMのAVA
    Iおよび1.2μMのPbI 2
    をγ-ブチロラクトンに溶解し、60℃で一晩攪拌。
  5. AVAI:PbI2)と(MAI:PbI2との混合物を3,10,20,50容量%(すなわち、(AVAI:PbI2))とした
    以外は同様にして(AVA)x (AVAI:PbI2)/((AVAI:PbI2)+(MAI:PbI2))を使用。
  6. すべてのセルを周囲の雰囲気に封入して、細胞を機械的損傷から保護し、湿度および酸素含有量
    を特別に制御しなかった。 封入は、細胞を薄いガラスで覆い、DuPont Surlynポリマーを用いて縁
    をシールすることによって行った。モジュールの場合、同じプロセスが実行されたが、第2の保
    護としてセルの周りにエポキシ接着剤の余分なリングを追加。 

以上の研究成果を踏まえると、同時に10年前の色素増感型太陽電池の調査開発を行っていたときの
違和感(これは有機ELディスプレイの調査研究を行っていた当時の違和感と同じもの)、つまり「不
安定さ」の起源の未解明さにあった。後者はすでに克服されているが、前者は、テレビジョン(表示器
)製造事業とは異なるエネルギー供給事業であり、「不安定」は致命的であり、退社後もその評価解明
の調査研究を続けてきた。「二次元構造/機能」は光の吸収を高め、外部環境変動の緩衝保護し、「三
次元構造/機能」がエネルギーを高効率変換できることを実証したことになる。ここまで来ると実用性
が高かまる。わたし(たち)予見したナノテクを駆使したネオコンバーテック(新表面加工々学)事業
はまたひとつ実現したことになる。これは大変愉快だ。

● 今宵の一曲  Andrea Bocelli - Quizas Quizas Quizas 

「キサス・キサス・キサス」(Quizás, quizás, quizás)は、キューバのオスバルド・ファレス作曲。題名
は「たぶん、たぶん、たぶん」という意味である。歌詞は「男が恋人の女性にいろいろと問いかけるが、
女性はいつも『たぶん』としか答えてくれない」といった内容。
作曲者自身によりスペイン語の歌詞が
付けられ、スペイン語圏でヒット、ジョー・デイビス  により英語の歌詞がつけられた。1958年にナッ
ト・キング・コールが歌い、再度ヒットする。今宵はアンドレア・ボチェッリとともにシチリア島の思
い出に浸りながら疲れを癒す。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界初が多すぎる国

2017年06月08日 | ネオコンバーテック

           
      僖公二十三年:晋の文公、亡命十九年 / 晋の文公制覇の時代  
               
   

                          

              ※ 秦におもむく秦の穆(ぼく)公は、重耳に侍妾五人を与
         えて礼遇した。この五人の侍妾のなかに、懐嬴(かいえい)
         もいた。
ある日のこと、懐嬴が水差を捧げもって垂耳に手
         洗いの水をつかわせていた。垂耳が濡れた手を振
ったので、
         そのとばしりが懐嬴にかかった。懐嬴は、きっとなって垂
         耳を詰問した。
「秦と晋とはいねば同輩の間柄です。なん
         てわたしを賤しむのです」
 垂耳は大いに恐縮し、上着を
         脱ぎ、囚人姿になって穆公の前に進み出て、許しを乞うた。

         また、穆公が垂耳のために宴を張ったときのこと。垂耳は、
         子犯を連れて行こうとしたが、子犯は、
「わたしは趙衰ほ
         ど挨拶がうまくありません。どうか趙衰をお連れになって
         ください」
と、辞退した。席上、垂耳は『河水』の詩を誦
         した。穆公は『六月』の詩を誦して、これに応じた。趙衰
         がすかさ
ず口をはさんだ。

         「垂耳どの、今のありかたいお言葉にお礼申しあげなさい
         ませ」
そこで、垂耳は階を下りて拝し、地に額づいた。穆
         公が階を一段下りて辞追すると、趙衰は言った。
「君にお
         かれては、いかにして天子を輔佐したてまつるべきかを述
         べ、その大任を垂耳どのにお命じになりました。垂耳どの
                  として、どうして拝礼せずにおられましょう」

             ★ 〈懐嬴〉秦の穆公の娘で、もと晋の太子圉(ぎょ)の妻。韓
                  原の戦いに晋が大敗し、圉が秦に人質となったとき、穆公
                  がこれに娶せたのである。懐は子圉の温号、嬴(えい)は
         秦の姓。子圉はこの前の年(僖公二十二年)晋に逃げ帰っ
         た。二十三年九月、恵公が薨ずると、子圉は位を嗣いで懐
         公となったが、垂耳は帰国するやこれを殺して文公となっ
         た。

        〈濡れた手を・・・・・〉垂耳は懐嬴の身分を知らず、戯れてそ
         う
したのであろう。一方、懐嬴はなお前夫のことが忘れら
         れず、垂耳に好意をもたなかったのであろう。

        〈『河水』の詩〉王侯の宴会にはこのように詩を誦する習わ
         しがあった。『河水』の詩は、今の『詩経』に収められて
         いない、いわゆる逸詩であるが、河の水が結局は東海に流
         れこむことを歌い、海を秦になぞらえて、故国に帰ること
         ができたならば、河の水が海に朝するように、秦に朝参し
         ようとの意を寓したのであろう。

        〈『六月』の詩〉『詩経』小雅の一篇。尹吉甫(いんきつほ)
         が周の宣王を佐(たす)けて玁狁(けんいん)を征伐した
         ことを歌った詩。穆公がこれを誦したのは詩中に「六月棲
         棲 我是用急」とあるためで、公子を晋に入れるために、
         急いで軍を出そうと言おうとしたのである。それを趙衰は
         穆王の真意をよく知りながらも、『六月』の詩中に「王子
         出征 以匡王国」および「以佐天子」とあるのを利用して、
         尹吉甫の勤王を重耳に比したものとして受け取ったのであ
         る。

            六月棲棲 戎車既飭 四牡聧聧 戴是常服 
            玁狁孔熾 我是用急 王于出征 以匡王國 
            比物四驪 閑之維則 維此六月 既成我服 
            我服既成 于三十里 王于出征 以佐天子 
            四牡脩廣 其大有顒 薄伐玁狁 以奏膚公
            有嚴有翼 共武之服 共武之服 以定王國 

            玁狁匪茹 整居焦穫 侵鎬及方 至於涇陽
            織文鳥章 白旆央央 元戎十乘 以先啟行
            戎車既安 如輊如軒 四牡既佶 既佶且閑
            薄伐玁狁 至于大原 文武吉甫 萬邦為憲
            吉甫燕喜 既多受祉 來歸自鎬 我行永久
            飲御諸友 炰鱉膾鯉 侯誰在矣 張仲孝友

                                  小雅.六月 《詩經》

 

 No.31

【RE100倶楽部:エネルギー貯蔵篇】

● 最新アルミニウム空気電池技術:

  世界初!アルミニウム-空気電池の初の二次電池化を実現

現在主流のリチウムイオン電池を上回る性能を持つ電池として期待されているアルミニウム空気電池
の課題は充放電が可能な二次電池化の実現冨士色素は電解質にイオン液体系電解液を用いたアルミニ
ウム空気二次電池の開発に成功。空気極に非酸化物セラミック材料を用いることで、二次電池化の障
壁となっていた化学反応の抑制に成功ことを報る(スマートジャパン、2017.06.07)。

正極材料に大気中の酸素を利用し、負極材料に金属を利用する金属空気電池が注目を集めている。空
気中の酸素を正極活物質として用いる金属空気電池は、正極活物質を電池に内蔵する必要がないため
電池容器内の大部分の空間に負極活物質を充填することが可能であり、原理的に化学電池の中で最
大きなエネルギー密度を有するため
、電池の小型軽量化や高容量化が期待できる。しかし、これまで
の金属空気電池は主に一次電池として用いられ、充放電可能な二次電池としての使用には多くの課題
が残されている。

たとえば、✪亜鉛を用いた金属空気電池が、補聴器の電源等に使用されているが、すべて一次電池で
あって二次電池ではない。これは、亜鉛を用いた金属空気電池が低充放電効率である等の解決すべき
課題が多かった。他方、✪アルミニウムを負極に用いた空気二次電池の場合、充放電の繰り返しによ
水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の反応副産物が電極上に蓄積され、二次電池としての機
能が阻害される。➀アルミニウム合金を用いた負極、➁電解液への高分子、オキソ酸塩等の添加によ
り、電極での副生成物の産出を抑制する試みが行われているが十分な効果は得られなかった。

そこで、冨士色素株式会社は、酸化物系材料/カーボン系材料群から一種以上を含有する組成物を用
いて金属空気二次電池用負極に多孔性層を形成し、多孔性層が電解質層に接するように配置、充放電
に伴い生成する副生成物の負極蓄積を防止することに成功する。

具体的には、空気極に窒化チタン/炭化チタンを用いると、酸化アルミニウム生成をが抑制。空気極
側副生成物生成を抑制し完全なる二次電池化へのめどがつく。実際に電解液にイオン液体系を、正極
に窒化チタンや炭化チタンを用いたアルミニウム空気電池を作成し、充放電カーブを測定すると4百
mAh/g以上の電池容量を安定して示すことを確認する(下図)。非酸化物セラミック材料酸化アル
ミニウムの生成を抑制する理由ははっきりと分かっていない。ただ、従来の炭素系の空気極を用いた
時は、炭素がカーボネート基として存在し、これが何らかの反応で酸化アルミニウムなどの副生成物
になるのに対し、窒化物、炭化物を空気極に用いた場合は炭素がヒドロキシル基で存在する。これが
副生成物の生成を抑制している可能性がある推測する。



● 事例研究:特開2017-050294 組成物、該組成物を含有する多孔性層を有する電極、
                     および該電極を有する金属空気二次電池

【要約】

空気極層、負極層、および電解質層を有する金属空気二次電池であって、前記負極層が、金属電極層
が多孔
性層と当接して被覆された金属空気二次電池用負極を含み、前記金属空気二次電池用負極の多
孔性層が前記
電解質層と接している金属空気二次電池である。前記多孔性層の原料組成物が、酸化物
系材料およびカーボ
ン系材料からなる群から選択される一種以上を含有することを特徴とすることで
充放電に伴い生成する副生成物の電極への蓄積を防止して、長期にわたり充放電可能な金属空気二次
電池を提供する(詳細は下図ダブクリ参照)。

【特許請求の範囲】

  1. 金属空気二次電池の電極に当接して被覆する多孔性層の原料組成物であって、酸化物系材料お
    よびカーボン系材料からなる群から選択される一種以上を含有する組成物。
  2. 前記酸化物系材料が、Al、ZrO、SiO、MnO、TiO、V、VO
    のうちのいずれか一種以上を含有した請求項1に記載された組成物。
  3. 前記カーボン系材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、グラ
    ファイト、グラフェン、活性炭のうち、いずれか一種以上を含有する請求項1に記載された組
    成物。
  4. 金属電極層が多孔性層と当接して被覆された金属空気二次電池用負極であって、前記多孔性層
    が請求項1~3のいずれか一項に記載された組成物から構成された金属空気二次電池用負極。
  5. 前記金属電極層が、アルミニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、リチウムからなる群から選択さ
    れる一種以上を含有する請求項4に記載された金属空気二次電池用負極。
  6. 集電支持体を含有する触媒層が多孔性層と当接して被覆された金属空気二次電池用空気極であ
    って、前記多孔性層が請求項1~3のいずれか一項に記載された組成物から構成される金属空
    気二次電池用空気極。
  7. 前記空気極層が、請求項6に記載された金属空気二次電池用空気極を含み、前記金属空気二次
    電池用空気極の多孔性層が前記電解質層と接している金属空気二次電池。


JP 2017-50294 A 2017.3.9


JP 2017-50294 A5 2017.4.13

尚、冨士色素は今回開発した新しいアルミニウム空気二次電池の製品化に向けた試作も進めている。
今後
は他の企業や研究機関との連携、協業も模索し、商品化に向けた取り組みを加速させる方針だと
いうが、それにしても、世界初を冠する見出しがやけに多すぎるねぇ~と感心する。

● 参考特許:特開2017-092014  アルミニウム空気電池

【要約】

負極にアルミニウムやアルミニウム合金を用い、その負極をポリアニオン性水溶性多糖類でコーティ
ングした構造を特徴とする。これらの構造によりアルミニウム空気電池の最大の問題点である放電生
成物による放電阻害を防ぐことによって、電池を長寿命化することができる。

【特許請求の範囲】

  1. 負極及び、正極(空気極)が、電解槽内に配置された一室型電池であって(1)負極として、
    アルミニウム又は、アルミニウム合金の導電体を、ポリアニオン性水溶性多糖類を含む溶液を
    浸漬させ、電気分解することによって、正極に接続したアルミニウム又は、アルミニウム合金
    の導電体に、ポリアニオン性水溶性多糖類が堆積した、負極電極からなり(2)正極(空気極)
    として、活性炭、カーボン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、La(1-x)MnO
    (0.05<x<0.95;A=Ca,Sr,Ba)で表されるランタンマンガナイトなどの
    ペロブスカイト型複合酸化物、Mn、Mnなどのマンガン低級酸化物、あるいはポリ
    アセチレン、ポリチオフェン類などの伝導性高分子から選ばれる1種以上である、正極からな
    り、(3)電解液からなる、アルミニウム空気電池。
  2. 前記ポリアニオン性の水溶性多糖類が、アルギン酸塩である、アルミニウム空気電池。
  3. 前記アルギン酸塩が、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、又はアルギン酸アンモニ
    ウムである、アルミニウム空気電池。
  4. 請求項1の電解液は、塩化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、過酸化水素、塩化
    マグネシウム水溶液、海水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液からなる群から
    選ばれる少なくとも1つである、アルミニウム空気電池。



● 自然エネルギーで製造したビール 累計百億本超

今月2日、アサヒビールは、2009年からバイオマス発電や風力発電といった自然エネルギーを活用し
て製造。「アサヒスーパードライ」の累計製造本数が、2016年末時点で百億本を超えたと発表。同社
は、2009年4月に日本自然エネルギーとグリーン電力に関する契約を締結。「食品業界で初」という
商品の製造にグリーン電力の活用を始めている。活用した累計のグリーン電力量の累計は約1.6億
kWh(キロワット時)で、一般家庭が1年間で使用する電力の約3万7千0世帯分に相当する。また、
二酸化炭素の削減量に換算すると、累計で約7万7千トンで、杉の木約5百本に相当する二酸化炭素
吸収量に匹敵する。アサヒグループは『環境ビジョン2020』に“自然の恵みを明日へ”という思い
を込めており、今後も太陽光や風力、バイオマスなどの自然エネルギーの利用拡大や省エネルギーを
推進し、低炭素社会の実現に向けて貢献していく。
 

    

 June 5, 2017

● ゲルマニウム単結晶の超薄膜化 集積回路の高速化と低消費電力化に貢献

携帯情報端末の普及や、IT機器の高機能化に伴う消費電力の増大により、電子情報機器の消費電力低
減が求められているが、搭載されているLSIを構成する個々のトランジスタの動作電圧の低減が有効
である。これまでトランジスタを微細化することで動作電圧は徐々に下げられてきたが、これまで
LSIで使われていたケイ素(Si)の物性の物理的限界に近づき、近年は1V程度で停滞。ケイ素(Si)
り低電圧で動作するゲルマニウム(Ge)を用いた微細なトランジスタの研究開発が進めらている。電
子や正孔の移動度が高く高品質の単結晶Ge薄膜の形成が難しいことがその大きな要因であり、産総研
では、独自の低温貼り合せ技術と高度な半導体転写法を用いた高品質Ge薄膜の形成技術を研究。




今回、半導体転写技術の高度化させ、膜厚10ナノメートルのゲルマニウム単結晶薄膜の作成す法を
開発。上図に今回開発した超薄膜Ge構造の形成法、HEtero-Layer Lift-Off (HELLO)法の概要を示す。
まず、ヒ化ガリウム(GaAs)基板上に剥離層となるヒ化アルミニウム(AlAs)層を形成し、その上に高
品質の超薄膜ゲルマニウム/シリコンゲルマニウム/ゲルマニウム(Ge/SiGe/Ge)の複層膜構造をヘテ
ロエピタキシャル成長させる。SiGe層は後述の選択エッチングプロセスのエッチングストップ層とな
る。ここで、AlAs層やSiGe層のように化学的な性質は大きく異なるがGe結晶の格子とは一致した結晶
成長が肝となる。その後、酸化アルミニウム(Al2O3)絶縁膜を堆積させた。剥離層であるAlAs層を
露出させるために、Al2O3/Ge/SiGe/Ge/AlAs層を部分的にエッチングした後、二酸化ケイ素(SiO2)膜
を付けたSi基板と貼り合わせる。剥離層であるAlAs層だけを薬液により溶解してGaAs基板を剥離する
と、Al2O3/Ge/SiGe/Ge層が転写されたSi基板が得られ、さらに転写されたGe/SiGe/Ge層のうち上側の
Ge層とSiGe層を選択エッチングして順次取り除くと、絶縁膜上に均一な超薄膜Ge構造ができる。最終
的にこの超薄膜Ge構造を、原子層レベルで繰り返しエッチングすることで精密に膜厚を制御できる。


以上、❶半導体転写技術によりゲルマニウム(Ge)単結晶を10 nm以下に超薄膜化、❷薄膜化に伴い、
絶縁膜に挟まれたGe膜中の電子移動度が急激に向上する新しい現象を発見、❸高速情報処理を低消費
電力で行える大規模集積回路実現の貢献が期待される。


  June 5, 2017

● 最も熱い惑星発見 4300度と恒星並み

表面温度が約4300度と、これまで観測された中で最も熱い太陽系外惑星を、東京大と国立天文台など
の研究チームが発見し、5日付の英科学誌ネイチャーに発表。太陽系以外の惑星(系外惑星)は1995
年の初発見以来、4000個近くが見つかっているが、恒星に匹敵する温度の惑星は例がなく、従来
の惑星の概念を覆す発見となる。
成田憲保東京大の助教らは、地球から約650光年離れた温度約1
万度の恒星「KELT-9」を回る惑星「KELT-9b」を、国立天文台岡山天体物理観測所(岡
山県浅口市)の望遠鏡などで詳しく観測。周期約1.5日で公転するこの惑星から放射される近赤外
線の測定から、惑星の昼側(恒星を向いた面)の温度が約4300度に達していることが分かった。

こうした高温の惑星では、大気成分に二酸化炭素やメタンなどの分子は存在できず、恒星からの強い
紫外線により大気が常に流出している可能性が高いという。成田助教は「太陽系を含め、惑星形成の
過程を知るためには、さまざまなタイプの惑星を調べる必要がある。これまで不足していた高温の惑
星の情報は、全体像を知る手掛かりになる。


    

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編   
 

   34.そういえば最近、空気圧を測ったことがなかった

  
時計は午後二時を少しまわっていた。ひどくくたびれたという感覚があった。私はクローゼッ
 トから古い毛布を持ってきて、それを身体にかけてソファの上に横になり、しばらく眠った。目
 が覚めたのは三時過ぎだった。部屋に差し込む太陽の光が少しだけ移動していた。妙な一日だっ
 た。自分が前に進んでいるのか後ろに下がっているのか、あるいは同じところをぐるぐる回って
 いるのか、見定めることができない。方向感覚が乱されている感覚があった。秋川笙子とまりえ 
 と、そして免色。彼ら三人が三人とも、それぞれに強い特別な磁力のようなものを発している
 そしてその三人に囲まれるように、私が真ん中に置かれていた。どのような磁力をも身に帯びる
 ことなく。

  しかしどれだけくたびれてはいても、もう日曜日が終わってしまったわけではなかった。時計
 の針は午後三時をまわったばかりなのだから。そしてまだ日が暮れてもいないのだから。日曜日
 が過去のものとなり、明日という新しい一日が訪れるまでにはたっぷり時間がある。でも何をす
 る気にもなれなかった。昼寝をしたあとでも、頭の奥の方にまだぼんやりとした塊が残っていた。
 机の狭い抽斗の奥に古い毛糸の玉が詰まっているような感覚だ。誰かがそんなものを無理にそこ
 に詰め込んだのだ。おかげで抽斗がきちんと最後まで閉まらない。たぶんこんな日には、私も車
 の空気圧を側ってみるべきなのだろう。何もする気が起きないときには、人はせめてタイヤの空
 気圧でも測ってみるべきなのだ

  しかし考えてみれば、私はまだ生まれてこの方、自分で車のタイヤの空気圧を測った経験が一
 度もなかった。たまにガソリン・スタンドで「空気圧が下がっているみたいだから、測ってみた
 方がいいかもしれませんね」と言われて、そのときに測ってもらうくらいだ。もちろん空気圧計
 みたいなものも所有してはいない。それがどんな形をしているかすら知らない。コンパートメン
 トに入るくらいだから、それほど大きなものではないのだろう。そしてたぶん月賦を使って買わ
 なくてはならないほど高価なものでもないはずだ。今度試しに買ってきてみよう。

                                     この講つづく

  

● 世界一のマ・マーのペペロンチーニ

最近、日本の冷凍食品も悪くないと思えることがあった。確かに加工食品は、農薬・遺伝子組み換え・
添加物による複合汚染リスクがある。最近摂った日清フーズの冷凍「マ・マー THE PASTA ソテー
スパゲティ ナポリタン」(税抜き価格は330円)で日本食糧新聞・電子版によると、今年3月に
発売されているが、5、6百キロワット電子レンジで5~6分程度加熱するだけで頂ける。フライパ
ンでソテーした時のあの香ばしい炒め感が魅力。エクストラ・バージン・オリーブオイルが豊かに香
り、にんにくの旨味と、赤唐辛子の辛味がクセになる味わいとはメーカーのうたい文句だが、その通
り。これに香辛料、アンチョビ、粉チーズなどを加えて和えれば格段に美味くなり手間暇いらず、昼
間の作業にはもってこい。かくして、虜になる、世界一の技術だ!と。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グラビアなオーレッド

2017年05月22日 | ネオコンバーテック

           
        閔公二年:衛の懿公鶴を好む / 斉の桓公制覇の時代  
               
   

                            

       ※ 斉の桓公の制覇の前に立ちはだかったもの、北には強大な異民
         族・狄(てき)があり、南に新興の雄国・楚があった。西紀前
         六六一年、狄が邢国に攻め入るや、斉の管仲は「戎狄は豺狼で
         ある。満足させてはならぬ」と桓公にすすめて、軍を出し、邢
         を救援したが、狄はその翌年また衛に侵入して懿(い)公(B.C
         668~660)を殺したのである。衛は河南省にあった小国。
         【経】十有二月、狄、衛に入る。

       ※ 冬十二月、狄が衛に攻めよせて来た。時の衛君、懿公は大の鶴
         好きであった。衛の国には大夫の待遇をあたえられる鶴さえい
         た。いよいよ
戦が姶まろうとし、動員。命令が下ったとき、衛
         の人々は口々に言った。
「鶴に戦ってもらおう。鶴は禄をもら
         っているんだ。何もわれわれが戦うことはない」懿
公は大夫の
         石祁子(せききし)玦(けつ)を、同じく大夫の鼠荘子(ねい
         そうし)に矢をあたえ、
「これによって、国のため、万事よろ
         しく取りはからうように」と言って後を託した。
         それと同時に、夫人に刺繍した衣をあたえ、「この二人の言う
         とおりにせよ」と、言いのこして、出陣した。   
         

         渠孔(きょうこ)が懿公の乗った兵車の手綱を執り、子伯が車
         右となり、黄夷(こうい)が先鋒を、孔嬰斉(こうえいさい)
         が殿(しんがり)をつとめ、衛軍は狄の軍勢を焚榮沢(けいた
         く)にむかえ討った。だが、衛軍は総崩れとなり、懿公はあえ
         なくも戦死を遂げた。戦闘に際し懿公があくまで旗印を掲げつ
         づけたことが、この惨敗を椙く原囚となったのである。戦いに
         勝った秋人は、衛の史官華龍滑(かゆうかつ)と礼孔の二人を
         とらえ、これを案内役として衛軍に追い討ちをかけようとした。
         囚えられた二人は、狄人たちにむかってこう言った。
         「われわれ二人は、太史として祭祀をつかさどっている者、わ
         れわれが先に行って神に告げぬかぎり、都をとることはできぬ」
         狄人はすっかり信用して、二人を先に衛の都にはいらせた。二
         人は都につくと、留守役の石祁子と鼠荘子の二人に、「とても
         守りきることはできません」と言い、夜を待って、ともども都
         から逃げだした。狄人は衛都に入城し、さらに追撃をつづけ、
         黄河の近くでふたたび衛軍を打ち破った。

         ★このとき狄に追われた衛の遺民は男女合わせて七百三十人。
         かれらは自国の属邑であった共滕邑の住民と合流し、合計五千
         人が四国に寄寓した。斉の桓公は大軍をひきいて、四を秋の手
         から守った。             

 

May. 17, 2017

【ネオコン倶楽部:世界初 印刷法で有機ELを製品化】

5月17日、RGB印刷方式で2017年6月から量産を行う予定の 21.6型有機EL パネルを公開。同社社
長で2017年6
月にジャパンディスプレイ(JDI)の社長兼CEOに就任予定の東入來信博氏が会見に応
じ今後の有機ELパネルの開発方針などを明らかにした(EE Times Japan 2017.05.18)。

公開した有機ELパネルは、画面サイズ21.6型(478.1×268.9×548.5mm)、解像度は4K相当の3840RGB
×2160
画素(829万画素)。精細度は204ppi。パネル重量は500gでパネル厚1.3mm。輝度は350カンデラ
/m2(ピーク時)、コントラストは100万対1。
寿命については、1000時間(LT95、350カンデラ/m2)。

 株式会社ジェイオーレッド HP

さらに、価格については、サンプル価格で60万円~100万円の間。量産開始時期はあと1カ月で、量産
技術確立のマイルストーンに達するとし、6月から量産移行予定。またジャパンディスプレイ(JDI
石川工場(石川県川北町)内にある製造ラインで実施。同製造ラインは、4.5世代(730×920mm)基
板対応製造ラインで生産能力は月産2300枚(21.6型パネル換算で6900枚)で研究開発用ライン(月産
2000枚程度)の機能も兼ねる。



有機ELパネルの製造法には、JOLED  が手掛ける印刷法とともに、蒸着法が存在する。RGB の画素を
1色ずつ形成するRGB蒸着法での有機ELパネル製造は、Samsung Electronicsが主にスマートフォンに向
5~10型の小型パネルで先行。一方、RGB印刷法は、理論上、適用できるパネルサイズに制約が
なく、JOLEDでは前身1つのパナソニック時代を含め既に12型から55型までの有機ELパネルの試作を
終える。
そこで、JOLEDRGB蒸着法で先行するSamsung、白色EL蒸着法で先行するLGの両社が参入
しにくい12~32型前後の中型パネル領域からの事業参入、市場創造を目指す戦略を掲げる。

わたし(たち)が予想したよりはオーレッド市場形成は6年程度遅れている。しかし、ここまでくれ
ば、この事業プラットフォームの拡張が本格化するとともに、これを構成する技術展開で、ユニバー
スな事業プラットフォームが誕生して。

 

 
♞ 関連特許事例

✓ 特許6082974  有機膜の製造方法と有機ELパネルの製造方法

【概要】

有機ELパネルやTFT基板等のデバイスにおいて、有機膜の機能を十分に発揮させるためには、膜
厚が均一な有機膜を形成することが重要である。
ところが現在のウエットプロセスで有機膜を形成す
る場合、乾燥時に粘度が高まり易いインクを用いると、膜厚が均一な有機膜を形成することが難しい
場合がある。
本発明は、乾燥時に粘度が高まり易いインクをウエットプロセスで塗布し、有機膜を製
造する場合において、均一な膜厚を有する有機膜の製造を期待できる有機膜の製造方法と有機ELパ
ネルの製造方法を提供することを目的とする。


上記目的を達成するため、本発明の一態様における有機膜の製造方法は、基材の第1領域に対し、第
1有機材料と第1溶媒とを含み、増粘率が3.3以上のインクの第1インクを塗布する第1塗布ステ
ップと、前記第1インク中の前記第1溶媒を大気圧未満の第1気圧下で蒸発させ、前記第1インクを
乾燥させて第1有機膜を形成する第1乾燥ステップとを有する有機膜の製造方法とする。

但し前記増粘率は、インク中の有機材料濃度が塗布前のインクの初期有機材料濃度の2倍に達したと
きのインク粘度μと、塗布前の初期インク粘度μ0との比μ/μ0とする。


本発明の一態様に係る有機膜の製造方法によれば、乾燥時に粘度が高まり易いインクを用いてウエッ
トプロセスで有機膜を製造する場合において、均一な膜厚の有機膜の製造を期待できる有機膜の製造
方法を提供することができる(詳細は下図ダブクリ参照)。


 
【符号の説明】

  1    TFT基板(基材)   2    平坦化膜   3    陽極(第1電極)   4    ホール注入層   5    隔壁(バンク)
  6    有機発光層   6RX、6GX、6BX    有機発光材料と溶媒とを含むインク   7    電子輸送層
  8    陰極(第2電極)   9   封止層   10、10A    EL基板   10X    EL基板中間体   11   ベース基板
  12  ブラックマトリクス(BM)  13R、13G、13B   カラーフィルター(CF)層   14   ホール輸送層(HTL)
  14X    ホール輸送材料と溶媒とを含むインク   20    CF基板   30、30A    有機ELパネル
  100R、100G、100B    有機EL素子  101R、101G、101B    開口部

✓ 特許6111396  有機膜材料を真空状態下に維持するための真空装置における真空シ
                 ール材、潤滑剤、および、有機EL素子の製造方法

【概要】

有機発光層材料等の有機膜材料を真空状態下に維持する際には、例えば、潤滑剤や真空シール材に用
いら
れている酸化防止剤が、可能な限り不純物として有機膜材料に付着しないようにすることが望ま
しい。本発明
は、有機膜材料を真空状態下に維持する場合において、有機膜材料への不純物の付着を
可能な限り抑制す
ることを目的とする。

本発明の一態様である酸化防止剤は、有機膜材料を真空状態下に維持するための真空装置に用いられ
る酸
化防止剤であって、真空ポンプとこれに接続された真空チャンバーを備える前記真空装置の、前
記真空ポンプ
における前記真空チャンバーと連通する箇所に用いられ、下記一般式(1)ここでは、
図2(a)に該当。で表される芳香族第2級アミン誘導体を含む。 但し、R1~R10のうち少なくとも1
つは下記一般式(2)で表され、その他は主鎖の原子の数が3以下の置換基とする。(式(2)中
、ここでは、図2(b)に該当
は原子の数が3以下の鎖式構造を示し、主鎖の原子の数が3以下の置換基
を有していてもよい。R11は5員環以上8員環以下の環構造を有し、R11が複数の環構造を有する場合
には各環構造を結ぶ結合鎖における原子の数は3以下とし、各環構造は主鎖の原子の数が3以下の置
換基を有していてもよい。)

有機膜材料を真空状態に維持する場合において、真空ポンプにおける真空チャンバーと連通する箇所
に用いられる酸化防止剤として、本発明の一態様である酸化防止剤を用いることで、少なくとも当該
酸化防止剤が有機膜材料に付着することを抑制できる。したがって、有機膜材料を真空状態下に維持
する場合において、有機膜材料への不純物の付着を可能な限り抑制することが可能である(詳細は下
図ダブダブクリ参照)。

【符号の説明】

    1、26  真空チャンバー   2、27  真空ポンプ    3  接続部材    4、30  酸化防止剤    5  被乾燥物
    66、68  アルキル鎖    7  間隙    10  有機EL表示パネル    11、101  基板    12、102  陽極
    13  ITO層    14、103  正孔注入層    15  バンク    15a  開口部    16、105  有機発光層
    16a、105a  有機発光層材料    17、106  電子輸送層    18、107  陰極    19、108  封止層
    20  駆動制御部    21~24  駆動回路    25  制御回路    28、29  排気管    100  サブピクセル
    104  正孔輸送層    109  界面領域    200  有機EL発光装置    210  有機EL素子    220  ベース
    230  反射部材    1000  有機EL表示装置

✓ 特許5994080  真空装置、有機膜の形成方法、有機EL素子の製造方法、有機EL表示パネル、
    有機EL表示装置、有機EL発光装置およびゲッター材を構成する材料の選択方法

✓  特許5974245  有機EL素子とその製造方法
✓   特許5939564  有機EL素子の製造方法

  No.22

【RE100倶楽部:再エネ国際事情篇】 

 ● マクロン仏新政権、原発比率を50%まで下げ再エネを倍増か

6月の国民議会総選挙が今後のエネルギー政策の焦点

今月14日、マクロン氏が新大統領大統領に就任。今回の仏大統領選の結果、フランスではオランド
前政
権のエネルギー政策を踏襲し、原子力や化石燃料の比率を下げ、再生可能エネルギーの導入を推
進する公
算が高くなっている。❶まず原子力については、現在約75%を占める原子力の比率を25
年までに50%まで低減する方向。老朽化した原発における廃炉を進め、原子力にのみ依存すること
によるリスクや脆弱性を回避する狙いがあるが、政府系の電力事業者であるEDF社と原子力発電の技
術開発を事業の主軸とするアレバ社の競争力を維持し、中国やロシアに対しても技術開発で主導性を
維持したい新大統領の意向もあり、簡単に脱原発に舵を切ることはないとみられている。❷
再エネに
関しては、電源構成に占める比率を現在の約15%から30年までに32%と、主に太陽光と風力で
ほぼ倍増させる方針。2
月に非政府団体や報道関係者に対し、「大統領の任期初めに、2万6000MW(2
6GW)分の再エネプロジェクト開発を今後5年分の入札をカレンダー管理したい意向を示す。❸
化石
燃料は、温室効果ガス排出量の点からも抑制される可能性が高く、22年までに石炭火力を段階的に
廃止していく、というオランド政権時代の目標を堅持する。

  May 8, 2017

運輸・交通においても、欧州ではこれまで大きな比率を占めていたディーゼルエンジン車に対する補
助金が見直される可能性が高く、電源で再エネの大量導入を推進すると同時に、モビリティでは電動
化を強力に推し進める。こ
れらのエネルギー政策を支えるため、温室効果ガス関連の規制も強化され
エネルギー事業者に課せられる二酸化炭素価格を、20年までに56ユーロ/t、23年までに百ユー
ロ/tとする方向である。ただ、これらのエネルギー政策は、フランス国民議会による承認を取り付け
る必要がある(日経BPクリーンテック研究所 2017.05.18)。 
  

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』    
 
    

   30.そういうのにはたぶんかなりの個人差がある 

   あくる日の午後、私は署名捺印した離婚届の書類を投函した。とくに手紙は添えなかった。た
 だ切手付きの返信用封筒に入れた書類を、駅前の郵便ポストに放り込んだ。でもその封筒が家の
 中からなくなったというだけで、私の心の負担はずいぶん軽減したようだった。その書類がこれ
 からどのような法的経路を辿ることになるのか、そんなことは私にはわからない。どうでもいい。
 好きな道筋を辿らせればいい。



  そして日曜日の朝、十時少し前に秋川まりえがうちにやってきた。明るいブルーのトヨタ・プ
 リウスがほとんど音もなく坂を上ってきて、うちの玄関の前にそっと停まった。車体は日曜日の
 朝の太陽を受けて、晴れがましく鮮やかに輝いていた。まるで包装紙を解かれたばかりの新品の
 ように見える。ここのところ、いろんな車がうちの前にやってくる。免包の銀色のジャガー、ガ
 ールフレンドの赤いミニ、免色が寄越す運転手付きの黒いインフィニティ、雨田政彦の黒い旧型
 ボルボ、そして秋川まりえの叔母の運転するブルーのトヨタ・プリウス。そしてもちろん私の運
 転するトヨタ・カローラ・ワゴン(長くはこりをかぷっているせいで、どんな色だったかよく思
 い出せない)。人々はおそらく様々な理由や根拠や事情があって、自分か運転する車を運ぶのだ
 ろう
が、秋川まりえの叔母がどのようなわけでブルーのトヨタ・プリウスを選択したのか、もち
 ろん私には知りよ
うもない。いずれにせよその車は、自動車というよりは巨大な真空掃除機のよ
 うに見えた。


  プリウスの静かなエンジンが静かに停止し、あたりはほんの少しだけより静かになった。ドア

 が開いて、そこから秋川まりえと彼女の叔母さんらしき女性が降りてきた。若く見えるが、たぶ
 ん四十代の初めというところだろう。彼女は色の濃いサングラスをかけ、淡いブルーのシンプル
 なワンピースに、グレーのカーディガンを羽織っていた。黒い艶やかなハンドバッグを持ち、濃
 いグレーのローヒールの靴を履いていた。運転するのに向いた靴だ。ドアを閉めると、彼女はサ
 ングラスをとってバッグにしまった。髪は肩までの長さで、きれいにウェーブをかけられていた
 (しかしさっき美容室から出てきたばかり、という過剰な完璧さはない)。ワンピースの襟につ
 け
れた金のブローチのほかには、目だった装身具はつけていない。


  秋川まりえは黒のコットン・ウールのセーターを着て、茶色の膝までの丈のウールのスカート
 をはいていた。これまで学校の制服を着ている彼女しか見たことがなかったので、いつもとは雰
 囲気がずいぶん違っていた。二人が並んで立つと、いかにも品の良い家庭の母子のように見えた。
 でも二人が実際の母子ではないことを、私は免色から間いて知っている。
  私はいつものように窓のカーテンの隙間から、彼女たちの様子を観察していた。それからドア
 ベルが鳴
らされ、私は玄間にまわってドアを開けた。

  秋川まりえの叔母はずいぶん穏やかな話し方をする、顔立ちの良い女性だった。はっと人目を
 惹くような美人ではないが、きれいに整った上品な顔立ちだった。自然な笑みが明け方の白い月
 のように、口元に控えめに浮かんでいた。彼女は手土産に菓子折を持ってきた。私の方が秋川ま
 りえにモデルになってもらいたいとお願いしているわけだから、手土産を持ってくる必要なんて
 まったくないわけだが、初対面の相手の家を訪問するときには何か手土産を持参するものだとい
 う教育を、きっと小さい頃から受けてきた人なのだろう。だから私は素直に礼を言ってそれを受
 け取った。そして居間に二人を案内した。

                                     この項つづく

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コランダムなトムヤンクン麺

2017年05月02日 | ネオコンバーテック

       天の君子は人の小人、人の君子は天の小人 / 大宗師(だいそうし) 

                                                

 

      ※  天之君子 人之小人天:荘子は世俗の常識に従わない頭脳明晰な人間。世
        間からちやほやされる金持ちの人や位の高い人をその通り受け入れたりし
        ない。人が偉いと思っている人でも天の尺度で見たらつまらない人だった
        りする。また、その逆のこともありえる。故に人の評価に惑わされず、広
        いこころで自由な発想(基準)で判断、選択すべきであると説く。
 


【再エネ成長戦略ワンポイント:全体像 No.1

  
※出典:「再生可能エネルギーと新船長戦略」尾崎弘之ら 2015.05.15
    「プルサーマルと核のごみ」小出裕章 2006.10.04


  

 No. 8

【RE100&ZW倶楽部:ネオコンバーテック篇】

● 基材や形状を選ばない非真空ドライめっき技術がデジタル革命を推進

先月24日、株式会社FLOSFIAは、ブログでも取り上げてきた、基材の種類や形状に関係なくさまざまな金属
薄膜を成膜できる非真空ドライめっき技術「ミストドライ めっき法」を開発したことを公表。ミストドライ めっき法
は、真空装置が不要のため、低コスト低エネルギーでの活用が可能で、シアン化合物などの環境汚染
物質を使用せず、廃液処理が不要で、従来の湿式メッキ技術と違い環境負荷が少ない。この手法で作
できる薄膜は、金、銅、ニッケル、ロジウムなどの金属単体にとどまらない。金-ニッケルなどの
合金
の他、多元合金にも及ぶ。また、サファイア基板などの結晶性基板、ステンレス板やアルミ板な
どの金属板、電気の流れない基材など、成膜できる基材の種類も幅広い。ポリイミドフィルム上への
ロジウム成膜も実現できる。

このように、従来の湿式メッキでは不可能な10μm以下の表面形状へも金属成膜でき、半導体素子や電
子部品、MEMSなどの電極への応用が見込まれ、例えば、MEMS基板の微細ビアの導通や、溝を埋め
る電極形成の他、IoT向け極小センサーの電極への追従性に優れた薄膜の形成などに活用できる見込み
である。これは量産レベルにあり、最近届いた『再生可能エネルギーと新成長戦略』と密接に関連し、
特に、太陽光核融合エネルギー利用技術をベースとした「オールソーラシステム」へのデジタル革命
渦の基本特性の浸透貢献が大きいと考えられる。


下記に関連特許技術を参考掲載する。

☑ 特開2017-069424  結晶性半導体膜および半導体装置

高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大き
な酸化ガリウム(Ga2O3)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装
置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置とし
ての応用も期待されている。この酸化ガリウムは、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは
組み合わせて混晶することで、バンドギャップ制御でき、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材
料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInXAlYGaZO3(0X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2X+Y+
Z=1.5~2.5
)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰される。




また、α-Ga2O3薄膜がMBEによってサファイア上に成膜できることが知られているが、450℃
以下の温度で膜厚100ナノメータまで結晶成長するが、膜厚がそれ以上になると結晶の品質が悪く
なり、さらに、膜厚1μm以上の膜は得ることができず、移動度も測定できる状態ではなかった。こ
のため、膜厚が1μm以上であり、電気特性に優れたα-Ga2O3薄膜が待ち望まれていた。なので、
膜厚が1μm以上の厚膜で、電気特性に優れた結晶性半導体膜の作製を目標に研究開発される。

 
JP 2017-69424 A 2017.4.6

【要約】

主面の全部または一部にコランダム構造を有しており、さらにオフ角を有する結晶基板20上に、直
接または他の層を介して、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性半
導体膜を膜厚が1μm以上となるように積層して、電気特性に優れたオフ角を有する結晶性半導体膜
を得る。そして、得られた電気特性に優れた結晶性半導体膜を半導体装置に用いることで、上記目的
を達成する。
 

☑ 特開2017-052855 
  深紫外光発生用ターゲット、深紫外光源および深紫外発光素子

深紫外光源は、照明、殺菌、医療、浄水、計測等の様々な分野で使用されている。深紫外光は主に約
200350nmの波長の光を意味し、場合によってはそれ以下の100nm以上200nm以下の波長の光も含む。
深紫外光の発生手段としては、水銀ランプ、半導体発光素子(半導体LED)エキシマランプなどが知られてい
る。一方、半導体LEDには、窒化物系深紫外発光素子が知られている。例えば、横型構造の素子では、電流
がn型AlGaN層中を横方向に流れなければならないため、素子抵抗が高くなって発熱量が増大し、キャリアの
注入効率の悪影響が生じるため高出力動作に適さない。また、チップサイズを大型化することができない。 こ
の欠点を改善するための素子として、縦型構造の窒化物系深紫外発光素子が知られているが、窒化物
系深紫外発光素子は、小型であり、水銀ランプに代わるものとして期待されるものの、❶窒化物系深
紫外発光素子は発光効率が低く、❷大出力化に対応できない。❸発光効率が低く大出力化が難しい。
❹特に、多層構造が必要であり、ドーピングが必要でその準位が深いため担体濃度を上げることが出
来ない。❺また、特に波長が短くなると電極の接触抵抗を下げることが難しく、外部量子効率を上げ
難くく製造工程が複雑になる負の特徴がある。

これらの問題解決に、マイクロプラズマ励起深紫外発光素子MIPE)が検討されている。電流注入型
半導体発
光素子では発光できない波長領域でも大面積で強い発光が実現でき、特に、280nm以下の波
長領域で任意に波長を選べる光源はMIPEを除いては困難であり、注目されているが、発光強度が得に
くいため加速電極が必要であり、加速電極を備えていても発光強度がまだ十分とは言い難く、実用化
するには多くの課題を抱える。そこで、この申請者のグループは実用性に優れ、良好な深紫外発光の
研究を行い実現する。

  
JP 2017-54654 A 2017.3.16

【要約】

第1の電極102、第2の電極103および発光層104を少なくとも有しており、発光層が深紫外
光を発光する深
紫外発光素子において、発光層が、ガリウムを少なくとも含有する酸化物を含んでお
り、発光層は、第1の層と、第1の層とは異なる材料を主成分とする第2の層とが、少なくとも1層
ずつ交互に積層されている量子井戸構造を有すことで、実用性に優れ、良好な深紫外発光を可能とし、
特に発光強度において良好な深紫外発光を可能とする深紫外発光素子を提供する。

 

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』    

   20 存在と非存在が混じり合っていく瞬間

  我々は居間に座ってお互いの近況を伝え合った。私は、造園業者が重機を使って雑木林の中の
 石塚を掘り起こした話した。そのあとに直径ニメートル弱の円形の穴が現れたこと。深さは二メ
 ートル八十センチで、まわりを石の壁に囲まれている。格子の重い蓋がはめられていたが、その
 蓋をはずしてみると、中には古い鈴のかたちをした仏具ひとつだけが残されていた。彼は興味深
 そうにその話を聞いていた。しかし実際にその穴を見てみたいとは言わなかった。鈴を見てみた
 いとも言わ なかった。

 「で、それ以来もう鈴の音は夜中に聞こえないんだね?」と彼は尋ねた。

  もう問こえないと私は答えた。

 「そいつは何よりだ」と彼は少し安心したように言った。「おれはそういううす気味の悪い話は
 根っから苦手だからな。得体の知れないものにはできるだけ近寄らないようにしているんだ」

 「触らぬ神に崇りなしI
 「そのとおり」と雨田は言った。「とにかくその穴のことはおまえにまかせる。好きにすればい
 い。」

  
そして私は、白分かとても久しぶりに「絵を描きたい」という気持ちになっていることを彼に
 話した。二目前、免色に依頼された肖像画を仕上げてから、何かつっかえがとれたような気持ち
 になっていること。肖像画をモチーフにした、新しいオリジナルのスタイルを自分は掴みつつあ
 るかもしれない。それは肖像画として描き始められるが、結果的には肖像画とはまったく違った
 ものになってしまう。にもかかわらず、それは本質的にはポートレイトなのだ。

  雨田は免色の絵を見たがったが、それはもう相手に渡してしまったと私が言うと、残念がった。

 「だって絵の具もまだ乾いていないだろう?」
 「自分で乾かすんだそうだ」と私は言った。「なにしろ一刻も早く自分のものにしたいみたいだ
 った。ぼくが気持ちを変えて、やはり渡したくないと言い出すことを恐れていたのかもしれな
 いI
 「ふうん」と彼は感心したように言った。「で、何か新しいものはないのか?1‐
 「今朝から描きはじめたものはある」と私は言った。「でもまだ木炭の下絵の段階だし見てもた
 ぶん何もわからないよ」
 「いいよ、それでいいから見せてくれないか?」

  私は彼をスタジオに案内し、描きかけの『白いスバル・フォレスターの男』の下絵を見せた。
 黒い木炭の線だけでできた、ただの粗い骨格だ。雨田はイーゼルの前に腕組みをして立ち、長い
 あいだむずかしい顔をしてその絵を睨んでいた。

 「面白いな」と彼は少し後で、歯のあいだから絞り出すように言った。

  私は黙っていた。
  

 「これからどんなかたちになっていくのか、予測はできないが、確かにこれは誰かのポートレイ
 トに見える。というか、ポートレイトの根っこみたいに見える。土の中の深いところに埋もれて
 いる根っこだI、彼はそう言ってまたしばらく黙り込んだ。
 「とても深くて暗いところだ」と彼は続けた。「そしてこの男は――男だよな――何かを怒って
 いるのだろう? 何を非難しているのだろう?」
 「さあ、ぼくにはそこまではわからない」
 「おまえにはわからない」と雨田は平板な声言百った。「しかしここには深い怒りと悲しみがあ
 る。でも彼はそれを吐き出すことができない。怒りが身体の内側で渦まいている」

  雨田は大学時代、油絵学科に在籍していたが、正直なところ油絵画家としての腕はあまり褒め
 られたものではなかった。器用ではあるけれど、どこかしら深みに欠けているのだ。そして彼自
 身もある程度それは認めていた。しかし彼には、他人の絵の良し悪しを一瞬にして見分ける才能
 が具わっていた。だから私は昔から自分の描いている絵について何か迷うことがあれば、よく彼
 の意見を求めたものだ。彼のアドバイスはいつも的確で公正だったし、実際に役に立った。また
 ありかたいことには、彼は嫉妬心や対抗心というものをまったく持ち合わせていなかった。たぶ
 ん生まれつきの性格なのだろう。だから私は常に彼の意見をそのまま信用することができた。歯
 に衣を着せないところがあったが、裏はないから、たとえこっぴどくこきおろされても不思議に
 腹は立たなかった。




 「この絵が完成したら、誰かに渡す前に、少しだけでいいからおれに見せてくれないか?」と彼
 は絵から目を離さずに言った。 

 「いいよ」と私は言った。「今回は誰かに頼まれて描いているわけじゃない。自分のために好き
 に描いているだけだ。誰かに手渡すような予定もない」
 フ目分の絵を描きたくなったんだね?」
 「そうみたいだ」
 「これはポートレイトだが、肖像画じゃない」
  私は肯いた。「たぶんそういう言い方もできると思う」
 「そしておまえは……何か新しい行き先を見つけつつあるのかもしれない」
 「ぼくもそう思いたい」と私は言った。
 「このあいだユズに会ったよ」と雨田は帰り際に言った。「たまたま会って、それで三十分ほど
 話をした」

  私は肯いただけで何も言わなかった。何をどのように言えばいいのかわからなかったからだ。
 「彼女は元気そうだった。おまえの話はほとんど出なかった。お互いにその話になるのをなんと
 なく避けているみたいに。わかるだろ、そういう感じって。でも址後におまえのことを少し訊か
 れた。何をしているかとか、そんなことだよ。絵を描いているみたいだと言っておいた。どんな
 絵かはわからないけれど、∵八で山の上に罷もって何かを描いているんだと」
 「とにかく生きてはいるよ」と私は言った。

  雨田はユズについて更に何かを語りだそうな様子だったが、結局思い直して口をつぐみ、何も
 言わなかった。ユズは昔から雨田に好意を持っていたし、いろんなことを彼に相談していたよう
 だ。たぶん私とのあいだに関することを。ちょうど私が絵のことで雨田によく相談していたのと
 同じように。しかし雨田は私には何も語らなかった。そういう男なのだ。人からいろんな相談を
 される。でもその内容は彼の中に溜まるだけだ。雨水が樋を伝って用水桶に溜まるみたいに。そ
 こからよそには出ていかない。桶の縁から溢れてこぼれ出ることもない。たぶん必要に応じて適
 切な水量調整がおこなわれるのだろう。

  雨田自身はたぶん誰にも悩みを相談したりしないのだろう。自分か高名な日本画家の息子であ
 りながら、そして美大にまで進みながら、画家としての才能にさして恵まれなかったことについ
 て、おそらくいろいろと思うところがあったはずだ。言いたいこともあったはずだ。しかし長い
 付き合いの中で、彼が何かについて愚痴をこぼすのを耳にしたことは思い出せる限り一度もなか
 った。そういうタイプの男だった。
 「ユズにはたぶん恋人がいたのだと思う」、私は思い切ってそう言った。「結婚生活の最後の頃に
 は、もうぼくとは性的な関係を持たないようになっていた。もっと早くそれに気がつくべきだっ
 たんだ」

  私がそんなことを誰かに打ち明けるのは初めてだった。それは私が一人で心に抱え込んできた
 ことだった。

 「そうか」とだけ雨田は言った。
 「でもそれくらい君たってちゃんと知っていたんだろう?」
  雨田はそれには返事をしなかった。
 「違うのか?」と私は重ねて尋ねた。


 「人にはできることなら知らないでいた方がいいこともあるだろう。おれに言えるのはそれくら
 いだ」
 「しかし、知っていても知らなくても、やってくる結果は同じようなものだよ。遅いか早いか、
 突然か突然じやないか、ノックの音が大きいか小さいか、それくらいの違いしかない」

  雨田はため息をついた。「そうだな、おまえの言うとおりかもしれない。知っていても知らず
 にいても、出てきた結果は同じようなものかもしれない。しかしそれでもやはり、おれの目から
 言えないことだってあるさ」

  私は黙っていた。

  披は言った。「たとえどんな結果が出てくるにせよ、ものごとには必ず良い面と悪い面がある。
 ユズと別れたことは、おまえにとってずいぶんきつい体験だったと思う。それはほんとに気の毒
 だったと思う。でもその結果、ようやくおまえは自分の絵を描き始めた。自分のスタイルらしき
 ものを見出すようになった。それは考えようによってはものごとの良き面じやないか?]
  たしかにそうかもしれないと私は思った。もしユズと別れなければ――というかユズが私から
 去っていかなければ――私は今でも生活のためにありきたりの、約束通りの肖像画を描き続けて
 いたことだろう。しかしそれは私か自らおこなった選択ではなかった。それが重要なポイントな
 のだ。

 「良い面を見るようにしろよ」と帰り際に雨田は言った。「つまらん忠告かもしれないが、どう
 せ同じ通りを歩くのなら、日当たりの良い側を歩いた方がいいじやないか」
 「そしてコップにはまだ十六分の一も水が残っている」

  雨田は声をあげて笑った。「おれはそういうおまえのユーモアの感覚が好きだよ」
  私はユーモアのつもりで言ったわけではなかったが、それについてはあえて何も言わなかった。
  雨田はしばらく黙り込んでいた。それから言った。「おまえはユズのことがまだ好きなんだ
 な?」
 「彼女のことを忘れなくちやいけないとは思っても、心がくっついたまま離れてくれない。なぜ
 かそうなってしまっている」
 「ほかの女と寝たりはしないのか?」
 「ほかの女と寝ていても、その女とぼくとの間にはいつもユズがいる」
 「そいつは困ったな」と彼は言った。そして指先で額をごしごしと撫でた。本当に困っているよ
 うに見えた。

  それから彼は車を運転して帰って行った。

 「ウィスキーをありがとう」と私は礼を言った。まだ五時前だったが、空はずいぶん暗くなって
 いた。日ごとに夜が長くなっていく季節だった。
 「本当は一緒に飲みたいところだが、なにしろ運転があるものでね」と彼は言った。「そのうち
 に二人でゆっくり腰を据えて飲もう。久しぶりにな」

  そのうちに、と私は言った。

  人には知らないでいた方がいいこともあるだろう、と雨田は言った。そうかもしれない。人に
 は聞かないでいた方がいいこともあるのだろう。しかし人は永遠にそれを聞かないままでいるわ
 けにはいかない。持が米れば、たとえしっかり両方の耳を塞いでいたところで、音は空気を震わ
 せ人の心に食い込んでくる。それを防ぐことはできない。もしそれが嫌なら真空の世界に行くし
 かない。
  目が覚めたのは真夜中だった。私は手探りで枕元の明かりをつけ、時計に目をやった。ディジ
 タル時計の数字は1:35だった。鈴が鳴っているのが聞こえた。間違いなくあの鈴だ。私は身
 体を起こし、その音のする方向に耳を澄ませた。
  鈴は再び鳴り始めたのだ。誰かが夜の闇の中でそれを鳴らしている――それも前よりももっと
 大きく、もっと鮮明な音で

                                                         この項つづく

 

【今夜のアラカルト|グローバールなトムヤンクン麺】

  

 

昨年7月18日に登場した清食品のトムヤンクヌードルは衝撃的だった。カップヌードルは3分あ
ば完成する。そこで、作った経験はないが、本場のそれも15分あれば完成するというので、早速ネ
ット・サーフ。❶水を入れた鍋を暖め、レモングラス、ガランガル、コリアンダー、ライムの葉を加
え煮立てる、❷エビ、魚、唐辛子、ライムジュースを加え、沸騰させソースを取る。 ライムジュース
または魚醤で調味し、コリアンダーの葉で飾れば完成。これから暑くなる季節には打って付けの家庭
料理。これが世界化しないはずがない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新スマートプリント電子工学

2017年04月21日 | ネオコンバーテック

         その異なるものよりこれを視れば、肝胆も楚越(そえつ)なり、
        その同じきものよりこれを視れば、万物もみな一なり

                         徳充符(とくじゅうふ)

                                                 

           ※ 静止した水はいっさいを包むあらゆるものは違うという点から見れば、
         どれ一つとして同じ物はない。たとえば、すぐ近くにある肝臓と胆嚢(た
         んのう)でさえ、楚の国と越の国ほどのへだたりがある。これに対し、あ
         らゆるものは同じだという点から見れば、万物はすべて一つである。


        ※ 徳充符:荘子にとって徳の充実とは、いっさいの固定観念から脱却し、

          のれを虚にすることにほかならない。"徳充ちたる符"は、いっさいをある
          がままに受けいれていく人間にのみ与えられる。
  

幻の果実アドベリー

 

【DIY日誌:中断と再開】 

● 開店休業中スリーディプリンタ屋 

すっかり掲載しなくなった「スリーディプリンタ」。言い訳じみているが、ハードの組み立ては簡単
で、デザイン/ソフトの考案/習得に時間が掛かるのは常識、環境工学研究所WEEF の仕事にを抱え
ていてはとても時間が割けないというのが実情で、プリンタは収納庫に放置で断念。

 
● シロアリ駆除は、考案の燻煙法のテスト

第1回目の試作機をテスト。不具合5項目――❶天板厚み不足、❷と出ノズル口径変更、❸注水ノズ
ル口径変更、❹ノズル材質変更、❺逆止弁追加。尚、駆除方法はマル秘。このトライは、この夏に従
来法(散布法)との時間差併行テストを実施(予定)。

  
【ネオコン倶楽部:最新スマートプリント電子工学】 

● 完全な2次元のナノマテリアルプリントトランジスタ
             ―― 複合ナノシートと電解質の併用で実現 

  Apr. 07, 2017

今月7日、ダブリン大学のJonathan Coleman教授らの研究グループは、完全な2次元のナノマテリアル
プリントトランジスタを製作。これらの材料は、新しい電子特性と低コスト化の可能性を組み合わせ
ている。この画期的な新機能は、デジタルカウントダウンを表示警告する食品包装、ワインの最適温度を知ら
れるラベルなどモノ情報(IoT)などの新しい未来的な機能付加を実現する。またICT(情報通信技術
や製薬業界、太陽電池からLED にわたり、電子デバイスを安価にプリントし、インタラクティブな
食品/薬などのスマートラベルから次世代紙幣セキュリティや電子パスポートなどラベル、ポスター、
パッケージなどの広範囲の用途が想定される。このプリントされた電子回路は、消費商品の情報を収
集/処理/表示/伝達を実現する(例えば、上写真のミルクカートンのように)。この様に2次元ナ
ノマテリアルは、従来のプリンタブルな電子デバイスで使用されている材料と競合できると考える。

また、研究グループは、このプリンタブルな電子デバイスは、過去30年間、グラフェンベースは研
究開発されてきた。これらの分子はプリンタブルなインキに容易に変えることができるが不安定であ
った。カーボンナノチューブや無機ナノ粒子などの代替材料を用いて、克服しようとする試みが数多
く行われてきたが、これらの材料は性能や生産性に難点を抱えていた。プリントされた2次元デバイ
スの性能は、高度なトランジスタとだ比較できるほどではないが、プリンタブルトランジスタの性能
向上できると考えている。

このインクを作るため、研究グループは2008年にColeman 研究室で開発された「液相剥離」を利用し
て層状結晶を剥離する。これにより、溶液中に分散した2次元シートが大量に生成され、インクジェ
ットプリンタで印刷できるが、当初の大きな課題は、ナノシート・ネットワークの電流をオン/オフす
る方法を探し出す必要があった。スイッチングのために十分な電流レベルを得るためには、より厚い
ネットワークが必要とされるだけでなく、スイッチングの効率も低下する。そこで、従来の誘電体材
料の代わりに新しい形態の固体電解質を開発し電気化学的克服法を考え出す―――窒化ホウ素ネット
ワークの細孔をイオン液体で充填し、固体のような構造を与え、電荷を蓄積してスイッチングを起こ
すためのイオン移動度を伴うというものである。

下図の構造説明図のように、イオン液体中で ❶アルミナ被覆PET上に、❷グラフェン電極、❸窒化ホ
ウ素誘電/絶縁体、❹セレンタングステン超伝導チャネルナノシートで構成する2次元ナノ材料を作
製。これらのナノシートは、数ナノメートルの厚さで、数百ナノメートルの幅を有する平坦なナノ粒
子。重要なことに、異なる材料から構成したナノシートは、導電性、絶縁性または半導体性の電子特
性を有し、電子工学のすべての構成要素を含むものである。液体処理は、インクに加工するのが容易
な形態で高品質の2次元材料を大量に生成できるのが特徴で、非常に低コストで回路印刷できる。ア
ニメーションポスターからスマートラベルにわたる広範囲の用途を実現するが、一方で、移動性、オ
ン/オフ比、スイッチング速度を向上させるなどの、パフォーマンスを大幅改善する課題が残る。


All-printed thin-film transistors from networks of liquid-exfoliated nanosheets, Science  07 Apr 2017:
Vol. 356, Issue 6333, pp. 69-73 DOI: 10.1126/science.aal4062

 

    

 読書録:村上春樹著  『騎士団長殺し 第Ⅰ部』   

   16.比較的良い一日 

  免色が電話を切ったすぐあとに、人妻のガールフレンドから電話がかかってきた。私は少し驚
 いた。夜のこんな時刻に彼女から連絡があるのは珍しいことだったからだ。

 「明日のお昼頃に会えないかな?」と彼女は言った。
 「悪いけど、明日は約束があるんだ。ついさっき予定を入れてしまった」
 「他の女の人じゃないわよね?」
 「違う。例の免色さんだよ。ぼくは彼の肖像画を描いている」
 「あなたは彼の肖像画を描いている」と彼女は繰り返した。「じゃあ、明後日は?」
 「明後日はきれいそっくり空いている」
 「よかった。午後の早くでかまわない?」
 「もちろんかまわないけど、でも土曜日だよ」
 「それはなんとかなると思う」
 「何かあったの?」と私は尋ねた。
  彼女は言った。「どうしてそんなことを訊くの?」

 
「君がこんな時刻にうちに電話をしてくるのは、あまりないことだから」

  彼女は喉の奥の方で小さな声を出した。呼吸の微調整をしているみたいに。「今はひとりで車
 の中にいるの。携帯でかけている」
 「車の中でひとりで何をしているの?」
 「車の中でひとりになりたかったから、ただ車の中でひとりになっているだけよ。主婦にはね、
 そういう時期がたまにあるの。いけない?」
 「いけなくはない。まったく」

  彼女はため息をついた。あちこちのため息をひとつにまとめ、圧縮したようなため息だった。
 そして言った。「あなたが今ここにいるといいと思う。そして後ろから入れてくれるといいなと
 思う。前戯とかそういうのはとくにいらない。しっかり湿ってるからぜんぜん大丈夫よ。そして
 思い切り大胆にかき回してほしい」
 「楽しそうだ。でもそうやって思い切り大胆にかき回すには、ミニの車内は少し狭すぎるかもし
 れない」
 「贅沢はいえない」と彼女は言った。
 「工夫してみよう」
 「そして左手で乳房をもみながら、右手でクリトリスを触っていてほしい」
 「右足は何をすればいいのかな? カーステレオの調整くらいはできそうだけど。音楽はトニー・
 ベネットでかまわないかな?」

 「冗談で言ってるんじやないのよ。私はしっかり真刻なんだから」

 「わかった。悪かった。真剣にやろう」と私は言った。「ところで今、君はどんな服を着ている?」
 「私か今、どんな服を着ているか知りたいわけ?」と誘いかけるように彼女は言った。
 「知りたいな。それによってこちらの手順も変わってくるから」

  彼女は着ている服についてとても克明に電話で説明してくれた。成熟した女性たちがどれくら
 い変化に富んだ衣服を身につけているか、そのことは常に私を驚かせる。彼女は口頭でそれを一
 枚一枚、順番に脱いでいった。

 「どう、十分硬くなったかしら?」と彼女は尋ねた。
 「金槌みたいに」と私は言った。
 「釘だって打てる?」
 「もちろん」

  世の中には釘を打つべき金槌があり、金槌に打たれるべき釘がある、と言ったのは誰だったろ
 う? ニーチェだったか、ショーペンハウエルだったか。あるいはそんなこと誰も言っていない
 かもしれない。
  私たちは電話回線を通して、リアルに真剣に身体を絡め合った。彼女を相手に――あるいは他
 の誰とも――そんなことをするのは初めてだった。しかし彼女の言葉による描写はずいぶん細密
 で刺激的だったし、想像の世界で行われる性行為はある部分、実際の肉休による行為以上に官能
 的だった。言葉はあるときにはきわめて直接的になり、あるときにはエロティツクに示唆的にな
 った。そんな言葉のやりとりをひとしきり続けた末に、私は思いもよらず射精に至った。彼女も
 
オーガズムを迎えたようだった。

  私たちはしばらくそのまま、何も言わずに電話口で息を整えていた。

 「じやあ、土曜日の午後に」と彼女はやがて気を取り直したように言った。「例のメンシキさん
 についても、少しばかり話したいことかあるの」
 「何か新しい情報が入ったのかな?」
 「例のジャングル通信をとおして、いくつかの新しい情報が。でも直接会って話すことにする。
 たぶんいやらしいことをしながら」
 「これから家に帰るの?」
 「もちろん」と彼女は言った。「そろそろ家に戻らなくちやならない」
 「運転に気をつけて」
 「そうね。気をつけなくちや。まだあそこがひくひくしているから」

  私はシャワーに入って、射精したばかりのペニスを石鹸で洗った。そしてパジャマに着替え、
 その上にカーディガンを羽織り、安物の白ワインのグラスを手に持ってテラスに出て、免色の宮
 のある方を眺めた。谷間の向こうの、彼の真っ白な大きな宮の明かりはまだついていた。家中の
 明かりがしっかりついているみたいだった。彼がそこで(おそらくは)一人で何をしているのか、
 私にはもちろんわからない。コンピュータの画面に向かって、直観の数値化を探求し続けている
 のかもしれない。

 「比較的良い一日だった」、私は自分に向かってそう言った。

  そしてそれは奇妙か一日でもあった。そして明日がどんな一日になるのか、私には見当もつか
 なかった。それからふと屋根裏のみみずくのことを思い出した。みみずくにとっても今日は良い
 一日だったろうか? それから私は、みみずくの一日はちょうど今頃から始まるのだということ
 に気づいた。彼らは昼間は暗いところで眠っている。そして暗くなると森に獲物をとりに出かけ
 る。みみずくにはたぶん朝の早い時刻に尋ねなくてはならないのだ。「今日は良い一日だったか
 い?」と。

  私はベッドに入ってしばらく本を読み、十時半には明かりを消して眠りに就いた。朝の六時前
 までそのまま一度も目が覚めなかったところを見ると、たぶん真夜中に鈴は鳴らされなかったの
 だろう。

 ♞  There are horrible people who, instead of solving a problem, tangle it up and make it
       harder to solve for anyone who wants to deal with it. Whoever does not know how to
       hit the nail on the head should be asked not to hit it at all.

                                                                                                              Friedrich Nietzsche

 

 

    17 どうしてそんな大事なことを見逃していたのか

  私が家を出ていくとき、妻が最後に口にした言葉を忘れることができなかった。彼女はこう言
 った。「もしこのまま別れても、友だちのままでいてくれる? もし可能であれば」と。私には
 そのとき(そしてその後も長いあいだ)、彼女が何を言おうとしていたのか、何を求めていたの
 か、うまく理解できなかった。何の昧もしない食物を口にしたときのように、途方に暮れてしま
 っただけだった。だからそう言われたとき、「さあ、どうだろう」としか答えられなかった。そ
 してそれが私が彼女に面と向かって口にした最後の言葉になった。最後の言葉としてはずいぶん
 情けないひとことだ。

  別れたあとも、私と彼女とは今でもなお一本の生きた管で繋がっている――私はそのように感
 じていた。その管は目には見えないけれど、今でも小さく脈打っていたし、温かい血液らしきも
 のが二人の魂のあいだを僅かに行き果していた。そういう生体的感覚が、少なくとも私の側には
 まだ残っていた。でもその管もいつかそう遠くない日に断ち切られてしまうことだろう。そして
 もしいずれ切断されなくてはならないのなら、私としては二人のおいたを結ぶそのささやかなラ
 イフラインを、なるべく早く生命を欠いたものに変えてしまう必要があった。その管から生命が

 失われ、ミイラのように干からびたものになってしまえば、鋭い刃物で切断される痛みもそれだ
 け耐えやすいものになるからだ。そしてそのためにはユズのことをできるだけ早く、できるだけ
 多く忘れてしまう必要があった。だからこそ私は彼女に連絡をとらないように努めていた。旅行
 から帰ってきて、荷物を引き取りにいくときに一度だけ電話をかけた。私はあとに残してきた画
 材一式を必要としていたから。それが今のところ、別れたあとにユズと交わした唯一の会話であ
 り、その会話はとても短いものだった。



  我々が夫婦関係を正式に解消し、それからあとも友だちの関係でいられるとは、私にはとても
 考えられなかった。我々は結婚していた六年の歳月を連して、ずいぶん多くのものごとを共有し
 てきた。多くの時間、多くの感情、多くの言葉と多くの沈黙、多くの連いと多くの判断、多くの
 約束と多くの諦め、多くの悦楽と多くの退屈。もちろんお互いに口には出さず、自分の内部に秘
 密として抱えていることもいくつかあったはずだ。しかしそのような隠しごとがあるという感覚
 さえ、我々はなんとか工夫して共有してきたのだ。そこには時間だけが培うことのできる「場の
 重み」が存在した。我々はそのような重力にうまく身体を連合させ、微妙なバランスを取りなが
 ら生きてきた。そこにはまた我々独白の「ローカル・ルール」のようなものがいくつも存在した。
 それらを全部なしにして、そこにあった重力のバランスや「ローカル・ルール」を抜きにして、
 ただ
単純に「良き友だち」なんかになれるわけはない。

  そのことは私にもよくわかっていた。というか、長い旅行のあいだ一人でずっと考え抜いた末
 に、そういう結論に私は達していた。どれだけ考えても、出てくる結論はいつも同じだった。
  ユズとはできるだけ距離を置き、接触を断っていた方がいい。それが筋の通ったまともな考え
 方だ
った。そして私はそれを実行した。

  またその一方で、ユズの方からも連絡はまったくこなかった。一本の電話もかかってこなかっ
 たし、一通の手紙も届けられなかった。「友だちでいたい」と口にしたのは彼女の方であるにも
 かかわらずだ。そしてそのことは思いのほか、予想を連かに超えて私を傷つけた。いや、正確に
 言えば、私を傷つけたのは実際には私自身たった。私の感情はそのいつまでも続く沈黙の中で、
 刃物でできた重い振り子のように、ひとつの極端からもうひとつの極端へと大きな弧を描いて行
 き
来した。その感情の弧は、私の肌にいくつもの生々しい傷跡を残していった。そして私がその
 痛みを忘れるための方法は、実質的にはひとつしかなかった。もちろん絵を描くことだ。

                                     この項つづく

  

滋賀の隠れた名産品「笹寿しセット」 (有)仲よし(道の駅 藤樹の里あどがわ)

彦根市長選挙の連呼を逃げるかのように湖西へ車を走らせる。途中、海津大崎~管浦間の土砂崩れ
事故で
不通。折り返し国道を通り高島の安曇川へ向かう。「道の駅 藤樹の里あどがわ」で二人で「
鰊そば」を頂きドライブを折り返す。途中、ハードトップの左ループジョイント金具が脱落のトラ
ブルに見舞われ(修理)、木之本から北陸高速自動車道に入り、開設された小谷城趾スマートイン
ターチェンジを下り、長浜バイパス道を経由し国道8号線を走る。途中、マツダ自販店により故障
を伝え帰宅する。早速、買ってきた、アドベリークッキーを食べ、「笹寿しセット」と白い金麦を
食べまた飲み干す。

 幻の果実アドベリー

 

  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今夜も技術がてんこ盛り

2017年04月17日 | ネオコンバーテック

             徳は名に蕩(とう)し、知は争いに出(い)ず             
                         
                                        「人間世」(じんかんせい)   
  

                                                 

       ※ ガツガツと肩ひじ張り、人よりぬきんでようとしたところでどうなるか。
       才子は才で身を械ぼし、策士は策に倒れる。人間世-人間社会に生きて、
       危害を避け、天命を全うするには、どうすればよいか。本篇もまた、さま
       ざまな事例に即して「無為」を説き、「無用の用」を語る。

     ※ 雑念を去れ:われわれがなぜ徳を失いなぜ知に頼るようになったか、おま
       えはわかっているだろうか。徳を失ったのは名誉心にとらわれたためであ
       り、知に頼るようになったのは争いに必要だからだ。名誉心にとらわれ、
       知に頼っているかぎり、人間どうしの対立抗争は激しくなるばかりだ。名
       誉心も知も、相手を傷つけ自らを滅ぼす凶器にほかならぬ。凶器に依存し
       て、いったい何かできるだろう(孔子の弟子が衛国の救済に赴くための暇
       乞する場面)。

 

 Apr. 12、 2017

● ソフトバンク 世界第7番級 350メガワットソーラーインドで稼働

今月11日、SB Energy Holdings Limitedは、インド・アンドラプラデーシュ州に建設した出力350MW
のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の営業運転を開始。同州カルヌール地方の「Ghani Sakunala Solar
Park
」 で今年3月29日に竣工。世界で7番目に大きな太陽光発電所となる。電力販売契約時の予定
よりも51日早い運転となる。 発電した電力は、プロジェクト落札時に合意した「25年間、4.63
ルピー/kWh(約8.70 円/kWh)」の売電価格で、インドの電力会社であるNTPC Limitedに売電する。
400K/V の送電線に接続し、インドの約70万世帯を超える一般家庭へ供給する。同発電所は、イン
ド中央政府によって09年に施行された太陽光発電施策「JNNSM(Jawaharlal Nehru National Solar Mis-
sion
:ジャワハルラル・ネルー・ナショナル・ソーラー・ミッション)」の下で初めての
運転となる。
SB Energy は現在、ソフトバンクグループの完全子会社で、独占禁止法に関する規制当局からの承認
をもって、バーティ・エンタープライゼズ・リミティッド、フォックスコン・テクノロジー・グルー
プの3社による合弁会社となる。SB Energy はインド中央政府による太陽光ならびに再エネ普及促進
施策の下で、20ギガワットの再エネ発電所建設を目指す。



【ネオコン倶楽部:世界最高の水酸化物イオン伝導ナノシート】

  Apr. 14, 2017

今月15日、物質・材料研究機構の研究グループは、層状複水酸化物ナノシートが10-1 S/cmに達する
非常に高い水酸化物イオン伝導性を示すことを発見したことを公表。この伝導率は従来の水酸化物イ
オン伝導体――クリーンなエネルギー変換技術として注目される燃料電池では、電解質として水素イ
オン伝導体 (例えばNafion®)  を用いる方式が主流だが、強酸性環境中での動作となるため、使える
触媒が白金系金属にほぼ限定されるなどの制約がある。伝導イオンとして水素イオンの代わりに水酸
化物イオンを用いる方式も可能です。その場合アルカリ性環境中での動作となるため、Fe, Co, Ni等の
遷移金属元素形
触媒が使用でき、コストを大幅に低減できると期待されているものの、既存の水酸化
物イオン伝導体は、水酸化物イオンの伝導率が10-3〜10-2 S/cmと低いことが大きなネック――と比べ
10~100倍という高い値で、無機アニオン伝導体の中でも世界最高であり、✪固体電解質として、❶
アルカリ燃料電池や❷水電解装置等への応用が期待されている。

☑ 研究成果

今回の研究では、層状複水酸化物を化学反応により層1枚にまで剥離し、得られた単層ナノシートの
イオン伝導度を測定しました。その結果、室温付近で10-1 S/cmに達する極めて高い値を示すことを見
出す。❶単層ナノシートの表面が多くの水分を吸着し、❷水酸化物イオンが自由に動くことができ、
❸イオン輸送特性が著しく向上する。また、ナノシートの厚み方向の伝導率に比べ4~5桁も高く、
究極の2次元ナノ構造に由来した機能であると推測している。

 

  Mar.30, 2017

 


【ネオコン倶楽部:デジカメでX線計測 元素分析・イメージング技術】 

X線反射率法は、面内の場所的な違いがない、均一な薄膜・多層膜試料の深さ方向の情報(各層の密
度、厚さ、表面と各界面のラフネス)を決定しようとするものであり、深さ方向分布が、試料面内の
どの位置でも同じであり、均一であるという前提のもとで用いられる。その典型的な面積は、X線反
射率法では10mm×15mm程度である。このような広い面積にわたって均一である場合には、全
く問題ないが、産業上での応用においては、もっと微小な試料を評価したい、または、同じ試料のな
かの薄膜・多層膜の構造の違いを画像化したいという容貌があった。


研究チームは、光学顕微鏡などに搭載されることの多い可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメ
ラをほぼそのまま利用して、蛍光Xによる元素分析やイメージングを行う方法を開発。❶まず、レン
ズとセンサの間に、X線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付け、❷試料から出てくる蛍光X線
が、この窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされます。❸作りだされた電荷の数を瞬時に計
測すると、入ってきたX線のエネルギーを検出。ただ、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、
また、ある時は失われる。そこで、❹電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量
入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが
安定に取得できる。実際に今回開発した手法で、上図のようなお皿を蛍光X線分析したところ、青の
顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは不検出であった。❺さ
らにピンホールカメラの原理を利用し、その元素がどのように分布しているかを画像化に成功する。
今後は元素の移動を可視化する動画像の取得に活用し、化学反応の過程を追跡する研究などで材料開
発貢献に期待している。

 
Figure 1: Principle of retrieving X-ray energy-dispersive spectra from camera images.

 Apr.  14, 2017

 
【ネオコン倶楽部:世界最高の電流密度の低コスト高温超電導線材】

高温超電導体は超電導が生じる温度が高く、冷却に安価で豊富な液体窒素の利用が可能である一方、
超電導状態を維持して通電できる電流は、周囲の磁場が強くなると共に減少するという性質がある。
このため、線材に強い磁場が加えられる環境で使用する機器(MRI、NMR、医療用を含めた加速器、
産業用モータ、航空機用モータ、発電機、リニアモータカー、核融合、超電導電力貯蔵システム、超
電導変圧器など)には、磁場中でも高い特性を維持する線材が必要となる。そこで、イットリウム系
酸化物超電導線材は、他の高温超電導材料に比べて本質的に磁場中での性能が高い線材であり、長尺
化、高性能化が図られているが、現状では、線材が高価であることや高温・高磁場(例えば液体窒素
中で数テスラ)での使用では磁場中での臨界電流値が不十分である。このため、気相法で超電導層を
成膜する技術を中心に、人工ピン止め点導入により磁場中特性の向上が図られてきたが、依然、高コ
ストなため一層の特性向上を必要としていた。



今月14日、産業技術総合研究所らの研究グループは低コストプロセスである溶液塗布熱分解法によ
るイットリウム系酸化物の高性能・長尺超電導線材を超電導層の中に直径数十ナノメートルの人工ピ
ン止め点(BaZrO3)を均一に分散させることに成功――溶液塗布熱分解法による線材として、良好な
超電導特性を示すものの――したが、気相法などによる高性能線材には及ばず超電導特性の向上に取
り組み、❶高温超電導体のイットリウム系酸化物超電導線材の超電導層の形成プロセスを改良して実
現、❷低コストなプロセスで磁場中の臨界電流密度を向上させて、高温超電導線材のコスト課題の解
決へ、❸モータや発電機など省エネ産業用機器、MRIや重粒子線加速器など医療機器の超電導磁石へ
の応用できるなどの成果をえたことを公表。

☑ 研究成果

同上研究グループは、低コスト化のために開発してきた溶液塗布熱分解法では多数回原料溶液を塗布・
熱処理を繰り返すが、❶一回当たりの塗布膜厚を数十ナノメートルに薄膜化することで、❷人工ピン
止め点を超微細化して、磁場中の特性を画期的に向上させることに成功。この基本原理をもとに、人
工ピン止め点の高濃度化を施すなどさらなる特性向上を図り、現時点で世界最高の磁場中の臨界電流
密度(液体窒素温度、磁場 3テスラ(T)中で1平方センチメートルあたり400万アンペア)を実
現。臨界電流値は360アンペアを超え、並行して、実際の製造プロセスに適用できるかどうか基本
原理を検証し、5ナノメートルの線材を作製して長尺化の見通しを得る。

  Apr. 13, 2017

【RE100倶楽部:最新超音波式風速計】

 ● 世界最軽量の3D超音波式風速計登場/TriSonica™Mini

今月18日、風力発電制御には風速計が欠かせない。米国のシンクロネス社らは、世界初、最小・最
軽量の
三次元超音波式風速計を開発販売開始する(上図ダブクリ参照)。このTriSonica™Mini、❶
側面が75ミリメート、❷重量が50グラム未満
の世界最小の風速計。 ❸3軸(x、y、z)の風速と風
向を毎秒30メートル(67ミリパスカル)まで10ヘルツのサンプリングレートで測定する。❹こ
のソリッドステート・ウインドシステムには可動部分がなく、製品の耐久性、精度、信頼性を最大限
に引き出せるとのうたい文句。対象市場として、風力発電システム以外にも、気象計測や無人車両(
UAV)市場を中心に、モバイルアプリケーションや狭いスペースに理想的な3次元超音波風速計向け
対応(4つの冗長な測定経路と独自の幾何学的特徴技術は特許出願中/詳細不詳のため要調査)。

尚、シンクロネス社は、18年以上にわたり、魅力あるソリューションの提供を行っており、 同社
は、医療機器、航空宇宙、およびカスタムオートメーション業界における強力な顧客ポートフォリオ
を保有するとのこと。 製品ライフサイクル全体にわたりエンジニアリングサービスを完全に保証す
る。下記に、関連する国内の特許事例2件を参考掲載しておく。

   

特開2001-278196  航空機用超音波式対気速度センサ

気象観測に用いられている音波風速計は、一定区間を伝搬する超音波の伝搬時間が、風の影響で変
化することを利用したもので、全方位的に所定の間隔で配設された複数個(一般には6個)の超音波
送受信器は平面上のあらゆる方位の風を測定することが出来る。しかし、超音波送受信機同士の空気
力学的干渉により、強風時の測定は困難で、航空機搭載が可能な大きさのものでは20m/s以下、
地上設置用の大型装置でも60m/s以下が測定可能領域である。この測定可能領域では航空機に利
用するには高速側の計測範囲が充分とはいえず、気象観測用の超音波風速計は、航空機に搭載する対
気流速計測器には適していない。

超音風速計のセンサ・ブローブを前方方向からの気流に対して乱れを生じにくい形状に改良し、か
つ複数個の超音送受信機を基体の前後方向に位置を異ならせて配置する形態で低速航空機に搭載す
るものであるから、従来のピトー管では不可能であった航空機の低速度領域の対気速度計測が可能と
なる。本発明を操縦用計器に適用すれば、その結果として低速飛行時の速度表示が従来より高精度と
なり、航空機の飛行安全性を向上させることができる。また、慣性計測装置など適宜の計測器により
対地速度が計測されれば、その位置での風速を割出すことができ、空中の特定位置の風を計測するこ
ともできる。更に、これを成層圏プラットフォーム用飛行船に適用した場合には、飛行船を一定位置
にとどめるための制御用センサとしても使用することができる。




特開2011-089844  風向風速計測装置および風向風速計測システム  
 

室内の風速の計測には、熱線式や超音波式の風速計がよく用いられている。❶熱線式風速と❷超音
風速計はともに、微風域を含めて測定範囲が広く、応答性が良い点で優れる。熱線式風速計
音波
風速計を比較すると、

  1. 熱線式は超音波式に比べ構成が簡単で安価であるとの利点を有する。
  2. また、超音波風速計は、超音波の送信部と受信部の間の伝搬時間差を利用して風速を計測す
    るため、送信部と受信部の間の空間に温度や圧力の不均一な場所があると、超音波の伝搬速度
    の変化やレンズ効果による超音波の散乱が生じることにより、計測誤差が発生しうる。このた
    め、超音波風速計は、サーバールームやデータセンターなどの空間的な温度変化が大きい領
    域での風速の計測には不適であ
    る。熱線式風速計にはこのような問題がない。
  3. しかし、その一方で熱線式風速計は、計測できるのが一般に風速のみであり、単体では風向を
    計測することができない。
  4. 熱線式風速計に工夫を施して、風向も計測可能にしたものに、温度に応じて抵抗値が変化する
    2本の直線状のヒータを、各々の一端で互いに接続して30度~90度のかぎ型に配置した風
    向風速センサであり、電圧をかけられた各々のヒータからの信号を処理することにより風向と
    風速を検知できるが、2本のセンサ(ヒータ)を用い、これらのセンサをかぎ型に形成してい
    るため、装置構成が複雑になる。
  5. 熱線式は、2本のセンサの出力を比較、演算して風向を求めるため、信号処理も複雑になる。

 以上、今夜も技術がてんこ盛りである。
                                                              

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする