『呉子』
春秋戦国時代に著されたとされる兵法書。武経七書の一つ。『孫子』と併称される兵法書。前四
世紀楚の宰相であった呉子の言を集録したものという。
5.応 変(おうへん)
臨機応変の「応変」。孫子の応変が老子思想に基づくものであるのにたいし、呉子のそれは法宗
感想を根底としている。
戦術よりも戦略配置を
「ここに敵軍がいるとしよう。その軍勢は非常に多く、しかも武勇すぐれているばかりか、大き
な山を背にし、険しい地形を前にし、右手に山、左手に川という理想的な布陣。そのうえ、濠を
深く、塁を高くし、強力な弓をフらねて守りを固めている、山が勁くように空々と退き風雨のよ
うに激しく進む、そのうえ糧食も十分にたくわえている。このような敵と長く対峙するのは不利
だと思うのだが、どうしたらよいであろうか?」
武侯がたずねると、呉超はこたんだ。
「これは重要な問題です。この問題はは、けっして単なる個々の戦闘に関する戦雨ぬではなく、
聖人の謀ともいうべき大局的な戦略問題であります。
それにはまず、兵車千倆、騎兵一万の大車をととのえ、これに歩兵を付したうえで、全ボを五つ
に分けて五箇所に配ほいたします。こうすれば、敵はきっと戸感って、どこを攻めたらよいかわ
からなくなるでありましょう。
そこで敵が防備を堅固にするようであれば、すぐに同原を送り込んでその計画をさぐるのです。
そして、まず平和的に交渉いたします。敵が、わが方の説得に応じ、陣を解いて去るならば、そ
れでよし、応ぜずに、わが方の使者を膳りすて親書を焼いてしまうような挙に出るならば、五軍
を次々にくりだして戦うのです。戦いに勝っても、深追いしてはなりません。勝てぬとみたなら
ば、すかさず逃げることです。このようにして、余力を残してわざと逃げ、あるいは整然と進ん
ですばやく戦う機動性が必要です。戦うには、一軍で敵を正面攻撃し、一軍は背後を絶ってはさ
みうちにし、両軍とも、ひっそりと物音をたてず、あるいは左に、あるいは右に、敵の虚に采じ
て奇襲するのです。こうして軍がかわるがわる攻めろならば、かならず勝利にいたるでありまし
ょう。以ヒが、強敵を撃つ方法です」
「車騎の力に非ず、聖人の謀なり」 局部的な現なや表面的な戦力(単騎の力)にとらわれず、
大筒的な観点にたって、敵味方の状況を考え、わが戦力を配分する。これを呉子は「聖人の謀」
と表現している。
【下の句トレッキング:外の面は雨のしののめらしい】
きみなくてレリークヴィエを聴きいたり外の面は雨のしののめらしい 三枝浩樹/「時祷集」
ただ一度生まれて果つる時のなかひとりにひとりの終の答あり
卓上に富有と津軽 日本の秋すぎんとし今朝は霧湧く
キセキレイ水辺にいたり微動する鏡となりてゆく秋の川
きみなくてレリークヴィエを聴きいたり外の面は雨のしののめらしい
野に熟れたるトマトの甘さひとふりの塩きらめきて色の濡れたり
イフェマールとはつかのまのいのちにてそのつかのまをわれらは生くる
うつせみのひかり集めてたまかざる夕べの色とわれはなりゆく
百葉箱のような人生という比喩がほんのり浮かぶ そうでありたい
I thought slightly about a metaphor of my life is like a Stevenson screen. I want to be like that.
人ひとりいなくなること永遠に解けない謎がまた寄ってくる
かぎりなき贈与のなかにめざめつつひかりの春の本に凭りいたり
風に慣るるということあらず ゆっくりと確実に壊れゆくのであろう
四月十五日朝よりの雨なお止まず散りてあたらしきはなびらあまた
別るるためまことわかるるため会いて五十三年 母を葬りぬ
※ イフェマール(ephemeral):儚さ、一日の命の
Wikipedia
この十三首を流れるイフェマールに「たたかひに 果てし我が子を かへせとぞ 言ふべきとき
と なりやしぬらむ」(釈迢空)/「マッチ擦るつかのま海に桐ふかし身捨てるほどの祖国あり
や」(寺山修司)や「思へばこの世は常の住み家にあらず」(幸若舞・能「敦盛」)を惹き寄せ
わたしの昨今の心情とシンクルナイズしたが、第八首の「百葉箱のような人生・・・」が印象強く
残る。百葉箱は主に外の気温を直射日光の影響や雨などの影響をなくした気象観測器。外側は日
光を反射しやすいように白く塗られており、風通しをよくする為によろい戸を設け、扉は北向き
になるよ設置し、地面からの照り返しを防ぐために芝生の上などに百葉箱は設置。中には温度計
(最高・最低温度計、自記温度計) や乾湿計(湿球と乾球の示度の差から湿度を求める計器)な
どを入れている。生命の移ろいの陰影を宇宙の無限遠点下から精緻に「日常」の心象を微分し、
「儚さ」を表現する魂の詩篇(Psalm) として読みとめた。
※ 1067夜『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット|松岡正剛の千夜千冊
【ソーラータイル事業:大面積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池】
昨日につづき、6月18日のNEDOと(株)東芝はの保有するメニスカス塗布技術に加えた大面
積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池てモジュール関連する特許事例を掲載する。
❑ 特開2018-049970 光電変換素子 株式会社東芝
【概要】
周知の通り、光電変換素子は、蒸着法等の比較的複雑な方法を用いて製造されるが、塗布法や印
刷法は、従来よりも低コストで簡便に光電変換素子を製造できる。光電変換素子として、例えば
有機材料または有機材料および無機材料を用いた太陽電池、センサ、発光素子等が開発されてい
が、光電変換素子の光電変換特性向上求められており、本件はその光電変換素子を容易に製造す
る方法の提供にある。本件の光電変換素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極および
第2の電極に接し、ペロブスカイト型化合物を含む活性層を備えた光電変換層とを備える。X線
回折測定で得られる活性層のX線回折パターンは、ペロブスカイト型化合物の(004)面に起
因する第1の回折ピークと、ペロブスカイト型化合物の(220)面に起因する第2の回折ピー
クとを有する。第2の回折ピークの最大強度に対する第1の回折ピークの最大強度の比は、0.
18以上である(下図1)。
【符号の説明】
1…基板、2…電極、3…電極、4…光電変換層、5…隔壁、41…活性層、42…バッファ層、
43…バッファ層、44…下地層、45…保護層、61…支持体、61a…回転軸、61b…支
持面、62…被処理体、62a…塗布層、63…塗布機構、63a…塗布液、71…ガス供給機
構、71a…ガス、81…研磨ローラ、81a…回転軸、81b…研磨面、82…移動機構、
83…制御機構、91…支持体、91a…回転軸、91b…支持面、92…支持体、92a…回
転軸、92b…支持面、93…支持体、93a…回転軸、93b…支持面、94…制御機構、
95…クリーニング装置。
さて、 上図1/図3は光電変換素子の構造例を示す図である。図1は、上面模式図である。上
図2は、図1の線分X1-Y1における断面模式図である。図3は、図1の線分X2-Y2にお
ける断面模式図である。実施形態の光電変換素子としては、例えば発光素子、太陽電池、または
センサ等が挙げられる。図1ないし図3に示す光電変換素子は、基板1と、電極2と、電極3と、
電極2および電極3に接する光電変換層4と、を具備する。基板1は、電極2、電極3、および
光電変換層4を支持する。基板1を介して光が光電変換層4に入射する場合、基板1は、透光性
を有す。
電極2は、基板1上に設けられている。電極2は、アノード電極およびカソード電極の一方とし
ての機能を有す。電極3は、光電変換層4を挟んで電極2と離間して設けられている。電極3は、
光電変換層4上に設けられ、基板1上まで延在する。電極3は、アノード電極およびカソード電
極の他方としての機能を有す。光電変換層4は、電極2と電極3との間に設けられる。光電変換
層4は、活性層41と、バッファ層42と、バッファ層43と、を有する。なお、必ずしもバッ
ファ層42およびバッファ層43の少なくとも一つを設けなくてもよい。
活性層41は、電極2と電極3との間に設け、バッファ層42の上に設ける。光電変換素子が
太陽電池の場合、活性層41は、入射する光のエネルギーにより電荷生成や励起子生成を行って
もよい。光電変換素子が発光素子の場合、活性層41は、発光層としての機能を有してもよい。
活性層41は、ペロブスカイト型化合物を含む。ペロブスカイト型化合物とは、ペロブスカイト
と同じ結晶構造を有する化合物である。ペロブスカイト型化合物を含むことにより変換効率を高
めることができる。
ここでは、ペロブスカイト型化合物の説明は、一部を省略するが 活性層41を厚くすると光吸
収量が増えて短絡電流密度JSCが増えるが、キャリア輸送距離が増える分、失活によるロスが増
える傾向にある。このため最大効率を得るために、活性層41の厚さは30nm以上1000n
m以下であることが好ましく、60nm以上600nm以下であることがさらに好ましい。活性
層41の厚みを個々に調整すれば、実施形態の光電変換素子と他の一般的な光電変換素子を太陽
光照射条件で同じ変換効率になるように調整が可能である。しかし、膜質が異なるため200l
xなどの低照度条件では、実施形態による光電変換素子は一般的な光電変換素子より高い変換効
率を実現できる。
また、活性層41の厚みを個々に調整すれば、実施形態の光電変換素子と他の一般的な光電変換
素子を太陽光照射条件で同じ変換効率になるように調整が可能であるが、膜質が異なるため20
0lxなどの低照度条件では、本件の形態による光電変換素子は一般的な光電変換素子より高い
変換効率が得られる。
ペロブスカイト型化合物の結晶構造は、例えばX線回折(XRD)測定により解析される。下図
4は、XRDにより得られる活性層41のX線回折パターンの一部を示す図である。図4に示す
回折パターンは、回折角度(2θ)が28.0~28.3度の範囲にペロブスカイト型化合物の
(004)面に起因する第1の回折ピークと、回折角度(2θ)が28.5度の付近にペロブス
カイト型化合物の(220)面に起因する第2の回折ピークと、を有する。結晶面の表記はミラ
ー指数で表わされるが、単位胞の規定の仕方で呼称が変化する。第1の回折ピークは、第2の回
折ピークと重なっていることがある。この場合、低角側から見て、単位角度あたりの強度増加の
減少を伴う領域における変曲点が第1の回折ピークの頂点と定義される。もしくは、各回折ピー
クが低角側と広角側に正規分布するとして最小二乗法等で形状をフィッティングすれば単体のピ
ーク形状を求められ、そこから、第1の回折ピークの頂点が定義できる。最大強度の比は図4の
ようにベースラインからの強度aとbを(004)と(220)の最大強度として求められる。
第1の回折ピークを有すことは、ペロブスカイト型化合物の結晶構造の安定性が高いことを示す。
また、図4に示す回折パターンにおいて、第2の回折ピークの最大強度に対する第1の回折ピー
クの最大強度の比は、0.18以上である。0.18未満では、ペロブスカイト型化合物が十分
に形成されておらず、変換効率が低下しやすい。(004)は(220)と垂直に交差する結晶
面であるため、両方が検出されるということは、3次元的に結晶構造の秩序構造
が形成されていることを裏付け、特に有機材料を下地としてペロブスカイト型化合物を形成する
場合は、結晶核生成の基点が無く、結晶成長が困難になる。この場合にも検出されるということ
は、3次元的に秩序構造が良好であることを意味する。なお、回折ピークの強度は、結晶面の存
在だけではなく、他の結晶面、特に並行する面の干渉を受けて、強度が弱くなることがある。こ
れらを加味して0.18以上であることは、ペロブスカイト型化合物内の3次元的な秩序構造が
高められていること意味する。以下、要所のみ掲載する。
基板1の厚さは、その他の構成部材を支持するために十分な強度があれば、特に限定されないが、
基板1が光入射面側に配置される場合、光入射面には、例えばモスアイ構造の反射防止膜を設置
できる。このような構造とすることで、光を効率的に取り込み、セルのエネルギー変換効率を向
上できる。モスアイ構造は表面に100nm程度の規則的な突起配列を有す構造で、この突起構
造により厚み方向の屈折率が連続的に変化するため、無反射フィルムを媒介させることで屈折率
の不連続的な変化面がなくなるため光の反射が減少し、セル効率が向上する。基板1は単体また
は組み合わせることで光電変換素子の機能を発現するものでもよい。具体的には、既に完成され
たシリコン太陽電池の上に、本発明を適用した太陽電池を形成し、タンデム型太陽電池としても
よい。この場合、等価回路が並列回路になることが好ましい。さらに、第1の電極と中間層とが
シリコン太陽電池と共有されてもよい。この場合、等価回路が直列回路になることが好ましい。
電極2および電極3の少なくとも一つの電極の厚さは、電極の材料がITOの場合、30nm以
上300nm以下であることが好ましい。30nm未満の場合、導電性が低下して抵抗が大きく
なりやすい。抵抗が大きいと光電変換効率が低下する場合がある。300nmを超える場合、I
TO膜の可撓性が低下して、応力が作用するとひび割れる場合がある。電極2および電極3の少
なくとも一つの電極のシート抵抗は、10Ω/□以下であることが好ましい。
尚、光電変換層4の構造例は、図1ないし図3に示す構造に限定されない。下図5は、光電変
換素子の他の構造例を示す断面模式図。図5に示す光電変換素子では、図1ないし図3に示す構
成に加え、下地層44と、保護層45と、をさらに有する光電変換層4を具備する。
さらに、活性層41の一方向に電極2および/またはバッファ層42と、電極3および/または
バッファ層43と、を互いに離間して配置したいわゆるバックコンタクト方式の構造を有してい
てもよい。
次に、実施形態の光電変換素子の製造方法例について説明する。上図6は、実施形態の光電変換
素子の製造方法例を説明するためのフローチャートである。実施形態の光電変換素子の製造方法
例は、第1の電極形成工程S1と、光電変換層形成工程S2と、第2の電極形成工程S3と、熱
処理工程S4と、を具備する。なお、実施形態の光電変換素子の製造方法は、上記製造方法例に
限定第1の電極形成工程S1では、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティ
ング法、メッキ法、または塗布法等を用いて基板1上に電極2を形成する。
光電変換層形成工程S2では、電極2上に光電変換層4を形成する。光電変換層形成工程S2は、
第1のバッファ層(下地層)形成工程S2-1と、塗布工程S2-2と、ガス吹き付け工程S2
-3と、保護層形成工程S2-4と、研磨工程S2-5と、第2のバッファ層形成工程S2-6
と、を有する。
第1のバッファ層(下地層)形成工程S2-1では、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イ
オンプレーティング法、メッキ法、または塗布法等を用いて電極2上にバッファ層42および下
地層44の少なくとも一つの中間層を形成する。下地層44は、例えば塗布法を用いて形成する
ことが好ましい。なお、バッファ層42および下地層44を形成しない場合、第1のバッファ層
(下地層)形成工程S2-1は実施されない。
下図7は、塗布工程S2-2を説明するための模式図である。塗布工程S2-2では、塗布法を
用い、塗布機構63から塗布液63aを支持体61に配置された被処理体62の中間層上に塗布
して塗布層62aを形成する。なお、塗布機構63を備える塗布装置を用いて塗布層62aを形
成してもよい。塗布機構63による塗布液63aの供給は、別途設けられた制御機構により制御
される。
支持体61は、回転軸61aと被処理体62を支持する支持面61bとを有する。回転軸61a
は、支持面61bに垂直である。支持体61は、支持面61bにおいて真空チャックを用いて被
処理体62を固定する。塗布層62aを形成する際、支持体61は、回転軸61aを中心に回転
する。
塗布液63aは、ペロブスカイト型化合物の前駆体と前駆体を溶解し得る有機溶媒とを含む。有
機溶媒としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、γ-ブチロラクトン、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。有機溶媒として複数の材料の混合溶媒を用い
てもよい。塗布液は、1つの溶媒と、溶媒に溶解されたペロブスカイト型化合物を形成するため
の複数の原材料と、を含んでいてもよい。
塗布液63a中の前駆体の濃度は、1770mg/ml以下であることが好ましい。1770mg
/mlを超えると、ペロブスカイト型化合物の結晶粒径が大きくなり、研磨工程S2-5におい
て活性層41にピンホール等が発生しやすくなる。
塗布層62aは、例えばペロブスカイト型化合物を形成するための複数の原材料を個々に含む複
数の溶液を調製して順次、スピンコータ、スリットコータ、バーコータ、ディップコータ等を用
いて塗布することにより形成されてもよい。
上図8は、ガス吹きつけ工程S2-3を説明するための模式図である。ガス吹きつけ工程S2-
3では、ガス供給機構71から塗布層62aにガス71aを吹き付けてペロブスカイト型化合物
を形成する。なお、ガス供給機構71を有する塗布装置を用いて塗布層62aにガス71aを吹
き付けてもよい。ガス供給機構71によるガス71aの供給は、別途設けられた制御機構により
制御される。
ガス71aとしては、例えば窒素や、希ガスに分類されるヘリウム、ネオン、アルゴンが好まし
く用いられる。また、ガス71aとして空気、酸素、二酸化炭素などを用いることもできる。こ
れらのガスは、それらを単独で、または混合して用いることもできる。窒素ガスは安価で大気か
ら分離して利用することができるため好ましい。ガス71a中の水分濃度は50%以下、好まし
くは4%以下であることが好ましい。ガス71a中の水分濃度の下限値は、10ppm以上であ
ることが好ましい。(中略)ガス71a中の水分濃度は50%以下、好ましくは4%以下である
ことが好ましい。ガス71a中の水分濃度の下限値は、10ppm以上であることが好ましい。
ガス71aは、室温で液体である物質の蒸気を含んでいてもよい。室温で液体の物質としては、
例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド
(DMSO)、クロロベンゼン(CB)、ジクロロベンゼン(DCB)等を用いることができる。
室温で液体である物質の蒸気は、活性層41の平滑性を向上させることができ、ペロブスカイト
型化合物の安定性を向上させることができる。
ガス71aの温度は30℃以下であることが好ましい。30℃を超えると塗布液63aに含まれ
るペロブスカイト型化合物の前駆体の溶解度が上昇し、ペロブスカイト型化合物の形成が阻害さ
れてしまう。一方、被処理体62の温度(基板温度)はガスの温度よりも低温であることが好ま
しい。被処理体62の温度は、例えば20℃以下、さらには15℃以下であることが好ましい。
ガス71aを吹きつけることにより、ペロブスカイト型化合物が形成される過程で有機溶媒が排
除され、ペロブスカイト型化合物の形成反応を促進させることができる。ガス71aの吹きつけ
により、熱を加えなくともペロブスカイト型化合物の形成反応が進むため、活性層41のピンホ
ール、亀裂またはボイドの形成を抑制することができる。また熱を加えないことで塗布層62a
の表面の急激な乾燥が抑制されて、塗膜表面と内部との応力差を抑制することができる。このた
め、形成される活性層41の表面の平滑性が高くなり、フィルファクタFFを改善することがで
き、寿命を改善することができる。
ガスの吹きつけは、塗布液63a中でペロブスカイト型化合物の形成反応が完了する前に行う必
要がある。
すなわち、ガスの吹きつけにより反応を促進することが必要である。塗布層62aを形成した後、
速やかにガスの吹き付けを開始することが好ましい。具体的には塗布終了後から10秒以内が好
ましく、1秒以内であることがより好ましい。
塗布層62aが乾燥する過程では、ペロブスカイト型化合物の形成と同時に原料としてMAI、
ヨウ化鉛などの単体の結晶も成長することがある。塗布層62a中に溶解分散した状態から速や
かに乾燥させる程、ペロブスカイト型化合物を効率よく成長させることが可能である。よって、
実施形態の光電変換素子の製造方法例は、有機膜や格子不整合の大きい酸化物上にペロブスカイ
ト型化合物を形成させる場合に有効である。
上図9は、研磨工程S2-5を説明するための模式図である。研磨工程S2-5では、研磨ロー
ラ81を用いて被処理体62の表面を研磨する。研磨ローラ81は、移動機構82により移動が
可能である。移動機構82は、制御機構83により制御される。研磨は被処理体62の表面を平
滑にするために行われる。特に保護層45を形成した後に、塗布層62aの表面における凸部の
みを露出させるような研磨を行うことが好ましい。(中略) 研磨ローラ81は、回転軸81a
と回転軸81aを中心に回転して被処理体62の表面を研磨するための研磨面81bとを有する。
研磨の際、被処理体62の表面が回転軸81aと平行に研磨ローラ81の研磨面81bに接する
ように移動機構82により研磨ローラ81および被処理体62の少なくとも一つを移動させる。
これにより被処理体62に傷が生じにくく、または研磨によるゴミが残存しにくくなる。上図9
では、移動機構82により研磨ローラ81を移動させる例を図示している。研磨ローラ81は、
回転しながら支持面61bと平行な一方向に沿って移動してもよい。
ロールツーロールにより被処理体62を移動させながら研磨してもよい。上図10は、研磨工程
S2-5の他の例を説明するための模式図である。図10に示す構成の場合、研磨ローラ81の
位置は固定されていてもよい。この場合は、移動機構82が設けられなくてもよい。図10に示
す支持体91は、回転軸81aと平行な回転軸91aと回転軸91aを中心に回転して被処理体
62を支持する支持面91bとを有する。支持体92は、回転軸81aと平行な回転軸92aと
回転軸92aを中心に回転して被処理体62を支持する支持面92bとを有する。支持体93は、
回転軸81aと平行な回転軸93aと回転軸93aを中心に回転して被処理体62を支持する支
持面93bとを有する。支持体91ないし支持体93の位置は、固定されていてもよい。
上図11は研磨を行っていないサンプルの表面の写真であり上図12は研磨を行ったサンプルの
表面の写真。図11に示すサンプルの表面は斑点を有する。これはPCBMを2回塗布しても消
えなかった。図12に示すサンプルでは、斑点が無い。研磨を行うころにより、1回目の塗布に
より表面に斑点が有していても、2回目の塗布により斑点を消すことができることがわかる。
すなわち、活性層の露出部分を覆うことができる。(中略)これらの光電変換素子に対し、ソー
ラーシミュレータでAM1.5の光を1000W/m2の条件で照射したときのIV特性をそれ
ぞれ測定した。図13は、光電変換素子のIV特性を示す図である。表1は、熱処理時間と各パ
ラメータ(開放電圧VOC、短絡電流密度JSC、最大出力Pmax、フィルファクタFF、変換効
率PCE、並列抵抗Rsh、界面抵抗Rs)との関係を示す表であり、上図14は変換効率PC
Eを示す図であり、下図15は開放電圧VOCとの関係を示す図であり下図16は界面抵抗Rsを
示す図であり、下図17はフィルファクタFFを示す図であり、下図18は短絡電流密度JSCを
示す図であり、下図19は並列抵抗Rshを示す図である。例えば、変換効率4,48%だった
サンプルは、熱処理の時間経過と共に改善し、変換効率8.97%と、初期の変換効率の約2倍
の性能に達した。また、VOCよりもJSCとFFが大きく変化した。
表2は、光電変換素子の各パラメータの再現性を示す表であり、下図20は、光電変換素子の各パ
ラメータの再現性を示す図。実施例1では、研磨工程を含む上記工程によりサンプルA、B、Cを
作製した。表2から研磨を実施することによって、変換効率のばらつきは1バッチ内の0.82ポ
イントの範囲内に収まっていることがわかる。このことから光電変換素子が高い再現性を有するこ
とが確認できた。
【図26】光電変換素子のIV特性を示す図 【図27】光電変換素子の構造例を示す模式図
【図28】光電変換素子のIV特性を示す図 【図29】光電変換素子のIV特性を示す図
今回の世界記録はペロブスカイト型の第面積化の成功例であり、今後は商用化をめだし、作り込みの長寿
命化(~10年)、高変換率化(~20%)の開発が始まるが、順当に行けば、ここでも日本が先端を走ること
になる。面白い。