極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

延暦寺・日吉大社めぐり

2023年11月17日 | 滋賀のパワースポット

    

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せて生まれたキャラクタ。





根本中堂は、現在工事用の素屋根に覆われていて、本来の建物は見えない。2016
~2029年の大改修中であることを知った彼女が比叡山の紅葉を参観したいと朝起
の清掃作業中に言ったのでそれじゃドライブしようと比叡山(延暦寺-日吉大社)
に湿度が高く朝靄が広がった秋日和の湖を周回する(20236.11.16 9:45~)。

 阿耨多羅三藐三菩提あのくたらさんみゃくさんぼだいの仏たち わが立つそま冥加みようがあらせたまへ       伝教大師

    みづうみは夢の中なる碧孔雀まひるながらに寂しかりけり   宮澤賢治

牧水に、京都に遊び、比叡山の山寺に籠もり、さらに大阪、奈良、和歌山を経て
熊野勝浦、那智に行き、鳥羽、伊勢に遊ぶこの旅で、「比叡山にて」と題す文集
がある。大正七年の五月、比叡山に登った。山上の宿院で雑誌「創作」の選歌を
するつもりだったが、一泊以上滞在することを断られてしまう。困っていたとこ
ろ、茶店の人に、古い山寺を紹介してもらった。そこならしばらく泊まっていて
もいいという。山寺には伊藤孝太郎という老爺が留守番役をしていた。元は西陣
の職人だったが、無類の酒好きで、妻と娘が亡くなったあとは各地を放浪し、今
はこの寺で使われている。耳がかなり不自由になっていた。牧水は、この不幸な
老人といつしか親しくなり、五日間ほど、毎晩酒を飲んでいたという。このとき
牧水は数え年で三十四歳。

 わが宿れる寺には孝太とよぶ老いし寺男ひとりのみにて住持とても居らず。
 比叡山ひえいやまの古りぬる寺の木がくれの庭の筧かけひを聞きつつ眠る 
 (『くろ土』以下) 酒買ひに爺じいをやりおき裏山に山椒さんしょつみを
 れば独活うどを見つけたり その寺男、われにまされる酒ずきにて家をも妻
 をも酒のために失ひしとぞ。

   言葉さへ咽頭のどにつかへてよういはぬ酒ずきを酔ゑはせざらめや
   酒に代ふるいのちもなしと泣き笑ふこのゑひどれを酔はざらめや  
                    『くろ土』「比叡山にて」
 


 
 
Anytime Anywhere ¥1/kWh era

【再エネ革命渦論 193 アフターコロナ時代 185
技術的特異点でエンドレス・サーフィング 



驚異的なエネルギー密度をもつナトリウムイオン電池の創製
2023年11月13日、東京理科大学らの共同研究グループは、ナトリウムイオン電池
やカリウムイオン電池用の新たな負極材料である「ZnO鋳型ハードカーボン(HC-Z
n)」を合成することに成功しました。このHC-Znを負極に使用したナトリウムイ
オン電池は、現行の商用リチウムイオン電池に匹敵するほど高いエネルギー密度
を示した。 

 黒の革命
【要点】
1.ナトリウムイオン電池・カリウムイオン電池の負極材料として優れた特性を
 示す新たなハードカーボンの合成に成功
2.合成したハードカーボンを負極として使用したナトリウムイオン電池を作製
 し、312Wh/kgという非常に高いエネルギー密度を示すことを実証
3.本研究をさらに発展させることで、希少元素を使わないナトリウムイオン電
 池やカリウムイオン電池の実現が期待されている。
【概要】
ナトリウムイオン電池とカリウムイオン電池は、ユビキタスなリチウムイオン電
池 (LIB) の次世代代替電池として有望。 しかし、そのエネルギー密度は依然と
してLIBに比べて劣っている。 この問題に取り組むために、研究者らはハードカ
ーボンを優れた負極材料に変える革新的な戦略を模索。合成時に無機亜鉛ベース
の化合物をテンプレートとして使用して、両方の代替電池で優れた性能を示すナ
ノ構造ハードカーボンを調製。ナトリウムイオン電池とカリウムイオン電池は、
広く普及しているリチウムイオン電池 (LIB) の 次世代代替電池として期待され
ているが、そのエネルギー密度は依然としてLIBに比べて劣っている。
この問題に取り組むために、ハードカーボンを優れた負極材料に変える革新的な
戦略を模索した。合成時に無機亜鉛ベースの化合物をテンプレートとして使用し
て、両方の代替電池で優れた性能を示すナノ構造ハードカーボンを調製。

リチウムイオン電池 (LIB) は、これまでのところ最も広く使用されているタイ
プの充電式電池であり、数多くの用途に広がっている。 これらには、家庭用電
化製品、電気自動車 (テスラ車など)、再生可能エネルギーシステム、宇宙船が
含まれている。LIB は他の充電式バッテリーと比較すると、多くの点で最高のパ
フォーマンスを発揮するが、相応の欠点もある。リチウムはかなり希少な資源で
あり、将来入手可能性が低下すると、その価格は急速に上昇する。さらに、LIB
で一般的に使用される液体電解質は有毒で可燃性であるため、リチウムの抽出と
不適切に廃棄されたLIBは環境に大きな問題を引き起こす。 LIB の欠点により、
世界中の研究者が代替エネルギー貯蔵技術を模索するようになる。ナトリウム (
Na) イオン電池 (NIB) とカリウムイオン電池 (KIB) は、コスト効率が高く持続
可能な2つの急速に出現した選択肢。NIBとKIBはどちらも、20年末までに10億ド
ル規模の産業になると予測されている。米国、オーストリア、香港、ドイツ、オ
ーストラリアを含む世界中の政府は、この分野の研究とイノベーションを推進。
さらに、Faradion Limited、TIAMAT SAS、HiNa Battery Technology Co. Ltd. などの
企業がこの技術に多額の投資を行っている。Contemporary Amperex Technology Co.
Limited と Build Your Dreams
は、近々 NIB を搭載した電気自動車用バッテリーパ
ックを発売する予定だが、残念なことに、NIBおよび KIB で使用される電極材料
の容量は、依然としLIBの容量に及ばない。このような状況を背景に、日本の東
京大学理学部(TUS)の駒場真一教授率いる研究チームは、NIBおよびKIB用の画
期的な高容量電極材料の開発に取り組んでいる。

2023年11月9日に Advanced Energy Materialsに掲載された最新の研究では、前例の
ない性能を実現するナノ構造「ハードカーボン」(HC) 電極の新しい合成戦略を
報告。しかし、HCとは何か? また、なぜHCが NIBや KIB に役立つのか? グラフ
ェンやダイヤモンドなどの他の形態の炭素とは異なり、HCはアモルファス。明確
に定義された結晶構造がない。さらに、強度と耐久性にも優れている。2021年初
頭の研究で、NIB用のHC電極の合成中に酸化マグネシウム(MgO)をテンプレート
として使用し、最終的なナノ構造を変更する方法を発見。このプロセスにより、
MgO除去時に電極内にナノ細孔が形成され、その結果、Na+イオンを貯蔵する能力
が大幅に増加。以前の発見に動機づけられて、亜鉛(Zn)とカルシウム(Ca)か
ら作られた化合物がHC電極のナノテンプレートとしても有用であるかどうかを調
査。この目的を達成するために、酸化亜鉛 (ZnO) と炭酸カルシウム (CaCO3) を
使用し作成したさまざまな HCサンプルを体系的に調査し、それらの性能を酸化
マグネシウム (MgO) を使用して合成したものと比較。予備実験では、ZnO がNB
の負極として特に有望であることが示され、合成中にHCマトリックスに埋め込む
ZnOの濃度を最適化し、グルコン酸亜鉛のブレンドを利用し、カーボンマトリック
スに埋め込まれたZnOの濃度を最適化することで、出発物質として酢酸亜鉛を使
用すると、最適な ZnO テンプレート HC は、91.7% という高い初期クーロン効
率で 464 mAh g-1 (NaC4.8 に相当) の可逆容量を示す。平均電位は Na+/Naに対
し0.18 Vと低くなる。91.7%という高い初期クーロン効率と0.18という低い平均
電位を備えた464mAh g-1(NaC4.8に相当)のV 対 Na+/Na可逆容量を実証。強力
な電極材料を実際の電池に組み込むことで、目覚ましい成果を上げた。 「最適
化された ZnO テンプレートHC を負極として使用して製造された NIB は、312 W
h kg-1 のエネルギー密度を示した。 この値は、LiFePO4 とグラファイトを使用
した現在商業化されている特定の種類の LIB のエネルギー密度に相当し、2011
年に報告した最初のNIB のエネルギー密度 (192 Wh kg-1) の 1.6 倍以上。注目
すべきことに、ZnO テンプレート HC は、KIBに組み込まれた場合に 381 mAhg-1
という顕著な容量も示し、その可能性をさらに示した。

まとめると、この研究の結果は、無機ナノ粒子をテンプレートとして使用して細
孔構造を制御することが、HC電極開発の効果的なガイドラインを提供できる可能
性があることを示している。調査結果は、HCが黒鉛の代替として負極の有望な候
補であることを証明。 これにより、NIBは、持続可能な家庭用電化製品や電気自
動車、さらには太陽光発電や風力発電所からのエネルギーを貯蔵するための低炭
素排出量エネルギー貯蔵システムの開発などの実用化が可能になる。

【結果及び考察】
1.前駆体の合成と特性評価
図 1a は、この研究で使用されたHC合成プロセスの概略図を示す。これは、私
たちの最近の研究からのテンプレート合成法の概念に基づいている。 グルコン
酸塩と出発物質の化学構造を図S1a(サポート情報)に示し、走査型電子顕微鏡
(SEM)で観察した粉末形態を図S1b-d(サポート情報)に示す。 グルコン酸塩
は、テンプレート炭素の前駆体として広く使用。 600℃での予熱プロセス中に、
出発物質は熱分解され、前駆体炭素と無機粒子の複合体に変化し、これがナノ細
孔テンプレートとして機能する。 続く酸浸出段階では、炭素表面上の過剰な無
機粒子が除去され、所定の位置に開いた細孔が残る。不活性雰囲気中での最終的
な後加熱プロセスを通じ、前駆体炭素は HC になり、グラファイトドメインと閉
じたナノ細孔が発達します [34]。 前駆体の炭素マトリックスに埋め込まれたテ
ンプレート酸化物は炭素熱反応によって還元を受け、元素金属を形成し、高温で
揮発して除去される。詳細なサンプル調製方法はサポート情報に記載。
以下、前駆体カーボン、酸浸出による洗浄前駆体カーボン、最終生成物であるHC
のサンプル名をそれぞれ「PRE-X」、「wPRE-X」、「HC-X」と呼ぶ。Xは 出発物質中の
金属元素。



図1.a) テンプレートの合成方法の図解。 b) PRE-X および wPRE-X の XRD パ
ターン。X = Mg (左)、Zn (中央)、または Ca (右)。 c) PRE-Mg、d) PRE-Zn の
暗視野 TEM 画像。MgO と ZnO が輝点として示されています。 e) PRE-Caの明視
野 TEM 画像。 PRE-X と wPRE-X (X = Mg、Zn、または Ca) の両方の SEM画像を
図S2 (サポート情報) に示し。特に、PREXの形態はそれぞれの出発物質の形態を
再現しなかった。 図1b は、PRE-X と wPRE-X の X 線回折 (XRD) パターンの比
較を示しています。PRE-X パターンでは、MgO、ZnO、CaO、CaCO3 の回折ピーク
が確認されます。しかし、wPRE-X パターンでは、酸浸出後にこれらの無機物質
のピーク強度が著しく減少し、2θ = 22°および 43°に位置する低結晶性炭素
に由来するブロードなピークが比較的顕著になりました。 これは、テンプレー
トとして機能した無機粒子のかなりの部分が酸浸出によって除去されたことを示
唆しており、これは図 S3 (サポート情報) に示されている SEMエネルギー分散
型 X線分光法 (EDS) 分析と一致する。 MgOテンプレート炭素に関する我々の以
前の研究で報告されているように、(w)PRE-Mg 中のMgO は小さなナノ粒子で構成
されています。これは、XRDパターンの幅広いMgO ピークから明らかであり、PRE-
Mg の暗視野透過型電子顕微鏡 (TEM) 画像で MgO ナノ粒子がはっきりと見えた。 
wPRE-Zn パターンは幅広いZnOピークを示し、高結晶性 ZnO が主に炭素表面に位
置し、酸浸出によって除去できることを示唆。 実際、図S3 (サポート情報) の
SEM-EDS マッピングと、図S4 (サポート情報) のPRE-Zn および wPRE-Zn サンプ
ルの高倍率 SEM 画像には、PRE-Zn 上に白い ZnO 粒子が示されていますが、PRE-
Zn には白い ZnO 粒子が見えません。 このような粒子は、wPRE-Zn の SEM 画像
で見ることができます。 図 S5 (サポート情報) は、PRE-Zn および wPRE-Zn の
ZnO 由来の回折ピークの詳細な分析を示しています。 PRE-Zn のパターンの 2θ
= 30 ~ 40° 内の 100、002、および 101回折ピークは、シャープでブロードな
成分にデコンボリューションできますが、wPRE-Znの回折ピークはブロードな成分
のみに適合します。 各002 回折の半値全幅 (FWHM) を使用して Scherrer の式に
よって計算された ZnO 結晶子サイズは、PRE-Zn のシャープな成分については
39.3 nm、PRE-Zn および wPRE-Zn のブロードな成分については 3.4 および 4.1
nm 。それぞれ。 XRD分析から予測されるように、(w)PRE-Zn中のZnOナノ粒子の存
在は、図1dに示すPRE-Znの暗視野TEM画像と一致する。PRE-Caの場合 XRDを使用
して CaOと CaCO3 の両方の結晶相が検出された。文献によれば、CaCO3が優先的
に生成され、高温条件下での CaCO3 の熱分解により CaO が生成する。
図1eのTEM像によると、PRE-Ca中のCaOまたはCaCO3の粒子サイズは数十ナノメー
トルであり、PRE-Mg中のMgOやPRE-Zn中のZnOの粒子サイズよりもかなり大きく、
HCのナノ細孔の「テンプレート」として機能できない。図S6 (サポート情報) の
熱重量測定 - 示差熱分析 (TG-DTA) 曲線に示すように、Mg Glu、Zn Glu、および
Ca Glu の熱分解挙動は、発熱特性と吸熱特性の点で異なる。有機化合物の熱分
解過程は複雑であり、原料ごとの分解過程を詳細に把握することは困難だが、熱
分解挙動のこれらの違いは、関与する二価金属の種類に応じて、無機粒子の分布
と粒子 (微結晶) サイズに影響を与える可能性がある。

2.HC の特性評価
3つの異なるグルコン酸塩から合成された HCのSEM 画像を図 2aに示す。各HC-X
の形態は、対応する wPRE-X の特徴を保持していた (図 S3、サポート情報)。
HC-Mg、HC-Zn、HC-Ca の XRD パターンを図 2b に示す。すべてのサンプルは、
2θ = 21 ~ 23°および 42 ~ 44°で低結晶性炭素に典型的な幅広いピークを
示し、これらはそれぞれ、HCの擬似黒鉛ドメインの 002 回折および 100 回折に
割り当てることができる。 計算された平均層間距離 d002 は、HC-Mg、HC-Zn、HC
-Ca でそれぞれ 0.3767、0.3766、0.3564 nm XRDパターンにはHC以外のピー
クは観察されず、ほとんどのテンプレートが後熱処理プロセス中に除去されたこ
とを示す。 図S7 (サポート情報) に示すように、テンプレートの削除は STEM-
EDSによっても確認された。 HC-Mg および HC-Zn では Mg と Znはほとんど検出
されないが、HC-Ca では少量の Ca が検出された。 元素マッピングにより、炭
素マトリックス中に高密度の Caおよび O スポットが共存していることが明らか
になる。 金属 Caの沸点は >1400 ℃であるため、後熱処理中に揮発せず、CaOま
たは CaCO3として残ったと推定。



図2.a) HC-Mg (左)、HC-Zn (中央)、および HC-Ca (右) の SEM 画像。 b)
HC の XRD パターン。 c) HC とグラファイトの SAXS パターン。 d) HC-Mg (
左)、HC-Zn (中央)、および HC-Ca (右) の HRTEM 画像。 図 2cに示すように
HC の細孔構造は小角 X 線散乱 (SAXS) を使用して特性評価されました。 黒鉛
には細孔がないため、比較のために天然黒鉛の SAXS パターンも表示。 特に、
HC-Mg および HC-Zn の SAXS パターンでは肩散乱ピークが明確に観察された。
パターンフィッティングと仮定により、HC-Mg サンプルと HC-Zn サンプルの平
均細孔サイズはそれぞれ 1.25 nm と 1.44 nm と計算された。 対照的に、HC-Ca
のパターンは非常に低い強度のショルダー ピークを示しており、これは HC-Ca
が HC-Mg および HC-Zn よりも小さいか無視できる数の閉気孔を持っているこ
とを示す。
以前の観察に基づくと、1300〜1500℃で有機前駆体の単純な炭化によって得ら
れるHCのナノ細孔サイズは1.1〜1.2nmである[6, 39, 40]。したがって、HC-Mg
およびHC-Znは比較的大きなサイズを有するナノポア構造。 これらの結果から、
PRE-Mg および PRE-Zn に含まれる MgO および ZnO ナノ粒子がテンプレートと
して機能し、HC-Mg および HC-Zn にナノ細孔の形成が可能になると結論付ける
ことができる。 HC の細孔構造は、図 2dに示すように、高解像度 TEM (HRTEM)
を使用した微細構造観察によりさらに特徴付けられ。 PRE-Mg および PRE-Znの
HRTEM 画像では、数ナノメートルスケールの緻密な微細構造が示さるが、HC-Ca
ではより大きな空隙(直径 5~10 nm)が観察される。PRE-Caで形成される CaO
または CaCO3粒子はこれらの大きな空隙の形成につながる可能性があるが、この
ような大きな空間はNaクラスターの電気化学的形成には不適切だと考える。

HC の N2 吸着測定が実施され、観察されたHCの等温線が図 S8 (サポート情報)
に表示。 HC-Mgでは典型的なタイプ I の等温線が得られたが、HC-Zn の等温線
はタイプⅡのように見え、非常に少量のN2吸着が見られた。 IUPAC 技術報告書
によると、HC-Mgはその表面に開いたミクロ細孔を持つ必要があるが、HC-Znは
非多孔質材料であるか、マクロ細孔しかない。 ブルナウアー・エメット・テラ
ー(BET)理論に基づき計算された比表面積(「SBET」と表記)は、HC-Mgおよび
HC-Znについてそれぞれ582および85 m2 g-1。 HC-Ca の等温線は、周囲圧力か
ら相対圧力の中間範囲までのヒステリシス ループを示し、これは HC-Caの表面
にメソ細孔が存在することを示唆する。 BET分析はそのような材料に完全に適
しているわけではないが、吸着曲線から計算された HC-Ca の暫定的な SBETは 5
74 m2 g-1である。SBETや、N2や CO2 などのガス吸着から計算された開気孔の
分布は、炭素の「表面」構造を評価によく使用される。「表面」に対する洞察
が、固体電解質界面の電極表面の不動態化に関連する可能性があるものと期待
される(SEI) 粒子を電解分解生成物で覆うことにより形成される。電解質中に
存在する溶媒分子と陰イオンがN2やCO2分子よりも大きいことを考慮するとガス
吸着により決定される表面積は、必ずしも液体電解質と電極活物質の間の接触
面積を表すわけではあい。そこで、HC電極に対してサイクリック ボルタンメト
リー (CV) を実行し、Na+/Na に対して 2.2 ~ 2.8 V の電位範囲で接触面積を
評価。この特定の範囲は、電極/電解質界面での電気二重層の形成を考慮し、フ
ァラデー電気化学反応が存在せずに選択された。 得られたサイクリック ボル
タモグラムを図S9 (サポート情報) に示す。すべてのボルタモグラムは、コン
デンサの典型的な特性である長方形の曲線を示す。 この電位範囲で計算された
平均電気二重層容量は、HC-Mg で 0.15 mAh g-1、HC-Zn で 0.12 mAh g-1、HC
-Ca で0.97 mAh g-1 (0.90、0.72、 それぞれ5.8 F g−1)。 これらの二重層静
電容量値は、HC 粒子と電解質溶液の間の接触面積に直線的に比例すると仮定さ
れる。 したがって、以下に説明するように、Na セルの HC 電極上での SEI 形
成の不可逆容量は静電容量に関係していると考えられる。

3.NIB負極としてのHCの電気化学的性能
NIB用 HC電極の性能を評価するために、充放電試験 (HC 電極での Na の挿入と
抽出にそれぞれ対応) が実行されました。 図 3a は、Na 半電池の HC 電極の初
期充放電曲線を示しています。 HC 複合電極は、200 mAh g-1 を超える高い可逆
容量を示し、電圧変化曲線は以前に報告された他の HCの曲線と完全に似ている。
したがって、テンプレート合成 HC 電極の酸化還元活性は、可逆的なナトリウム
挿入に起因すると考えられる。

a

図3.a) HC の初期充放電曲線。 b) HC-Zn のサイクル性能。 c) 異なるナトリ
ウム化状態でのHC-Znのex situ SAXSパターン。 d) 異なるナトリウム化状態での
HC-Znのex situ WAXSパターン。

3つのサンプルの中で、HC-Zn は優れた電池性能を示し、418 mAhg-1の初期可逆
容量と 90% の初期効率を示した。 HC-Mgは、それぞれ 383 mAh g-1 と85% とい
う高い初期容量と効率も示した。 ただし、HC-Caは最初のサイクルで258 mAh g-1
の低い容量と 56% の効率を実現。 可逆容量の違いは、SAXS によって評価された
閉気孔の特性により説明できる。つまり、HC-Znおよび HC-Mg は、より大きな閉
気孔を持つ炭素構造により、HC-Ca に比べて優れたナトリウム貯蔵性能を示す。
そして閉じた気孔の割合が高くなる。これは、Zn-Glu 由来の炭素質材料が充電
可能な NIBの負極として顕著な特性を備えていることを実証した最初の研究。
これらの材料は、二重層キャパシタ用の電極や酸素還元反応触媒など、他のエネ
ルギー材料と関連して以前に研究されてきたため、これは注目に値する。

高電位傾斜領域 (>0.15 V) に対応する容量は 80、89、および 81 mAh g-1 であ
り、低電位プラトー領域 (<0.15 V) の容量は 303、329、および 177 mAh g-1。
HC-Mg、HC-Zn、HC-Ca はそれぞれ -1。 傾斜領域の容量と電位変動は各サンプル
でほぼ同様で、約 80 mAh g-1 、プラトー領域の容量は 3 つのサンプル間で異
なる。この結果はマテリアル デザインとよく一致。細孔構造の設計により、Na
クラスターの形成が強化され、より低い電位でのプラトー容量が拡張した。 他
の研究では、HCのナノ細孔構造がプラトー領域のナトリウム酸化能力に重大な影
響を与えることも示唆。HC の初期クーロン効率の変動は、不可逆的な電解質分解
と SEI 形成に関連。 初期サイクルでは、前に示したように、N2収着から計算さ
れた BET 表面積よりも、上で説明した CV から得られた静電容量とより厳密に一
致する。SEMで観察されたZn-HCの滑らかな粒子表面(図2a)は、電解液との接触
面積の減少に寄与し、不可逆容量の低下と初期効率の向上につながったと考える。

図 3bは、HC-Zn のサイクル性能と対応するクーロン効率を示す。 最初のサイク
ルを除き、電解質の分解と SEI 形成がナトリウム化の初期段階で発生し、安定し
た可逆サイクルと 99% 以上の高効率が 2 サイクル目以降で得られた。これらの
結果は、大きな可逆容量にはNa金属のめっき/剥離が含まれていないことを示す。
これは通常、一般的な電解質ではクーロン効率が非常に低くなるが、HCへの可逆
的な Na挿入に由来する。 HC-Zn の大容量がナノ細孔内の Naクラスター形成に
由来することを確認のため、ナトリウム化HC電極の特性評価を実行した。 図3c
は、元の状態、完全にナトリウム化された HC 電極、および完全に脱ナトリウム
化した HC 電極の ex situ SAXS パターンを示す。 元のサンプルで観察されたシ
ョルダー ピークの強度は、ナトリウム処理により減少し、その後、脱ナトリウム
処理により再び増加し、元の状態とほぼ一致する強度に戻る。ナトリウム添加サ
ンプルで観察されるピーク強度の減少は、ナノ細孔を満たす Na原子の挿入に起因
する、炭素マトリックスと細孔の間の電子密度コントラストの減少に起因すると
考える。Na クラスターの充填は これは図 3d に示す現場外広角X線散乱 (WAXS)
パターンと、Na 金属結晶のシミュレートされた散乱パターンでより明確に実証
された。元のサンプルのパターンで ≈q = 1.5、3、および 5.2 Å−1 に位置する幅
広いピークは、HC のグラファイト状構造の 002、100、および 110 回折に対応。
ホスト炭素構造に対応するピークに加えて、金属 Na 結晶に起因すると考えられ
るナトリウム化 HC の追加の散乱ピークが観察された。これらの SAXS および
WAXS の結果は、Morikawa らによって報告された WAXS データと一致する。
Stratfordらが観察したX線全散乱は、HC-Znの大容量が確かにナノ細孔内のナト
リウムクラスターの形成によるものであることを確認している。 ナトリウムの
挿入および抽出中の WAXS および SAXS パターンの完全に可逆的な変化は、これ
らのナノ細孔内での Na クラスターの電気化学的形成および除去が高度に可逆的
なプロセスであることを証明しています。 HC-Zn は Na セルで優れた性能を示
したので、カーボンマトリックス中の ZnO の量を希釈および強化することで
HC-Zn をさらに最適化した。 (次回継続掲載)

【掲載論文】
Journal Reference: 1.Daisuke Igarashi, Yoko Tanaka, Kei Kubota, Ryoichi Tatara, Hayato
Maejima, Tomooki Hosaka, Shinichi Komaba. New Template Synthesis of Anomalously
Large Capacity Hard Carbon for Na‐ and K‐Ion Batteries. Advanced Energy Materials,
2023; DOI: 10.1002/aenm.202302647
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※東京理科大学は面白い研究成果を出している。その1つを要点のみ掲載しておく。

トマトジュースでユーグレナを培養
食用に適した、安価で簡単なユーグレナ培養方法の開発

11月16日、東京理科大学らの共同研究グループは、食品として注目されるユーグレナ(
Euglena gracilis)の培養方法について研究を行い、市販のトマトジュースを水で希釈し、
ユーグレナの生育にで、従来の培地必須のビタミン2種(B1、B12)を添加したのみの培
地で、従来の培地と同じくらい良好にユーグレナを培養できることを見出した。
【要点】
1.微細藻類ユーグレナは各種栄養素を豊富に含み、栄養補給・健康増進を目的とした
 新しい食品として注目されています。しかしその製造には多くの工程が必要。
2.市販のトマトジュースを水で希釈し、必須ビタミン2種(B1、B12)を添加したのみの培地
 で、ユーグレナを良好に培養できることを見出しました。これにより、糖源の利用を想
 定した場合の培地コストを、試薬グレードの材料を利用した場合の1/6にまで抑えるこ
 とができ、また過剰生産されたトマトを有効利用することが可能となる。
3.簡便かつ安価な本手法は、食品としてのユーグレナの利用範囲拡大に寄与すると
 期待される。


【展望】
ユーグレナは豊富な栄養素と機能性成分を含むため、食品の栄養素の一部をユーグレ
ナに変換することで、簡単に食品の栄養強化を図ることができる。これにより、従来より
も低コストで栄養補給や健康増進に貢献することが期待されつ。また、ユーグレナは光
合成の際に二酸化炭素を吸収するのでカーボンニュートラルで持続可能な食料生産法と
して、SDGsの目標13『気候変動に具体的な対策を』目標2『飢餓をゼロに』にも貢献でき
るのではないかと思う。また、宇宙開発における食料の生産技術としても貢献する可能
性がある。
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光合成生物の危機対策進化過程を解明 
11月11日、国立遺伝学研究所(NIG)は,光合成を行なう真核生物が光毒から危
機対応
策を進化させてきた進化過程を明らかにした。
細胞内で光合成を行う真核生物は何度も独立に発生したが、光合成の毒性に対処
するために、どの系統の生物もほぼ同じ機構を進化させたことが明らかになる。
さらに、光合成生物を細胞内に共生させ、葉緑体として利用するための機構は、
藻類を捕食する段階から一時的な藻類細胞または葉緑体の保持の段階を経て漸進
的に進化したことも示唆。 


図.シアノバクテリア共生体起源の1次葉緑体、真核藻類の共生体起源の二次葉
 緑体を持つ単細胞生物と藻食、光共生性、盗葉緑体性の単細胞生物の例。
Taming the perils of photosynthesis by eukaryotes: constraints on endosymbiotic
evolution in aquatic ecosystems 

Shin-ya Miyagishima
Communications Biology (2023) 6, 1150
DOI:10.1038/s42003-023-05544-0

光バイオ触媒でアンモニアと水素を同時合成
11月16日、九州大学らの研究グループは、アンモニアは肥料や⼯業原料として広
く使われる有⽤な化学薬品で、近年はグリーン⽔素の運搬の媒体としても期待さ
れています。従来は、400℃、200 気圧以上という⾼温、⾼圧下で、窒素と⽔素
を⽤いて合成されており、エネルギー多消費のプロセス。⼀⽅で、ニトロゲナー
ゼという酵素では、常温、常圧下で、アデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源と
してアンモニアを合成しますが、反応速度が⾮常に遅いことが課題です。今回、
シアノバクテリア内のニトロゲナーゼに、光触媒を⽤いて還元した電⼦伝達媒体
のメチルビオロゲンを⽤いて、直接、電⼦を輸送することで、⼤気中の窒素と⽔
から直接、アンモニアを⽣体触媒に⽐べて80 倍以上の速さで合成できることを
⾒出しました。
九州⼤学のカーボンニュートラル国際研究所(三井化学カーボンニュートラル研
究センター)の⽯原達⼰教授、Kosem Nuttavut 特任助教、⼤﨑穣特任助教らの研
究グループは、従来のシアノバクテリアの⽣体機能の⼀部の代謝系を、光触媒を
⽤いて代替することと、⽣成したアンモニアの代謝を抑⽌することにより、常
温、常圧下で窒素と⽔からアンモニアと⽔素を合成することを可能としました。
今回の成果は、現在、環境保全の観点から要望されているカーボンニュートラル
な社会の達成のために再⽣可能エネルギー起源のグリーン⽔素の利⽤の促進のみ
でなく、肥料などに使われるアンモニアの温和な条件での合成を通して持続可能
な社会の実現に役⽴ちます
【要点】
1.肥料の合成やグリーン⽔素の輸送媒体としてアンモニアが期待されているが、
 アンモニアの合成時に厳しい反応条件下での合成となり、多くのCO₂の発⽣を伴
 う。⼀⽅で、バイオ触媒では温和な条件で合成できるが、⽣成速度が遅い。
2.当該研究では⽣体触媒の機能の⼀部を光触媒と電⼦伝達系を組み合わせるこ
 とで、改善し、光バイオ触媒による常温常圧での窒素と⽔からアンモニアと⽔
 素の合成に成功した。
3.今回の成果は、再⽣可能エネルギーの普及に貢献し、カーボンニュートラル
 ・エネルギー社会の実現に寄与するとともに、⾷糧⽣産に必要不可⽋な肥料の
 価格の低下などに寄与し、持続可能な社会の実現に貢献できる。





   風蕭々と碧い時

港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ 1975.4.20
オリコンチャートの週間順位で5週(1975年6月23日 - 7月21日付)に渡り1位を
獲得。1975年のオリコン年間ヒットチャートでは第5位にランクインし、さらに
大晦日の『第26回NHK紅白歌合戦』に初出場をした。同年開催の第17回日本レコ
ード大賞では、企画賞を受賞


 



東京ブギウギ   笠置歌シヅ子
「東京ブギウギ」(とうきょうブギウギ)は、鈴木勝の作詞、服部良一の作曲、
笠置シヅ子の歌唱により、1947年発表(ただしレコード発売は翌年1月)されて
ヒットしたブギのリズムによる日本の歌謡曲。「青い山脈」「リンゴの唄」など
と並んで、終戦直後の日本を象徴する曲

●  今夜の寸評: 

 

 

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