彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せて生まれたキャラクタ。
どんぐりの袴大小七五三 百合山 羽公
百合山 羽公(1904年9月21日 - 1991年10月22日):俳人。静岡県浜松生。
1923年、「ホトトギス」の句座に参加、「破魔弓」(「馬酔木」の前身)に入会。
1929年、24歳で「ホトトギス」巻頭。20年来の句友である相生垣瓜人と共宰る。
1974年、句集『寒雁』ほかで第8回蛇笏賞受賞。句集は他に『故園』『樂土』。
『由来』
1681年12月24日に館林城主である徳川徳松(江戸幕府第5代将軍である徳川綱吉
の長男)の健康を祈って始まったとされる説が有力である。現在では全国で盛ん
に行われているが、江戸期は関東圏における地方風俗であった。やがてこの儀式
は京都、大阪でも行われるようになり、だんだんと全国に広まっていったという。
via Wikipaeia
Anytime Anywhere ¥1/kWh era
【再エネ革命渦論 192 アフターコロナ時代 185】
● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
特異点真っ直中 ㊿+31
2028年,光通信機器・デバイス市場62兆円超に
11月9日、富士キメラ総研は,データセンター間接続や通信キャリアの光インフ
ラ構築,欧米におけるFTTxの整備,6G通信基地局の設備投資の伸びなどにより,
今後の需要増加が期待される光通信関連機器・デバイスの世界市場を調査し,そ
の結果を「2023 光通信関連市場総調査」にまとめた。この調査では,光通信関
連機器5品目,光コンポーネント・デバイス(光コンポーネント,光アクティブ
デバイス,光パッシブデバイス,光ファイバー・光回路デバイス,その他デバイ
ス)36品目,光測定器・関連機器4品目の市場について,現状を調査し,将来を
予想するとともに,関連アプリケーションの市場についても捉えた。
2023年はFTTxやデータセンターへの投資が落ち込んでいることから,伸びは鈍化
するとみられるが、中長期的にはデータセンターへの投資回復,6G通信の基地局
投資の活発化などに伴う投資増加が期待されるとともに,高速対応製品の比率上
昇が伸びを後押しすることなどから,2028年の市場は60兆円を突破すると予想。
光通信関連機器は,光伝送装置,ルーター,L2・L3スイッチ,PONシステム,サー
バーが対象。特にサーバーの規模が大きいという。現在,一時的にデータセンタ
向けが落ち込んでいるものの,2024年以降の投資回復,また,高価格なAIサーバ
の需要増加により,引き続き市場をけん引するとみる。 光伝送装置はデータセ
ンタ相互接続向け,L2・L3スイッチはデータセンター内通信向けが増えており,
継続的な伸びを予想する。PONシステムは,2023年は中国を中心に需要が落ち込
んでいるが,欧米を中心にG-PONの導入,10G-PONへの移行需要は大きく,2024年
以降は中国市場の回復とともに堅調な推移が期待されるという。
光コンポーネントは,出荷数量の増加に加え,高速化に対応するため各光トラン
シーバーなどの製品単価が上昇していることで市場が拡大している。データセン
タでの通信高速化を背景に100G以上のクライアント側光トランシーバーが,100G
未満からの置き換えを受け伸びるとみる。また,2022年頃から800Gのクライアン
ト側光トランシーバーやAOC(アクティブ光ケーブル)の本格採用も始まっている。
光アクティブデバイスは,2023年は規模の大きいLDチップ(DML・EML)が過剰在
庫などを要因に落ち込んでいるが,データセンター向けの回復などにより2024年
は伸びに転ずる。
また,光トランシーバの多レーン化,高速LDの採用増加が中長期的な伸びの追い
風になるとする。 HB-CDMやCOSA・IC-TROSAは次世代のライン側光トランシーバ
に搭載されるため,データセンター相互接続で使用される400G ZRなどを中心に
伸びが期待されるとしている。光パッシブデバイスは,ライン側で用いられるWS
Sモジュールが好調である。
レンズ関連は,2023年はボールレンズや非球面レンズは苦戦しているが,プラス
チックレンズはAIサーバーでの需要が増えている。中長期的には,シリコンレン
ズの採用拡大やSiPhやCo-Packaged Optics(CPO)採用の影響がポイントとなる。
光ファイバ・光回路デバイスでは,規模の大きい光ケーブルはデータセンタ向け
が伸び悩んでいるため,本格的な需要回復は2024年以降と予想される。光ファイ
バは,2023年は中国のFTTx需要の減少や,データセンタ向けの投資減により縮小
するとみられるが,2024年以降は投資回復により堅調な伸びが期待される。
POFは,通信や装飾・照明,センサなどで採用されており,需要増加が続いてい
る。光コネクターはデータセンターなどインフラ投資の回復により,2024年以降
は順調に伸びるとみられるという。その他のデバイスには,仮想化技術や生成AI
などでの採用がけん引して好調な品目がみられるとしている。 デジタルコヒー
レントDSPは400G ZRなどの小型製品への搭載開始や,800G LRなどクライアント
光トランシーバーへの採用開始により需要が増えるとみられるという。PAM用
ICは800Gなど,高速光トランシーバーやAOCなどでの採用増加により伸びている。
イーサネットスイッチチップは,サーバーとつなぐ下部階層のスイッチ機器の増
加により,スマートNICは増大するCPUへの負荷を低減するためのオフロード処理
ニーズが高まっているため,堅調な伸びが期待されるとしている。 光測定器・
関連機器は光デバイスやコンポーネントの市場と連動している。光スペクトラム
アナライザー,オシロスコープ,BERTは主に光トランシーバーの製造ライン検査
やR&Dに用いられるため,光トランシーバーの生産動向や高速光トランシーバの
開発状況などの影響を受け,2023年の市場は縮小を予想する。2024年以降は横ば
いで推移するとみられるという。 このうち光ファイバーは,2022年は,前半はFT
Txやデータセンター向けの順調な設備投資を受けて好調だったが,後半は投資が
落ち着いたことから需要は減少した。新型コロナウイルス感染症流行時の通信量
増大を受けて,通信キャリアをはじめとした多くのユーザが在庫確保を進めたこ
とから市場在庫が過剰になっていた面があったものの,輸送費の増加や原材料価
格の高騰を受けて製品価格が上昇したことにより,市場は拡大した( 以下、後略)。
光合成の電子受容体量の調節機構を解明
11月13日、電力中央研究所らの共同研究グループは、光合成の電子受容体量を調
節する仕組みを世界に先駆けて明らかにした。光エネルギーを化学エネルギーに
変換する光合成は、植物の成長の根幹となる現象です。光エネルギーによって葉
緑素(クロロフィル)から取り出された電子は受容体(NADP+)に受け渡されて
NADPHという物質で一時的に保存されます。この受容体量が光環境によって変化
する現象は1959年に発見されましたが、その生理現象の全体像はいまだに解明さ
れていない。光が当たる昼間の葉緑体内部で受容体の合成が促進される現象が、
葉緑体ストロマ内のpH制御によって調節される仕組みを明らかにした。
図1.光合成による光エネルギーの保存
光合成では葉に光が当たると葉緑体内で電子伝達経路が駆動し、受容体であるNADP+
が還元されてNADPHが生産されます。このNADPHが還元力として使用されることでC
O2を固定し、糖やデンプンが合成される。
【要点】
1.葉緑体内部の受容体量の変動と合成活性特性の計測
図2.無傷葉緑体単離の様子(左)と葉緑体破砕液に含まれる電子受容体合成
活性のpH依存性(右) 葉緑体に照射する光強度に比例して合成活性が高まると
共に、反応液のpHがアルカリ性の時に活性が増大するという結果が得られた。
2.電子伝達経路と受容体合成の関係を解明
図3.サイクリック電子伝達活性と受容体現象の関係
3.サイクリック経路と受容体分解の関係を解明
図4.本研究の成果から考えられる光照射時の受容体量調節の仕組み
光によって電子伝達経路(ETC)が駆動することで受容体合成酵素が活性化し(ETC
からNADKへの矢印)、この時にサイクリック電子伝達経路(CET)の働きによってp
Hがアルカリ性に調節されることで受容体合成が促進され(CETからNADKへの矢印)、
受容体分解が抑制されます(CETからNADPPへのTバー)。受容体が増加すること
で光エネルギーを化学エネルギーとして保存する経路(LET)が充分に駆動され
るようになり光合成出力が高まります(LETからの矢印)。
【概要】
光合成において葉緑素(クロロフィル)から取り出された電子は受容体(NADP+)
に受け渡されてNADPHという物質で一時的に保存される。この受容体量は光環境に
よって変化するが,その全体像は解明されていない。NADP+は細胞に広く存在し,
光合成以外の反応にも利用されるため,研究グループは光に応答した受容体の変
動が葉緑体で起こると証明した。また,受容体の合成酵素の活性には光が必要で,
アルカリ性のpHで活性が増大することを明らかにした。光合成の電子伝達経路は,
受容体がなければ電子が渋滞して動けないが,サイクリック電子伝達経路という
もう一つの経路が電子を受容体に渡すことなく系内を循環し,葉緑体内のpH勾配
を光がある時の状態に保ちATPを合成する。阻害剤で全ての電子伝達を止めると
光があっても受容体は合成されない一方,サイクリック電子伝達経路を阻害した
時にも受容体の合成が抑制された。また,サイクリック電子伝達経路を欠損する
変異体では受容体合成が顕著に遅延し,光に応答した速やかな受容体の増加に
はこの経路の駆動によるpH勾配が重要と分かった。植物の葉に光を当てた後に遮
光すると,受容体量は徐々に減少する。この時,遮光前に強光を照射してサイク
リック経路を亢進すると受容体の減少は遅延した。同様に,この経路の亢進変異
体では受容体の減少が遅延し,欠損変異体では減少が加速した。また,受容体の
分解活性は弱酸性から中性のpH条件で活性化し,アルカリ条件では消失していた。
従って,遮光によって生じる葉緑体内部のpH変化と受容体分解酵素の活性特性が
一致することが分かった。さらに,遮光時に葉緑体内のpHを調節するイオン輸送
体の欠損変異体でも同様の遅延が観察されたことから,葉緑体内部の受容体量が
光環境に依存したpH変化によって調節されることがわかった。
以上から,光によって電子伝達経路が駆動することで葉緑体ストロマのpHが受容
体を合成しやすい環境に調整され,受容体量が増加して光合成出力が増大すると
考えられた。光が遮られた環境ではサイクリック電子伝達経路によってpHが維持
され,数分間は次の光まで待機するが,循環可能な電子が尽きると,葉緑体スト
ロマのpHは受容体を分解しやすい環境に調整されて減少することが分かってきた。
研究グループはこの知見が,光合成出力の改善によるバイオマス増産のみならず
有害植物の成長抑制に資する新たな農薬開発にもつながる重要な成果である。
図5.間質 pH 条件による NADP プール サイズ調節の仮説モデル
暗所では、NADK (NAD+をリン酸化) は不活性になり、さらに、間質の pHもNADK
活性にとって好ましくない。 さらに、間質のpHはNADPP 活性 (NADP+を脱リン酸
化) にとって比較的有利。その結果、葉緑体のNADPプール サイズは、暗所では
基礎レベルになる。照射されると、CETは最初にプロトン(H+)ポンピングによっ
て、NADK活性には有利(CETからNADKへの矢印)、NADPP活性には不利(CETからNADPP
へのTバー)である間質pHを調整するように駆動され、NADKはさらに調整される。
光化学電子伝達連鎖 (ETC) 依存性の酸化還元修飾によって活性化されます (ETC
から NADK への矢印)。 これらの修飾により、NAD+から NADP+へのリン酸化が
促進され、NADPプール サイズが増加し、LETが優先的に駆動される (見やすくす
るためにLETからNADKへの矢印は省略されている)。 LETとCETはしばらく明るい
条件下で駆動し続け、十分な量の電子プールが間質に蓄えられるようにする (LET
からNADP酸化還元変換への矢印)。一時的なシェーディングの下では、LETが停止
し、PSIIからの電子伝達の欠如により光化学によってNADPHが生成されなくなり
、NADP+レベルが増加。 間質内の電子プールの還流は数分間 CETを駆動し続け、
間質の pHをNADPP活性にとって好ましくない状態に保つ。 間質の電子プールが
枯渇すると、CETも停止し、間質のpHが NADPP活性に有利になり、NADP+が NAD+
に変換され、NADPプールのサイズが徐々に減少する。
【展望】
これまでに、光合成活性の改善や最適化のためのシミュレーションでは、電子受
容体の変動はあまり考慮されてなかった。受容体の量は、実験室内の光環境によ
り変動するため、適切な評価が困難であったが、変動する光環境に応答した受容
体増減の仕組みが解明され、光合成出力の改善によるバイオマス増産のみならず
有害植物の成長抑制に資する新たな農薬開発にもつながる。また、光合成活性の
制御要因の一つとするこのように、受容体量調節仕組みに関与する酵素遺伝子な
ど、未だ明らかになっていない構成要素を同定することは、新たな植物科学理論
に基づく成長制御技術の開発に寄与すると考えられるため、さらに詳しく研究を
進めてその機能を解明する。
【関係技術情報】
掲載誌:Nature Communications
原 題:Adjustment of light-responsive NADP dynamics in chloroplasts by stromal pH
D O I :10.1038/s41467-023-42995-9
※将来的には、光合成成長自動制御及び遺伝子編集(農薬)技術への展開による
惑星制御科工学(農林水産業振興)への貢献に繋がるものと考える。
ステレオビジョンで農作物サイズを屋外計測
11月9日、岡山大学発ベンチャーのビジュアルサーボは,AI手法を用いた画像処理
方法により,野菜や果物などの任意不定形対象物でも,位置・寸法の計測を可能
にする手法を開発。
【概要】
空間計測センサーとして市販され,一般に用いられている画像情報と距離情報を
組み合わせたRGB‐D画像を用いる空間計測手法は,距離計測に赤外線が用いられ
ている。太陽光に含まれる赤外線が外乱として働くためRGB‐D画像を用いた屋外
での計測は,難しいという問題があった。岡山大学発ベンチャーのビジュアルサ
ーボは,ステレオビジョンを用いた空間計測について研究を続け,任意対象物の
3次元位置姿勢を計測するコンピュータビジョン構築に成功し,泳ぐ魚の寸法計
測などを行なってきた。この画像計測方法は,左右複眼カメラに同じ対象物が写
っていれば,その位置・姿勢・寸法の計測が可能であるという特長があり,その
アイデアは,ビジュアルサーボ所有の特許で権利化されている。今回,AI手法を
用いた画像処理方法により,野菜や果物などの任意不定形対象物でも,位置・寸
法の計測が可能となった。農業用ロボットは,屋外の光環境が変化しても計測結
果が変化しない計測特性が求められる。性能を確認するために野菜,果物,日用
品を16種用意し,寸法を実測すると共に,屋外の日向(照度約52,000 lx)および
日陰(1,530 lx)の光環境で対象物の寸法と3次元位置を計測し,日向と日陰の照
度差に影響されない位置・寸法の計測を実証した。上記の結果より,果物・野菜・
日用品の寸法と3次元位置を屋外で非接触での空間計測が可能なこと,寸法計測
結果は,屋外の日向・日陰の照度環境に影響されないこと,補正後の寸法平均誤
差は1mm以下,標準偏差は3mm程度であることが分かった。研究グループは,収穫
時に果物の熟度などの計測・寸法に基づく仕分け作業なども可能な多機能ロボッ
トの開発を進め,2023年度中に農場でのフィールドテストを開始する予定。
脚注1.時変光環境外乱
光の入射角度や照度などの光環境の時間的変化は、画像処理装置への入力画像を
変化させる。この入力画像の変化は、コンピュータ内に予め記憶された基準画像
と入力画像の差を乖離させるため画像処理結果に誤差を生じさせる。また基準画
像と同程度の光環境で画像が撮像されることを前提とした画像処理プログラムの
正常動作に悪影響を与え、外乱として作用する。このような光環境の時間的変化
を、時変光環境外乱と呼ぶ。
【関連特許】(審査請求前)
1.特開2023-152481 突起状面マーカー、並びに該突起状面マーカーを用いた水
中ロボットの誘導システム 株式会社ビジュアルサーボ
【要約】
下図2のごとく、面マーカーMは、複数のコーン体3と、該コーン体3をその上
面に固定・載置する略平面状の格子体4を備え、コーン体3は、その頂点が上方
側に、その底面が格子体4側に位置するように、格子体4に固定・載置され、か
つ格子体4上における複数コーン体3の配列は、上面視で不規則なランダム状に
設定されるとともに、コーン体3は、その上下方向に貫通する複数の貫通穴7を
有する略面状に構成され、面マーカーMが設置される位置は、少なくとも地球基
準の緯度及び経度に相当する位置情報と関連付けられている、自律型水中ロボット
を目標地点までスムーズかつ効果的に案内・誘導することに寄与し得る、ロボッ
ト航走位置に関する位置情報を提供する優れた面マーカーを提供することを目的
とする。
【符号の説明】
1・・・ドッキング装置 2・・・発光立体3次元マーカー(ドッキング用)
3・・・コーン体(錐状突起体) 4・・・格子体(基台部) 7・・・貫通穴
8・・・支持フレーム体 11・・・下方複眼カメラ(撮像手段) 13・・・前
後進・旋回スラスター(航走推進手段) 15・・・コンピュータ(制御手段)
40・・・ハニカム体(基台部) S・・・誘導システム V・・・自律型水中ロ
ボット M、M1~Mn・・・突起状面マーカー T・・・充電ステーション(ド
ッキング対象物)
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マルクス解体 プロメテウスの夢とその先
斎藤幸平/ 竹田真登
講談社(2023/10発売)
資本主義をこえていく、新時代のグランドセオリー!
人新世から希望の未来へ向かうための理論。 英国で出版された話題書
Marx in the Anthropocene(ケンブリッジ大学出版、2023年)、待望の日本語
版! いまや多くの問題を引き起こしている資本主義への処方箋として、斎
藤幸平はマルクスという古典からこれからの社会に必要な理論を提示してき
た。本書は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論から、プロメテウス主義
の批判、未来の希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語るこれまで
の研究の集大成であり、「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる
新たな議論を提起する書。
目次
第一部 マルクスの環境思想とその忘却
第一章 マルクスの物質代謝論
第二章 マルクスとエンゲルスと環境思想
第三章 ルカーチの物質代謝論と人新世の一元論批判
第二部 人新世の生産力批判
第四章 一元論と自然の非同一性
第五章 ユートピア社会主義の再来と資本の生産力
第三部 脱成長コミュニズムへ
第六章 マルクスと脱成長コミュニズム MEGAと1868年以降の大転換
第七章 脱成長コミュニズムと富の潤沢さ
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本日は先回のつづき。
まえがき
しかし、一元論は失敗したプロメテウス主義を人新世に蘇らせ、自然へのさ
らなる介入を正当化することになりかねない。このような「地球構築主義 ge-
oconstructivism」のアプローチは、人新世においてはすでに自然に対する人間
の介入が多くなり過ぎていると主張する(Ncyray: 2019)。それゆえ、環境破
壊を恐れて介入を止めようとする訴えは無責任であり、より酷い大惨事を招
くというのだ。地球構築主義によれば、人間の解放につながるかはともかく、
人類生存の唯一の道は、惑星全体をさらに徹底的に改変することによる地球
のスチュワードシップしかないという。この新しいプロメテウス主義は、ポ
スト資本主義の未来像を刷新しようとするマルクス主義者たちにも影響を与
えている(Mason 2015; Smicek and Williams 2016; Bastani 2019)。そこで本書の
第二部では、マルクスの「方法論的二元論」と「物質代謝の亀裂」を擁護し
ながら、入新世におけるさまざまな一元論とプロメテウス主義に応答してい
きたい。
現代の一元論とプロメテウス主義の理論的限界を批判的に検討したうえで、
本書の第三部では晩期マルクスのポスト資本主義像をエコロジカルな視点か
ら再検討していく。MEGA研究によって新たに浮かび上がってくるのは、
マルクスが1868年以降、自然科学、人文科学、社会科学の学際的研究を
通じて、理論的な大転換----アルチュセール的な意味での「認識論的切断」
Ahthusser 2005)----を成し遂げたという事実だ。マルクスが最終的に獲得し
たポスト資本主義像は、「脱成長コミュニズム」と呼ぶべきものなのである。
脱成長コミュニズムの理念は、「資本主義リアリズム」を克服することを可
能にしてくれる。晩期マルクスに立ち返ることでこそ、人新世における未来
社会の積極的な展望を提示することができるようになるのだ。これこそまさ
に、今日私たちがマルクスを読むべき理由である。
しかし、もし実際にマルクスが脱成長コミュニズムを提唱していたのなら、
なぜこれまで誰も指摘しなかったのか、そしてなぜ、マルクス主義は生産力
主義的な社会主義像を支持してきたのだろうか、と疑問に思うかもしれない。
だが、実はその理由は簡単で、「マルクスのエコロジー」が長い間無視され
てきたからである。
したがって、マルクスの脱成長コミュニズムを再構成するためには、まず
マルクスのエコロジーの周緑化の歴史を系譜学的にさかのぼる必要かある。
もちろん、この系譜はマルクス自身から始まる。第一章では、MEGAで
公刊された自然科学に開するマルクスのノートを参照しつつ、「物質代謝の
亀裂」の三つの次元と技術によって媒介される地球規模での時間的・空間的
「転嫁」を展開していく。資本蓄積にとって自然の収奪が必須の前提だとい
う洞察は、その後、ローザ・ルクセンブルクによって深められる。彼女は『
資本蓄積論』において、資本主義の周縁部における人々や環境に対する破壊
的作用を物質代謝論を用いて問題視していたたのだ。
とはいえ、ルクセンブルクは「物質代謝」という概念を取り上げる際、そ
れをマルクス批判として定式化したのだった。彼女の批判は、マルクスの物
質代謝論が当時でさえも十分に正しく理解されていなかったことを示唆して
いる。このような誤解は、マルクスの著作の多くが未公刊であり、ルクセン
ブルクもそれらを利用できなかったため、仕方のない側面もある。しかし、
それだけが原因ではなく、労働者階級のための体系的な世界観として「マル
クス主義」を確立しようとしたエングルスのマルクス解釈に端を発している
のだ。
そこで、第二章では、マルクスの物質代謝概念がどのように歪められてい
ったかを辿るために、エングルスの編集した『資本論』とMEGAで公刊さ
れたマルクスの経済学草稿、および抜粋ノートとを比較し、エングルスがマ
ルクスの物質代謝論をどのように受容したかを明らかにしていく。この考察
によって、マルクスとエングルスの間にはとりわけ物質代謝の扱いに関して、
微妙ではあるが、しかし理論的には決定的となる相違かおることが判明する
だろう。そして、まさにこの違いのせいで、エングルスはマルクスの環境思
想を正しく理解することができず、物質代謝の概念は、マルクスの死後に周
縁化されることになってしまったのだ。
こうした周緑化の過程は、1920年代の西欧マルクス主義の理論的展開に
もはっきりと記録されている。よく知られているように、西欧マルクス主義
は、マルクスとエングルスを厳密に区別して両者の理論的差異を強調してい
た。その際には、エングルスが弁証法を自然の領域へ不合理に拡張したこと
が、ソ連正統派マルクス主義の機械論的社会分析の原因であると非難された
のである。しかし、エングルスに対する厳しい批判にもかかわらず、西欧マ
ルクス主義者たちは、マルクスが自然についてほとんど論じていないという
本的な前提をソ連正統派マルクス主義と共有していた。まさにそのような思
い込みによって、西欧マルクス主義はマルクスの物質代謝論と環境思想の重
要性を無視する結果になってしまったのである。
けれども第三章で論じるように、西欧マルクス主義の創始者であるルカー
チは、西欧マルクス主義の一面性を反省し、物質代謝の概念に着目した例外
的な人物であった。たしかに『歴史と階級意識』のなかで、ルカーチはエン
グルスの自然の取り扱いを批判し、西欧マルクス主義に絶大な影響を与えた。
だが、ルカーチは『追従主義と弁証法』という1925-26年に書かれた
末発表草稿において自然の問題に取り組み、それを物質代謝論として展開し
たのである。この草稿は長い間知られていなかったため、『歴史と階級意識
』におけるルカーチの意図は正しく理解されず、理論的一貫性の欠如や曖昧
さを繰り返し批判されてきた。しかし『追従主義と弁証法』を読めば、ルカ
ーチの人間と自然の関係の取り扱いには、社会的なものと自然的なものを区
別するマルクスの「方法論的二元論」との連続性かあることが判明する。ル
カーチの物質代謝論は「形態」と「素材」が織りなす「非デカルト的」二元
論であり、それは、現代の一元論とは一線を圃す資本主義批判を可能にする。
にもかかわらず、ルカーチの物質代謝論はソ連正統派マルクス主義と西欧マ
ルクス主義の双方によって拒絶され、ここでも「マルクスのエコロジー」は
周縁化されてしまったのである。その結果マルクスの方法論的二元論が今日
でも正しく理解されていないため、物質代謝の亀裂という概念は依然として
さまざまな批判に晒され続けている。第四章では、これらの批判に応答する
ために、ジェイソン・w・ムーアの「世界-生態 world-ecology」や、二-ル
・スミスとノエル・カストリーの「自然の生産」に代表されるマルクス主義
版の一元論を取り上げる。両者のアプローチには明確な理論上の違いはある
ものの、これらの一元論的な資本主義理解が示すのは、マルクスの方法論に
関する誤った理解が、生産力主義という問題含みの帰結を生み出すというこ
とである。
第五章で論じるように、マルクスの方法論に対する無理解は、近年のプロ
メテウス主義の復権にもつながっている。現代のユートピア・マルクス主義
者は、マルクスの『経済学批判要綱』を引き合いに出して、情報通信技術(
例えば人工知能(AI)、シェアリング・エコノミー、モノのインターネット
(IIT))と完全自動化を組み合わせた「第三次産業革命」(Rifkin 2014)
によって、人間は労働の苦役から解放され、資本主義の市場メカニズムを廃
棄できると主張する。けれども、技術が約束する夢のような未来社会を吹聴
しながらも、その本質は、古いプロメテウス主義の反復に過ぎない。この根
強いプロメテウス主義と決別するためには、1850年代に書かれた『要綱
』ではなく、1860年代になってから使われるようになった「実質的包摂
」 概念に着目する必要がある。この概念に着目することで明らかになるの
は、資本主義のもとでの技術発展に対するマルクスの見方に大きな転換があ
ったという事実である。そのことがはっきり現れているのが、『資本論』に
おける彼の「資本の生産力」に対する批判である。この批判によってマルク
スは、資本主義における生産力の発展が、必ずしもポスト資本主義への物質
的基盤を準備するものではないとはっきりと認識するようになったのである。
しかし、生産力の将来的発展に対する楽観的な支持を撤回したことによっ
て、マルクスは新しい困難に直面することになった。生産力の増大が資本主
義のもとで果たす進歩的な役割に疑問を呈し始めると、マルクスは必然的に
自らのそれまでの進歩的な歴史観に異を唱えざるをえなくなったからだ。第
六章では、晩期マルクスにおけるこの自己批判の過程を再構築していく。こ
の理論的危機に着目することによってのみ、なぜマルクスが『資本論』の続
刊を完成させようとするなかで、自然科学と前資本主義社会を同時に研究し
なければならなかったかが明らかになるだろう。しかも、これら2つの領域
を集中的に研究することで、ついにマルクスは1868年以降に、もう1つ
の決定的なづフダイムシフトを経験することになる。1881年にマルクス
がヴェラ・ザスーリチに送った手紙はこうした観点から再解釈されなくては
ならない。この手紙には彼の非生産力主義・非ヨーロッパ中心主義の未来社
会像が刻印されており、それは、「脱成長コミュニズム」として特微づけら
れるべきものなのである。
多くの人は脱成長コミュニズムという本書の結論に驚くに違いない。これ
まで、マルクスのポスト資本主義の展望をこのような形で提示した人物は誰
もいなかったからだ。しかも、脱成長とマルクス主義は長いあいだ敵対関係
にあったのでなおさらだ。しかし、もし晩期マルクスがラディカルに平等で
持続可能な社会を求めて、定常経済や脱成長の理念を受け入れたとしたら、
両者の間には新たな対話の空間が生まれる。そのような新たな対話を実りあ
る形で始めるために、最終章では『資本論』や他の著作を脱成長の観点から
再検討していく。つまり、第七章では、『資本論』を越えて先に進むための
試みとして『資本論』を再解釈していく。そうすることで、これまでは生産
力主義の表明だと見なされてきた箇所についても、まったく異なった新しい
解釈を提示できるようになるだろう。とりわけ『ゴータ綱領批判』における
「協働的富 genossenschamicher Reichtum」の持つ「ラディカルな潤沢さ」は、
ポスト稀少性経済における非消費主義的な新しい生活様式を示唆しており、
それこそが人類世における地球規模の環境危機を前にして、安全かつ公正な
社会を実現させるコミュニズムの基盤になるのである。
この項つづく
1978年8月5日 たそがれマイ・ラブ
大橋純子(1950.4.26~2023.11.9)
作詞:阿久悠、作曲・編曲:筒美京平
● 今夜の寸評: スウィングとシャッフル
スイングは、えばよく使われるのはジャズ。拍表だけでなく拍裏にもアクセント
をつけ演奏したり、タイミングをずらして前ノリ、後ノリを加える。跳ねるシ
ャッフルよりもややおとなしく、音を切らずに滑らかに繋いでノリを生み出す
イメージ。
シャッフルのリズムといえば3連符を均等配置した単純なもの。アメリカのブル
ース、カントリーをはじめ、なんと皆さんに馴染みのある日本の民謡・童謡で
も普通に使われる。拍表にアクセントを付けて縦に跳ねるように歯切れよく演
奏する、楽しい印象の曲が簡単に作れるのが特徴。