極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

四海竜王降臨

2023年12月30日 | びわこ環境



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せたせて生まれたキャラクタ。

     新しき年のはじめに思うこと ひとつ心につとめて行くかな
                          斎藤茂吉

                          開眼し目標新た大旦おおあした    
                                               


  四海竜王

辰は「振るう」という文字に由来しており、自然万物が振動し、草木が成長して
活力が旺盛になる状態を表す。辰は竜(龍)のことでもあり、十二支の中で唯一
の空想上の生きもの。東洋で権力・隆盛の象徴として親しまれていた龍は、身近
な存在であったことから干支に選ばれたと言われている。

『漢書』律暦志によると辰は「振」(しん:「ふるう」「ととのう」の意味)。
草木の形が整った状態を表しているとされる。後に覚え易くするために神話動物
の竜が割り当てられた。東南アジアではナーガ、ペルシャではクジラや大海蛇グ
ルン族の十二支では鷲、トルコでは魚やワニ等の動物に置き換えられている。
アンタレスを象徴。相場格言に「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ。戌
は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる」があ
り、辰年の相場は俗に上昇相場と言われる。

彦火火出見尊(初代天皇の神武天皇)は、竜の腹から生まれており、日本神話に
登場する高志(のちの越)の八岐大蛇、海神の八尋和邇の龍宮が、現在に伝わる。
もともと日本にあった自然を神として崇拝する信仰と中国から伝来した文様や中
国の竜とが融合して日本の竜とされる。四神・五獣と繋がり、特に青竜は古墳な
どに現在の姿で描かれて有名である。神話の八岐大蛇伝説と仏教の八大竜王伝説
などが習合した倶利伽羅竜、九頭竜、善女竜王(清瀧権現)伝承も有る。玄武と
も繋り北の越国など辺りの竜を黒竜。蜃気楼に竜宮・霊亀蓬莱山が現れて吉祥と
される。治水や灌漑技術が未熟だった時代には、河川の氾濫や旱魃が続くと、竜
神に食べ物や生け贄を捧げたり、その象徴が、神道では櫛名田比売(くしなだひ
め)などとして語られ、仏教では、高僧が祈りを捧げるといった雨乞いの行事が
行われた。神泉苑(二条城南)で空海が祈りを捧げて善女竜王(清瀧権現)を呼
び、雨を降らせたという。 また、剣は、炎の竜の化身とされており、八岐大蛇
から生まれた剣は天皇であることを表す神器として伊勢神宮(後に熱田神宮)に天
叢雲剣(のちに草薙剣)が祭られ、また、守り神とされた。中世ころには刀剣、
兜に竜をかたどり戦が行われた。 他にも水の神として、また戦いの神として各
地で民間信仰の対象として広まった。日本列島が水の国であることを象徴する。

  



浮体式洋上風力は、欧州でも未だ発展途上であり安全性や抵コスト化に多くの課題
 
地域に根差した再エネ導入の意義 


China's first deep-sea floating wind farm connected to power grid

事業性が伴わず遅れる日本 世界を席巻する中国洋上風力
地域に根差した再エネ導入の意義

主要各国で、野心的な導入目標による市場拡大と産業育成の競争が激化する中で、
我が国が浮体式洋上風力発電で世界をリードしていくためには、技術そのものだ
けでなく、海外よりも魅力的な市場環境を戦略的に創り、世界市場における存在
感を高め、事業者参入や民間投資意欲を助成することが極めて重要である。浮体
式産業戦略検討会を開催国は浮体式で海面に浮かぶ洋上風力発電の普及に向けて
目標導入量の設定や関連産業への支援策を取りまとめる方向で本格的な検討に入
った。


 Image: 2021 年9 月 浮体式洋上風力発電推進懇談会

 6月23日、「浮体式産業戦略検討会」を設置し、洋上風力発電の更なる導入を図る。
今後、普及拡大が期待される浮体式洋上風力に係る産業の在り方等を検討するこ
とを目的に有識者、業界団体、発電事業者、浮体製造事業者等で構成される 「浮
体式産業戦略検討会」を関催した。洋上風力発電の導入拡大に加えて、関連産業の
競争力強化、国内産業集積、インフラ環境整備等の相互の「好循環」 を実現する
ため、2020年7月に 「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を設置し
、同年12月に「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を策定している。このビジョンにお
いて、2030年までに10GW、2040年までに30から45GWの案件を形成する目標を設定
し、これまでに「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用促進
に関する法律」に基づき、着床式洋上風力を中心に合計 3.5GWの案件を創出して
いる。 



更なる導入を図るために、 普及拡大が期待される浮体式洋上風力に係る産業の在
り方等の検討を進める。国内の洋上風力発電は当面、浅瀬への設置が続くため欧
州で導入が進む「着床式」が採用されている。しかし、2030年後半になると 国内
の洋上風力発電の設置適地は、「
浮体式」でないと設置できない沖合の深い海域
へと移行する。浮体式では日本が先行しているというが、国内では長崎県五島市
沖や福岡県北九州市沖で、 すでに浮体式が稼働し、戸田建設や日立造船など日本
企業の技術が採用されている。浮体式洋上風力発電の技術は、欧州でも未だ研究
開発途上であり、様々な方式が検討されている。実証実績も限られていることか
ら、安全性やコスト面での課題や、メーカ各社が採用する様々な方式の優位性も
評価しきれていないのが実情である。国は、我が国の浮体式技術で世界をリード
していくと息巻くが、取り組む企業にとって世界市場で戦っていくためには、コ
スト競争の壁が立ちはだかる。



世界から大きく遅れる日本の実情

世界風力会議(GWEC:Global Wind Energy Council)が3月に発表した2022年風力発
電年間報告書(Globa1 Wind Report 2023)によ ると、洋上風力の導入量は累計で64.3
GW(2021年末55.5GWから+16%)、新規は8.8GW/年(2021年21.1GW/年から-58%)と
なっている。中国で2021年の洋上風力買取り優遇締め切りへの駆込み需要が終わ
り、洋上新規導入量はこれまでのペースに戻っている。
洋上風力では、累計・新規共に中国が40%以上を占めて世界一になっている。洋上
風力の累積導入量のTop5は、中国31442MW(48.88%)、英国13918MW(21.64%)、ド
イツ5,055MW(12.52%)、オランダ2829MW(4.38%)、デンマーク2308MW(3.59%)と
続き、日本は累積4804MWで世界の0.5%、新規は233MW/年で世界の0.3%
とともに16位以下というのが実態である。

実績で勝る中国、 欧米勢は着実に技術革新

日本は2030年、40年時点での導入目標は示しているが、各海域の事業構想や事業
投資促進策はもとより、具体的な発電ファーム計画など、今後予定されている開
発海域のロードマップや関連産業の振興計画も不明である。日本の次期エネルギ
ーを支える基幹発電プロジェクトのはずだが、そのゴールを描き切れないでいる。
今後、日本国内にサプライチェーンを構築していくうえでは、野心的な目標値を
掲げるだけでなく、世界規模な経済性や産業整備計画などの、国としてのロード
マップを示す必要がある。
プロジェクトの実行をすべて民間企業任せでは、グローバ
ル経済を巻き込むことは
できない。
太陽光発電パネルもそうであったが、洋上風力でも、中国の開発、導入スピード
は、日本と比べようのない速さである。太陽光、着床式風力の二の舞にならない
ことを期待するしかない。



実績を積む中国製風車は世界を席巻する

中国では洋上風力発電設備の巨大化が進んでおり、GE製の12MW(Haliade-X)を上回
る16MW級の風車の建設も始まった。中国の報道によると、6月末に台湾海峡に面す
る福建省で、国営エネルギー開発企業の中国長江三峡集団(CTG)が手掛ける洋上
風力発電事業で、13MWの風車の設置が完了した。高さ130m、2万5000世帯分の電力
を発電する。同社は13MW級の完成に続いて、それよりも一回り大きい16MW級の建
設プラットフオームの設置を始めたことも発表した。 16MW級は風車の高さが146m
と、13MW級より16m高く、50階建てのビルに相当する。ブレード全体の直径は252m。
風力発電事業で世界市場に進出している中国企業のGoldwindが開発した。同事業
全体での発電予定量は400MW。事業規模は60億人民元(約8億8500万ドル)に上る。
同様に中国のMingYang SmartEnergy(明陽智能)もヽ16MW級のタービン設備の開発
を公表している。
同社は、すでに日本市場にも進出しており、富山県入善町沖の洋上風力発電事業に
同社の風車が採用されている。入善町沖プロジェクトは、3MWの風力発電設備を
3基導入する。米調査会社のブルームバーグNEF(BNEF)による中国市場による
2022年の風力発電設備メーカーの新規設置容量ランキングでは、1~5位を中国メ
ーカが独占し、「金風科技(Goldwind)遠景能源(Envision Energy)」「明陽智能(MingYang
Smart Energy
)」「遅達股扮(Windey)」「三一重能(Sany HeavyEnergy)」の順となった.
中でも.金風科技は12年連続で市場シェア1位を維持している。一方、海外メーカ
ーは中国市場の激しい競争に押され、新規設置容量が前年比で96%減少し10位以
内に入ったメーカはなかった。 
※2023.06.24「ごくとうごくらく」で「日本の風力発電建設遅れ」記事を掲載し
ている。(下図クリック願参照)


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衝撃の「ゼロプレミアム」、洋上風力・落札結果
2海域が国民負担なしで事業化へ

12月13日、経済産業省と国土交通省は、再生可能エネルギー海域利用法の入札に
基づく、3つの一般海域での洋上風力発電プロジェクトについて選定事業者を公
表した。結果は、いずれも総合商社と大手電力会社系企業のコンソーシアムが落
札し、「男鹿市・潟上市・秋田市沖」と「村上市・胎内市沖」の2海域は「ゼロ
プレミアム水準」の3円/kWh、「西海市江島沖」は 22.18円/kWhという結果にな
るた。秋田県の「八峰町及び能代市沖」の案件も入札されたが、最も評価の高か
った事業者の港湾利用が重複していることから計画の再提出を待って 2024年3月
に落札者を公表する。  評価の方法は、「価格点(120点満点)」と「事業実現
性評価点(120点満点)」の合計で最高点だった事業者が落札者となる。 今回の
入札はいずれもフィード・イン・プレミアム(FIP)を適用し、3区域(秋田県の
「八峰町・能代市沖」と「男鹿市・潟上市・秋田市沖」、新潟県の「村上市・胎
内市沖」)の入札上限価格を19円/kWh、1区域(長崎県の「西海市江島沖」)の
上限価格を29円/kWhに設定していた。  

また、市場価格が基準価格を下回った場合にプレミアムで補填するというFIP
仕組み上、再エネ賦課金が発生しない「ゼロプレミアム水準」を 3円/kWh とし、
3円以下の価格はすべて価格点を満点(120点)として評価点に差が付かないこと
にした。  

「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」では、JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力
のコンソーシアムが落札した。デンマーク・ヴェスタス(Vestas)製の出力15MW機・
21基で合計出力315MWのプロジェクトで2028年6月の運転開始を予定する。
この海域では3事業者が入札に参加し、価格はいずれも「ゼロプレミアム水準」
で差が付かず、事業実現性評価点で最も高く運開時期が早かったJERA、電源開発
伊藤忠商事、東北電力のコンソーシアムが落札した。  

「新潟県村上市及び胎内市沖」では、三井物産、RWE Offshore Wind Japan村上胎
内、大阪ガスのコンソーシアムが落札した。米ゼネラルエレクトリック(GE)
の18MW機・38基で合計684MWのプロジェクトで2029年6月の運開予定になる。この
海域の入札では、4事業者が参加し、そのうち3事業者の価格が「ゼロプレミアム
水準」で差が付かず、事業実現性評価点で最も高く運開時期が早かった三井物産、
RWE Offshore Wind Japan村上胎内、大阪ガスのコンソーシアムが落札した。  



「長崎県西海市江島沖」では、住友商事、東京電力リニューアブルパワーのコン
ソーシアムが落札した。デンマーク・ヴェスタス(Vestas)製の15MW機・28基で合
計420MWのプロジェクトで 2029年3月の運転開始を予。この海域では 2事業者が
入札に参加し、いずれも「ゼロプレミアム水準」の価格ではなく、落札した事業
者の価格が22.18円/kWhでもう1つの事業者よりも安く価格点で120点を獲得した一
方、事業実現性評価点ではもう1つの事業者の方が高かった。

結果的に価格点の差の方が大きかったため、合計点数で住友商事、東京電力リニ
ューアブルパワーのコンソーシアムが上回り、落札した一般海域における国内洋
上風力の入札では、前回の入札まで FITが適用され、環境価値は持たないものの
落札価格で売電できた。今回の入札からFIPになるため、電力市場への卸売のほか、
特定のオフテイカー(小売電気事業者や需要家)に環境価値と電気をセットで販
売することも可能になるなど、相対で売電単価を決めるコーポレートPPA(電力購
入契約)の要素が入ってくる。

今回、2海域で3円/kWhの「ゼロプレミアム水準」での落札となったのは、オフサ
イト型PPAスキームで環境価値も含めて売電することで事業性を確保できるめど
を付けられたからと推察できる。今回事前に設定された上限価格と現在の洋上風
力のLCOE(均等化発電コスト)の水準から考えると、参加者の札入れでは14~15
円/kWh前後での攻防になると見られていたが、太陽光発電のPPA市場で20円/kWh
近い長期契約も出てきたことから、洋上風力でもPPAスキームで事業性を確保で
きる環境になってきたことを物語る。  

加えて、前回の入札で落札した三菱商事などのコンソーシアムが単機容量12.6MW
機の風車を採用したのに対し、今回の落札案件では、15MW機と18MW機というさら
大出力の風車を採用し設置基数を減らせたこともLCOE低下に寄与したと思
われる。 すでに洋上風力のコストが下がっている海外でのFIP入札では、PPA
事業計画を構築しておき、FIP入札ではゼロ価格の札を入れ、FIPを利用しない(
FIPによるプレミアムを受け取らない)ような落札事例もあった。そこで、今回
の公募指針では、こうしたケースも想定し、「ゼロプレミアム水準」を3円/kWh
とした。3海域のうち、2海域でそれが適用されたことは、国内洋上風力のコスト
も大幅に低下してきた一方、電力料金の高騰を経験し、再エネのコスト競争力が
高ま
っていることを示している。  

「長崎県西海市江島沖」が 22.18円/kWhでの落札となったのは、同海域だけは海
底地盤の構造上、コストの上がるジャケット式基礎になることがわかっていたた
め、建設コストを下げにくく、 20円/kWh以下のPPAスキームの可能なLCOE水準に
達しなかったとも考えられる。  

今回の結果を見ると、国内でも海域の条件によっては洋上風力プロジェクトが事
実上、再エネ賦課金という国民負担のない形で事業化できることが明らかになっ
た。今後、洋上風力によって再エネ賦課金がかなり増えるとの見方が多かっただ
けに、国民負担を増やさずにもう一段の再エネ拡大を可能にするうえで、大きな
一歩になりうる。また、落札した企業が相対的に事業実現性でも評価されたのは、
すでに洋上風力の知見を積みつつあることがアピールポイントになった可能性も
ある。「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」を落札したコンソーシアムを構成する企
業のうち、電源開発は北九州市響灘沖で、JERAは石狩湾新港で、港湾内の洋上風
力事業者に出資し、一般海域でのプロジェクトに先駆け、洋上風車の建設・運営
を経験できる立場にある。

また、「新潟県村上市及び胎内市沖」では、欧州で洋上風力の経験が豊富なRWE
Offshore Wind Japanが参加している。「長崎県西海市江島沖」を落札した住友商
事は、海外の洋上風力に出資参画している。とはいえ、台風や雷の多い国内で実
際に長期運用した経験がなく、しかもFITに比べて売電収入が確定しにくいFIPやP
PAスキームでプロジェクトファイナンスを組成するのは容易でないと思われる。

落札した事業者は、今後、プロジェクトファイナンスに取り組むと思われるが、
場合によっては出資者によるスポンサーサポート契約やリザーブ(積立金)の設
定が求められることも考えられる。今回落札したコンソーシアムが資金力のある
大手企業によって構成されていることはファイナンスに有利になる。  

前回の入札では三菱商事系を中心としたコンソーシアムが低価格によって3海域
を総取りしたことで、準備の先行しているベンチャー系企業が押し出される形に
なった面があった。それを受け入札制度の一部が変更されたが、今回の結果を見
る限り、洋上風力で経験を積み、PPAで求められる信用力のある大手商社や大手
電力会社の優位が続きそうだ。
------------------------------------------------------------------------
※ 3円/kWhのゼロプレミアム水準とは、FIP制度に基づくき、電力市場価格が3円/
kWh以下の時は単価3円での供給、市場価格がそれを上回る場合は、それに応じた
価格での供給となる。
------------------------------------------------------------------------
「ゼロプレミアム」となった背景は

一般海域における国内洋上風力の入札では、前回の入札までFITが適用され、環
境価値は持たないものの落札価格で売電できた。今回の入札からFIPになるため、
電力市場への卸売のほか、特定のオフテイカー(小売電気事業者や需要家)に環
境価値と電気をセットで販売することも可能になるなど、相対で売電単価を決め
るコーポレートPPA(電力購入契約)の要素が入る。  

今回、2海域で3円/kWhの「ゼロプレミアム水準」での落札となったのは、オフサ
イト型PPAスキームで環境価値も含めて売電することで事業制を確保できるめど
を付けられたからと推察できる。今回事前に設定された上限価格と現在の洋上風
力のLCOE(均等化発電コスト)の水準から考えると、参加者の札入れでは14~15
円/kWh前後での攻防になると見られていたが、太陽光発電のPPA市場で20円/kWh近
い長期契約も出てきたことから、洋上風力でもPPAスキームで事業性を確保でき
る環境になってきたことを物語る。  

加えて、前回の入札で落札した三菱商事などのコンソーシアムが単機容量12.6M
W機
の風車を採用したのに対し、今回の落札案件では、15MW機と18MW機という
さらに大出力の風車を採用し設置基数を減らせたことも、LCOE低下に寄与したと
思われる。すでに洋上風力のコストが下がっている海外でのFIP入札では、PPA
事業計画を構築しておき、FIP入札ではゼロ価格の札を入れ、FIPを利用しない(F
IPによるプレミアムを受け取らない)ような落札事例もあった。そこで、今回の
公募指針では、こうしたケースも想定し,
「ゼロプレミアム水準」を 3円/kWh
した。3海域のうち、2海域でそれが適用されたことは、国内洋上風力のコストも
大幅に低下してきた一方、電力料金の高騰を経験し、再エネのコスト競争力が高
まっていることを示している。  

「長崎県西海市江島沖」が 22.18円/kWhでの落札となったのは、同海域だけは海
底地盤の構造上、コストの上がるジャケット式基礎になることがわかっていたた
め、建設コストを下げにくく、20円/kWh以下のPPAスキームの可能なLCOE水準に
達しなかったとも考えられる。  

今回の結果を見ると、国内でも海域の条件によっては洋上風力プロジェクトが事
実上、再エネ賦課金という国民負担のない形で事業化できることが明らかになっ
た。今後、洋上風力によって再エネ賦課金がかなり増えるとの見方が多かっただ
けに、国民負担を増やさずにもう一段の再エネ拡大を可能にするうえで、大きな
一歩になりそうだ。また、落札した企業が相対的に事業実現性でも評価されたの
は、すでに洋上風力の知見を積みつつあることがアピールポイントになった可能
性もある。「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」を落札したコンソーシアムを構成す
る企業のうち、電源開発は北九州市響灘沖で、JERAは石狩湾新港で、港湾内の洋
上風力事業者に出資し、一般海域でのプロジェクトに先駆け、洋上風車の建設・
運営を経験できる立場にある。また、「新潟県村上市及び胎内市沖」では、欧州
で洋上風力の経験が豊富なRWE Offshore Wind Japanが参加している。「長崎県西
海市江島沖」を落札した住友商事は、海外の洋上風力に出資参画している。  

とはいえ、台風や雷の多い国内で実際に長期運用した経験がなく、しかも FIT
比べて売電収入が確定しにくいFIPやPPAスキームでプロジェクトファイナンスを
組成するのは容易でないと思われる。落札した事業者は、今後、プロジェクトフ
ァイナンスに取り組むと思われるが、場合によっては出資者によるスポンサーサ
ポート契約やリザーブ(積立金)の設定が求められることも考えられる。

今回落札したコンソーシアムが資金力のある大手企業によって構成されているこ
とはファイナンスに有利になる
前回の入札では三菱商事系を中心としたコンソ
ーシアムが低価格によって3海域を総取りしたことで、準備の先行しているベン
チャー系企業が押し出される形になった面があった。それを受け入札制度の一部
が変更されたが、今回の結果を見る限り、洋上風力で経験を積み、PPAで求めら
れる信用力のある大手商社や大手電力会社の優位が続くと考えられている。
------------------------------------------------------------------------

12月21日、電子情報技術産業協会(JEITA)は,電子情報産業の世界生産見通し
 を発表。
2024年の日系企業の世界生産額は,デジタル化投資の加速により,サービスの伸
長,電子部品・電子デバイスの生産も回復すると見込んでおり,前年比5%の41兆
5,638億円の見通しだという。国内生産額は,6%増の11兆5,119億円の見通。
via.メガソーラービジネス  

  
  

Anytime Anywhere ¥1/kWh era
新成長経済理論考 ㉔



図1 (a) ペロブスカイト太陽電池の模式図。(b,c) 添加材(b)ありと(c)なしの
場合のペロブスカイト太陽電池の出力特性。(d) 電力変換効率(PCE)の劣化特
性。

ペロブスカイト太陽電池を長寿/高性能化 
12月26日、岡山大学らの共同研究グル-プは、次世代太陽電池として期待されて
いるペロブスカイト太陽電池の性能と安定性を向上する添加剤分子として“ベン
ゾフェノン”を発見。今回の研究成果は、2023年9月12日に米国化学会(American
Chemical Society)発行の学術雑誌「ACS applied materials & interfaces」に掲載。
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池に比べて、作製工程が容易
で、フィルム状の柔軟な太陽用電池が作製でき、発電効率が同程度であることか
ら、安価で様々な場所に活用できる太陽電池として期待されているが、ペロブス
カイト材料の環境安定性が低いことが大きな課題。今回の研究では、ベンゾフェ
ノンという分子を添加剤として用いることで、ペロブスカイト太陽電池の性能と
安定性を向上することに成功した。高性能・高安定性のペロブスカイト太陽電池
は、今後エネルギーハーベスティングやInternet of Everything(IoE)の発展に大き
く寄与する。
【要点】
1.ペロブスカイト太陽電池の性能と耐環境性を向上する添加剤“ベンゾフェノ
 ン(BP)”を発見
2.BPを添加したペロブスカイト太陽電池において、室温・湿度30%の環境で700
 時間経過後も90%の性能を保持する高い安定性を実現。対照的に、BPを添加し
 なかった場合、電力変換効率(PCE)は急速な劣化を示し、同じ条件下で300時
 間以内に初期値の30%しか維持できなかった。
図2. (a,b) 添加材(a)ありと(b)なしの場合のペロブスカイト薄膜表面のSEM像。
(c) α相およびδ相のFAPbI3の結晶構造の模式図。(d) 添加剤BPがペロブスカイ
ト結晶に及ぼす影響の模式図。
【概要】
研究では,低分子添加剤であるBPが,ペロブスカイト太陽電池の性能と安定性
に及ぼす影響を調べた。具体的には,FAPbI3のペロブスカイト前駆体溶液にBPを
導入し,ITO/PEDOT:PSS/BP:FAPbI3/PC60BM/BCP/Agの積層構造を持つ太陽電池を
作製。 2mg/mLの最適濃度でBPを添加することで,太陽電池の出力特性(電流∸電
圧特性)に現れるヒステリシスを抑制するとともに,太陽電池のPCEをBP添加無
しの13.12%から18.84%へと大幅に向上。 特筆すべきことに,BPベースの太陽電
池は,相対湿度30%の大気中,25℃で700時間保存した後も,初期PCEの90%程度を
維持。
対照的に,BPを添加しなかった場合,PCEは急速な劣化を示し,同じ条件下で300
時間以内に初期値の30%しか維持できなかった。
次に,BPの添加がペロブスカイト
薄膜の表面形状と結晶性にどのような影響を与えるかを調べ,BPを添加しなかっ
た場合は,太陽電池の性能を阻害する多数の結晶粒界(GB)を観測。一方で2mg/mL
のBPを添加した場合は,結晶が大きくGBの少ない,より滑らかで緻密なペロブス
カイト薄膜が得られた。この膜質の向上により,太陽電池の性能と環境安定性が
向上すると考えられ、これは,ペロブスカイト膜の粒界不動態化に起因と考えら
れる。X線回折による構造解析から,BPの添加によって光に対して不安定な δ相
から,安定な α相FAPbI3への構造変化が促進されたことが明らかになった。こ
のメカニズムとして,酸素ドナーであるルイス塩基を有するBP分子と,FAPbI3中
のPb2+および FA+の分子間相互作用により,励起キャリアのトラップによる再結
合が効果的に抑制され,性能と安定性が向上したと考えられる。 研究グループ
は,これらの結果から,BP分子はペロブスカイト太陽電池の性能と環境安定性を
上させる有望な添加剤であることが示された。

【脚注】
1.ベンゾフェノン(benzophenone)は、有機化合物であり、代表的な芳香族ケ
 トンの1つである。紫外線を吸収する性質がある。
2.論文情報
論 文 名:Benzophenone: A Small Molecule Additive for Enhanced Performance and
Stability of Inverted Perovskite Solar Cells

掲 載 紙:ACS Applied Materials and Interfaces
著  者:Hytham Elbohy, Hiroo Suzuki, Takeshi Nishikawa, Thiri Htun, Kosei Tsutsumi,
  Chiyu Nakano, Aung Ko Ko Kyaw, and Yasuhiko Hayashi

D O I : 10.1021/acsami.3c09835
U R L : https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.3c09835[New window
]









夜の寸評: リスク・インパクト・リサーチ
                混沌だからこそ、リスク・インパクトの計測が必須。


 

 


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