しあわせってなんだっけ

画友のＭ氏から電話が掛かってきて、久しぶりに
会うことになった。

彼はいまガードマンをしつつ絵を描いている。
待ち合わせの喫茶店に行くと、彼はすでに来ていた。

私よりちょっと年上だが髪はみごとに白くなっていて、
七・三分けがよく似合っている。

お互いの近況などを話あったが、彼は６日間休みが出来たとかで
日給での生活の苦しさを嘆いていた。

我々絵描きは多かれ少なかれこの日々の生活の維持に
苦労するのである。それは誰だって同じといえば同じなのだが、
絵描きというものは当然ながら本来は、２４時間、絵を描くことに
時間を費やしたいのである。

どうしても二人で会うと、この生活維持のグチから始まってしまう
夢追い人のかなしい性である。

やがて、今年中に本を出したいという話になった。
ネットで調べてみると、何だかんだでコストがかかってしまう旨
話していると「いっそのこと自分で本を作っちゃったら」という話になった。

「それも有りかもねえ」と私が応じると、「ちょっと見に行こうよ」
と彼が言い出した。本作りのセットのようなのを見たことがあるというのである。

さっそく二人して彼がよく行くというＴハンズに行ってみた。
確かに作った本の見本が置いてあり、そこに本作りに使うような
道具らしきものがあった。
この見本の本だが、ちょっと私には雑な作りに思えた。

それに、これらのものがあっても、よほどこと細かく手順・用具など
揃えないと難しいんじゃないかと思えた。

紙は何を使うのか、印刷はどうするのか、糊代などはどうとるのかなどなど
けっこう大変そうである。特に私のようなめんどくさがりには
厳しいなあと思わずにはいられなかった。

家へ帰ってからパソコンをのぞいて“本の作り方”なるものを
見てみたが、やっぱりなかなか大変そうである。

私は腕を組んで、「ウ～ム」と唸ってしまった。

あ～あ我が本が出来るのはいつの日か…