2013/08/14
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>夏の記憶(4)白い馬(太郎の)
毎年、8月6日から8月15日までは、私的「平和祈念週間」です。ヒロシマ・ナガサキの原爆文学や戦争にかかわる表現の書き写しをしてすごしてきました。本から書き写すこともありますし、青空文庫などからコピペして朗読してすごすこともあります。声を出しての朗読は、脳トレにもいいそうなので、一石二鳥、私にとっては写経みたいなものです。 これまで、『黒い雨』『夏の花』などの書き写しをしてきました。今年も何篇かコピーして朗読してすごしています。
2013年の写経のひとつは、岡本太郎(1911-1996)の従軍の記憶の書き写し。青山の岡本太郎記念館へ出かけた後、岡本敏子による伝記とかいろいろ読んだので、どの本の中にあったのか、ごちゃまぜになってしまいました。たぶん、『失踪する自画像』の最初のほうにあったと思います。著作権は岡本敏子なきあと、敏子の甥の平野暁臣(岡本太郎記念館館長)になったのか、財団が管理しているのわかりませんが、春庭の「夏の記憶」シリーズ全体への引用として、掲載します。何らかの問題があるのなら、削除します。
~~~~~~~~~~~~~
白い馬(コピー)
この世界にあらゆる生命が、ざわざわと音を立てながら、からみあい、食い合っている。それは生命の永遠の運命、姿であろう。ザワザワと粋、食い合う。たとえ、意識していなくともまことにそうなのだ。むしろ意識では、陣減精神はどこ久野なかに静まり、瞑想しているよだが。なぜ私がこの生命の動きを、ザワザワと表現するのか。
思い出があるのである。
戦争中、中国の前線にいた。私の人生で、もっとも残酷に、辛かった時代である。軍隊では、私の域、人事的他モラルとはすべてが反対だった。なま身をひきちぎる、逆の噛み方時空の歯車が回転していた。
私は最前線の自動車舞台に配属していた自由主義者の非国民、戦死すればモッケお幸いというわけだろう。自動車隊といったって、車を走らす道がないのだ。一日中、泥濘とのあく先駆層、しかも夜は保障に立たされる。
大陸の夜は深い。信じられぬほどの静寂のなかに、一人、住建をかまえて歩き回っている。すると何処からか、ザット水の流れるような、異様なもの音が聞こえてくる。
何だろう!
音をたよりに、いく。ふと見ると、真っ白な馬。
夜空に向かって首をあげ、前足を突っぱってのけぞっている。悪路の行軍のはて、ついに力つきた軍馬の死骸である。
全身から最っ白にウジがふきだし、月光のもとに、彫像のようい冷たく光っているのだ。
ウジのうごめく音が、ザttと、低いがすさまじい威圧感でひびいてくる鬼気せまるイメージだ。
生きものが、生きものを犯す。生きるために、そしてその肉をまた強者が食う。今おびただしいウジが肉の巨塊をなめつくしているのだ。
ザワザワと不気味な音をたてながら。
<つづく>
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>夏の記憶(4)白い馬(太郎の)
毎年、8月6日から8月15日までは、私的「平和祈念週間」です。ヒロシマ・ナガサキの原爆文学や戦争にかかわる表現の書き写しをしてすごしてきました。本から書き写すこともありますし、青空文庫などからコピペして朗読してすごすこともあります。声を出しての朗読は、脳トレにもいいそうなので、一石二鳥、私にとっては写経みたいなものです。 これまで、『黒い雨』『夏の花』などの書き写しをしてきました。今年も何篇かコピーして朗読してすごしています。
2013年の写経のひとつは、岡本太郎(1911-1996)の従軍の記憶の書き写し。青山の岡本太郎記念館へ出かけた後、岡本敏子による伝記とかいろいろ読んだので、どの本の中にあったのか、ごちゃまぜになってしまいました。たぶん、『失踪する自画像』の最初のほうにあったと思います。著作権は岡本敏子なきあと、敏子の甥の平野暁臣(岡本太郎記念館館長)になったのか、財団が管理しているのわかりませんが、春庭の「夏の記憶」シリーズ全体への引用として、掲載します。何らかの問題があるのなら、削除します。
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白い馬(コピー)
この世界にあらゆる生命が、ざわざわと音を立てながら、からみあい、食い合っている。それは生命の永遠の運命、姿であろう。ザワザワと粋、食い合う。たとえ、意識していなくともまことにそうなのだ。むしろ意識では、陣減精神はどこ久野なかに静まり、瞑想しているよだが。なぜ私がこの生命の動きを、ザワザワと表現するのか。
思い出があるのである。
戦争中、中国の前線にいた。私の人生で、もっとも残酷に、辛かった時代である。軍隊では、私の域、人事的他モラルとはすべてが反対だった。なま身をひきちぎる、逆の噛み方時空の歯車が回転していた。
私は最前線の自動車舞台に配属していた自由主義者の非国民、戦死すればモッケお幸いというわけだろう。自動車隊といったって、車を走らす道がないのだ。一日中、泥濘とのあく先駆層、しかも夜は保障に立たされる。
大陸の夜は深い。信じられぬほどの静寂のなかに、一人、住建をかまえて歩き回っている。すると何処からか、ザット水の流れるような、異様なもの音が聞こえてくる。
何だろう!
音をたよりに、いく。ふと見ると、真っ白な馬。
夜空に向かって首をあげ、前足を突っぱってのけぞっている。悪路の行軍のはて、ついに力つきた軍馬の死骸である。
全身から最っ白にウジがふきだし、月光のもとに、彫像のようい冷たく光っているのだ。
ウジのうごめく音が、ザttと、低いがすさまじい威圧感でひびいてくる鬼気せまるイメージだ。
生きものが、生きものを犯す。生きるために、そしてその肉をまた強者が食う。今おびただしいウジが肉の巨塊をなめつくしているのだ。
ザワザワと不気味な音をたてながら。
<つづく>