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ぽかぽか春庭「凱旋門があります」

2014-05-17 00:14:45 | エッセイ、コラム
2014/05/17
ぽかぽか春庭にっぽにあにっぽん語教師日誌>日本語ふしぎ発見2014前期(3)凱旋門があります

 日本語学習者、初級学生にも上級学生にもそれぞれの誤解誤用があります。
 教師には思いもよらない発想や考え方によって誤解を生じるので、教師にとっても誤用から学ぶことが数多くあります。

 今週、4月に日本語学習をゼロからはじめた学生の作文を添削しました。ゴールデンウイーク中の出来事を書いた作文です。あいうえおの「あ」を読み書き練習するところからはじめた学生たち、名詞文、形容詞文、動詞文の基礎をならったところです。
 週に90分授業を10コマ受講している学生たち。この学習量は、日本の中学生が4月にabcから始めて、1学期の学習を終えたくらいの分量です。1学期に習う分量の語学を1か月集中で詰め込むので、学生たちひーひーいいながら練習しています。

 留学生たち、集中講義で詰め込まれてきて、日本語で日記を書けるようになっています。
 「休みの日」というタイトルで書いた作文の中「休みの日、わたしは よこはまへ 行きました。中かがいで ひるごはんを たべました。よこはまびじゅつかんで きはんがをみました」という文がありました。文の誤用、単語のまちがいはおおよそ推察がきくようになっているのですが、この「きはんが」が何なのか、見当がつきません。規範が?

 学生に美術館でどんな絵を見たのか尋ねると、「ウッドカット」といいます。ウッドカットという人を私は知りません。「ウッドカットは画家の名前ですか」「いいえ、画家の名前は、ごようはしぐち、です」え?橋口五葉?その名前、わたし知っていますよ。明治時代の版画家です。
 「そうです、先生、ウッドカットです」やっとウッドカットと「きはんが」が結びつきました。学生が「きはんが」と書いていたのは、「木版画」のことでした。学生はウッドカットの「ウッド」を辞書でしらべたら「木」と出ていたので、ああ、この字ならったところだとばかり「きはんが」とかいたのでした。
 やっと留学生の書きたい意図がわかって添削することができました。

 今日は、国にあるものや、いるものの紹介をする練習をしました。「あります、います」の使い分け練習です。英語などでは物の存在も人の存在も「There is a student in a classroom.」「There is a desk in a classroom.」同じ文型でいいます。中国語も「在」は、人の存在も物の存在も表します。しかし、日本語は、有情物(生きて動くもの)は「います」。無情物(生きていない動かないもの)は「あります」と使い分けます。
 
 「ケニアにライオンがいます」「タイに象がいます」「ペルーにマチュピチュがあります」はわかったけれど、「フランスにArc de Triomphe de l'Etoileがあります」と言われても、そのフランス語が何を指しているのかわかりませんでした。フランス語、ボンジュールやジュテームくらいしかわからないので。でも、パリにあるものといえば、エッフェル塔か凱旋門だろうと思って、凱旋門の形を書いて「これですか」と尋ねたら、「そうです」
 フランス人学生にとっては必要な日本語になるであろうと思い、「がいせんもん」という語を教えました。

 日本語教師は、世界中の国から留学生を迎えます。世界中の言語がペラペラなわけではありません。しかし、世界中の文化や歴史、社会について興味を持っていることが必要です。初めて聞くフランス語の単語Arc de Triomphe de l'Etoileが学生の口から出たとき、そのことばを知らなくても、推理ゲームか頭の体操によって意味を推測することができれば、なんとか学生の言いたいことが推測できます。
 学生が辞書をひいて日本語訳をみつけたとして、それが見当はずれの訳だったりすることもあるので、辞書がたよりにならない場合もあります。

 世界中の国々に興味をもち、世界中のことばや文化をしりたいと思っていると、留学生の国の文化や地理、社会についてさまざまに知ることができて、毎日新鮮な脳でいられます。

<つづく>
コメント (4)
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