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ぽかぽか春庭「日本語への疑問質問にほんご?にっぽんご?」

2014-05-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
2014/05/14
ぽかぽか春庭にっぽにあにっぽん語教師日誌>日本語ふしぎ発見2014前期(1)日本語への疑問質問

  留学生の日本語初級授業は、4月中に名詞文の基本、形容詞文の基本、動詞文の基本を学び、いよいよ最初の関門、動詞の活用(conjugation, Inflection of the verb)を学んでいるところです。マスのかたち、行きます、食べますなどから基本文をようやく覚え、動詞をいくつか暗記したところで、こんどは、いく、食べる、する、などの辞書形(国文法では連体形&終止形と呼ぶ)を覚え、テ形(国文法では連用形のうち、テを伴うもの)、行って、食べて、して、などのかたちを1グループ(国文法では五段動詞)2グループ(国文法では一段動詞二段動詞、3グループ(国文法ではサ変可カ変)のグループ別に覚えなければなりません。

 中学校で英語を習ったとき、動詞の過去、過去分詞、などを覚えさせられたとき、あれまあ、なんて英語はやっかいなものだろうとうんざりしたことを思い出しましょう。留学生にとって、日本人にはなんでもない、いく→いって、という変化形が、記憶のためには大きな関門です。テ形の次は、ナイ形、行かない、食べない、しない。「いきない」になったり「いくない」になったり。タ形、仮定皃(バ形)、行けば、食べれば、すれば。さらに命令形、意向形(行こう、食べよう、しよう)と続きます。
 日本語学習者がひとつひとつの文型を覚え、実際の会話のなかで使えるようになるまで指導します。

 さて、そういう日本語学習者に日本語教えようという日本語教師養成コースの学生たち。実際に日本語教師になりたいと意気込んで養成コースの特別学費を払い込んでいるもの。何か資格をひとつ履歴書に書けば、就職に有利になるかもしれないという期待で授業をうけているもの、養成コースには申し込まなかったけれど、卒業単位に数えられるなら、受けてみようかと思って在籍している者。動機はさまざまなので、日本語教師をめざす学生には、実際に教えるとき役にたつように、単位だけほしいものには、「日本語って、案外おもしろい言語だなあ。知れば知るほど奥が深いなあ」と、思ってもらえるように、両面での工夫が必要になります。

 「日本語教授法」という教科書を与えて、最初のページからさいごまで講師が解説して、学生はそれをノートに書き写すという授業を、私はしたことがありません。学生が自分自身で課題を探し、自分で考え、ときには行動して日本語を知っていく、そういう授業を目指しています。現在の教育学用語でいうところの「課題解決型授業、タスク型授業(TBLS)」を私は15年前から日本人向け授業でも留学生向け授業でも行ってきて、時代はようやく私に追いついてきました。

 日本語教師養成コース受講の日本人学生に、最初に提出する課題。
 「日本語を使ったり話したりしてきたなかで、あれ、これは不思議だな、変だな、と感じたこと、英語を学んできた過程で、英語と日本語はちょっと違うなと感じたことを書き出してほしい」これが最初の課題です。

 いくつか「疑問」の事例をあげます。留学生の誤用紹介です。作文課題は「家族紹介」
1)留学生が作文に「私のお父さんは ぎんこには たらいています。お父さんの高いは 180cmです。お父さんのおもいは 140kgです。とてもスマートです。お父さんの目はみどりいです。お父さんのかみは、くろいじゃありません」と書きました。添削し、なぜこのような間違いをしたのか、書きなさい。

2)留学生が欠席理由をメモに書いてきました。「したしい先生。きのびよきです。きのクラスはやすみました。私はくすりをとりました。から あなたは心配しました わたしはすみません。」

 また、留学生からときどき出る質問。
3)ニホンとニッポン、どちらが正しいですか。にほんぎんこうですか、にっぽんぎんこうですか。にほんごですか、にっぽんごですか。スポーツの応援、にっぽんちゃちゃちゃですか。にほんちゃちゃちゃですか。

4)「わたしは、ともだちにアメリカの映画を紹介しました。「Black Swan」を辞書で調べて「くろいはくちょう」と言いました。日本人学生が「それは間違っている」と言いました。でも、私の辞書は、Black はくろい、Swanは、はくちょうでした。辞書は間違っていますか。

 春庭コラム10年間読んでくださった方、何度も読まされた日本語への疑問質問なのですが、日本語はもうすっかりわかっていると思い込んでいる日本人学生にとって、わかっているつもりなのに、いざ説明しようとすると、「みどりい服」はダメです「みどりの服」と言いなさい、と訂正することはできても「なぜ?」と問われると答えに詰まる者が多いのです。

 私が調べた英語辞書。たとえば、カレッジライトハウス英和辞典ではswanの日本語訳は、「はくちょう」のみです。だから、留学生が「くろいはくちょう」と言うのも当然。辞書に頼る日本語学習者にとって、しかたのない連語といえます。
 さて、「ぎんこうにいます」はよいけれど、「ぎんこうにはたらきます」は、なぜ誤用になるのでしょうか。

<つづく>
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