20190216
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>輝ける人生の映画(4)プリティウーマン
映画先達のまっき~さんから、「たまには古い映画のDVD鑑賞記録も」という提案もあり、録画機能の容量がいっぱいになって、新しい映画が録画できなくなってしまった、という事情もあり、お正月に「どれを消そうか」とリストを見て、『プリティウーマン』なら正月気分で浮かれてみても、大丈夫だろうとふんで見ました。
さいしょに見てからどれくらいたつのか忘れてしまったけれど、とにかく最初は「単純なシンデレラストーリー」としてみたことだけ覚えています。マイフェアレディの焼き直し現代版かと。
まっき~さんが「最悪映画」と酷評する理由も「映画見巧者だから、私の単純な見方とはちがうのだろう」くらいに思っていました。
2度目に見て、私も少しは「シンデレラストーリーから遠く離れて」の世代になったせいか、単純なおとぎ話とは思えなくなっていました。まっき~さんの嫌悪感とはことなるかもしれませんが。
私の「嫌な感じ」は。
主人公ビビアン(ジュリア・ロバーツ)は「白馬の王子に救い上げられる存在」であり、ビビアンの職業を、白馬の王子エドワード・ルイス(リチャード・ギア)も会社の顧問弁護士も「まともな仕事じゃない」として扱っていて、この職業を仕事とする女性を軽蔑していることからきています。
ビビアンは、ラストで「高校を出てまともな職業につこう」と決意するところは、彼女自身の選択だからよいと思ったのに、白馬の王子が迎えにくれば、嬉々として馬車のほうを選んで乗り込む。
世界最古の職業への一片の敬意もなく、ひたすら「抜け出すべき仕事」としてあつかわれていることが、実はすべての女性尊厳にかかわることに、映画製作者のだれも考えもしない点が気色わるいのでした。1990年の映画だから?女性の尊厳にまだ映画界が気づかないころの映画だったから?Me too運動なんか起きていない頃のハリウッドだから?
さて、この映画を見て一ヶ月もしないうち、「そういうお前もなー」という自分自身に跳ね返る「天につばする」の事件がありました。
新井浩文の「出張マッサージ女性への性的暴行により逮捕」事件です。
この記事を目にしたとき、「たぶん、世間様と同じ反応」を私もしました。「えっ?出張マッサージって、そういう店じゃなかったんだ。性的行為が逮捕につながるんだ」という感想。
私は『ゲルマニウムの夜』に新井が主演したころから注目してきました。順調に個性派俳優としてキャリアを築いていた新井です。
特別ファンじゃないけれど、在日コリアン出身を隠さないできたことも、日本の俳優にしては珍しいなあと思ってきました。力道山も松田優作も死ぬまで隠し通しましたからね。
で、出張マッサージ店。健全店(ほんとうにマッサージのみ)、グレイゾーンの店(表面上は健全店だけれど、裏では、、、)、そういう店(出張サービスのなかには、マッサージ以上の部分も含むことをかくさない)という3種類があるんだそうです。
本当にマッサージ専門店なら「容姿端麗セラピストがそろっている店」なんてことをキャッチコピーにして、「マッサージセラピスト」の写真付きページに3サイズや「好みの男性タイプ」なんていう自己紹介、必要なんでしょうかね。
新井が事件を起こした店は、一応「健全にマッサージだけ施術する」という店らしい。マッサージ施術者をセラピストと呼び、派遣するセラピストに対して「健全に対応する」という誓約書まで客に書かせるらしい。(ネット情報なので確実じゃないことを書いています)
しかし、、、、私は「出張マッサージの女性」という文字を見ただけで「そういう仕事」と思ってしまった。
私自身は「セクシャルセラピー」を仕事として認めるという意識できたつもり。本当に自分の意思で仕事を選び、搾取されることなく仕事の報酬を得ているのなら、職業の選択は自由です。
仕事に誇りを持っていて、本職として生きている女性なら、そして、自分の尊厳を失わずにいるのならよい。しかし、これまでの時代、女性の尊厳が尊重されない職業であったことは確か。
この職業を選んだ女性に出会ったとして、まず聞きたいのは「その仕事、本当に好きで、楽しく仕事していますか」
自分に誇りを持ち、「人助けセラピスト」と思って働いているのなら問題ないけれど、もしも「今より収入が多く、より労力少ない仕事が他にあるなら変わりたい」と思っているのなら、転職すべきだと思う。労力少なくて収入多い仕事ってないけれど。
一般の整体のマッサージに比べて「出張マッサージ」のほうが高い。30分で1万円とかの料金。ピンハネ分を差し引いて、「セラピスト」に渡されるのは、いくらくらいになるか知らないけれど。
私が通っている整体院のマッサージよりはるかに高いのだとしたら、「出張マッサージ」がなぜ高いのか、交通費などの出張料金の差だけではないのではないか、と疑ってしまう。
ちなみに友人が通っている整体の「保険はきかない料金」は、60分で5000円です。私の通う整体は、整形外科の先生が診察してから施術する保険内マッサージで、15分320円(国保3割負担。保険をつかわなければ、15分1000円くらいだから1時間換算なら4000円。けっこう高いけど、出張マッサージよりは安い)。
プリティウーマンのビビアンは自分が差別される職業の人間であることを、いまさらながらに自覚します。(高級洋服店のシーンなどで)
ビビアンは、「まともな仕事」につきたい、と願っています。
それはそれでいい。でも、ビビアンを1週間3000ドルで雇ったエドワードは「かわいいプロスティチュート」としてみなすのみ。ビビアンを「自分より下の人間」として扱っています。顧問弁護士に簡単にビビアンの素性をあかすなんて、ビビアンを対等な人間と思っていない証拠。自分の立場を守るためには簡単に彼女をさらすようなことをする。
ビビアンの職業を知ったふとっちょ顧問弁護士に至っては「売春婦なんだから、おれにもやらせろ」という、人を踏みつけにし、暴力をふるうのヤカラで、弁護士の暴力をエドワードが救ったかのようなシーンがあります。しかし実は、どっちもどっち。弁護士が「俺にも」と言い出した原因は、エドワードがビビアンの職業を弁護士に言ってしまったゆえの結果ですから、ほんとうに悪いのはエドワードのほうかも。
ビビアンに親切なホテルの支配人は、いくらかはビビアンを対等な人間として真正面から向かい合ってはいたのか、それとも大金持ちのお得意様エドワードの相手だから優遇したのか。
ビビアンはエドワードとの出会いによって、自分を変えていきます。
「マイフェアレディ」原作のイライザが、最後はヒギンズ教授を蹴飛ばして自分の世界を切り開いていこうとするように、「ティファニーで朝食を」原作のホリーが、彼女に興味津々の作家の卵なんか袖にして、自由に南アメリカくんだりまで行こうとするように、ビビアンも自分の足をみつけて自分の足で歩いて行ってほしかったなあ。
Finding your feet!!
と、ここで最初の映画に戻るという落ちで終わり。フォックストロットぐるぐる回って最初に戻る。
<おわり>
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>輝ける人生の映画(4)プリティウーマン
映画先達のまっき~さんから、「たまには古い映画のDVD鑑賞記録も」という提案もあり、録画機能の容量がいっぱいになって、新しい映画が録画できなくなってしまった、という事情もあり、お正月に「どれを消そうか」とリストを見て、『プリティウーマン』なら正月気分で浮かれてみても、大丈夫だろうとふんで見ました。
さいしょに見てからどれくらいたつのか忘れてしまったけれど、とにかく最初は「単純なシンデレラストーリー」としてみたことだけ覚えています。マイフェアレディの焼き直し現代版かと。
まっき~さんが「最悪映画」と酷評する理由も「映画見巧者だから、私の単純な見方とはちがうのだろう」くらいに思っていました。
2度目に見て、私も少しは「シンデレラストーリーから遠く離れて」の世代になったせいか、単純なおとぎ話とは思えなくなっていました。まっき~さんの嫌悪感とはことなるかもしれませんが。
私の「嫌な感じ」は。
主人公ビビアン(ジュリア・ロバーツ)は「白馬の王子に救い上げられる存在」であり、ビビアンの職業を、白馬の王子エドワード・ルイス(リチャード・ギア)も会社の顧問弁護士も「まともな仕事じゃない」として扱っていて、この職業を仕事とする女性を軽蔑していることからきています。
ビビアンは、ラストで「高校を出てまともな職業につこう」と決意するところは、彼女自身の選択だからよいと思ったのに、白馬の王子が迎えにくれば、嬉々として馬車のほうを選んで乗り込む。
世界最古の職業への一片の敬意もなく、ひたすら「抜け出すべき仕事」としてあつかわれていることが、実はすべての女性尊厳にかかわることに、映画製作者のだれも考えもしない点が気色わるいのでした。1990年の映画だから?女性の尊厳にまだ映画界が気づかないころの映画だったから?Me too運動なんか起きていない頃のハリウッドだから?
さて、この映画を見て一ヶ月もしないうち、「そういうお前もなー」という自分自身に跳ね返る「天につばする」の事件がありました。
新井浩文の「出張マッサージ女性への性的暴行により逮捕」事件です。
この記事を目にしたとき、「たぶん、世間様と同じ反応」を私もしました。「えっ?出張マッサージって、そういう店じゃなかったんだ。性的行為が逮捕につながるんだ」という感想。
私は『ゲルマニウムの夜』に新井が主演したころから注目してきました。順調に個性派俳優としてキャリアを築いていた新井です。
特別ファンじゃないけれど、在日コリアン出身を隠さないできたことも、日本の俳優にしては珍しいなあと思ってきました。力道山も松田優作も死ぬまで隠し通しましたからね。
で、出張マッサージ店。健全店(ほんとうにマッサージのみ)、グレイゾーンの店(表面上は健全店だけれど、裏では、、、)、そういう店(出張サービスのなかには、マッサージ以上の部分も含むことをかくさない)という3種類があるんだそうです。
本当にマッサージ専門店なら「容姿端麗セラピストがそろっている店」なんてことをキャッチコピーにして、「マッサージセラピスト」の写真付きページに3サイズや「好みの男性タイプ」なんていう自己紹介、必要なんでしょうかね。
新井が事件を起こした店は、一応「健全にマッサージだけ施術する」という店らしい。マッサージ施術者をセラピストと呼び、派遣するセラピストに対して「健全に対応する」という誓約書まで客に書かせるらしい。(ネット情報なので確実じゃないことを書いています)
しかし、、、、私は「出張マッサージの女性」という文字を見ただけで「そういう仕事」と思ってしまった。
私自身は「セクシャルセラピー」を仕事として認めるという意識できたつもり。本当に自分の意思で仕事を選び、搾取されることなく仕事の報酬を得ているのなら、職業の選択は自由です。
仕事に誇りを持っていて、本職として生きている女性なら、そして、自分の尊厳を失わずにいるのならよい。しかし、これまでの時代、女性の尊厳が尊重されない職業であったことは確か。
この職業を選んだ女性に出会ったとして、まず聞きたいのは「その仕事、本当に好きで、楽しく仕事していますか」
自分に誇りを持ち、「人助けセラピスト」と思って働いているのなら問題ないけれど、もしも「今より収入が多く、より労力少ない仕事が他にあるなら変わりたい」と思っているのなら、転職すべきだと思う。労力少なくて収入多い仕事ってないけれど。
一般の整体のマッサージに比べて「出張マッサージ」のほうが高い。30分で1万円とかの料金。ピンハネ分を差し引いて、「セラピスト」に渡されるのは、いくらくらいになるか知らないけれど。
私が通っている整体院のマッサージよりはるかに高いのだとしたら、「出張マッサージ」がなぜ高いのか、交通費などの出張料金の差だけではないのではないか、と疑ってしまう。
ちなみに友人が通っている整体の「保険はきかない料金」は、60分で5000円です。私の通う整体は、整形外科の先生が診察してから施術する保険内マッサージで、15分320円(国保3割負担。保険をつかわなければ、15分1000円くらいだから1時間換算なら4000円。けっこう高いけど、出張マッサージよりは安い)。
プリティウーマンのビビアンは自分が差別される職業の人間であることを、いまさらながらに自覚します。(高級洋服店のシーンなどで)
ビビアンは、「まともな仕事」につきたい、と願っています。
それはそれでいい。でも、ビビアンを1週間3000ドルで雇ったエドワードは「かわいいプロスティチュート」としてみなすのみ。ビビアンを「自分より下の人間」として扱っています。顧問弁護士に簡単にビビアンの素性をあかすなんて、ビビアンを対等な人間と思っていない証拠。自分の立場を守るためには簡単に彼女をさらすようなことをする。
ビビアンの職業を知ったふとっちょ顧問弁護士に至っては「売春婦なんだから、おれにもやらせろ」という、人を踏みつけにし、暴力をふるうのヤカラで、弁護士の暴力をエドワードが救ったかのようなシーンがあります。しかし実は、どっちもどっち。弁護士が「俺にも」と言い出した原因は、エドワードがビビアンの職業を弁護士に言ってしまったゆえの結果ですから、ほんとうに悪いのはエドワードのほうかも。
ビビアンに親切なホテルの支配人は、いくらかはビビアンを対等な人間として真正面から向かい合ってはいたのか、それとも大金持ちのお得意様エドワードの相手だから優遇したのか。
ビビアンはエドワードとの出会いによって、自分を変えていきます。
「マイフェアレディ」原作のイライザが、最後はヒギンズ教授を蹴飛ばして自分の世界を切り開いていこうとするように、「ティファニーで朝食を」原作のホリーが、彼女に興味津々の作家の卵なんか袖にして、自由に南アメリカくんだりまで行こうとするように、ビビアンも自分の足をみつけて自分の足で歩いて行ってほしかったなあ。
Finding your feet!!
と、ここで最初の映画に戻るという落ちで終わり。フォックストロットぐるぐる回って最初に戻る。
<おわり>