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ぽかぽか春庭「フジコ・ヘミングの時間」

2019-02-12 00:00:01 | エッセイ、コラム


20190212
ぽかぽか春庭シネマパラダンス>輝ける人生の映画(2)フジコ・ヘミングの時間

 1999年2月11日にNHKのドキュメント番組『ETV特集』「フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が放映され、フジコは一夜にして大スターピアニストになりました。

 フジコブームが起こったとき、私はちょい斜めに見ていました。ブーニンブームとか、日本の聴衆は音楽を聞きにいくのではなくて、ブームになった有名人を見にコンサートへ出かける、というのがいやだったので。いまでは、それも楽しみ方のひとつと思っていますけれど。

 テレビで見たコンサートの中継録画では、やたらにミスタッチをする指使いで、落ち着いて聞いていられなかったし、生で見たいと思ったことがなかった。この「ミスタッチ多し」は、フジコスタイルのひとつで、この弾き方を「魂のピアニスト」と持ち上げて評価する人もいるし、好き好きだとは思うのですが。
 「正確にひくだけじゃ芸術じゃない」というフジコさんの主張もわかりますが、私は「正確にひいたうえでの個性」と思うほうなので、好みじゃなかった。

 「フジコ・ヘミングの時間」も期待はしていなかったのですが、思った以上に心にしみました。

 この映画ではじめて、フジコヘミングの弟の大月ウルフを知りました。1934年生まれ84歳の俳優ウルフ。特撮ドラマの悪役とかで見た気がするけれど、俳優名を記憶することもなかった。ともあれ2歳年上の姉以上に個性的。今ではフジコヘミング記念館の館長も兼ねているそうで、姉の七光りもあるみたい。少なくとも私は、姉つながりでウルフを知ったのだから。
 
 ピアニストの母から厳しく教え込まれたピアノを唯一の武器として、無国籍者としてよるべない暮らしを送った時期もありました。難民として国籍を父の国スェーデンに得てドイツ留学中、食べ物にも事欠く極貧の生活に耐えたいうフジコの人生を、フジコ自身が子供のころから書いてきた絵日記をはさみながらフジコの時間がつむがれます。

 子ども時代の絵日記すてきでした。日記が残ったのは、母が残した世田谷の家が空襲にあわなかったから。現在は、世田谷の家のほかパリ、ニューヨークなど世界5か国に家があり、世界中をコンサートに飛び回っているそうです。

 60歳すぎて世に知られ、80歳すぎても精力的に演奏活動を続けるフジコさん、苦しかった時代を含めて、輝ける人生だと思います。

 フジコさんの激動の人生を、華々しい画面でなく、絵日記をもとにした落ち着いた画面作り、いいと思いました。菅野美穂がフジコ、ウエンツ瑛士がウルフを演じたテレビドラマも見てみたくなりました。

 ミスタッチも味のうち、というフジコスタイルを味わうために、一度はコンサートに行ってみようかしら。

<つづく>
コメント (2)
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