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ぽかぽか春庭「岩本拓郎展」

2019-02-26 00:00:01 | エッセイ、コラム

 岩本拓郎すべてのいろとかたち展ポスタ―

20190226
ぽかぽか春庭アート散歩>2019冬のアート散歩(3)岩本拓郎展 in 吉祥寺美術館

 2月7日、仕事帰りに吉祥寺美術館に寄りました。吉祥寺駅で下車するのも久しぶり。駅前のごちゃごちゃ戦後闇市的な飲み屋さん街は相変わらずのごちゃごちゃぶりでなつかしかったですが、そこには寄らず、まっすぐコピス吉祥寺へ。

 久しぶりに行ったので、何度も間違えてきた間違いを今回もまた繰り返しました。
 コピス吉祥寺のエスカレータで6階まであがっておもちゃ売り場に出た後、あれ、美術館はどこかなと、カラフルなおもちゃの間をぐるぐる回ってしまいました。売り場のお姉さんに聞いて、エスカレータは6階までしか上がれない、美術館は7階、ということを思い出す。エレベーターを探して、7階にあがりました。

 武蔵野市立吉祥寺美術館。65歳以上無料。夜7時まで開館。
 なので、前の職場の帰り道にちょくちょく寄っていたのですが、最近は10時半から夜8時まで仕事をする生活になったので、閉館時間には間に合わず、遠ざかっていました。
 ラッシュがきつくなったからと、自分で出勤時間をずらし通常の勤務時間より遅くしたのですが、「アフター5」という活動はゼロになりました。家に帰ったらご飯食べて寝るだけ。
 前の職場で8時半から授業をするためには、6時半に家を出ていました。そのかわり、帰りに美術館などに寄る時間がとれました。どっちがいいか、思案中の現在。

 2月7日の吉祥寺美術館は、「岩本拓郎 すべての いろと かたち展」開催中でした。(2月24日まで) 
 岩本は1951年生まれ。私とほぼ同世代ですのに、私はまったく知らない画家でした。もしかしたら東京近代美術館所蔵の2点を、常設展示の中に見たことがあったのかもしれませんが、抽象画、現代絵画の展示をすっとばして見て回るので、心にとどめなかったのかもしれません。

 ミロとかモンドリアンとかクレーとか草間彌生とか、一目見て作者がわかる絵の前では足を止めますが、日本の現代作家の抽象画、だれの作品も同じように見えて、心に残った作品少なかったです。昔は、「日本画って、だれが描いても同じような景色同じような人物に見えて、どれがどれやらわからない」と思っていたのですから、ようは、見方が不十分ということなのですね。(もっとも、今でも、宗達を模写した光琳と抱一の風神雷神、どっちがだれやら区別つかないし、曽我蕭白の龍も伊東若冲の龍も区別つきませんけど)。

 岩本拓郎「茶色の小瓶」2002 紙に油絵具69×36cm関口美術館蔵


 いつもは、ロビーに展示してある作品は撮影自由で、展示室内は撮影禁止です。しかし、岩本拓郎展では逆で、ロビー内は撮影禁止、展示室内は撮影自由、ただし「岩本拓郎という作家名を明示する」という条件つき。

 ロビー展示作品は、美術館や個人の所蔵作品、つまり「売れた」作品。借り出し作品ですから、所蔵権により撮影できない。展示室内の11cm作品は、2018,2017年の新作で、これから売ろうという作品。だから、作家名作品名を書いて「販売促進の宣伝してください」というわけです。1mスクエアの大きな作品が11点。11cmのが36点。
 以下、近作の紹介です。

 2018年2017年の作、11cm正方形のなかに、油絵具やアクリルペイント、アルキド樹脂絵具で、さまざまな色と形を描いていく、という作品。「SQUARE-11シリーズ」
 展示室の中には、11cmの正方形の中のさまざまな色が表現されていました。
 吉祥寺美術館展示室内


 詩情あるタイトルがついていますが、作品が出来上がったあとに、その画面からイメージされるタイトルをつけるそうです。

 黄色くよみがえるもの 2018紙にオイルパステル、アルキド樹脂絵具


 蒼く立ち上がる 2018紙にオイルパステル、アルキド樹脂絵具


 まあ、このふたつは、色味からいって、タイトルがわかる。

 プラハからⅢー色彩のバロック 2018紙にオイルパステル、アルキド樹脂絵具


 画家の詩心、どうしてプラハだったのやら。私には、下の作品が「プラハ色彩のバロック」だと言われても、その違いはしかとはわからぬが。


 抽象画について、昨年おもしろかったのは、中国で大規模に開催された「草間彌生&村上隆展」贋作騒動。展示されたすべてが贋作だったけれど、日本側から指摘を受けて展覧会が閉鎖されるまでファンは気づかずにニセモノを「鑑賞」していた、ということ。質の悪い贋作だったので、見る人が見ればすぐに偽物とわかったそうですが。

 具象画だって贋作は山のように出回っていて、中国には「贋作村」という場所があって、かっては、村を挙げて贋作つくりに励んでいるのだとか。あ、現在では「絵画村」として観光名所にもなり、模写として堂々おみやげになって売られているそうです。油絵作家10000人が描きまくる村の年商700億円。大芬油画村へは、深圳市からツアーも出ていて、おみやげゴッホとか500円くらいから。

 「画家のサインを模倣して入れてはいけない」というのが模写のルールだそうですが、本物そっくりサイン入りやら、現代の絵具とわからないような「19世紀の組成とおなじにしてある時代物風絵具」もあるそうで、絵具の化学分析でもわからない本物そっくり作品もあるのだとか。

 村上隆ルイヴィトンコラボのバッグだの草間彌生かぼちゃTシャツだの売られている時点で、贋作出現は宿命かも。(私が持っている彌生かぼちゃ柄タンクトップ、Mサイズなので、胸は入るがおなかがはいらなくなりました)

 少なくとも、私は岩本拓郎の贋作を「格安だから」とかなんとか売りつけられても、本物なのかどうか、まったくわからない程度の鑑賞眼しか持っていない。鑑定書だって偽造だからなあ。

 あれこれと偽物の心配をしているより、抽象画を見るときは無心にその形や色を楽しめばそれでいいんだと思います。でも、ついつい値段で鑑賞するビンボー人なので。画廊などの個展では作品に値段がついているけれど、美術館展示室の作品にはついていなかった。(画廊のオークションでは23.5×32.5 cm F4号油彩が3万円で落札されていました。本物かどうかは定かでありません)

 吉祥寺美術館の岩本拓郎展、その色と形はとてもここちよかったです。
 岩本作品、じっくり見たので、これからどこかで作者名掲げてなくても、あ、これは岩本拓郎かなって、わかるようになっていたらうれしいかも。
 村上隆も草間彌生も、美大生の贋作だされても深圳の大芬油画村製作品でも、今のところ私にはわからないです。

<おわり>
コメント (2)
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