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ぽかぽか春庭「ギュスターブ・モロー展 in パナソニック汐留美術館その2」

2019-05-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190526
ぽかぽか春庭アート散歩>薫風アート(2)ギュスターブ・モロー展 in パナソニック汐留美術館その2

 パナソニック美術展「モロー展」その2
 第2章以後の「宿命の女」たち。
 モローがこの「宿命の女たち」を、神秘的にも象徴的にも描き出しえたのは、彼が現実社会では女性と「性愛」によって結ばれることはなかったからかもしれない、と、これも勝手な想像です。
 ギュスターブは、恋人と自分の連れ立つ姿を、「ふたりが翼を持つかわいい天使の姿で雲の上を歩いている」として描きました。ギュスターブにとって、ふたりがともに過ごすのは「心の中の雲の上」だったからではないでしょうか。ふたりですごすとき、ふたりは天使なのです。

 雲の上を歩く翼のあるアレクサンドリーヌ・デュリューとギュスターブ・モロー


 第2章は「出現とサロメ」第3章は「宿命の女たち」第4章「一角獣と純潔の乙女」
 モローが描いた神話や聖書の女性たち。
 スフィンクス、サロメ、ヘレネ、レダ、バテシバ、デリダ、サッフォー、など、、、、

 馬に変身したゼウスに惹かれるエウロペ

 ギリシア神話では、エウロペはゼウスの絶倫によって、3人の子をもうけます。馬が光背を帯びているので、この結婚が「聖婚」であることはわかりますが、それにしても、陰嚢がでかい。

 白鳥に変身したゼウスに陶酔するレダ

 
モローは、レダの陶酔を「聖婚」へと向かう神聖な夢、と述べています。
 神話に基づく神との聖なる結婚、というのはわかりますが、、、、
 19世紀末、レダと白鳥のからみの図は、バチカン方面やビクトリア朝前後の「男女の性愛を描いてはならぬ」というご法度をかいくぐって、女性が陶酔するようすを描くには、相手が白鳥のほうが規制がゆるい、という大人の事情があったみたい。よく知らないけど。
 現代では、お笑い芸人たちが腰に白鳥の首を結わいつけて、上下に腰をゆらしながら白鳥の湖の曲で踊ったシーンを覚えていますが、あれを見ても陶然とはならない。

 ヘラクレスと女王オンファレ


 オンファレは、最強の男ヘラクレスを奴隷として使役し、「つよい男よりも強い女」として、奴隷ヘラクレスをしもべとして扱いました。ヘラクレスは奴隷として女装させられ、糸紬などの女の仕事をさせられます。使役されるヘラクレスの後ろにキューピッドがいるのは、オンファレとヘラクレスの間には「愛」も生まれてくるからだと
わかりますが、モローには、18世紀19世紀に「オンファレ&ヘラクレス」のからみで描かれている他の図象のようには描けなかった、または描かなかったと思います。なにせギュスターブの愛は「天使の愛」ですから。

 参考図版「ヘラクレスとオンファレ」byフランソワ・ブーシェ1737(プーシキン美術館蔵)


 買い求めた図録の表紙にもなっており、モローの作品のなかでももっともよく知られた「出現」も、ヨハネの首の幻影と対峙するサロメの強い意志が描かれています。19世紀に好まれたのは、七つの薄布を1枚ずつ脱いでいくと描いたオスカーワイルドの戯曲によるエロチックなサロメでしょうが、モローの描くサロメは、どれも託宣をつげる巫女のようなたたずまいです。

 チケット売り場横のロッカー前のポスターは撮影OKでしたが、館内は撮影禁止。ただし、展示を回って出口にくると、モロー美術館の中の、階段の写真があり、写真の前に椅子。ここは、撮影できます。SNSなどへの掲載もOK。モロー展を宣伝してください、という文言がありました。でもね。モローの作品ではなくて美術館写真の前で撮った絵柄で観客を呼べるとしたら、七つ目のベールを脱いだサロメでないと無理なんじゃないかしら。

 この写真見て、「ああ、モロー展に行ってみたい」と思う人がいたら、すごいと思いますが、観客は呼べそうにない。


<つづく>
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