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ぽかぽか春庭「観劇・3度目のバリャガンガーラ」

2019-11-05 00:00:01 | エッセイ、コラム
20191107
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記(3)観劇・3度目のバリャガンガーラ

 東京青山の表参道からちょっと入ったところにある東京ウィメンズプラザで、友人が演劇の公演を行ったので、見にいきました。表参道の国連大学のわきを入っていきます。

 友人のK子さんは、1970年に出会って以来50年間のお友達。12年前に60歳で定年退職しました。(国家公務員キャリアですが、ガラスの天井が厚かった世代)
 以後は「若いころにちょこっとだけやったことのある演劇」をライフワークにすごしてきました。

 K子さんが所属して活動してきたのは、「東京ノーヴイ・レパートリーシアター付属スタニスラフスキー・スタジオ」という長い名前のスタジオ。演劇ワークショップから発展し、今もスタニスラフスキーシステムを中心に演劇を学び続けている集団です。

 K子さんが出演しているときやスタッフとして活動するとき、本拠地下北沢のミニシアターへ見にいったり、両国のシアターカイに見に行ったりしてきました。招待していただいたり、スタッフ割引をしてもらったり。K子さんは、『鼬』「古事記」などに出演しました。

 今回は「東京ウィメンズプラザフォーラム」のイベントのひとつとして第2視聴覚室で18:00-20:00の公演。東京都のイベントで、無料です。

 K子さんが出演するトマス・マーフィ作『バリャガンガーラ笑いのない町』を見るのは3度目です。1度目はひとりで、2度目はミサイルママと。3度目の今回は、ダンスサークルの仲間4人が集まりました。

 K子さんは、孫娘メアリーの介護を受けている認知症のおばあさんの役です。普段はとても70代には見えない若々しいK子さんですが、役のために髪を白くし、昔の出来事を繰り返し語り続ける役になりきっています。

 介護に疲れ切っているメアリー。看護師の職を辞して祖母の介護を担うことになったのは、自分自身を見失い、自分をとりもどすための方向転換でした。
 メアリーの名も思い出そうとしないおばあちゃんは、メアリーの献身にもつらくあたります。
 メアリーが看護師をやめてふるさとに戻るまでおばあちゃんの世話をしていたのは、メアリーの妹のドリー。メアリーの恋人を奪う形で結婚したものの、今では不仲になっています。

 ドリーはひさしぶりにおばあちゃんを訪ねてきますが、行き詰っている二人は険悪になってしまいます。メアリーは「もう、こんな家出ていく」とスーツケースに服を詰め込もうとしますが、ドリーは「そうやってスーツケース出すの、何度目?」と、取り合わない。

 メアリーは、うんざりしていた「最後まで行きつかないおばあちゃんの昔話ーなぜ、この町から笑いが消えたのか」を、最後まで話させようと考えます。繰り返し同じ話をして、またはじめに戻る、無限ループのおばあちゃんの話をやめさせようとしていたのですが、さいごまで話を思い出させたら、何かが変わるかもしれない、と思いついたのです。

 おばあちゃんを励ましながら、話を最後まで思い出すと、、、、、。メアリーとドリーには、火事の晩行方不明になってしまったトムという兄弟がいたことが判明します。あまりにつらい思い出を封印してきたのですが、おばあちゃんの話を最後まで続けた結果、一家にとって封印されてきたトムの存在があきらかになります。

 つらい過去ですが、それを思い出すことで、メアリーの心が外に開かれます。

 前に2度見たときは、下北沢の自前の劇場で2時間の上演でしたが、今回は会場の使用演時間制限のため、90分短縮版になっていました。枝葉をはしょった結果、ストーリー自体は簡明になって伝わりやすくなったと思います。
 しかし、おばあちゃんがぶつぶつとつぶやく昔話が短縮されて、メアリーやおばあちゃんの心情のきめこまやかな表現がカットされたように感じました。以下、K子さんへ送ったメール感想文抜粋。

 私の感じたこと。ストーリーは、90分になってわかりやすくなったと思います。ただ、おばあちゃんがぶつぶつと繰り返すようすが前に比べて少なくなったように思いました。カットされて、おばあちゃんとメアリーのかかわりがはしょられたように感じ。あの長くぶつぶつと果てしなくつづく昔話があってこそのメアリーのうんざり感であり、最後まで語ることでの希望への再生と思うからです
 ボケたくてボケてしまう人もいないでしょうが、ダンスや演劇を続けることでボケ防止になっているんじゃないかと思います。
 私は、10月に開校した学校で日本語教育がんばっています。老骨に鞭うって、老骨が骨折しないよう、がんばります。K子さんも健康第一で活動を続けてください。。


 ミサイルママのお母さんも認知症を患い、毎日世話をしているミサイルママの妹さんのことは名前も分からなくなっている、という状態だったそうです。たまに実家に帰るミサイルママを思い出すのに、毎日世話をしている妹さんの名前はわからなくなっている。
 介護をめぐる家族の話に、2度目も深く心打たれたようす。
 芝居が跳ねたあと、表参道の牛タン屋でおそい晩御飯を食べながら感想を話し合いました。

 K子さんの演技は、ますます磨きがかかって、確かにそこにひとりの人間像がえがきだされていました。
 演劇をエネルギーにして、ますますしなやかに美しく退職後の人生を歩んでいってほしい、大切な友人です。

 今回の「バリャガンガーラ」ではなく、以前の上演時のK子さん。おばあさんの役になりきっていましたが、ふだんはとっても若々しくておしゃれな人です。


<つづく>
コメント (2)
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